『さよならをいう時間もない』
ジュディ=ブルーム(作)/長田敏子(訳)/偕成社1991年
表紙の裏に書かれてあります。下「」引用。
「ゆっくりやってくる死には、心の準備もできる。あまりに突然では……さよならをいう時間もない。
強盗に襲われた父の死を、デイビーはどうしても受けいけたくなかった。家族はそれぞれに、病んだ心をかかえて、〈原子力の町〉ロスアラモスの伯父夫婦のもとに身をよせる。
ある日渓谷で、デイビーは狼のような激しい目をした青年に会う。青年はデイビーを〈虎の目〉とよんだ。
現代アメリカの断面を鋭くついたベストセラー作家ブルームの異色作」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3d/19/d04643f30f2930877d571502734e8d6e.jpg)
ブラッドベリー科学博物館……。下「」引用。
「科学博物館へなど、わたしはあまりいきたくないけれど、ジェイソンは待ちきれない。-略-
ピッツィはわたしたちに館内をさっとみせたのち、原子爆弾の模型が於いてある内庭に案内する。
説明書にはこう書かれている。
ここに展示されている模型は、一九四五年八月に日本上空において爆発した二個の原子爆弾を模したものである。これは戦時に使用された唯一の原子力兵器であり、それぞれ二万トンの強力爆発に匹敵する破壊力をもっている。何千人にもおよぶ科学者、技術者の、二年三か月にわたるたえまない研究の結果であり、科学史上にのこる偉大な業績である。両爆弾とも、ロスアラモスにおいて設計製造された。」
気球……。下「」引用。
「気球まつりには毎年のように事故があり、機械の故障がかならずおこるのだと、ピッツィがジェイソンに話している。
つぎの一週間、事故をおこした気球があったかどうか、わたしは毎日の新聞を気をつけて読む。事故のニュースは全然ない。」
記事がなくても、事故がないとはいえないのでは?
教会がたくさんあるロスアラモス。下「」引用。
「ロスアラモスには、ほかのどの町よりたくさんの教会がある。どの町角にも教会が建っているようだ。科学者は、ほかの人よりよけいにお祈りをするかどうか、わたしは知らない。もしかしたら、科学者は罪の意識とおそれを、人一倍感じているのかもしれない。わたしはタイム誌で、組織化された宗教は、人の罪悪感と恐怖の上になりたっていると読んだことがある。わたしにはわからない。わたしの両親は二人とも半分ユダヤ教だ。しばらくのあいだ、わたしたちはアトランチック・シティの唯一派(ユニテリアン)教会の礼拝に出席し、そのあと少しユダヤ教のシナイ教堂にかよつた。いまはどの教会にもいっていない。」
大量虐殺を正義としてくれる神……。
それは幻でしかないだろう……。
ユダヤの神や、キリストの神は正義などとは認めないだろう……。
もちろん、日本軍がやったことも正義ではない……。
だからといって、原爆が神とはならないだろう……。
ならず者の論理を、正義としてくれる神など悪魔でしかない。
ウルフは優秀な生徒。下「」引用。
「それに全米優秀学生奨学金の受賞者にえらばたし、ウエスティングハウス社の科学者コンテストにも候補になったんだよ。-略-それでカリフォルニア工科大学に全額奨学金を受けていっているくんだよ。いま三年生だが、将来はすばらしい物理学者になるだろうよ。」
「訳者あとがき」下「」引用。
「いろいろな社会問題をかかえているアメリカで、殊のほか市民を悩ませているのが暴力、犯罪の問題です。凶悪犯罪は年毎にふえ、得に犯罪を起こす人間の年令が、年々若くなっていくのが注目されています。凶器のほとんどが銃-略-」
銃による悪循環……。下「」引用。
「鉄砲所持に反対し、規制法に賛成する人々も多いのですが、強力な所持派の圧力団体があるために規制法はいつも不成立におわっています。多発する犯罪への市民の恐怖が銃の売れゆきをのばしているわけですが、銃がまた犯罪をひきおこすことになり、悪循環を作り出しています。」
日常生活においても、ならず者の論理がまかりとおっているアメリカ。
戦争はなくならないという刹那主義者がいる。
--しかし、銃の取締りをアメリカよりはマシな日本では、銃の事件は少ない。
戦争も同様と考えてもいいだろう……。
--ならず者の論理を許している限り、平和はこない。
平和がこないのは、平和主義の考えではなく、ならず者の論理があるからだ。
--しかし、平和主義のふりをしたならず者もいる。
その人たちをクラウゼヴィッツ人と呼んでいる人たちもいる……。
ロスアラモスは、そもそもは白人系アメリカ人のものではなかった。下「」引用。
「伯父一家が住むニューメキシコ州のロスアラモスは有名な核兵器の研究所がある町で、人里はなれた山中にあり、治安もきびしいために犯罪はごく少ないところです。
-略-もともとメキシコ領だったところで、それ以前はインディアンが住んでいました。白人系アメリカ人が入ってきたのは約百五十年前で、それ以後白人が政治経済の実権をにぎってきました。-略-」
ならず者の論理で奪い、支配してきた……。
それが事実だろう……。
もくじ
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ジュディ=ブルーム(作)/長田敏子(訳)/偕成社1991年
