サ カ タ の ブ ロ グ 

やぁ、みんな。サカタだよ。

戦前の本

2012年08月22日 | サカタだよ
おさぼりの友といえば本ですね。

『私の銀座』(新潮文庫)で松本清張が、銀座と一切関係ない旅の話を繰り広げ、しまいには旅の幻滅について
不意に語り、このエッセイどうなっちゃうんだろう? と不安になってきたところで吉田絃二郎の旅の文章をほめた
んですね。どんな文章か気になったので、amazonで吉田絃二郎を検索して「わが旅の記」という本を1クリックで
購入したら、こんな本が届きました。


昭和十三年……戦前じゃん

盧溝橋事件の翌年だから、戦中という見方もできるけど、まだ世の中は浮かれているし、真珠湾攻撃まで3年も
あるから、戦前といえば戦前、戦中といえば戦中。そんな時期に初版3000部、5日後に2刷1000部、また3日後に
3刷1000部、2日後に4刷3000部……こまめに増刷するんだなあ! 第一書房。


自社広告のラインナップ

吉田絃二郎という人、ぜんぜん聞いたことなかったけど、夏目漱石、島崎藤村、正岡子規のつぎに名前が挙がって、
佐藤春夫、菊池寛、横光利一、室生犀星といった錚々たる顔ぶれが後に続く。いまでは忘れ去られているけれども、
大正から昭和の初めごろにかけて、流行作家だったらしい。


著者自装……自分で装丁を

表紙の絵も自分で描いたのかな? もちろん題字と署名は自筆だろう。マガジンハウスの創業は戦後だから、まだ
産声を挙げていない。それはともかく、この「わが旅の記」は三十年にわたる旅の記録を集めたもの。大正・昭和の
紀行文集で、読んでみると私小説みたい。


出羽国羽黒山合祭殿前にて

こんな格好で歩いてたのか……。父の世代には読まれなかったかもしれないけれど、祖父の世代ならば読んだかも。
吉田絃二郎を愛読した松本清張は、世代でいうと祖父の世代なのか。


奥付には検印が捺してある

定価1円30銭だけど、よく見ると左上のほうに、外地定価1円43銭って書いてある。なんだろう、外地定価って?
検印の紙片をめくってみると……


満州・朝鮮・台湾・樺太等の外地定価

なるほどね、日本の領土だったから、満州・朝鮮・台湾・樺太などの外地では、内地より輸送コストがかかる分、
定価が割高に設定されていたんですね。

古い本は内容も意外だけど、側だけでも随分いろいろ考えさせられます。夏のおさぼりの友として持ち歩いては、
だいたい祖父や曾祖父の世代の旅のようすを偲んでいます。
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