とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

60 dream (最終回) 

2016-01-28 00:03:51 | 日記


 「さくらさん、貴方には見えるだろう ?」。六地蔵はさくらに霊話で呼びかけました。「ええ、確かに見えます。懐かしい風景です。あの少女の家も見えます。電信柱は消えましたね」。「貴方の電信柱が取り換えられてから、間もなく道路拡幅工事が始まり。電信柱はずっと遠くに移された。・・・ああ、ところで、あの嵐の時にお前の枝が飛んできて、それが立派な樹に成長した。その樹を女の子に見せたいんだけれど、気幕で覆って見えなくしている。えっ、どうしてかって? ははっ、さやかが森の鳥に術をかけられて病気が治った日、それが今日だ。代わりにお祝いをしてやりたい。いや、大袈裟なことではない。気幕を取り払って満開のさくらを見せるだけだ。・・・女の子は、いや、母親もだけれど、どうしてここに移り住んできたのか、私はその訳をずっと考えていた。さやかは霊体となってからあまり家には帰らなくなった。そのうちに母親が病気で亡くなった。うん、そこだ。父の霊が、おおっ、そうだ、新しい森の主になっているその父の霊が、父の愛と言ってもいい、夢と言ってもいい、ははっ、それが元の家族を、母と子を、またここに呼び出したに違いない。この前、さやかにはちっとも分からないと言ってたんだが、何だか分かった気がした」。六地蔵がそんな話をしていると、窓辺に少女が姿を現しました。六地蔵は念仏を唱えました。

 「おおっ、首尾よく気幕が消えた。見事なさくらだ」

 窓辺の少女は、驚いて立ちすくんで見入っていました。



 そのとき、天空から幾筋もの光が少女に降りかかってきました。まず、三本の太い光線が降りかかり、続いて幾筋もの七色の光線が降りかかりました。少女から驚きの表情が消え、恍惚とした表情になりました。

 「お母さん、お母さん、来て、来て。綺麗なさくら、それに不思議な光」

 声を聞いた母親が姿を見せました。

 「ほんとだ。きれいだね。・・・不思議だね」

 そう言うと、大空の彼方から、くわー、くわー、という鳴き声がして、黄金色をした大鳥が姿を現しました。しかし、その姿はすぐに消えてしまいました。



 少女たちが一瞬見た大鳥は、黄金の光を辺りに張り付けました。そして、家の辺りが黄金色にいつまでも輝いていました。



 私は、少女の姿を花の森の空から眺めていました。そして、山茶花に言いました。

 「あの子はどんな大人になるだろうか ?」

 「さやかのお友達になるかもしれませんね」

 山茶花はそう答えて、笑顔で私を見つめました。                            (了)


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59 負の嵐 3

2016-01-23 00:00:32 | 日記



 嵐が静まった翌日、碧空には大鳥がゆったりと飛び回り、新たに広がった森、いままでの森を、森の女神とさやかを乗せて具に観察していました。花盛りの森では傷ついた樹々は少しもありませんでした。ところが、姫神の森、山の神の森にはあちこちに傷ついた樹木がありました。大鳥はくわーっと鳴きました。

 「さやか、行ってくれるかい ?」

 「ええ、承知しました、お母さま。では、大鳥様、分身の術をお願いいたします。傷ついた樹々を私が癒してきます」

 「くわー、くわー、くわー・・・」

 何度も大鳥が鳴きました。すると、さやかは無数の女の子に分身しました。そして、花びらがひらひら散るように森に舞い降りて行きました。すると天上から無数の光が差してすべてのさやかたちを照らしました。「マーガレット様、ありがとうございます」。さやかたちは絶対神からエネルギーを貰って、光り輝きました。すべてのさやかたちは傷ついた樹々に舞い降りると、その樹々を愛撫しました。

