本日封切り。横川シネマで。
客席は平日で、20人弱というところ。
昨年秋の衆議員選挙で、香川一区は自民党の平井卓也、立民の小川淳也、他に維新の会の候補も出て三つ巴の戦い。
小川氏は一勝五敗、比例区で復活当選を繰り返してきたけれど、昨年は2万票の差をつけて当選、その後結果として敗れるも代表選にも出馬した。
その選挙戦を追ったドキュメンタリー映画。熱い戦いがなかなかに面白かったです。
平井氏は地元で新聞社とテレビ局を持つ一族の人で、祖父、父に続く世襲議員。一方の小川氏はごく普通の家、お母さんは美容師、素敵な家に住み、しっかりものの様子が映像でよく分かりました。
香川という所は、全国から人が集まるような大都市ではないけれど、人が雪崩を打って居なくなる辺境でもない。気候は温暖、人は真面目、地縁血縁がまだ充分に生きている土地、と私は思っているのですが、多くの地方都市も似たり寄ったりでしょう。その意味では、選挙戦のあれこれは普遍性を持つものでもあると思う。
失礼だけどお二人の容貌がまたはまっていて、古いタイプの政治家の平井氏が、カジュアルな選挙戦をする小川氏に次第に追い詰められていくところも見どころ。見る方はそこにカタルシスを感じる。
私の出身地なので、私の狭い見聞から言いますと、血中選挙濃度がこちらの人よりも高いと感じます。選挙の際の判断基準は人柄でもなく、ましてや政見、政策でもなく、いかに自分たちに利益になることをしてくれるかという期待値から。それが地縁血縁、そして仕事縁という社会に張り巡らされたネットワークを通じて投票行動として現れる。
選挙がネットワークを頼りにし、ネットワークは選挙を通じて補強される。そうした従来の選挙運動に、小川氏はあえてカジュアルさを前面に出し、なんか楽しそうと集まって来た人にも支えられて選挙戦を戦う。
とても映画になりやすい選挙区だと思った。
私が選挙民ならやはり小川氏に入れるかな。それは小川氏を全面的に支持するのではなく、平井氏はもういいでしょという思いから。
小川氏が少子化や貧困問題、あるいは憲法改正についてどんな考えなのかは映画の中では明らかにされていなかった。それ扱うと深みにはまるので、ひたすら小川氏のひたむきさに焦点を当てた印象。
小川氏に注文があるとしたら、もの言う時、いつもうつむき加減で自信なさそう。顔を正面に向けて正々堂々と。元々美形なので、くしゃくしゃの泣き顔ではなく、落ち着いた柔和な表情も見せてほしい。
これからもしっかり勉強していただいて、日本のために働いてください。
横川シネマは我が家からは遠い。広島の市街地が三角形とすると、頂点に、我が家は右下の底辺辺りに。路面電車で40分くらいかかった。久しぶりにのんびり電車に乗るのもなかなか良かったのですが。
昼前なので、横川の昭和感満載の商店街の、これまたレトロな店でラーメン食べた。メニューはうどん、ラーメン、お寿司各種。女性が一人でしていて、大きな寿司桶ですし飯作っていた。
ラーメンはスープがしっかりしていて、これまた懐かしき昭和のラーメン。おいしかった。横川駅周辺のレトロな商店街に飲食店街、その外れの山陽本線のレール近くに映画館はあります。館主は目利き、シネマコンプレックスには間違ってもかからない渋い映画がかかるので、平日にふらりと一人で見に行きます。
本日の映画は日本の選挙の断面を切り取って、なかなかに秀逸でありました。明日は監督の舞台挨拶があるそうです。
追記 平井氏は高松第一高等学校から上智大学外国語学部英語学科へ進み、小川氏は高松高校から東大法学部へ行ったとか。Wikipediaより。
我が実家地方では、大学よりも高校が大切。私の叔母の一人は、高松高校の前身の一つ、旧制高松高等女学校へ、小学校の同学年からたった一人進学したのを一生の誇りにしていた人でした。
中年に差し掛かって仲人していた時も、「よその土地の大学や短大はええか悪いか分からん、香川県では高松高校出とったら、女の子の縁談は間違いない」と、誠に分かりやすいことを言っておりました。今の時代、あからさまに学歴差別を口にすることもないでしょうが、香川の人は高松高校を郷土の誉れと思い信頼しているようで、それも今回勝利の一つの影の要因かなと愚考するわけです。
私ですか、一応高松高校ですが(成績は地味)、広島県人の夫及びその親族にはその神通力も通じ難し。残念無念。