『現代詩文庫168 御庄博実詩集』
御庄博実・著/思潮社2003年
裏表紙に書かれてあります。下「」引用。
「三沢浩二
原爆の投下された二日後放射能うずまく広島の市街を御庄はさまよった。知人の消息を求めたのである。惨状は衝撃となった。終戦後生地の岩国には巨大な米軍基地が出現した。原爆ゆるすまじと基地反対が御庄のメインテーマとなった。被爆の詩人の多くは早世したが御庄は若年の肺疾患を克服しその後現在まで五十余年を生きた。詩人御庄博実として原爆の悲惨を訴えつづけた。また医師丸屋博として原爆症の研究と治療に専念した。詩業と医術の二面から原爆に対峙した日本人は御庄のほか誰かいたであろうか。注目すべき事実である。本書は詩書としてだけではなく資料としても貴重である。」
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詩集〈岩国組曲〉から 1952年
〈御庄博実詩集〉から 1987年
〈御庄博実第二詩集〉から 1999年
〈未刊詩集〉から
評論
(「代々木病院」と「列島」の詩人たち、閃光に灼かれて、いま…、時間の重さに耐えてetc.)
作品論・詩人論
「組詩「ヒロシマ」 II縮景園」 下「」引用。
「-略-
ヨシコがもう更年期になりました
いま二人だけです
ぽつりと漏らしたあなた
作業所の給料日が楽しみで
その日はわたしにご馳走をしてくれます
給料は五千円のときも八千円のときもあります
ご馳走と言っても ラーメンか何かです
その笑顔のために生きてます
原爆小頭症のむすめヨシコさん
僕はヨシコさんを診察している
あなたと僕と二人で
原爆の語り部となる
-略-」
「青い光 I 青い光」 下「」引用。
「-略-
〈Oさんの血液細胞はすべての染色体遺伝子がちぎれた状態。時間を経てさまざまな障害が起こることが、まざまざと理解できた。誰も見たこともない症状であった。〉
と、東大医師団は語った。
二千年のいまも
現代医学は「青い光」を超えられない
次の百年も超えることは出来まい」
「青い光 II ふるさとで」 下「」引用。
「-略-
五六年前の「青い光」は
僕のふるさとで
婆ちゃんから四才の童女まで 次々と
容赦なくいのちを消していったのだ
占領下の基地岩国は
朝鮮戦争のさ中で
GI と夜の女の嬌声にあふれていたが
僕ら 詩の仲間たちは
プレスコードの目をくぐって
八月六日の追悼の“集い”を開いていた」
もくじ
「V 詩人たちの除名」
--こんな時代もあったようです。下「」引用。
「一九六○年という年は、初めて安保継続という重大事件のあった年であるが、九月十三日には社会党委員長・浅沼稲次郎氏が右翼の兇刃に倒れるという事件もあった。また国際的にはモスクワで八十一カ国共産党、労働者党の代表者会議が開かれ、ソ連共産党を世界の前衛党とする規定に日本共産党のみが反対する、という「きしみ」が現われた年でもあった。-略-」
著者は代々木病院勤務。医師としての仕事が忙しく、党のことを理解するのは困難だったという。
党に残りたい著者だったようだが……。下「」引用。
「「残りたいなら規正を重んじなければならぬ。自己批判してくれますか?」
ぼくはしないと言った。
「それは矛盾だ。どっちにするんです」
ぼくは目をあげて彼を見た。……
「ぼくは今まで何度も語った通りです。その上で、あなた方がどうされるかは、--もうあなた方の自由です」
その年、六二年末に、僕は自分自身の都合で出身校、岡山医大の研究室に帰った。」
index
『原爆放射線の遺伝的影響』(「日本の科学者」三十一巻五号・丸屋博(詩人としての名は御庄博実)・一九九六年)を書いたという。
広島との関わり……。下「」引用。
「『御庄博実第二詩集』の「あとがき」には、《僕の少年時代、広島はふるさと岩国の近くで燦然とした学都であり、軍都であった。五十三年前の原爆投下の二日後、焼けくすぶっている街を、学友・恩師を訪ねて彷徨した。》と書いている。三十年後、再び医師として帰ってきた広島は、かつてとまったく姿を変えている。」
もくじ
Index
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御庄博実・著/思潮社2003年
裏表紙に書かれてあります。下「」引用。
「三沢浩二
原爆の投下された二日後放射能うずまく広島の市街を御庄はさまよった。知人の消息を求めたのである。惨状は衝撃となった。終戦後生地の岩国には巨大な米軍基地が出現した。原爆ゆるすまじと基地反対が御庄のメインテーマとなった。被爆の詩人の多くは早世したが御庄は若年の肺疾患を克服しその後現在まで五十余年を生きた。詩人御庄博実として原爆の悲惨を訴えつづけた。また医師丸屋博として原爆症の研究と治療に専念した。詩業と医術の二面から原爆に対峙した日本人は御庄のほか誰かいたであろうか。注目すべき事実である。本書は詩書としてだけではなく資料としても貴重である。」
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詩集〈岩国組曲〉から 1952年
〈御庄博実詩集〉から 1987年
〈御庄博実第二詩集〉から 1999年
〈未刊詩集〉から
評論
(「代々木病院」と「列島」の詩人たち、閃光に灼かれて、いま…、時間の重さに耐えてetc.)
