迷宮映画館

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天国はまだ遠く

2009年02月04日 | た行 日本映画
都会のOL。いろいろあって疲れた・・・というのは見ただけでわかる。うらぶれた駅に降り立って、タクシーの運転手に「人のいないところ、北につれてって・・」と告げる。

タクシーの運転手も、なんだか危なそうだなあと思いながら、一軒の民宿に彼女を案内する。【絶景の宿 民宿 たむら】

確かに絶景・・らしいが、夜なので、暗くてトンとわからない。戸をあけて「すいません」と声をかける。するすると徳井君・・・もとい、宿の主人が出てくる。「泊めてもらえませんか?」に「なんで?」という間が最高。

めったに人の来ない民宿だということは、じめっとした布団でわかるが、ちゃんと布団乾燥機を持ってくる芸の細かさ!

女性は部屋で静かに薬を飲んで、この世からおさらばしようとする。

そして、朝日に目覚める。まぶしい光と、魚の焼けるいいにおい。おなかが空いていた。おいしそう。味噌汁に、焼き魚に、ダシ巻き卵に、お漬物に、おひたしに・・。パクパク食べる女性を見て、圧倒されるが、ご飯をおいしそうに食べる人に心配は要らない。

この世からさよならしに来たんだということは、容易にわかるが、のんびりと村の中を歩いて、山の空気を吸って、海に揺られ、星空を見上げてるうちに、徐々に癒されていく。いや、あのたっぷり二日間寝て、ご飯をおいしそうに食べたときに、すでに癒されていたのかもしれない。

自分の憂いがなくなってくると、今度は周りが見えてくる。なんでたむらさんは、こんなところで、一人で仙人のように生きてるんだろうか。なぜ彼の時計は止まったままなのだろうか。

彼も大きな傷を負って、生きているのが見て取れるが、彼女の天然的無神経ぶりが、彼の調子を崩していく。

何でもあるけど、何にもない暮らし。ご飯にお肉に卵に野菜はあるけど、ハンバーガーやフライドチキンはない。満天の星空に、おいしい空気に、熊はあるけど、テレビもラジオも携帯の電源はない。なんでもあるけど、それだけではだめな今・・・。

ということで、加藤ローサと徳井君という、異色の組み合わせののんびりまったり全編癒しのムービー。本当の田舎の暮らしができるか!!というと甚だ疑問で、作中でも「あの子はよーやるわ」と言われていた自給自足の暮らしだ。

何がいいのかというと、時間に囚われない。そこがミソ。動かない時計は、大事な人を失って、自分の時計も止まってしまったということなのだろうが、それだけじゃなく、時間に囚われて生活をしていない、ということが見ている私たちをゆったりさせてくれているのだと思う。

ローサちゃんの天然ぶりは、きっと素もこんなんなんじゃ、と思わせたが、凄いのは徳井君。佇まいが役者だ。台詞の間といい、「なんちゃない」とあったかく言う言葉に、包み込むように見つめるまなざし。ええやないですか。

漫才でにぎやかに振舞っていても、どこかさびしげな孤独な感じが付いて回っていたのだが、そのさびしげな雰囲気がぴったり。この監督の人選の妙に、ちょっとやられた。一切おふざけなし。他にちょこちょこ出るお笑いの面々もいい味出してます。チャンバラトリオの南方さんが渋かった・・・。

なかなか拾い物の一本。もともと才能はあるだろうなと思っていたが、ものすごいタレントぶりを発揮してくれた徳井君に、座布団5枚。

◎◎◎○

『天国はまだ遠く』

監督・脚本 長澤雅彦
出演 加藤ローサ 徳井義実(チュートリアル) 河原さぶ 絵沢萠子 郭智博 宮川大助 南方英二(チャンバラトリオ) 藤澤恵麻(友情出演) 板東英二(友情出演)


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2 コメント

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Unknown (はくじ)
2009-02-06 23:58:23
こんばんは。
この映画、なんかよくわかんないんですが
凄く好きな映画です。
私の中で、去年の邦画ベスト10に入ります。
チュートリアル徳井の演技が良かったですし、
加藤ローサが可愛らしかったです。

TBしようと思ったんですが、何故か失敗ばかりなんで
コメントで失礼します。
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>はくじさま (sakurai)
2009-02-07 13:13:14
スイマセン。たぶん禁止ワードが引っかかったのではと思います。
遠まわしの言い方に、改めました。
じわっと自分自身もゆったりして行くような気がしました。
徳井君のちょっとさびしげな表情がぐっときました。
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