牧場の日記~競走馬生産者の日々~

競走馬の生産牧場の現状と考察

子宮穿孔

2016年05月05日 | 牧場の生活

夜中の2時半お産の監視をしていた馬がごろんと座り込んだ。

馬がお産をするときの寝て破水をするときのように。

ああ、そろそろ始まるな、と思っていたが、全然破水をしない。

そのあと何度か立ったり座ったりを繰り返していた。

この馬は今年初めて家で出産する馬。お産自体はほかの牧場で4頭ほど産んでいる。

しかし最後のお産は難産でだめにしてしまっていたらしい。

夜が明けても立ったり座ったりを繰り返すだけで、お産がいっこうに進まない。

もしかして、お産ではなく疝痛か?と思い、獣医さんを呼んだ。

診断の結果、子宮口も開いているし、お産ですね、とのこと。

直接膣に手を入れると、もう仔馬の手があります、と、引っ張り出せば肢があった。

なので、お産が始まるまで待つことにした。

しばらくしてやっと白い袋がちょっとだけでてきた。しかし、なかなかどんどん出てこない。

陣痛もこない。おかしい。

膣に手を突っ込んでみると、仔馬の足が正常とは反対向きになっていた。

仔馬の向きが悪くてお産が進まないのかも、と思い、再び獣医さんを呼んだ。

獣医さんを待っている間に陣痛が突然強くなり始め、仔馬の向きが悪いままいきみが始まってしまった。

手を入れてみると、中は異様なことになっていた。

仔馬が出てきているのではなく、肉塊に包まれた何かがぐいぐいと出されようとしていた。

何とか探るとその中に仔馬の袋があった。何とか足をつかみ押し戻すと、引っかかっていたものが取れたようだった。

そこに獣医さんが到着して、馬を立たせ、仔馬の向きを変える処置をしてもらった。

そのあとは順調に向きも変わり、産科バンドを仔馬の足にかけ3人がかりで引っ張って出した。

仔馬はとても元気で無事出産を終えた、と思ったのだが、その後、親の状態がとても悪くなった。

立つことはできるのだが、震えてぼーーっとして、何も食べない。熱はないのだが、立っているので精いっぱいだった。

後産が落ちず、オキシトシンを打ってもらったが落ちなかった。

次の日も全然食べず、後産もついたまま。ぶるぶると震えているので獣医さんに診てもらうと、腹部のエコー検査をして、腹水がたまっているのが確認された。

たぶん子宮穿孔ではないかと思うので、センターへ行ってください、とのこと。

センターで検査してもらうとやはり子宮穿孔。子宮体背側の穿孔だった。

あの肉塊が子宮だったのだろうか。

もっと早く仔馬の向きを戻していれば穿孔まではいかなかったのだろうか。

いろいろと悔やませてならない。

いつものお産と違うとずっと感じていたのに、何が起こっていたのか全く想像できなかった。

 

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幸いにも手術は成功し、術後の回復はゆっくりであったが、1週間くらいで飼いもよく食べるようになってきた。

子宮に穴が開いたことよりも、腹膜炎の方が馬にはつらいように思えた。穿孔は縫って治ったけれど、腹膜炎はすぐには治らないようだ。

手術の影響で乳の出が悪くなり、今はまだ、ミルクを足している。

 


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