 「私の力を吸い取ってくださいね」

 そう言うと、幹から芽が吹きだしてきました。その芽は見る見るうちに大きな枝になりました。

 「大きくなりました。今にきっと花が咲きます」

 天空では女神を乗せた大鳥が嬉しそうに翼をゆったり動かしていました。その緩やかな動きは森全体に暖かい酸素と適度の炭酸ガスを供給して、生長を促進させていました。

 「近い将来きっと多数の人間が元の地球に帰り、滅びた人たちの跡を継いでくれることでしょう」

 さやかはそう呟きました。




 さやかの一人が姫神の森の桜の森に入り込みました。何かを探していました。

 「電信柱、いや、さくらさんの樹はたしかこの辺り・・・。ああ、ありました。うおー、立派な花木。満開の桜。花神の霊力の源はここから出ているはず」

 「しかし、この樹も千切れている枝がある」

 さやかはその桜の樹にも飛び降りて、折れた枝の跡を両手で撫でました。すると、枝が伸びだしてきて、たちまち大きな枝になり、他の樹よりも早く花をつけました。それを確認すると、枝のてっぺんに上りました。すると山の麓の風景がよく見えました。かつて電信柱が立っていた辺りは以前と変わりはありませんでした。さやかと母親が住んでいた家も元のままでした。
 さやかは思い立ちました。この桜の分身を以前の電信柱の位置近くに移そう。

 「六地蔵さーん、手伝ってください。貴方の霊力で桜の分身をそちらに移して貰えませんか ?

「何、桜を移す ?」

 「ええ」

 「はははっ、どうしてだ ?」

 「電信柱さんがいなくなって、寂しくなったし、その家には誰もいないし・・・」

 「はははっ、さやか、その心配はいらない」

 「ええっ、どういうことですか ?」

 「この前の嵐で、桜の枝がここに飛んできた。きっと故郷が恋しくなったに違いない。それからだ、それから枝が根を下ろしてずんずん大きくなった。ははっ、大木じゃ」

 「ええっ、見えないですけれど・・・」

 「ははっ、私が隠している。見えないようにしている」

 「ど、どうしてですか ?」

 「お前たちがいなくなってから間もなく、親子が移り住んだんじゃ。母親と小さな娘じゃ」

 「母親と娘 ?」

 「そうじゃ、その娘がいつも寂しそうに窓から外を眺めている。ははっ、その娘を驚かしたいんじゃ」

 「驚かす ?」

 「そうじゃ、突然、満開の桜の樹が姿を現す・・・。驚くぞー」

 「六地蔵様、その女の子たちはどこから・・・?」

 「ちっとも分からん」

 「私も見当がつきません」

 「まっ、いいじゃないか。さやか、とにかく私に任せてくれ」

 「え、ええ、承知しました」



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58 負の嵐 2

2016-01-18 00:19:59 | 日記


 未曾有の嵐の中、私たち花神は龍神たちを支えるために必死に負のバリアを守っていました。花りんたちと私たちは吹き飛ばされそうになりながら手をつないで負の霊力をバリアに吹き込んでいました。体中の力が失せてしまうような、体がバラバラになりそうな過酷な営みでした。

 「花りん、大丈夫か ?」

 「ははっ、お父さんたちこそ、体が飛んでしまいそうですよ」

 「こうして手をつないでいれば大丈夫。お前たちの暖かさが伝わってくる」

 「負と負の融合。・・・ああっ、樹木たちがまたまた大きくなりました」

 「龍神様、山の神様、姫神様。もろもろの神々様。樹々の精霊様。・・・こんなに結集して戦っている。でも、まだまだ続く戦い。・・・負の世界の負の戦い。地球の一瞬の異変がこんなにも私たちを苦しめる。森が今度はいくつも出来そうだ。その森を誰が治め、導くのだ !!」

