磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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なぜ遠くの貧しい人への義務があるのか

2010年05月24日 | 読書日記など
『なぜ遠くの貧しい人への義務があるのか-世界的貧困と人権-』
   トマス・ポッゲ(著)/立岩真也(監訳)/
     池田浩章、他・訳/生活書院2010年

原書名 World poverty and human rights 原著第2版の翻訳

結語でこう書かれてあります。下「」引用。

「慈善を勧める言説を通して、多くの人々の命を救うこと--あるいは、何もしないことによってそれらの人々が死ぬに任せておくこと--は、我々の手中にある(選択に委ねられている)という主張は、我々にとって馴染みのあるものとなっている。本書で検討された、より重大な責任を伴う主張--我々の大部分は人々が飢えるに任せているだけでなく、彼らを飢えさせることに参加している--には我々はあまり馴染みがない。この不愉快な主張に対して我々が当は憤りや敵愾心さえ示すこと--それを抜いたり議論したりするのではなく、それを忘れる、あるいは端的に馬鹿げていると排除するよう望むこと--は、驚くに値しないだろう。
 私が試みたのは、この主張に建設的に対応すること、そしてその妥当性を証明することであった。-略-」



帯に書かれてあります。下「」引用。

「現存するグローバルな制度的秩序は、著しく不正義である!
生命毀損的な貧困の大規模な持続に関与するこの秩序の小規模な諸改革で、貧困な大部分は回避可能であり、その機会費用は世界の富裕層にとって微々たるものだ。」

「日本語版への序文」より。下「」引用。

「-略-そのような諸改革のいくつかは政治的に現実的であり、ほんの数年のうちに達成可能である。だがそれらの改革が実際に達成されるのは、富裕な国々にいる人々がそれを支持し要求する場合に限られるだろう。
 このような状況にあって、日本の市民たちにこうして直接語りかける機会を設けてくれたことについて、立岩真也教授、安部彰、-略-大場健教授らに深く感謝する。あなた方日本市民は富裕で経済力のある国々に属しているわけだが、それらの国々には現にあるグローバルな制度的秩序の設計に大きな責任がある。-略-」

「II 世界の貧困を無視するための4つの安直な理由」 下「」引用。

「私は主ととして4つの理由を相手にしてきた。最初の3つは、反動的レトリックについてのアルバート・ハーシュマン〔Albert Hirschman〕の見事な分析によって分類された3種類の悲観論(無益〔futility〕、危険〔jeopardy〕、逆効果〔perversity〕)の格好の事例となっている。また第4の理由は、我々のさらなる努力なしでもすべてはうまく行きつつあるという楽観的信念である。」

WTOと調印したのは……。下「」引用。

「この異議は、貧しい国の統治者やエリートたちの責任に関しては正しい。彼らの多くは先制的で、腐敗し、残忍で、貧しい多数派の諸利益に無感覚である。-略-例えば誰がWTOに参加する決定を下したかを考えてみよ--悪名高きSLORC(国家法秩序回復評議会)軍事政権はミャンマー(ビルマ)、軍事独裁者サニ・アバチャはナイジェリア、スハルトはインドネシア、ロバート・ムガベはジンバブエ、モブツ・セセ・セコはコンゴ(ザイール)を、それぞれ代表して調印したのである。-略-」

「リバタリアン批判」 下「」引用。

「リバタリアンは、人権がどうのような義務を課すことができるかについて、最小限の主張をする。すなわち、人権が要求するのは、我々が特定のかたちで他者に危害を与えないことである--我々が彼らを保護し、救助し、衣食住を与えてやることまでは求めない--というものだ。-略-消極的義務が存在することになるが、それは彼らがその犠牲者を保護したり秩序の改革に努めたりすることによってその加担行為を償うことがないとしたらの話である。この義務を侵害している人々は〔すべて〕、問題と成っている不正な制度的秩序によってつくりだされた危害(基礎的必要なアクセス不全)に対しての責任を共有しているのである。」

「2.5 「マニュフェスト権利」としての社会的および経済的な権利に対する批判」下「」引用。

「-略-ナチスがその権力の絶頂にあったときに侵害していたのはたんなるマニュフェスト権利ではない。
 おそらく、この表現の意味するところは以下のようにするのが最も明瞭だろう。ある法的ないし規定済みの道徳的権利がマニュフェスト権利であるのは、次の場合でありその場合のみである。-略-」

南アフリカ白人のホームランド政策

論理的で今的問題を把握した秀作といえる本ではないでしょうか?






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