磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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終りのない惨劇-チェルノブイリの教訓から-

2012年05月28日 | 読書日記など
『終りのない惨劇-チェルノブイリの教訓から-』
    ミシェル・フェルネクス、ソランジュ・フェルネクス、ロザリー・バーテル(著)/竹内雅文(訳)/緑風出版2012年

帯に書かれてあります。下「」引用。

「国際原子力機関(IAEA)と
世界保健機関(WHO)は
こうしてチェルノブイリ被害
を隠蔽した。
死者はすでに数十万に達している!」



表紙の写真の説明文。下「」引用。

「脳の畸形と、無脳はベラルーシではチェルノブイリ事故後、2倍になった。写真 : アディ・ロシュ」

表紙の裏に書かれてあります。下「」引用。

「チェルノブイリ原発事故から25年目に福島原発事故が発生した。チェルノブイリ周辺のベラルーシ、ウクライナなどでは、甲状腺ガンや白血病などの各種のガンから循環器系、免疫系、呼吸器系の重篤な疾病、さらには畸形などの遺伝障害が蔓延し、死者は、すでに数十万人に及んでいる。
 だが、国際原子力機関(IAEA)や世界保健機関(WHO)は、公式の死者数を急性被曝などの数十人しか認めず、被害を訴える現地の医学者などの報告を抹殺し、被害の矮小化に奔走して、原発の推進に手を貸している。
 本書は、IAEAやWHOがどのようにして死者数や健康被害を隠蔽しているのかを明らかにし、被害の実像に迫る。いま同じことがフクシマで始まっている……。」

中川=詭弁手法をつかう。下「」引用。

「例えばプルトニウムに関して奈良林直(北海道大学)は三月二九日に、プルトニウムの毒性は「呑み込んだ場合は塩と大差はない」あるいは「ボツリヌス菌の方がはるかに危険だ」と発言しているし、中川恵一(東大病院)は四月三日に「プルトニウムは私たちの暮らしにどんな影響がありますか」という問いに「これはありせん」と答えている。
 こうした発言はいずれも、問題点をわざとずらしてそれに対してそれなりに正確に解答するという、典型的な詭弁手法によるものであった。低線量被曝は直ちに影響がないとは言えないが、影響が直ちに表面化しないことは事実である。悲惨な結果が姿を現すのは何年も先、あるいは何世代もたってからなのだ。またセシウム一三七がもっとも問題である時に、微量しか検出されないだろうことが最初から分かっているプルトニウムをことさらに話題の中心にし、しかも毒性の問題の中心が肺であることが分かりきっているのに、飲んだ場合にほとんど吸収されない点を強調するのであった。」

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二枚舌の妖怪=山下俊一。下「」引用。

「一般民衆を前にした講演では一○○ミリシーベルトは安全ですと繰り返しながら、『シュピーゲル』誌(八月一九日)のインタビューでは、そんなことを私が言うはずがないと宣うこの二枚舌の妖怪に、朝日新聞は九月二日付で「朝日がん大賞」なるものを授与している。」

小沢一郎と枝野など……。下「」引用。

「事故があっても、それはたいしたことではない。作業で被曝すれば多少の死人怪我人が出るし、沃素を吸えば、多少甲状腺癌が出るくらいものだ。他にも具合の悪くなる連中は色々と出てくるかもしれないが、それは本人の根性が苦添っているからに過ぎない--こうしたとんでもない認識が、国際社会で合意されているからこそ、枝野幸男は「直ちに影響はありません」と繰り返せたのだし、山下俊一は「一○○ミリシーベルトでもにこにこしていれば大丈夫です」と言えるのであるし、小沢一郎は子どもに魚を食わせるパフォーマンスをすることができる。放射能と一緒に天から降ってきたような魑魅魍魎たちは、実はチェルノブイリのクローンに過ぎなかった。」

