会社のビルの喫煙所が、2箇所から1箇所に減った事は以前書いた。
それまで使っていた、2階にあった喫煙所は
エレベータを降りてすぐ目の前のところにあり、
しかもドリンクの自販機があったので、重宝していた。
今の喫煙所は8階。
仕事場が7階だから、エレベータを使うには気が引ける上
エレベータを降りた場所の正反対、階段で上がったとしても
一番奥まった場所にあるため、結構な時間がかかる。
2階が閉鎖になった日の事。
めんどくさいなぁと思いつつ、階段を上がって
一番奥まった喫煙所に足を運ぶ途中、
同じく喫煙所に向かう女性に声をかけられた。
「面倒になりましたねぇ」
年のころは30半ばくらいだろうか。
髪の長い、ちょっと可愛くてコケテッシュな女性で
2階の喫煙所でもよくお見かけした方である。
オレはひそかに「トモチカちゃん」と呼んでいた。
そう。女性お笑い芸人の友近に似ているのである。
今まで、言葉を交わすどころか
挨拶もろくにせず、なにか警戒されている感じだったので
正直、その言葉に戸惑った。
「そうですね」
戸惑ったとは言え、そこは40…というより、
思春期のチェリーボーイのような初々しさなど、とうの昔に忘れた
もはや50に手が届こうかというオッサンだ。
そこは大人の対応で、言葉を返した。
「これで8階まで閉鎖されたら、暴れてやろうと思ってました」
トモチカちゃんはそう言って笑った。
実は、このトモチカちゃん以外にも二人
よく喫煙所で会う女性が居たのだが、8階に移ったのをきっかけに、
挨拶からちょっとした時候の挨拶程度だが
言葉を交わすようになった。
喫煙者というのは不思議なもので、
ほぼ同じローテーションでタバコが欲しくなるらしく、
午前中に会うと、その日一日は申し合わせたかのように
同じ時間帯に喫煙所で会うようになる。
もう一人は、うちの社内で唯一の女性スモーカーMちゃん。
仕事のイライラを忘れた休憩時間だ。
一人寂しく過ごすより、女性と一緒のほうが楽しいに決まってる。
しかも彼女とは、映画という共通の趣味があるから
一服するほんの10分程度だが、一時の逢瀬を楽しむ。
タバコが灰になるわずかな時間…
この日、今まで使っていたライターの調子が思わしくなかったので
ネットで探し続け、ようやく落札した新しいライターが届いた。
一昨年、スキーに行ったとき無くした、『ファイア』のブルーチタンジッポー。
オレは青いジッポーが好きで、今までもブルーのジッポーを愛用していたが
やっぱり、この『ファイア』のジッポーのシンプルなデザインが好きだ。
こういう喫煙具に凝るのも、スモーカーの楽しみである。
何よりも丈夫で、風が吹いても火がつくという実用性が気に入っている。
お気に入りのライターで、妙齢の女性と言葉を交わし
今どきの喫煙者という、後ろめたさを感じながら
狭く不健康な密室で、仕事の疲れを癒す。
わがままで独りよがりなスモーカーの、密かな楽しみでもある。
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