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アーセナル解体新書2

2008年03月19日 | 考察集
■ アーセナル解体新書2 アーセナルの攻撃における個々の選手の特徴

前回の『アーセナル解体新書1』からの続きです。(PCでの閲覧を推奨します)
大まかなポイントは図解に記載しているので、その内容に付随する細かな点について解説していこうと思う。


1.アーセナルのポジショニング
例えば、一般的に相手チームが自陣右サイドから攻撃してきた場合、当然の如く右サイドへの選手の密集度・ゾーンの圧縮度は高まる。
アーセナルの場合は、個々の能力が高いという理由もあるのだが、2~3人で相手の攻撃を封じていた。そして、その後の展開に備えて逆サイド(左サイド)の選手はあまり右サイドに絞り過ぎない。つまり、ピッチの横方向に対してはバランス良く選手が配置されることを意識しているようである。
また、この辺の別のポイントとして守備的MF、いわゆるボランチの守備時の動きを見ると各チームによって異なる。例えばリバプールの場合、マスケラーノはDFラインの前のエリアを左右大きくカバーする守備力が売りなのに対して、アーセナルはフラミニとファブレガスは両方共、攻守の起点となれる。

2.アーセナル右下のエリア
基本的にパスを繋いで攻撃を組み立て相手の守備ブロックを崩すアーセナルはDFラインからむやみやたらに前線へロングフィードをしない。勿論、アデバヨールのポストプレーや裏への飛び出しを意図したロングフィードはあるが、この辺はプレミアの他のクラブとさほど大きな差はない。ただ、アーセナルはDFでも足元の技術がしっかりとしているのでパスを繋げる。その際、前半顕著だったのが、「アーセナルの右下のエリア」である。セスク・ファブレガスがアーセナルのパッシングサッカーの心臓部であることは前回書いた通りである。

そして、DFラインからこのファブレガスへパスを配給している選手が、右SBのサーニャ、右CBトゥーレが挙げられる。ここの3人のパス交換率は非常に高く、ファブレガス自身もパスを貰いに行くシーンも多かった。もう一つ、右SBのサーニャは時折攻撃参加をするものの同サイドのエブエがドリブルで仕掛けるタイプなので、エブエの後方をしっかりと守る意識が高い。また、DFラインは左から右へのパス回しが多く、左へ展開した場合は、クリシーが前のフレブや引いて来たFWにぶつけるような形があった。

3.左サイドの縦のユニット
一方、左サイドは、「フレブとクリシー」が1つのユニットになっている。
基本的に縦の関係性を重視した攻撃を仕掛ける。特徴的なのが、フレブがボールを受けてタメを作っていると左SBのクリシーがオーバーラップしてくる形である。逆に右サイドの「エブエとサーニャ」にはあまり多く見られない形である。

4.フラミニ、ファブレガスの関係性とその変化
前半、ファブレガスが攻撃の起点となり中盤の底から長短のパスを幅広く散らしてゲームを組み立ていた。そして、フラミニは、ポジションを前掛かりにシフトしポストプレーをしたFWの受け皿となり、再びそこからボールを前後左右に散らす。

逆に、ファブレガスが前掛かりシフトすると今度はフラミニが中盤の底に入り相互補完的な役割を担っている。また、ファブレガスが右サイドの守備に出て行くとフラミニが中央から左への展開をしたりと、中盤のこの2人の関係性・役割分担は完璧なもので、アーセナルのサッカーの根幹(心臓部)であることは間違いない。

ところが、後半になると1点負けているアーセナルが明らかに変わったのが、中盤の「フラミニ、ファブレガス」の役割分担である。
時間の経過と共に、ファブレガスがゴールエリアに近い位置にポジションを移し、フラミニが中盤の底でパスを散らす回数が前半と比べて多くなっていた。
ハイブリット・オフェンシブのセスク・ファブレガスの持ち味が最大に生かされるのは、攻撃時前後の運動量が多くなった時だとこの試合で実感した。前半のように攻撃の起点としてゲームに参加している内はさほど怖くないが、フィニッシュを意識して攻撃参加して場合は手に負えない。ただでさえ、前線に強力なアタッカーが構えており、さらに両サイドも明確な攻撃のロジックを持っているのである。そして、ダイレクトでボールを繋がれた日にはミドルスブラのように貝になってゴールを固めざるを得なくなる。