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「ロザリー・バーテル」 下「」引用。

「ラズウェルパーク癌研究所という高名な施設で長年研究していたのだが、この時に、医療分野での放射線の乱用に気付いたのが、原子力に対する疑問のきっかけになったと言われている。チェルノブイリの惨事に先立つ一九八五年に低線量被曝に警鐘を鳴らす啓蒙書『ただちに危険はありません』を出版している。一九八六年には、生命空間の破壊への警鐘を鳴らし続けてきた功績で、ライトライブリフッド賞(対抗ノーベル賞)を受賞。
 一九九六年にはチェルノブイリ国際医師会議を創立した。被曝の危険欧州委員会の二○○三年勧告の著者でもある(クリス・バズビーと共著)。彼女の関心は原子力の分野に留まらず、ボパール事故にも大きくかかわってきたし、アメリカの電離層研究(HAAP)の危険性を訴え続けてもいる。-略-」

WHOはいなかったチェルノブイリ。下「」引用。

「八九通 : チェルノブイリの惨事の時と、今日、福島に対してとで、WHOの動きに似た点があるとお考えですか。

フェルネクス : 不在という点が共通しています。奇妙な不在です。データを収集し、提供するために、やるべきことが沢山あるでしょう。それなのにWHOは何もしていません。IAEAが出してきた数値を、そのまま繰り返してみせただけなんです。日本に行って、WHOを捜してご覧なさい。影も形もありませんよ。WHOはいません。始めからずっといるのは、IAEAです。原子力の大事故が新たに起こっているのに、WHOは完璧に姿を消してしまったのです。WHOはそのうち、病人の数が四○人だとか五○人だとか、五○○○人だとか、あるいは五○万人だとか言うことでしょう。何人になるかは、IAEAの出してくる数値次第ということです。」

ますますたくさんの遺伝子の変異。下「」引用。

「フェルネクス : 世代から世代へと、ますますたくさんの遺伝子の変異が見つかっています。汚染の激しい地域では、無気力症や白血病、心臓の畸形、若いうちの老化などが報告されてきました。そけだけでなく、I型の糖尿病が増えています。両親から受け継いだのではありません。発症年齢はどんどん若くなっています。ますます低年齢の子どもたちで、乳児にさえ見られるようになっているのです。他の病気の例もいくらでも挙げられるのですが……。」

IAEAとの合意書はWHOの憲章と矛盾。下「」引用。

「それなのに、一九五九年五月二八日の第一二回世界保健会議で、この合意書は署名された。-略-そしてIAEAは間もなく一九五九年に署名された合意書によって、この分野でのWHOの自由な意思表明を封じるのに成功した。-略-」


何様? =IAEAの役人。下「」引用。

「どうして免疫問題や疾病学的問題がまったく研究されないできているのか、多くの医師たちが質問しています。それらはIAEAにとって、科学的に無意味である、と専門家たちは答えます。
 こんな風に勝手にものごとを決めつけるIAEAの役人たちというのは、いったい何様だというのでしょうか。」

見た目はサリドマイド児に似たチェルノブイリ児が何人もいるという。

サリドマイド裁判。下「」引用。

「サリドマイド裁判の時の判事たちは、腕のない子どもたちや脚のない何千という子どもたちが、本当に、母親の妊娠中に摂った錠剤の犠牲者なのだと、証明することができませんでした。実に専門家たちはこう言ったのです、「事象に先立つ統計が不在であるし、過去にも腕のない子どもたちは存在した」と。」

二倍になっているのに……。下「」引用。

「サリドマイドの時とは違って、ベラルーシ人間遺伝学研究所では一九八二年から今日に至る立派な統計があります。畸形の数は国の全体について言うと、二倍になっています。中には、汚染地域に限って見れば一○倍になっているものもあります。
 専門家たちがそれを話題にしない、ということが悲劇的なのです。-略-」

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出世のタネと甲状腺がん。下「」引用。

「チェルノブイリの結果、子供の甲状腺癌が増えました。IAEAによればこれが事故の明らかな影響と認知できるただ一つの癌なのですが、このただ一つの病気のために何百億ドルかが使われたわけです。膨大な資金を使い、同じことを何度も繰り返して研究したところで、犠牲になった人たちの健康を取り戻す役にはまったくたちません。けれど、センセイ方の出世の種になるわけです。」

