無明長夜もかくばかり…

食のこと、家族のこと、ペットのことや日々の雑感… 
手探りをしながら、書き綴っていきたいと思います。

口が裂けても言えない

2006-04-05 | 雑感


思えば発端は「花見のおでん」だったかも知れない。
“かも知れない”というのは、それしか思い当たる節がないからである。

日曜日、毎年恒例の花見で、大騒ぎをした。
つまみが足りなくなり、近所のコンビニでおでんの「大人買い」
大鍋を持ち込んで、コンビニのおでん鍋の中身を全て、それに充たして貰う。
狂乱の宴は過ぎ、残ったおでんをタッパに入れて持ち帰った。
自宅の鍋に移して、それを一晩放置。
翌日の晩メシにこれらを喰った。

「なんで冷蔵庫に入れておかなかったの?」

ニョウボが言い、子供らも一切箸を付けず、オレ一人で喰う。
深夜遅く、午前2時頃だったろうか。
差し込むような痛みが胃を襲う。
見ているテレビなど、まるで集中できないので、早めに寝ようとベッドに入ったものの
苦しくて寝ることもできないのだ。
結局、明け方の4時頃、我慢できずに近所にあるT大学病院の
ER(緊急救命室)に駆け込んだ。
以前、長男がアレルギーによる蕁麻疹になったとき、これも夜中の2時頃であったが
こんな時間だというのに、待合室には治療を待つ人がいる。
この日は、オレの前に二組の患者がいた。

胃が痛い。
苦しい。
脂汗が出てくる。
待っている時間が、何時間にも感じられる。
うずくまるように待つオレに看護婦さんが声を掛ける。

「痛みますか?」

痛みますよ!だからこんな夜中に来てるんでしょ!
などと毒づく元気すらない。

「…ええ」

やっとの思いで返事をすると、すぐに治療室に案内された。
こうなった経緯を話す。血圧も上昇している。
「心筋梗塞」の怖れもあるとのことで、心電図を取り、血液検査もする。
点滴をされ、そのまま車椅子に乗せられて、レントゲン室に連れていかれる。
降圧剤を飲んでいることもあり、「心筋梗塞」という言葉がやけにリアルだ。

検査の結果を待つ間、緊急のベッドに寝かされる。
胃の痛みで寝てられるどころではない。
やがて、医師がやってきて経過を説明してくれる。
「心筋梗塞」に関しては問題は無いと言われ、一安心した。
吐き気もなく、下痢のないことから「食中り」でもない。
ただ赤血球の数値が上がっているから、なにかしらの細菌が胃に入ったらしい。
結局、病院には朝8時近くまでいたろうか。
抗生物質を貰い、取り合えず帰宅した。
胃痛もやや治まった気がする。
会社に電話し、午前中、休みを貰ってベッドに潜り込む。
これが月曜日の夜から、火曜日の朝に掛けてのこと。

午後から会社に出掛けたが、痛みは和らいだものの、胃に違和感があり食欲もない。
体中を襲う倦怠感。
なんとかその日の仕事を終え、帰宅して、極々軽めの食事をし
金四郎の散歩をニョウボに頼み、夜の9時頃、ベッドに入る。
朝の5時頃、喉の渇きで目が覚め、冷蔵庫の中に「ファンタグレープ」があったので
それを飲んで、もう一眠りしようとすると、また胃痛が襲ってきた。
炭酸がよくなかったのか、それでも30分ほどで痛みは治まった。
9時頃、目を覚まし、なにか朝メシを喰おうと思ったら
ドーナツがあったので、それをつまみコーヒーを飲んだ。
するとまた胃痛だ。脂汗が出てくる。
それも30分程で治まったが、どうやら刺激物や
いつものような「早喰い」がイケナイらしい。
会社に出掛け、昼になっても食欲が湧かない。
というより腹は減っているのだが、またあの痛みが襲ってくるかと思うと
その恐怖感で、何も口に入れられないのである。
喉が渇くとミネラルウォーターをチビチビ飲んで渇きを癒す。

夜、帰宅し、軽めの夕食。
食欲が湧かないのはもちろん、怖くて何も喰えないのだ。
自分の胃をなだめるような気持ちで喰った後、
胃痛を覚悟していたのだが、どうやら治まったらしく痛みはやってこない。
そう思ったら現金なもので、急激に空腹を覚えた。
しかし油断は出来ない。この日はお茶などでごまかしつつ、早めの就寝。

取り合えず、胃痛は治まったものの、やや胃に違和感があるので
まだ脂や刺激の強いものは喰えないし、満腹になるのも怖い。
改めて旨いものを腹いっぱいに喰えるありがたさを痛感している。

今までのオレは、やや健康を軽んじている傾向があり
「太く短く」を気取っている感があった。

もしかしたら、このまま死んでしまうんじゃないか…

今まで考えたこともなかった「死」というものを現実として
点滴を打たれながら、頭の中をいろんな想いが駆けめぐった
ERのベッドでの2時間を、オレは忘れることが出来ないし
忘れてはいけないだろう。

ここ最近、世間を賑わせている「小3男児投げ落とし事件」
大の男が小さな子供や、中年の女性清掃員という、
いわゆる「自分より弱いもの」を狙う、卑劣極まりない事件であるが
生きたくても生きられなかった人たち、無念の思いで亡くなった人たちを前にして
「長生きなんかしなくていい」などという台詞は
もう口が裂けても言えない。

夕食の際、ユキティさんに教わった「生オニオンスライス」を
ニョウボに頼んで作ってもらった。

「あら、ようやく健康に気を使うようになったのね」

一言もない…