5.FWのポストプレーと攻撃的スペース
ピッチを縦に2分割した際に、FWの2トップの配置は、左にアデバヨール、右にファン・ペルシーという形が多かったように思える。ただ、基本的にはあまり配置に関しては重要ではないと思う。ただ、その中で気になったのが、フラミニの前方、ミドルスブラDFラインの前エリアでポストプレーを受ける割合が高いように感じた。つまり、ファブレガスからのパスは左斜め前方へと出される。
この点は、前述の通り、フラミニのポジションが前にシフトすること。アデバヨールが真っ直ぐ引いてきて左サイドの「フレブとクリシー」のユニットへ展開し易いこと。また、ファン・ペルシーが引いてくる場合にも斜めに引いてきているケースが気になった。(DFライン近くまでボールを触りに来るシーンもあった)
この辺は、チームとして何かの意図、決まりごとなどあるのかもしれない。ただ、サッカーは相手があって変わるので一試合だけでは推し量れない部分ではあるが、ちょっと気になったので記載しておいた。

6.右サイドはエブエは要注意
この試合で明確に気づいたのが、エブエの右サイドでのプレーであれる。上記のパス数でも前半以上に少ないのは、ファブレガスなどからパスが渡るとドリブルでアタックを仕掛けゴール前まで侵入する。ここはアーセナルの攻撃のもう一つの大きな特徴だと言える。
勿論、ボールを失うことも多い。よって右SBのサーニャの上がりが、少なかったのかもしれない。


7.後半16分の選手交代後のアーセナルについて
アーセナルは後半16分、一度に二人の選手交代の策に打って出た。
 ファン・ペルシー → ペントナー
 サーニャ → ウォルコット
これによりエブエが右SBのポジションに移り、エブエがいたポジションにウォルコットが入った。しかし、時間の経過と共にミドルスブラはゴール前を固めだした。見かたを変えれば、アーセナルのボールポゼッション率が高くなったとも言える。

そこで、右SBに入ったエブエは後方からドリブルで前線にボールを運んでいた。とにかく、ゴールを奪うべくアーセナルは怒涛の攻撃を仕掛けた。そこで、マイナス要素として気になったのがパスに固執するということである。パスで相手の守備ブロックを崩すスタイルのアーセナルはペナルティエリア内でもショートパスを繋ぐ傾向がある。一方のミドルスブラは相当数ゴール前で人数を掛けていた。足元のテクニックが尋常ではないアーセナルはそれもパスが繋がる。しかし、最後のフィニッシュが決まらず苦戦した。

試合は、後半41分、コーナーキックからトゥーレが決めてなんとか1点をアーセナルが返し同点とした。

以下、リバプールのアーセナル対策。よかったらブログランキングのクリックにご協力を (*´▽`*)


■ リバプール流、アーセナル対策

とりあえず、アーセナルの攻撃面だけにクローズアップして考えた場合、いくつかのポイントが挙げられる。
 1.セスク・ファブレガスの起点
 2.両サイドへの対応
 3.FWのくさびのボールを封じること
リバプールは現在の4-2-3-1のフォーメーションでアーセナル戦も行くと思われる。

1.前線からのプレッシング
まずアーセナル解体新書1に書いた「アーセナルのパスデータ」より明確なことは、セスク・ファブレガスの起点を封じることである。
ここは、ジェラードがファブレガスへ執拗にプレッシャーを仕掛けることによりアーセナルの攻撃の起点を潰すことが出来ると思うし、キャプテンの守備面での役割はこれに絞っても良いと思う。上手く行けば、アーセナルの攻撃の約20%くらいは減少させることが可能であろう。
次に、DFラインへのプレスである。おのずとマッチアップの形は決まってくる。「バベル vs サーニャ」、「カイト vs クリシー」、「トーレス vs トゥーレ」。ギャラスは放置しておこう。これによりアーセナルの攻撃の内DFラインからの展開、約20%くらい減少できるはずである。まぁ、この辺は完全に理論上の話ですが(笑)