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人体実験について。下「」引用。

「ニュールンベルク裁判やヘルシンキ合意以来、人体実験をやるには、医学的かつ科学的な観点から、正当性をはっきりさせなければならないことになっています。検体になる人には、どんな強制もしてはいけないし、その上で「明示的な同意」が必要です。そう合意され、各国が署名もしたわけです。ところが、チェルノブイリに動員されたこの人たちには、何一つ説明もされず、同意も求められませんでした。-略-」

「原爆をモデルにしてチェルノブイリを論じる誤り」 下「」引用。

「原子爆弾が炸裂すると、ほんの数秒の間に、大量の中性子とガンマ線が放出される。しかし早過ぎた死の大半は衝撃波や建物の崩壊、あるいは続いて起こる火災の結果である。犠牲者の中には大量の外部被曝をした人もいて、すぐに死んだ場合もあるし、重い病気になった人たちもあった。急性の放射線障害である。その結果、五年後には、放射線への抵抗力が並以上だ、という人たちだけが生き残つていることになった。日本人たちの一部は、汚染された空気を吸い込んだり、食物を摂ったりして、体の内部から被曝することにもなった。遠くから救援に駆けつけた人たちがそうだったし、放射性の降下物に見舞われた近隣地区の人たちがそうだった。この一群の人々については、まともな研究はされていない。-略-」

「2004年、WHOのチェルノブイリ・フォーラム」 下「」引用。

「李教授からの招待のお蔭で、私はWHO本部で開かれた二○○四年のチェルノブイリ・フォーラムにオブザーバーとして参加することができた。」

フォーラムに参加したIAEAのメンバー。下「」引用。

「商用原子力エネルギーの推進というIAEAの憲章に掲げられた目的の実現に向けて、こういう雇われ人たちは肩に期待を背負っているわけだ。IAEAの利益を擁護しないようなことがあれば、彼らのキャリアには傷が付き、将来も危うくなる。取るべき態度を心に刻み、フォーラムの間ずっと彼らは分科会でも作業グループでも活発な発言を続ける。言うまでもなく彼らは、明らかな利害の衝突に直面する度ごとに、IAEAと繋がっている分科会の座長の目の前で、品定めされるのである。」

IAEAの御用学者。下「」引用。

「-略-WHOで環境と健康の問題を扱う部門のM・レパコーリ博士が、議場で挨拶し、休憩や昼食、コピーなどの説明をした。続いてフォーラムの議長の選出となり、討議もなく投票もなく、F・A・メトラが就任した。アメリカの放射線の教授で、IAEAお抱えの医学の専門家である。話はいろいろあるが、九○年代の初頭に、ベラルーシでの甲状腺癌の増加を否定していたことを書いておこう。WHOの専門家であるキース・ベイヴァスタク博士が一九九二年にベラルーシの診療家たちと共著で増加を発表していたのに、認めなかったのだ。メトラ博士はUNSCERの幾つかの委員会の責任者でもあり、またIAEAのスポークスマンでもある。国際放射線防護委員会(ICRP)の有力なメンバーでもあるが、WHOの手にあったはずのICRPの方針決定権にもやすやすと手を伸ばしているのだ。このように多くの職務を兼業しているので、矛盾した利害関係を絶えず一身に負うことになっていて、二○○四年にWHOの本部の敷地内でチェルノブイリ・フォーラムの議長を務めた時には、その矛盾も極まったことになるのは言うまでもない。」

WHOの憲章破り。下「」引用。

「WHOの憲章には「保健の分野における、国際的な性格の事業にあっては、導き、また取り仕切る権威として行動する」と謳われている。しかし、その地位を、本拠地にあってさえ既に、IAEAに奪われてしまっているのである。こうしたWHOの服従もまた、一九五九年に署名されたIAEAとのと合意文書(WHO一二-四○)の帰結なのだ。この文書が、原子力が健康に及ぼす脅威の領域で、WHOの自立性を完璧に剥奪したのである。」











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