『黒い赤ちゃん－カネミ油症３４年の空白－』
明石昇二郎・著/講談社2002年
「セレン（セレニウム）」という物質に、興味を持ちました……。
「異変」……。下「」引用。
「インドでは、尾びれに奇形の見られるイルカが見つかり、日本近海では、頭が二つあるイルカが発見されていた。
北ヨーロッパの海では、アザラシが大量死していた。アメリカ・フロリダでは、ワニの陰茎が奇形で小さくなり、ハクトウワシは巣を作らなくなる。カリフォルニアでは、カモメのメスたちがレズビアンになり、中にはメスに性転換していたオスもいた。そして、そんな動物たちや鳥たちの胎内から決まってPCB、ＤＤＴといった合成化学物質が高濃度で検出されていた。」
「環境ホルモン」1998年3月……。下「」引用。
「日本は「環境ホルモン」パニックの渦中にあった。新聞や雑誌、テレビはこぞって「環境ホルモン」特集を組み、「環境ホルモン」を扱った本が飛ぶように売れていた。
きっかけは、地球上に蔓延する合成化学物質が人類を滅ぼす危険を警告した『OUR STOLEN FUTURE』（邦訳版題『奪われし未来』翔泳社刊）が出版されたことである。－略－」
「セベソ」女の子ばかり。下「」引用。
「事件で発生したダイオキシンの総量は、30キロとも250キロとも、あるいは1・5トンにも及んだとも言われるのだが、これを浴びた周辺住民3万人のうち、ダイオキシンの血中濃度が高い人たちからは女の子ばかりが生まれている－－というのだ。」
マスコミ情報の大半は、さしたる確証のない未確認情報だったという。
皇后陛下も食べていると宣伝された「カネミ油（カネミライスオイル）」。
「世界最高記録」の汚染のイヌイットと「セレン」 下「」引用。
「ただ、そんな子どもたちから今のところ、熊本県水俣市で見られたような「胎児性水俣病患者」は一人も見つかっていなかった。それは「イタイイタイ病」や「カネミ油症」にしても同様だった。それにしてもなぜ、イヌイットたちの間では「公害病」が発生しないのか－－。
その鍵は「セレン」（セレニウム）という物質にあるようだった。自然界に存在し、ガラス製品を着色する際などに使われる非金属元素のセレンには、なぜか重金属の毒性を防ぐ効用があり、特にメチル水銀による神経毒性被害を防いでくれるのだという。そして、イヌイットたちが主食としているアザラシや鯨などの海洋動物の肉や皮には、たまたま幸運にも、このセレンが多量に含まれていたのである。」
特効薬「セレン」か耐性？ 下「」引用。
「たとえ今は症状が出ていないにしても、いつ、限界を超えて“パンク”するとも限らない。イヌイットは「環境ホルモン」に対して世界で最も耐性をもっている人種なのかもしれないし、セレンが公害病に対する“特効薬”なのかもしれなかった。」
だけど、魔法の薬ではないようだ。
セレン＝毒物。下「」引用。
「それに、セレン自体が“毒物”なんですよ。体にとっては確かに微量栄養素として必要なんですが、体に必要な量の100倍を超えたら毒性が現れてしまう。例えば毛が抜けるとか、爪が剥がれるとか、口からニンニク臭がするとか。最終的には死亡します。」
動物に先に被害が……。下「」引用。
「「水俣病では人間の前に猫が寝だけですが、カネミの油症では人間よりも前に、まずニワトリたちに出たんですね。養鶏場で死んだニワトリは最初、45万羽ちゅうたけど、農林省（現・農林水産省）が調べたら、大阪から長崎にかけて75万羽にもなっちょったです。そんなにニワトリが死んだ時、『人間も危ない』と農林省がカネミを止めてたら、油症患者は出なんですんだわけですよ」」
「黒い赤ちゃん」 下「」引用。
「赤ちゃんは、睾丸から足から真っ黒かった。睾丸にかたまっとったんですよ、黒さが。後で自然とその色は取れていったですけどね。あと、身長が足らんとか、乳歯が抜けたら永久歯が全く生えんちゅうこととか。－略－」
二人め「黒い赤ちゃん」、医師からは影響はないと言われていたが……。
「グリーンピース」が仲介……。下「」引用。
「余談だが、矢野夫妻の“命がけの旅”を報道したのは、実は私たちだけではない。国際環境保護団体「グリーンピース」が仲介の労をとり、イタリアの報道各社を前に、現地ベネチアで二人の記者会見が開かれたのである。この会見には、地元セベソからも被災住民のアントニオ・コロンボ氏が同席していた。」
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明石昇二郎・著/講談社2002年