2.エブエ対策
次に右サイドのエブエを封じる方法が難儀である。現状、正直答えが見つからない。単純にエブエとの関係性だけに絞り対策を考えた場合、方法は2つ。
 1.守備力のある左サイドの選手を起用
 2.攻撃力のある左サイドの選手を起用

まず、エブエの攻撃力に押し込まれた場合、リバプールの左ウィング的な位置のバベルは守備に忙殺されて押し込まれる危険性がある。
だったら、バベルよりは少しは守備力がマシ(?)なリーセを配置し最初から守備的にしておく方法もある。経験値もバベルよりあるリーセを使いさらにフィジカルコンタクトも問題ない上にメンタルコントロールも若いバベルよりは上手いと思う。ここの理由は、時々、バベルが熱くなり過ぎるきらいがある。まだ、大きな問題として噴出していないが、実はちょっと前から気がかりな点である。

次に、いっそのこと殴り合いに持ち込んでバベルでサーニャを攻めて、後ろはマスケラーノがサイドをカバーしつつ左SBの(多分)アウレリオでエブエを封じるという手もある。エブエは多少中へ絞ったドリブルもしてくるのでこのやり方が現実的かもしれない。


まぁ、完璧にエブエを封じるのは無理である。要は、上記のファブレガスへのプレスを強化してアーセナルの攻撃の起点を潰すようにすることと同様で、チーム全体の戦い方としてアーセナルのサイド対策(エブエ対策)についてもアーセナル戦の一つのポイントとしては考えるべきだという話である。全く策もなく無防備な状態であれば、多分、ずだぼろにされると思う。チームの背骨である「センターライン」は欧州でも十分に渡り合えると思っているが、いかんせんサイドは多くのバグを抱えているのが、現在のリバプールである。

ちなみに、アーセナルの左サイドのユニットに関しては、ディフェンス頑張りFWカイトとフィナンかアルベロアでなんとか互角に渡り合えると思う。先日のレディング戦で、アルベロアがハントと対等に渡り合えたのを見てある程度はいけると思った。しかし、C・ロナウドクラスの選手だと・・・(苦笑)

3.マスケラーノとCBによるセンター封じ
アーセナルは、中央への縦パスをズバッと入れて、それに連動するように周りが動きパスを巧みに使い中央・サイドと満遍なく崩してくる。そう考えれば「縦パスをズバッと」を封じるのがベストだと思う。その後、展開されてしまっては、ただ振り回されるだけで、ゴール前で封じしかなくなると思う。

2CBは「キャラガー、シュクルテル」で行くべきだと思う。昔ながらのフィジカルコンタクトを中心としたプレミア・ファイトのチームならばヒーピアでも大丈夫だと思うが、いかんせんアーセナルのFWは、クイックネス・スピードが長けている。そうなるとヒーピアはアーセナルのFWにぶち抜かれる怖さがある。
その点、「キャラガー、シュクルテル」であればある程度安心だと思う。また、若い世代のシュクルテルは足元の技術はしっかりしているので、後方からの繋ぎにも多少期待はある。

ちなみに、リバプールはDFラインを適宜上げれなければ、前述の前線からのプレスもただチーム全体を間延びさせてアーセナルに自由なスペースを与えるだけの結果になってしまう。

そして、やはりこの男マスケラーノである。コンビを組むのは現状ではシャビ・アロンソがベストだと思う。多少、アロンソの守備力は劣るが、奪ったボールを展開する力を買えば、訳の分からないルーカスよりは全然チームの武器となる。それに、経験値という面でも一日の長がある。アーセナル戦ではほとんどの時間を守備に費やすであろうマスケラーノ、正直、彼がアーセナル戦に出れない事が発生したら、はっきり言って前述の「アーセナルの攻撃力何%減少させる」という話も、クソの役に立たない。それくらい今のリバプールにとっては必要不可欠な選手であると思っている。

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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
嫌という程 (きよっぴ)
2008-03-19 18:50:44
リバプールファンの管理人がアーセナルの話題を
取りあげてくれるとはウレシイですね~っと思っていたら
今度、嫌という程対戦するんでしたよねw。

