総理がコジキでコジキがソーリィー 030 ラッキー・アイテム 顔の上で声が聞こえる。 「真美、生きているかあー、生きているって素敵だなあー。夜はこんなに冷たいのに、真美の息はとても温かいじゃないか。生きているって素敵なことだよ、真美」 ぼくはヒゲずらの頬でこすられた。 少し痛かった。 この人は僕のことを真美という人と勘違いしているのではないかと思えた。 でも、こう考えている僕自身が、嘘の自分のようにも感じた。 「ソーリィー! その人は真美さんじゃない」 「何!」 「その人は、真美さんじゃない。どこかの知らぬ少年だよ」 「少年? 真美じゃないのか」 「真美さんは死んだ」 「真美は死んでなんかいない。ここにいるじゃないか」 「……」 「真美は、ここに生きている。ほら、息をしている」 「それは、少年だ。真美さんは娘だったろう」 「娘、決まっているだろう、真美は娘に……」 「ソーリィーの膝の上にいるのは、少年だよ」 桜の木の枝から、ロープが下がっている。 「この少年も、真美さんのように苦しいことがあって、若い身空でこの世とおさらばしようとしたんだなー」 ぼくは、ここでまた気を失った。 すっかり目がさめたとき、熊谷老人と高橋青年がいた。 あの人に会いたいと思うことは不自然なことではないような気がした。 ぼくが求めていた何かを彼がもっているような気がした。 ビデオ・ゲームでいうラッキー・アイテムを彼が持っているような気がした。
人気blogランキングへ ありがとうございます。 |
最新の画像[もっと見る]
- いい音ってなんだろう-あるピアノ調律師、出会いと体験の人生- 12年前
- 音楽演奏の社会史-よみがえる過去の音楽- 12年前
- AERA ’12.7.16 12年前
- 週刊現代 2012-8-11 12年前
- AERA ’12.7.9 12年前
- 必ず来る!大震災を生き抜くための食事学-3・11東日本大震災あのとき、ほんとうに食べたかったもの- 12年前
- 僕のお父さんは東電の社員です-小中学生たちの白熱議論!3・11と働くことの意味- 12年前
- 日本の原爆-その開発と挫折の道程- 12年前
- エコノミスト-週刊エコノミスト- 2012-3/13 12年前
- エコノミスト-週刊エコノミスト- 2012-3/6 12年前