作品論・詩人論
「組詩「ヒロシマ」 II縮景園」 下「」引用。
「-略-
ヨシコがもう更年期になりました
いま二人だけです
ぽつりと漏らしたあなた
作業所の給料日が楽しみで
その日はわたしにご馳走をしてくれます
給料は五千円のときも八千円のときもあります
ご馳走と言っても ラーメンか何かです
その笑顔のために生きてます
原爆小頭症のむすめヨシコさん
僕はヨシコさんを診察している
あなたと僕と二人で
原爆の語り部となる
-略-」
「青い光 I 青い光」 下「」引用。
「-略-
〈Oさんの血液細胞はすべての染色体遺伝子がちぎれた状態。時間を経てさまざまな障害が起こることが、まざまざと理解できた。誰も見たこともない症状であった。〉
と、東大医師団は語った。
二千年のいまも
現代医学は「青い光」を超えられない
次の百年も超えることは出来まい」
「青い光 II ふるさとで」 下「」引用。
「-略-
五六年前の「青い光」は
僕のふるさとで
婆ちゃんから四才の童女まで 次々と
容赦なくいのちを消していったのだ
占領下の基地岩国は
朝鮮戦争のさ中で
GI と夜の女の嬌声にあふれていたが
僕ら 詩の仲間たちは
プレスコードの目をくぐって
八月六日の追悼の“集い”を開いていた」
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「V 詩人たちの除名」
--こんな時代もあったようです。下「」引用。
「一九六○年という年は、初めて安保継続という重大事件のあった年であるが、九月十三日には社会党委員長・浅沼稲次郎氏が右翼の兇刃に倒れるという事件もあった。また国際的にはモスクワで八十一カ国共産党、労働者党の代表者会議が開かれ、ソ連共産党を世界の前衛党とする規定に日本共産党のみが反対する、という「きしみ」が現われた年でもあった。-略-」
著者は代々木病院勤務。医師としての仕事が忙しく、党のことを理解するのは困難だったという。
党に残りたい著者だったようだが……。下「」引用。
「「残りたいなら規正を重んじなければならぬ。自己批判してくれますか?」
ぼくはしないと言った。
「それは矛盾だ。どっちにするんです」
ぼくは目をあげて彼を見た。……
「ぼくは今まで何度も語った通りです。その上で、あなた方がどうされるかは、--もうあなた方の自由です」
その年、六二年末に、僕は自分自身の都合で出身校、岡山医大の研究室に帰った。」
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『原爆放射線の遺伝的影響』(「日本の科学者」三十一巻五号・丸屋博(詩人としての名は御庄博実)・一九九六年)を書いたという。
広島との関わり……。下「」引用。
「『御庄博実第二詩集』の「あとがき」には、《僕の少年時代、広島はふるさと岩国の近くで燦然とした学都であり、軍都であった。五十三年前の原爆投下の二日後、焼けくすぶっている街を、学友・恩師を訪ねて彷徨した。》と書いている。三十年後、再び医師として帰ってきた広島は、かつてとまったく姿を変えている。」
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