どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

(超短編シリーズ)63 『龍ふたたび』

2011-12-26 00:06:15 | 短編小説
     (龍ふたたび)「にいちゃん、湯ゥ入るときは前洗ってから入るもんだ」 かけ流しの温泉がジャージャー流れ出る木枠の向こうから、禿頭の老人が野太い声で注意した。 午後の早い時刻だが、差し込む光が鈍いせいか声の主は暗がりに紛れていた。「はい」 裕太は反射的に返事をした。 普段はろくに返事もしない生活をしてきたが、有無を言わせぬ強圧的な声音に思わず反応していた。 声だけでなく、足を降ろした浴槽から . . . 本文を読む
コメント (2)

新むかしの詩集(13) 「ものがたり」

2011-12-18 02:18:06 | ポエム
     ナニコレ?ビル      「ものがたり」   しゅろちくを知っていますか   とげぬき地蔵の縁日で、いまにも踏まれそうな道端に   ほら、シャボテンと並んでいた   電光に照らされて、緑の羽根をせいいっぱい広げて見せていたが   あなたが線香の煙をまとって帰ってきたとき、もう誰かに買われていったあの観葉植物の棕櫚竹です   窓際の部長の机に置かれた一本の棕櫚 . . . 本文を読む
コメント

(超短編シリーズ)62 『サレジオ修道院の松』

2011-12-11 09:23:46 | 短編小説
     (サレジオ修道院の松) 秋の夕暮れである。 真由美が公園通りを自転車で通りかかると、空が急に騒がしくなった。 ギャー、ギャー、アー。 新興住宅地の裏手から、鴉の鳴き声が降って来る。 不吉なものを感じ、真由美はあわてて自転車を降りた。 空を舞い、輪を描き、重なり、吹き上げる黒い影・・・・。「オギャー、オギャー」 騒ぎ立てる鴉の鳴き声に混じって、赤子の声が聴こえる。 胸を掻きむしるような叫び . . . 本文を読む
コメント (4)

どうぶつ・ティータイム(138) 『地震と洪水伝説』

2011-12-03 02:46:24 | エッセイ
     火の山      (地震と洪水伝説)  いま、図説「超古代の謎」という本を読んでいる。  ロエル・オーストラ=編、平井吉夫=訳、河出書房新社から1997年に出たシリーズの1冊である。  目次を見ると、スフィンクスの謎、ナスカの地上絵、ノアの箱舟、太古の伝説ゴーレムについての研究が4章にわたって紹介されている。  どの章も興味深い内容だったが、いま僕たちにとって最も身 . . . 本文を読む
コメント (2)