とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

56 恋する地下水

2015-12-11 11:49:57 | 日記



 二体の花神は色とりどりの花びらを振り巻き続けていました。花びらは無数の樹々に降りかかり、枝に花が咲き乱れました。
 そういう景色を山の神は笑顔で見下ろしていました。



 ある日、山の神は異変を感知しました。森の地面から水色の気体が盛んに溢れていたのです。おお、竜蛇神、水の神。どうかお出ましください。そう祈ると、湧き上がる気体が次第に形を成してきました。そして、竜蛇の姿が現れ、口から火炎を吐き出しました。

 「おお、それはお怒りの相、私たちが何か不行き届きを致しましたでしょうか ?」

 「ウウウウウウウウーー。ガーー」

 「おお、おお、これは、これは、失礼致しました。ご挨拶をしておりませんでした」

 「この森が生まれたのは、ひとり荒神の力だけではない。地層の奥に私が蓄えた水気がふんだんにあったからじゃ。はっ、はっ、はっ、浮かれよって、花など咲かせようというのか ?」

 「おお、これはしたり。木にはまだ花を咲かせる力がありません。だから、花神たちに元の力を振り撒かせています」

 「無駄なこと。私がその力を与えてやろう」

 「水霊を与えていただけるのですか。それはありがたいことです」

 「私が地の底で一度吠えると、水霊たちか樹の中を昇っていく。すると、たちまち勢いづく」

 「水神様、ありがたいことです。ぜひお願い致します」

 「ウウウウウウウウーー。山の神、お前の言うことなら何でも聞く。ウウーー。だから・・・」

 「えっ、何でございましょう ?」

 「だからじゃ、だから・・・」

 竜蛇はそう言うと、狂ったように辺りを踊りまわりました。

 「水神様、そう動かれると、樹たちが倒れます」

 「ウウウウウーー。ガーー」

 「水神様、ぜひ分かって頂きたいことがございます。、この森の樹々はすべて花木です。しかし、花の元を持っておりません。ですから水霊とともに花の元の力も与えたいと思います」

 「はっ、はっ、はっ、それは分かっている。先ほどは言いすぎてしまった。許せ。ウウウウウー、だからじゃ・・・」

 「だから・・・?」

 「だからじゃ」

 「ははっ、分かりました。私に対する求婚という・・・」

 竜蛇はその言葉を聞くと一層激しく踊り始めました。

 「どうかお静かに・・・。ええ、ええ、そうでございましたか。・・・この森を育てるために・・・謹んでお受けいたします。二人で力を合わせて仕事を続けていきましょう」

 「ガーーーー。ウオーーーー」

 「ええ、ええ、・・・力を合わせて・・・」

 「六地蔵、ありがとう」

 「えっ、あの六地蔵ですか」

 「ガーーー。そうだ。六地蔵の精魂が私には込められている」

 「そうですか。分かりました。・・・では、私を乗せてください。大空の神々にご報告を・・・」

 竜蛇は、山の神を乗せてたちまち空に舞い上がりました。

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