表紙の裏に書かれてあります。下「」引用。
「ゆっくりやってくる死には、心の準備もできる。あまりに突然では……さよならをいう時間もない。
強盗に襲われた父の死を、デイビーはどうしても受けいけたくなかった。家族はそれぞれに、病んだ心をかかえて、〈原子力の町〉ロスアラモスの伯父夫婦のもとに身をよせる。
ある日渓谷で、デイビーは狼のような激しい目をした青年に会う。青年はデイビーを〈虎の目〉とよんだ。
現代アメリカの断面を鋭くついたベストセラー作家ブルームの異色作」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3d/19/d04643f30f2930877d571502734e8d6e.jpg)
ブラッドベリー科学博物館……。下「」引用。
「科学博物館へなど、わたしはあまりいきたくないけれど、ジェイソンは待ちきれない。-略-
ピッツィはわたしたちに館内をさっとみせたのち、原子爆弾の模型が於いてある内庭に案内する。
説明書にはこう書かれている。
ここに展示されている模型は、一九四五年八月に日本上空において爆発した二個の原子爆弾を模したものである。これは戦時に使用された唯一の原子力兵器であり、それぞれ二万トンの強力爆発に匹敵する破壊力をもっている。何千人にもおよぶ科学者、技術者の、二年三か月にわたるたえまない研究の結果であり、科学史上にのこる偉大な業績である。両爆弾とも、ロスアラモスにおいて設計製造された。」
気球……。下「」引用。
「気球まつりには毎年のように事故があり、機械の故障がかならずおこるのだと、ピッツィがジェイソンに話している。
つぎの一週間、事故をおこした気球があったかどうか、わたしは毎日の新聞を気をつけて読む。事故のニュースは全然ない。」
記事がなくても、事故がないとはいえないのでは?
教会がたくさんあるロスアラモス。下「」引用。
「ロスアラモスには、ほかのどの町よりたくさんの教会がある。どの町角にも教会が建っているようだ。科学者は、ほかの人よりよけいにお祈りをするかどうか、わたしは知らない。もしかしたら、科学者は罪の意識とおそれを、人一倍感じているのかもしれない。わたしはタイム誌で、組織化された宗教は、人の罪悪感と恐怖の上になりたっていると読んだことがある。わたしにはわからない。わたしの両親は二人とも半分ユダヤ教だ。しばらくのあいだ、わたしたちはアトランチック・シティの唯一派(ユニテリアン)教会の礼拝に出席し、そのあと少しユダヤ教のシナイ教堂にかよつた。いまはどの教会にもいっていない。」
大量虐殺を正義としてくれる神……。
それは幻でしかないだろう……。
ユダヤの神や、キリストの神は正義などとは認めないだろう……。
もちろん、日本軍がやったことも正義ではない……。
だからといって、原爆が神とはならないだろう……。
ならず者の論理を、正義としてくれる神など悪魔でしかない。
ウルフは優秀な生徒。下「」引用。
「それに全米優秀学生奨学金の受賞者にえらばたし、ウエスティングハウス社の科学者コンテストにも候補になったんだよ。-略-それでカリフォルニア工科大学に全額奨学金を受けていっているくんだよ。いま三年生だが、将来はすばらしい物理学者になるだろうよ。」
「訳者あとがき」下「」引用。
「いろいろな社会問題をかかえているアメリカで、殊のほか市民を悩ませているのが暴力、犯罪の問題です。凶悪犯罪は年毎にふえ、得に犯罪を起こす人間の年令が、年々若くなっていくのが注目されています。凶器のほとんどが銃-略-」
銃による悪循環……。下「」引用。
「鉄砲所持に反対し、規制法に賛成する人々も多いのですが、強力な所持派の圧力団体があるために規制法はいつも不成立におわっています。多発する犯罪への市民の恐怖が銃の売れゆきをのばしているわけですが、銃がまた犯罪をひきおこすことになり、悪循環を作り出しています。」
日常生活においても、ならず者の論理がまかりとおっているアメリカ。
戦争はなくならないという刹那主義者がいる。
--しかし、銃の取締りをアメリカよりはマシな日本では、銃の事件は少ない。
戦争も同様と考えてもいいだろう……。
--ならず者の論理を許している限り、平和はこない。
平和がこないのは、平和主義の考えではなく、ならず者の論理があるからだ。
--しかし、平和主義のふりをしたならず者もいる。
その人たちをクラウゼヴィッツ人と呼んでいる人たちもいる……。
ロスアラモスは、そもそもは白人系アメリカ人のものではなかった。下「」引用。
「伯父一家が住むニューメキシコ州のロスアラモスは有名な核兵器の研究所がある町で、人里はなれた山中にあり、治安もきびしいために犯罪はごく少ないところです。
-略-もともとメキシコ領だったところで、それ以前はインディアンが住んでいました。白人系アメリカ人が入ってきたのは約百五十年前で、それ以後白人が政治経済の実権をにぎってきました。-略-」
ならず者の論理で奪い、支配してきた……。
それが事実だろう……。
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