どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設19年目を疾走中。

ポエム331 『笑顔を拾いに』

2022-09-23 01:55:20 | ポエム

どこかに笑顔が落ちていないかな

拾い屋のゲンさんは地面を見回す

タバコの吸い殻がたくさん落ちていた時代は去り

今はバス停の辺りにチラホラ

 

かがんで拾うのは街の美化のため

誰に頼まれたわけでもない単なるボランティア

ここまで生きてきて社会への恩返し

求めるのは街角に転がっている笑顔だけ

 

先月はとびきりの笑顔に出会ったなあ

ゲンさんは思わず思い出し笑いを漏らす

<あら、拾い屋さん? ずいぶん久しぶりだわねえ

見かけない老婆からいきなり声をかけられたのだ

 

<あんた三ノ輪から引っ越してきたの?

 ほら、わたしよ。タバコ屋の看板娘

自分のことをヌケヌケと看板娘と名乗り

満面の笑みを浮かべて話しかけたのだ

 

ゲンさんは三ノ輪に住んだことがない

だが老婆の笑顔が顔じゅうに弾けたので

つい相手をする気になった

<わたし、亭主に先立たれちゃったの

 

訊かれもしないのに勝手にしゃべりだす

<へえ、おじさんすごく元気だったのに

会ったことなどないのに適当な返事

老婆とゲンさんの会話は宙に笑いの渦を巻く

 

<今日は最高の笑顔を拾ったな

ゲンさん太陽を振り仰いで感謝する

バイバイした後も胸のあたりが温かい

ゴミも笑顔も拾える人生は幸せだ

 

 

コメント (6)    この記事についてブログを書く
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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
おはようございます(^^♪ (のり)
2022-09-23 09:51:19
朝からホンワカ気分になりました。 有難うございます(^-^)
こんにちは (からく)
2022-09-23 12:24:35
元タバコ屋の看板娘に拾い屋さんですか。

その設定がとても面白かったです。
昔、こういう日常の「普通」を書くのに長けた作家に内海隆一郎さんという作家がいました。
胸が温かくなりながら、久しぶりに思い出しました。
ありがとうございました。
気分よく (tadaox)
2022-09-23 14:06:11
(のり」さん、コメントありがとうございます。
ホンワカ気分なっていただけて良かったです。
早く秋晴れの空が見たいですね。
普通であること (tadaox)
2022-09-23 14:37:14
からくさん、内海隆一郎さんの作品は、よく新聞などに載っていましたね。
ありふれた日常を描く作風が、多くの読者に支持されていたんですかね。
ありがとうございました。
Unknown (yamasa)
2022-09-24 01:40:58
イイですね。タバコ屋の看板娘さん。
今は昔。。。(^O^)
話を合わせる事も、うそも方言も必要だなっと思います。
人をだますのでなく、会話を楽しむ。。。
人生の経験者という感じです。
街角の風景 (tadaox)
2022-09-24 04:56:06
(yamasa)様、ありがとうございます。
なるほど、人生の経験者・・か。
うまい評言ですね。
ゲンさんのように生きられれば最高ですね。

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