佐藤直曉の「リーダーの人間行動学」 blog

リーダー育成のための人間行動と人間心理の解説、組織行動に関するトピック

リーダーの暗示学621――伝動戦略を知っていると相手の手の内が見えることがある

2006-10-17 10:54:21 | 伝動戦略
『伝動戦略』というのは私の造語で、本のタイトルにもしていますが、この戦略は「影響力の伝播戦略」ということなのです。それが、最近の北朝鮮問題にも早速使われているようです。今日は久しぶりに伝動戦略を説明いたしましょう。

 
 「北朝鮮問題に見る伝動戦略」
 伝動戦略に限らず、私の物の見方はまず全体をシステムとして考えることから始まります。これによって、局面を広く見ることができます。そして、サブシステムを動かすことで、全体を変えることを考えます。

 問題というサブシステムばかりを見ていると非常に視野が狭くなる。全体システムを見据えて、そのなかで、サブシステムをどう動かすかということが大事です。
 
 こういうことは日常生活でもよくあることです。たとえば車の運転がそう。初心の人は前ばっかり見て、もう緊張してハンドルにかじりついています。
 
 しかし、正しい緊張というのは、余裕のある緊張なのです。ですから、なれた人は、時々バックミラーやサイドミラーを見ながらまわりの状況を把握します。また、曲がり角から、突然車や人が飛び出さないかと、予測したりしますね。
 
 つまり視野が広いうえに、危ないところに目配りがされているということです。ひとつのところばかり見ていては危なくて仕方ないですよね。
 
 そういう態度で問題を扱えるようになると、手段はふつうの人が考えているよりもずっと広がるのです。これを私は「非対立的アプローチ」とか「間接アプローチ」と呼んでいます。
 
 なぜ非対立が大事かといいますと、問題に対処する人はおうおうにして、対立にばかり目が行くからです。つまり、さっきの車の運転と同じですね。

 対立箇所にとらわれずに、別のところを操作することで、対立箇所に間接的に影響を与えることが可能になります。しかも、効果は、直接的に対立箇所に働きかけるよる大きいことがしばしばなのです。
 
 今度の北朝鮮問題をシステムと考えると、六カ国がサブシステムといえます。北朝鮮との対立が大きな問題ですね。ところが、日本が直接できることは経済制裁ですが、これは効果がないとは思えませんが、直接的な打撃力は大きくない。また、アメリカも今すぐ直接的な手は打てない。

 ですから、この北朝鮮問題については、誰もが中国の態度がキーになるとわかっています。北朝鮮に実質的影響力があるのは、貿易量から考えて中国と韓国しかない。ところが、韓国はてんで動きが鈍い。
 
 余談ですが、私は整体を趣味にしています。そこで、いちばん嫌うのが鈍い体なのです。感覚が鈍っている人は、回復が非常に遅い。痛みがある人とか、症状のある人のほうがかえって回復が早い。たとえば、頭部打撲などは非常に危険な怪我ですが、こぶができた人はまず安全です。なにも症状が出ない人ほど危険なのです。つまり、問題を知覚できなければ、永久に問題は解決できない、ということなのです。

 同じようなことが政治でも言えると思います。あまりにも過敏なのも問題は大きいが、それ以上に鈍感なのが危ない。
 
 未だに韓国政府は「金剛山観光事業と開城工業団地は安保理決議とは無関係」 「北朝鮮船舶の貨物検査は南北海運合意書に従ってすでに実施されている」といった発言を繰り返しています。そして「北朝鮮の核は大韓民国を狙ったものではない」と、以前と同じ根拠のない見方に固執しています。

 こういう人たちには何を言っても、何を働きかけてもだめです。そういうのは時間や労力の無駄。しばらくほっておくしかない。

 その点、中国はかなり敏感です。核保有国が新しくできれば、アジアに連鎖反応が起き、中国自身の安全保障にも影響してくると敏感に反応しているのです。
 
 ですから、北朝鮮を動かすには、中国を動かすことがいちばん効果的だという結論になります。
 
 では、その中国を動かすにはどうすればいいか。今言ったように、中国は核問題には相当神経質になっています。となれば、これを刺激材料に使えばよいことになります。
 
 ニューズウイークの最新号(10・18)によると、米国のチェイニー副大統領は「(北朝鮮が核を保有すれば)日本が核開発に着手する可能性もある」とし、中国に対して北朝鮮の核問題解決に積極的に取り組むよう要請したそうです。
 
 そしたら、とたんに15日の日曜日、自民党の中川昭一政調会長が、テレビ局のインタビューで「核保有の議論はあっていい」と語りました。
 
 この発言は世界中のメディアに流れました。もちろん、中国にも。日本は北朝鮮による核実験の衝撃を利用して、本格的な再武装を行うだけでなく、核保有の道筋までつけようとしている」とセンセーショナルに扱われました。
 
 昨日、来日中の中国の共産党幹部たちが安倍総理を表敬訪問いたしましたが、そこでは当然核の問題が出てきました。安倍さんは「日本は非核三原則を守る。政府内で核保有の論議はしない」と言って、中川さんの意見を否定しています。
 
 このあたりのことで、日本のマスコミは大騒ぎしていますが、マスメディアも頭が悪い。いや、一部の人は分かっていながら、あえて大騒ぎしているふりをしているのかもしれませんが。
 
 中川さんだってバカじゃないでしょうから、そうそう不穏当なことは言うはずがない。そこをあえてやっている中川発言は、私に言わせれば、完全にアメリカとツーカーでやっていることです。

 つまり、「日本だって核をもつかもよ」と自民党要人につぶやかせて、中国の制裁措置を促しているのだろうと思います。これが伝動戦略だと、私は思います。

 一方、そういうことを中川さんに言わせておいて、安倍さんは「そんなことは致しません」と否定する。このあたりも打ち合わせ済みでしょうね。まあ、中川さんに「泥をかぶってくれ」と頼んだのでしょう。これぐらい言っても、日本では核武装論は広がらないという読みの下でやっているんでしょう。

 私も中国を動かすにはこういうブラフのような手が効果があるだろうなと前から思っていました。ただ核武装論が出るのが怖いなと。しかし、そこは政府は決断したようです。
 
 ニュースで見る限り、対北朝鮮の中国の態度はかなり本気になっていると思いますね。もちろん武力制裁はしないと言っていますが、経済的には相当効くでしょう。すでに、中朝国境での銀行口座封鎖をしているというニュースがあります。
 
 この措置はジワジワ効いてくると思います。しかも、北朝鮮には食糧難という事情がありますから、案外なんらかの暴発があるかもしれません。
 
 もし、北が暴発したら、どこで暴発するだろうか。答えは簡単です。韓国でしょうね。この問題にいちばん鈍感で無用心なところが狙われるに決まっている。昨日も書きましたが、韓国の人たちというのは、私のとっては本当に理解不能です。
 
 伝動戦略に興味のある方は、左サイドのブックマークから『伝動戦略の詳細解説』をどうぞ。


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