 「お父さん、興奮するだけ霊力の無駄になります。落ち着いてください」

 「こんなときに落ち着いていられるか。ああっ、私のエネルギーが尽きてしまいそうだ。山茶花、お前はどうだ」

 「私もばらばらになりそうです」

 「うおー !! 嵐よ、静まれ !!」

 「あなた、落ち着いてください」

 「人間よ、戦を止めろ !! うおー、止めろ !!」

 その時、龍神の吐く炎が突然止みました。ぐ、ぐ、ぐー。そう呻きながら首を上げて上空を見上げました。



 見上げた空は次第に晴れて、嵐が止む気配を感じました。しばらくすると、すっかり晴れた空に奇妙な形の雲が姿を現しました。私は突然叫びました。

 「火の鳥だ !! いや、フェニックスだ !! いや、どちらでもいい。鳥だ。大きな鳥だ」

 「ほっ、嵐を止めた。・・・絶対神 ?! ・・・あなた、間違いないと思う」

 「おおっ、何ということだ !! 隣に巨木の森。しかも、すべてに花が咲いている !!」

「誰か、誰かを招き寄せている感じ」

 「招く ? 」

 「あの翼の動き。私にはよく分かる」

 「誰を ?」

 「分からない。・・・花の森の神。そうだわ。そうに違いない」

 「おおっ、誰かが昇ってくる。あれが新しい女神か」

 「ええ、そうに違いないと・・・」



 「美しい。美しい」

 「ええ、美しい女神。新しい女神」

 女神は両手を広げて翼にして、垂直に高く昇って行きました。大鳥の背に乗る女神に違いないと私は思いました。

 「ああっ、私のお母さんだ !!」

 どこからかさやかの声が響いてきました。

 「さやかのお母さん ?」

 「ええ、亡くなったと聞きました」

 「亡くなった ?」

 「そうです。さやかさんが言ってました」

 「以前、姫神様がそんなことを仰っていたが、やはり」

 「ですから、あの鳥は亡くなったご主人、森に以前から住んでいた鳥の神、そうに違いないと思います」

 「しかし、よく似ている。私の母に。いや、前の妻にも。そうだ、合体神だ。・・・すると、あの家は空き家になったのか ?」

 私は、母と娘が住んでいた家を懐かしく思いだしました。

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57 負の嵐 1

2016-01-06 07:33:34 | 日記


花木の森の樹々に花が咲き始め、山の神と竜神が喜び合っていました。花神たちはそれに励まされ、毎日休むことなく花びらを撒きながら飛び回っていました。
 ある日、山の神は、空の彼方から何か巨大なものがが押し寄せてくる気配を感じました。竜神も気配を感じ取っていました。森の樹々全体をなぎ倒してしまうくらいの勢いで押し寄せてくる嵐でした。

 「竜神様、恐ろしい嵐です。このままでは・・・」

 「分かっている。私も恐ろしい。すぐに森のすべての神々に力を借りよう」

 「私も飛び歩いて呼びかけます」

 「人間の世界で一瞬のうちにたくさんの死者が出たのだ。強力な爆弾が落とされたに違いない」

 「おおっ、青い負の嵐。近づいてくる」  



 「おおっ、火の鳥も来てくれた。山の神よ、すぐにお前の手に止まっている火の鳥を放ちなさい」

 「分かりました。火の鳥よ、飛んで行って、森の神々、天上の神々を集めておくれ。そしてお前の霊力で神々の力を束ね、大きなバリアを築いておくれ。この森をすっぽり覆う負のバリアを」

 「おおっ、それがいい。私は囮となってすべての負の嵐を誘い出す。負のバリアに負の嵐が触れ、私の吐く火炎の熱を浴びれば、たちまち巨大なエネルギーが発生して、森の樹々は巨大化して嵐に対抗する」

 火の鳥が飛び立つと、すぐに四方から七色の光を帯びて神々が集まってきました。そして光が交差すると、輝く金色のバリアが出来上がりました。竜神は渾身の力を振り絞って火炎を吐き続けました。

 「私は飛び回ってバリアの形を整えます。ドームの形となれば最強です」

 「それがいい。私の妻よ。命を賭して・・・、うおー、命を賭して・・・、守ってくれ。私は死んでも火を吐く」

 「人間の愚かな戦いに抗する私たちの戦いです」


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