むう…しっかり解体されてしまいましたねえ…。
返信する
どうもです (dorotguba)
2008-03-19 22:31:39
個人的には「リバプール対アーセナル」と聞くと、昨年のカーリングカップだったかのロシツキのゴールを思い出してしまうんですが、彼は怪我しているでしたっけ? リバプール的に嫌なのは、やっぱ2列目、3列目からのドリブルによる仕掛けな気がするんですけど、どうなんでしょう。
返信する
コメントのお返事 (コージ)
2008-03-19 23:25:24
きよっぴさん

こんばんは。
4月のアーセナル3連戦は、両チームにとって今シーズンを左右する第2ポイントだと思っています。
第1ポイントは、今週末、日曜日の試合ですね。現実的には、ここの試合が大きいと思います。
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Unknown (コージ)
2008-03-19 23:31:57
dorogubaさん

こんばんは、毎度です。
おっしゃる通り後方からのドリブルによる崩し・仕掛けは怖いですね。その対策ではないですけど、結局、リバプールにとっては、(アーセナルに限らず)上位チームとの戦いでは、攻撃の起点潰しがどれだけ出来るか?に、リバプールの攻撃は掛かっていると思うのです。基本的に「守備→攻撃」のリズムが良ければ、どこが相手だろうと守備が好調のリバプールであれば負ける気しないんですよね。

今は、トーレスが爆裂中なので、攻撃は彼次第なんですけどね^^;
まぁ、相手にすれば、トーレス、ジェラード封じって対策取るでしょうけど・・・
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Unknown (シャンク)
2008-03-20 09:41:09
やっぱりセスクに代わりは居ないようですね。ここらへんの攻防が楽しみです。がんばれマスケ。
今シーズン、ここまでのリーセは副業が火の車らしく、出場してもパッとしません。そろそろ豪快な一発みせてほしいです。
いずれにしても相変わらず一つも落とせない崖っぷち状態です。8ポイント差になった(実際は11ポイント差)と言って、ベニテスは優勝の可能性を示唆しはじめてますが、レッズが残り試合全勝のうえ、相手が8戦中4敗してくれればの話になります。(ありえねー)
多分彼は数字だけ見て言っちゃったかな。
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Unknown (酩酊)
2008-03-20 16:12:41
アーセナルのパスワークとリバプールのプレスの対決は見ものですね。幾つか気になった点をコメントします。

まず現状のアーセナルはフレブ、セスク、フラミニの次の中盤の4人目が流動的で、ウォルコット、エブエ、ディアビ、シウバの4通り。
前の2人だとこの文章の分析でいいですが、シウバだとセスクが前目にくるのでパタンが変わる。
ディアビだと彼が左SHに入るので、フレブが右に来て、サニャの攻撃参加が増えます。
右サイドが注目されてますが、左のクリシーのクロスからのゴールも多いので要注意。

あとファン・ペルシー入りではあまりやってないですが、4-4-1-1もあります。
確か10月28日の11節の同じカードもそうだったんではないかと。
強豪相手にはむしろこっちの方が多いかもしれません。
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コメントのお返事 (コージ)
2008-03-20 16:47:05
シャンクさん

こんにちは。
リバプールは残り8試合で、勝ち点最大83ですので、それを他のチームと刷り合わせて考えれば、次のようになるのかな?
 ユナイテッド・・・4敗
 アーセナル・・・3敗
 チェルシー・・・2か3敗(得失点差含む)

ただ、ふと思ったのですが、リーグ2位を目標にすれば来期のCL本戦からの出場権となり2試合少なくて良くなるのでその方がまだ現実的かな?と思う昨今です。
いかがでしょうか?



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コメントのお返事 (コージ)
2008-03-20 16:50:52
酩酊さん

こんにちは、お久し振りです。
貴重な情報ありがとうございます。
なるほど、他にも攻撃のスタイルはあるわけですな・・・
今週末のチェルシー戦も注目してみようと思います。
強豪という位置付けであれば、チェルシー戦はより現実的な試合になると思いますし、分析するのにも良いかもしれませんしね。
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