ROSE POSYのハンドクラフト・ブログ

”手仕事”の楽しさをお伝えできればと思います。ROSE POSYオリジナル作品もどうぞお楽しみ下さい。

失敗は成長のチャンス?!痛し痒しのジュエリーCAD

2008年03月20日 | ジュエリーよもやま話
さて、鋳造勉強会シリーズの派生ネタです。

実は、この鋳造勉強会の題材になった今回の私の作品ですが、自分的には成功とはいえませんでした。ちょっと見た目には失敗してるように見えないと思いますが、いろいろと後悔ばかりで反省どころ満載なのです。


3つもコピーを作ってもらったけど・・・。(鬱)

ま ず、CAD設計の段階でうまくいきませんでした。

自宅でデータを作成していたところ、Bool演算中にライノが意味不明なメッセージを吐きましたが、そのままコマンド自体は実行できてしまったので強引に作業を続けました。

続きの作業は学校でやろうと、途中のデータを学校に持って来てファイルを開こうとすると学校のライノではそのファイルが開けないのです。何故???バージョンもサービスパッチのレベルも同じだし・・。
 
ライノのソフトウエアバグ?あまりにも哀しい、”不可抗力”・・・。

結局、ファイルが開けないのでは作業にならないので、記憶だけを頼りに学校のPCでイチから作り直すことに・・・。(号泣)


ここまでやったのに作り直しだなんて・・・・

ライノセラスはBool演算時に不具合が出やすく、作り込んでいくにつれ、複雑になればなるほど、Boolの失敗で先に進めなくなってしまいます。完成が近くなるほどトラブルを収束するために費やす時間が長くなります。そもそもデザインも構造も懲りすぎたことが時間切れも含めて、すべての敗因の元でした・・・・。

相手はコンピュータなので、実行したとおりの結果しかでません。おまけにバグのせいで人様に平気で逆らうこともあります。うまくいかない部分があると、手作りのように”ごまかす”という技がなく、融通のきかぬところもコンピュータならでは。

提 出締め切り時間ギリギリまであがいて、ついにBool時のトラブルが解決できず、全部のパーツを結合できないままタイムアウトになりました。

万策尽きてガックリしていると、校長先生が安井イン ターテックさんに電話で確認してくださり、幸い、そこの光造型機は完全に論理結合していないオブジェクトでも造形ができる、とっても心の広い優しいマシン?!ということがわかり、未完成データでも提出OKということになりました。はぁ~、助かった。校長先生と安井サマに多謝!m(^^;)m 

造型機のおかげでピンチは切り抜けることができましたが、さらなる失敗に遭遇することに・・・。

いよいよ鋳造勉強会の当日、造形した原型を見た校長先生が、一言。『ROSEさんのはでかいよね~!』
え??縦横寸法は設計どおりのサイ ズで合ってるよなーと思ったのですが、やっぱり何かがおかしいと思いました。
全体的にボッテリし てるというか、バランスがよろしくない。

よく見ると・・・・、よく見なくても、これは厚すぎる。つまり、高さ寸法が間違ってたということでした。(早く気づけよっ!オラッ)

鋳造するとその厚みは顕著に現れ、ズッシリとした重さを手に感じて、ああー、やってもうた・・・と。


この分厚さはありえないでしょ・・・。

CAD で曲線を立ち上げるコマンドの操作ミスで意図した高さの2倍の寸法で作っていたようです。(ライノ分かる人は、Extrudeコマンドで、両方向=”はい”、を”いいえ”に変更するのを忘れた、と言えばわかりますよね。)

時間との戦いで注意が散漫だったのかもしれません。そもそも、こんな初歩的なミス、最終段階のレンダリングの時に気づかなかったものか?と思います。手作りの場合はこういう間違いはまずしないでしょう。

次は裏部分。本来は4つの羽が先端で1つに合体して真ん中に1mm程度の丸い穴だけが空くはずなのですが、なぜか『ネコ』の形に!


(鋳造後の写真) ネコ!

