磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

鱧男の小説などをUP。環境問題に戦争・原発を!環境問題解決に民主主義は不可欠!

有吉佐和子選集 第9巻 ぷえるとりこ日記

2009年01月25日 | 読書日記など
『有吉佐和子選集 第9巻 ぷえるとりこ日記』
   有吉佐和子・著/新潮社1975年

「祈祷」という作品が原爆に関係する作品です。
--井上光晴や井上ひさしとちがって、倫理もクリアーしていると思う……。



■目 次■
ぷえるとりこ日記  5
線と空間  159
人形浄瑠璃  187
祈祷  267
黒衣  317

生き残った人たちにも、その人を愛する人たちにも、原爆は冷たい仕打ちをする……。下「」引用。

「輝一は眼を瞑(つぶ)っていた。が、鉄のような黒くて思い沈黙のあとで、彼は口を切った。
「いずれ分ると思っていたし、分ってから云うつもりだったんだ。道子は戦災で長崎で受けたんです」
 戦災、長崎。この二つの言葉が、たかの脳裡で音をたてて激突した。たかは一瞬、白痴のような表示用で輝一を見守ったが、次の瞬間、唇から歯が飛び出るような勢いで云っていた。悲鳴であった。
「輝一さん、やめて頂だい、やめて。お願いだから、この結婚はやめて頂だい。そんな怖ろしいんです」
「何がって輝一さん……」
「僕は結婚します。道子も充分考えたうえ、僕の愛情に応えようとしているんです。母さん、怖ろしいのは戦争なだよ。僕たちの関係に姑根性は出さないで下さい」
 茫然としているたかを残して、輝一は二階に上って行った。彼の眼には涙があった。」

どうして隠さないといけなかったのだろう?
しかし、障害者も街を歩きづらい時代だったろう……。下「」引用。

「輝一は黙って聞いている。道子は道子で、たかがこうした原爆症を世間に隠してやっているのだという侠気を持っていることが、耐えがたい辛さになって鬱積しているのであった。それを知っている輝一は、別居以外にやはり道はないのだろうかと、すぐに結論へ飛んで、それだけの経済力を持たない自分を省み、そして暗澹として言葉を失ってしまうのだった。」

差別が大手をふって歩いていたと思う……。
--いまの世の中も、そんな時代遅れのファシストたちも歩いている……。

そして、無神経な人たちは、今も多い……。下「」引用。

「年の瀬を控えて、この一年を回顧しながら、政二はこの夏の終戦記念日前後を思い出さないわけにはいかなかった。原水爆反対運動が今年も広島と長崎に中心にして行われた。雑誌、週刊誌が、その特集をした。カメラのレンズ越しに原爆乙女のケロイドを凝視した写真家たち。今日まで続いている惨禍の数々が、大きく頁の上に繰りひろげられた。
 オフィスで何げなく週刊誌を開いた女事務員が、
「わ、嫌だ」
 と云って顔を背けたのがそれだ。
「どうしたの」
 その後に続いた会話は、政二を驚かせた。被災者たちならば聞くにたえぬであろうほど、それは無神経なものであった。道子が、こういう中に、まるで賎しい素姓を隠した者のように蒼ざめて兢々として坐っていたのかと、あらためて政二は痛感した。」

差別とは心の中にうまれるもの……。

そして、その差別でいつか、その人もひどい目にあうことでしょう……。

小泉・竹中路線はそんな感じの一つですね……。

--永井隆はクリスチャンとして、神の裁きを恐れたようです。
恐れるべきは、永井隆ではなかったとも思うのですが……。
しかし、神を恐れることは知恵ですね……。
旧約聖書にも書かれてあったと思います……。

神をも神としない現代人……。
--ブッシュは神を信じるといい、井上ひさしや、曾野綾子はカトリック教徒だという……。







Index

Index





エンタメ@BlogRanking



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。