「セレン（セレニウム）」という物質に、興味を持ちました……。
「異変」……。下「」引用。
「インドでは、尾びれに奇形の見られるイルカが見つかり、日本近海では、頭が二つあるイルカが発見されていた。
北ヨーロッパの海では、アザラシが大量死していた。アメリカ・フロリダでは、ワニの陰茎が奇形で小さくなり、ハクトウワシは巣を作らなくなる。カリフォルニアでは、カモメのメスたちがレズビアンになり、中にはメスに性転換していたオスもいた。そして、そんな動物たちや鳥たちの胎内から決まってPCB、ＤＤＴといった合成化学物質が高濃度で検出されていた。」
「環境ホルモン」1998年3月……。下「」引用。
「日本は「環境ホルモン」パニックの渦中にあった。新聞や雑誌、テレビはこぞって「環境ホルモン」特集を組み、「環境ホルモン」を扱った本が飛ぶように売れていた。
きっかけは、地球上に蔓延する合成化学物質が人類を滅ぼす危険を警告した『OUR STOLEN FUTURE』（邦訳版題『奪われし未来』翔泳社刊）が出版されたことである。－略－」
「セベソ」女の子ばかり。下「」引用。
「事件で発生したダイオキシンの総量は、30キロとも250キロとも、あるいは1・5トンにも及んだとも言われるのだが、これを浴びた周辺住民3万人のうち、ダイオキシンの血中濃度が高い人たちからは女の子ばかりが生まれている－－というのだ。」
マスコミ情報の大半は、さしたる確証のない未確認情報だったという。
皇后陛下も食べていると宣伝された「カネミ油（カネミライスオイル）」。
「世界最高記録」の汚染のイヌイットと「セレン」 下「」引用。
「ただ、そんな子どもたちから今のところ、熊本県水俣市で見られたような「胎児性水俣病患者」は一人も見つかっていなかった。それは「イタイイタイ病」や「カネミ油症」にしても同様だった。それにしてもなぜ、イヌイットたちの間では「公害病」が発生しないのか－－。
その鍵は「セレン」（セレニウム）という物質にあるようだった。自然界に存在し、ガラス製品を着色する際などに使われる非金属元素のセレンには、なぜか重金属の毒性を防ぐ効用があり、特にメチル水銀による神経毒性被害を防いでくれるのだという。そして、イヌイットたちが主食としているアザラシや鯨などの海洋動物の肉や皮には、たまたま幸運にも、このセレンが多量に含まれていたのである。」
特効薬「セレン」か耐性？ 下「」引用。
「たとえ今は症状が出ていないにしても、いつ、限界を超えて“パンク”するとも限らない。イヌイットは「環境ホルモン」に対して世界で最も耐性をもっている人種なのかもしれないし、セレンが公害病に対する“特効薬”なのかもしれなかった。」
だけど、魔法の薬ではないようだ。
セレン＝毒物。下「」引用。
「それに、セレン自体が“毒物”なんですよ。体にとっては確かに微量栄養素として必要なんですが、体に必要な量の100倍を超えたら毒性が現れてしまう。例えば毛が抜けるとか、爪が剥がれるとか、口からニンニク臭がするとか。最終的には死亡します。」
動物に先に被害が……。下「」引用。
「「水俣病では人間の前に猫が寝だけですが、カネミの油症では人間よりも前に、まずニワトリたちに出たんですね。養鶏場で死んだニワトリは最初、45万羽ちゅうたけど、農林省（現・農林水産省）が調べたら、大阪から長崎にかけて75万羽にもなっちょったです。そんなにニワトリが死んだ時、『人間も危ない』と農林省がカネミを止めてたら、油症患者は出なんですんだわけですよ」」
「黒い赤ちゃん」 下「」引用。
「赤ちゃんは、睾丸から足から真っ黒かった。睾丸にかたまっとったんですよ、黒さが。後で自然とその色は取れていったですけどね。あと、身長が足らんとか、乳歯が抜けたら永久歯が全く生えんちゅうこととか。－略－」
二人め「黒い赤ちゃん」、医師からは影響はないと言われていたが……。
「グリーンピース」が仲介……。下「」引用。
「余談だが、矢野夫妻の“命がけの旅”を報道したのは、実は私たちだけではない。国際環境保護団体「グリーンピース」が仲介の労をとり、イタリアの報道各社を前に、現地ベネチアで二人の記者会見が開かれたのである。この会見には、地元セベソからも被災住民のアントニオ・コロンボ氏が同席していた。」
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