『湯川秀樹著作集3 物質と時空』
湯川秀樹(著)/田中正(編・解説)/岩波書店1989年
湯川さんの甥も、物理学者で、立教大学の名誉教授だったようです。
「月報5」に書かれてあります。
「叔父との不思議なつながり」小川岩雄(立教大学名誉教授)・著。下「」引用。
「湯川秀樹は、私にとって母方の叔父のひとりである。叔父から見れば、私は大勢の甥の一人に過ぎないし、叔父はずっと関西、私は東京にいて、出会う機会も少なかったのだが、たまたま私が叔父に刺激されて物理に進み、そのうえ思いがけない因縁で、核兵器廃絶を鋭く叔父の活動を早くから手伝うことになったため、叔父とは切っても切れないつながりができてしまった。」
湯川さんは養子だったという。下「」引用。
「叔母湯川スミと結婚するさいに湯川姓を名乗った。いわゆる養子縁組である。」
そして、叔父さんと会議へ。下「」引用。
「その第一回会議が二年後、いよいよカナダ東岸の漁村パグウォッシュで開かれることになったとき、たまたま立教大学の研究室で核実験による放射性降下物(「死の灰」)の蓄積状況や影響を友人や先輩と調べていた私は、叔父と朝永振一郎先生に同行することになった。
これが機縁で私は叔父が亡くなるまで、叔父のこの面での粘り強い努力を、公私両面で助け続けたのだが、思えば不思議な意図で結ばれた叔父・甥の関係だったと、改めて感慨を覚えずにはいられない。」
電子の性質だったのか……。知らなかった……。下「」引用。
「私たちが日常経験するいろいろな現象、あるいは物の性質、たとえば花が赤いとか、白いとか、あるいは飛行機が飛ぶとか、あるいは電波が伝わってゆく、こういうようなことは、ほとんどすべてこの電子の性質に関係しているのである。電子に関する限り、われわれはまずほとんど全部のことを知っているといってさしつかえないのである。」
核力と万有引力の違いを書かれています。
李白でとく、物理学……。下「」引用。
「私はよく漢文を引くのですが、李白はこういう言葉があります。
天地万物逆旅(天地は万物の逆旅にして)
光陰百代過客(光陰は百代の過客なり)
天地というはの空間のこと、「万物」とは素粒子だと考えればよろしい。「逆旅」は宿屋のことで、客には固有の名前はなく、宿のどの部屋に入れるかでどの粒子であるか、またそれがどんな運動状態にあるかということがきまるわけです。「光陰」を時間と読み換えれば「過客」即ちこの逆旅に出たり入ったりする粒子の意です。」
“催眠術理論”と“手品理論”があるという。下「」引用。
「私はかねがね物理の理論には“催眠術理論”と“手品理論”とがあると思っている。催眠術理論というのは、種がなくて皆がああそういうものかなと思ってしまう。種があるけれども上手にやってみせれば感心するのが手品理論です。まあ手品理論の方がよろしいでしょう、もっとも人に催眠術をかけたいという潜在意識は私も大いに持っているですが……」
湯川博士はベストセラーは読まない主義だという。
湯川はボーアはソクラテス的であるという。下「」引用。
「ボーアという人は非常にソクラテス的な人なんですね。ソクラテスというのはどういう人であったか。いろいろな人が彼のところへ自分の考えを述べにくる。ソクラテスはいろいろ質問する。その質問にきた人は、はじめはわかっているつもりであったが、質問されて答えに困っているうちに、とうとう自分が何かわかっていなかったということがわかって、すごすごと引きさがる。」
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湯川秀樹(著)/田中正(編・解説)/岩波書店1989年
湯川さんの甥も、物理学者で、立教大学の名誉教授だったようです。
「月報5」に書かれてあります。
「叔父との不思議なつながり」小川岩雄(立教大学名誉教授)・著。下「」引用。
「湯川秀樹は、私にとって母方の叔父のひとりである。叔父から見れば、私は大勢の甥の一人に過ぎないし、叔父はずっと関西、私は東京にいて、出会う機会も少なかったのだが、たまたま私が叔父に刺激されて物理に進み、そのうえ思いがけない因縁で、核兵器廃絶を鋭く叔父の活動を早くから手伝うことになったため、叔父とは切っても切れないつながりができてしまった。」
湯川さんは養子だったという。下「」引用。
「叔母湯川スミと結婚するさいに湯川姓を名乗った。いわゆる養子縁組である。」
そして、叔父さんと会議へ。下「」引用。
「その第一回会議が二年後、いよいよカナダ東岸の漁村パグウォッシュで開かれることになったとき、たまたま立教大学の研究室で核実験による放射性降下物(「死の灰」)の蓄積状況や影響を友人や先輩と調べていた私は、叔父と朝永振一郎先生に同行することになった。
これが機縁で私は叔父が亡くなるまで、叔父のこの面での粘り強い努力を、公私両面で助け続けたのだが、思えば不思議な意図で結ばれた叔父・甥の関係だったと、改めて感慨を覚えずにはいられない。」
電子の性質だったのか……。知らなかった……。下「」引用。
「私たちが日常経験するいろいろな現象、あるいは物の性質、たとえば花が赤いとか、白いとか、あるいは飛行機が飛ぶとか、あるいは電波が伝わってゆく、こういうようなことは、ほとんどすべてこの電子の性質に関係しているのである。電子に関する限り、われわれはまずほとんど全部のことを知っているといってさしつかえないのである。」
核力と万有引力の違いを書かれています。
李白でとく、物理学……。下「」引用。
「私はよく漢文を引くのですが、李白はこういう言葉があります。
天地万物逆旅(天地は万物の逆旅にして)
光陰百代過客(光陰は百代の過客なり)
天地というはの空間のこと、「万物」とは素粒子だと考えればよろしい。「逆旅」は宿屋のことで、客には固有の名前はなく、宿のどの部屋に入れるかでどの粒子であるか、またそれがどんな運動状態にあるかということがきまるわけです。「光陰」を時間と読み換えれば「過客」即ちこの逆旅に出たり入ったりする粒子の意です。」
“催眠術理論”と“手品理論”があるという。下「」引用。
「私はかねがね物理の理論には“催眠術理論”と“手品理論”とがあると思っている。催眠術理論というのは、種がなくて皆がああそういうものかなと思ってしまう。種があるけれども上手にやってみせれば感心するのが手品理論です。まあ手品理論の方がよろしいでしょう、もっとも人に催眠術をかけたいという潜在意識は私も大いに持っているですが……」
湯川博士はベストセラーは読まない主義だという。
湯川はボーアはソクラテス的であるという。下「」引用。
「ボーアという人は非常にソクラテス的な人なんですね。ソクラテスというのはどういう人であったか。いろいろな人が彼のところへ自分の考えを述べにくる。ソクラテスはいろいろ質問する。その質問にきた人は、はじめはわかっているつもりであったが、質問されて答えに困っているうちに、とうとう自分が何かわかっていなかったということがわかって、すごすごと引きさがる。」
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