この”ネコ”はCADの状態で先生に指摘されて気づいたのですが、時計を見ると締め切り時間まであと10分。修正している時間が無いので、”ネコ”のままでいいことにしてしまいました。(^^;;;
ネコ好きROSEのイタズラということで許してもらおうっと。

 

本当は元のデザインではクロスの側面壁に光穴を開けるつもりでしたが、そんな時間はとてもないので光穴はパス!(そのことが後になって助かることに・・・・)

失敗の往復ビンタはさらに続く・・・。

CAD上では爪の状態は問題ないように思われましたが、鋳造してみると、いくつかの爪が、壁面とくっついてました。爪と枠のすき間の距離を十分に配慮していなかったために、地金が張力?で流れてしまったのだと思います。CADを過信しすぎました。

失敗している爪は、壁との”癒着”部分をゴリゴリ掘るなり削るなりして分離してから留めるしかないです。トホホ。

CADでは図面がいくらでも拡大できてしまうので、拡大した状態では”論理的に”OKでも、後工程でうまくいかない場合があります。

実際に樹脂や金属になった場合のマテリアルの膨張や収縮、粘性、磨き代といったことを十分に考慮して設計しなければならないのです。爪の太さをいくつにするか、といったこともその1つです。

こういったことはある程度は先生が教えてくれますが、頭で理解していても体でわかっていないので、やっぱり自分でやってみて、たくさんの経験と失敗から1つ1つ体得していくしかないのかなと思います。

さて、厚みを間違えてしまった失敗のリカバリは簡単です。糸鋸で余分な地金をスライスして本来の厚みにしました。めでたく”ネコフェース”も消えました。(^^; もし計画通りに横に”光穴”をあけていたらこの技は使えませんでしたので、まさに怪我の功名です。


”ネコ”は端材側だけ。
厚みが間違ってたことが、”ネコ”の原因だった・・・。

端材となった方の地金、なにげにカワイイのでこの形を生かしたペンダントトップを作ることにします。(わーい、1粒で2度美味しいぞ!)



枠に癒着していた爪もなんとか分離させました。(はたしてうまく石が留まるだろうか・・・。)

やれやれ・・・・。地金になってからの修正はまったく大変です。
せめてワックスの状態でしたらかなり楽でしたでしょう。

鋳造屋さんが造形もやってくれるところだったりすると、CADデータを支給したあとは、不具合を修正するためのチェックポイントがありません。造形→ゴム形→ワックス→鋳造、の道をひたすら突き進んでしまい、最悪の場合、全くリカバリがきかないことになります。

原型の形状が複雑だったり、出来上がりに不安を感じる場合は
CADデータの状態で慎重によくチェックすることももちろんですが、
個人的には、多少手間でもデータから切削や造形をした段階で一度見せてもらってから、後工程を進めるように心がけようと思います。

さて、この作品はこの状態でいったん中断します。他に人に頼まれているものがいろいろあるためです。いろいろ紆余曲折あったけど、失敗作では終わりたくありません。この先の仕上げが楽しみです。
完成しましたら、またブログでお目にかけましょう。



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2 コメント

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失敗は成功のもと (ジュエリービジネスプロデューサー佐藤 善久)
2008-03-20 17:02:07
失敗は成功のもとです。

まず、画面のサイズと実物のサイズのギャップがありますね。

ジュエリーの様な小さいものを大きな画面で見てますので、爪がくっついてしまっていたり、実物には反映されない細かなモデリングに時間を費やしたりと、 経験しないと分からない事だらけです。

10年以上 ジュエリーCADでの製品作りをしているわたしでも、 いまだに 「うっ」てことがあります。

でも、慣れてくるとCADでここまでやってこれは手作業で ひとやすり いれて などど 完成までの手順が見えるようになってきます。

そうなると ツール として ジュエリーCADとうまく付き合えるようになりますよ。

今回の 手作業のリカバリー 見事です!
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先の工程が見えることが大切ですね (ROSE POSY)
2008-03-21 01:32:21
たしかに佐藤さんのおっしゃるとおりですね。

失敗や経験から学んだことを通して、『先読み』が出来るようになると、その後のトラブルはきっと慌てず冷静に解決出来るのだろうなと思います。

ジュエリーCADを学ぶ人すべてに言えることですが、必ず仕上げまで自力でやってみることが大切ですね。自分で石留めや磨きをしてみて、どういうデータが良いデータなのが見えてくると思います。

他のソフトウエアの操作同様、ジュエリーCADでも上達してくるとつい高度な技巧に走り勝ちですが、(実際、私も今回、懲りすぎました・・・)後工程の作業をやり易くする配慮を十分に考えることが最も大切だということを痛感しています。
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