雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

永遠と横道世之介/吉田修一

2024-07-08 | 小説


横道世之介シリーズ三作目。
とにかく吉田修一作品は大好きなので、ほぼ読んでいるのだけれど、とりわけこの横道世之介シリーズは本当に面白くて、なんか深い。
確か一作目の「横道世之介」の感想ブログに書いたような・・・と思って探してみたら、ありました。
横道世之介/吉田 修一 - 雲跳【うんちょう】

横道世之介/吉田 修一 - 雲跳【うんちょう】

これはおもしろかったなぁ。主人公「横道世之介」の上京物語、なんだけど時代が80年代ってのが、いいなぁ。ケータイとかない時代。あの頃は、今みたいにせせこましくなかっ...

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ハッキリ言って、ほぼほぼ同じような感想です。ただ今作は非常に泣けた。これも歳のせいだろうか、最近とても涙もろい。嗚咽レベルだった。
でも、悲しい涙ではなく、とても胸を熱くさせられての涙だったので清々しい気持ちにさせてくれる。
そんな横道世之介シリーズもどうやらこれで完結らしいので、ちょっぴり寂しいのだけれども、きっとこれからもっと素敵な作品も出てくるだろうし、また何度だって読み返せば、世之介に出会える。
だから大丈夫。
横道世之介は永遠だ。
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まっとうな人生 / 絲山秋子

2022-08-13 | 小説


コロナ渦を描いた小説が、いつの日か「あのときはそうだったよなー」って、懐かしさとともに思い返せる記録になるんだろう。なるはずだと思いたい。
当初、未曾有の日常を世界中の誰もが体験し、恐怖し混乱し、一体この先世界はどうなってゆくのだろう・・・と不安の中に放り込まれながら、三年、人類の様々な抵抗をもって、且つ人間特有の「慣れ」という防衛本能によって危機感は幾分薄れている。まだまだ油断はできないのだけれども。
それでも緊張感というやつはそんなに永く保たないのも事実。
実際、つい一、二年前の緊迫していた日常を描いた小説を落ち着いた心持で読めるのだから。

さて、それにしてもやっぱり絲山先生の文章はスルッと頭に入ってくる。感覚というか気持ちというか、自分が言語化できなかったもどかしさを、示してくれる。言いたかったことを言ってくれたして、そんな風。
舞台は富山。もう何年も仕事で往来しているので他県事とは思われなく、惹きつけられた。

一日でも早く、「感染者数」なんて言葉を耳にすることのない世界に戻ってほしい。
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硝子の塔の殺人 / 知念実希人

2022-03-02 | 小説


久しぶりに読んだ本格ミステリ。
なんかもう、ここまでやらないと驚愕を掴めないのかと考えると、これから先の本格ミステリは果てしないところへ向かっていくのではないか? と、期待もあれば不安も。
ともあれ本格ミステリのツボがギッシリ詰まった作品でした。
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夜が明ける / 西可奈子

2022-01-20 | 小説


まず最初の感想が、これはドキュメンタリーじゃないのかい? というくらい、リアルが迫ってくる。
だがしかし、そのリアルを自分は知らない、経験していない。だのに、これは現在の日本のどこかで起こっている現実なんだ、としか思えないやりきれなさが読むごとに突き刺さる。
貧困、虐待、過重労働、遠い国の話ではなく、すぐそばで起こっている事実。
目を逸らせば見ることもないし、考えなければ何事でもない。
でもそれでいいのか? そうじゃないよな。
現実で起こっている悲痛な出来事に目を向けろ、そして考えろ、何が出来るかではなく、まず今、何がそこにあるのかを知ることから。
そんな気持ちにさせられる、人として読むべき一冊。
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峠うどん物語 / 重松 清

2012-01-20 | 小説


『凍裂』のついで……といってはナンだが、久しぶりに重松清の本も借りてきた。まあ、重松なら大抵外れない、そう思って借りてきたら、うん、ものの見事に外れなかった。いつもの重松節。
 なんだかんだと涙腺を「うるっ」とさせるのは流石、泣かせの名手。
 それほどの重さを持たせず、それでも人の生死の意味を充分に考えさせるのは、まさに職人技。

 最近では、うどんより蕎麦を喰うほうが多くなったけれど、この本を読んだら無性にうどんを啜りたくなった。
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凍裂 / 喜多 由布子

2012-01-20 | 小説
 年明け、久しぶりに図書館に寄ってみた。ふと、時間があったので。
 このところ、仕事ばかりで本を読むヒマなども無いのだけれど、それでも、あの、本の背表紙がズラッと並んでいるのを眺めているだけでも、なんだかワクワクするから。
 いつもの見知った本や、いつも読もう読もうと思いつつもやり過ごしてしまう本、そして新たに加わっている名も知らぬ作者の本……。
 それらを時の過ぎ行くままに追っていったところ、ふと、どうにも気にかかるタイトルだった。

『凍裂』

 作家の名を見てもピンとこない。まったく、知らない作家。それでもそのタイトルに異常て、本をとった。表紙をめくると、新刊の帯が貼り付けてあった。

『貞淑な妻が、善良な夫を刺した。』

 ああ、もう、神(本の神様)の力が働いたとしか思えなかった。迷うことなどなく、借りた。
 そして読み始める。ただでさえ、忙しい最中で読みきることができるだろうか? と思いながらもページを手繰る。
 果たして、ものの三日もかからずに読み終える。とにかく、夢中になって読んだ。
 例えば「面白かった」とか「つまらなかった」などという感想が沸いてこないくらいに、とにかく夢中に。

 あえて感想を述べるなら、
「これからは妻への言動に細心の注意と敬意を払わなければな」
 といったところか。

 神(本の神様)の計らいに感謝する。
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青天の霹靂 / 劇団ひとり

2011-07-07 | 小説


 芥川賞受賞作を読んだ後だけに、なんとも軽い文章ではあるなぁと思いながら読み進め、さらには中途で「こんなもん、劇団ひとりっていうネームバリューがなけりゃあ糞みてぇな小説だな」とか思いながら、もう殊更辟易としながら酒をあおって読んでいったら、まあなんていうか……お酒の力ってすごいねー。まったくもって陳腐なお涙頂戴にお涙捧げちゃってるもの。
 これぞ、お為ごかし的なSFまがい小説、なんだけど、まあなんていうか、小説っていうか、よくできたネタだよね。
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苦役列車 / 西村 賢太

2011-07-03 | 小説


 この前の芥川賞受賞作。そういえば昨今、あまり私小説を書く人というのは少ないように感じる中で、これはまたかなり無頼な私小説作家の登場である。
 自分的には私小説作家といえば「檀一雄」であるが、この西村氏、なんとも久方ぶりに心を揺さぶる私小説作家であった。
 檀一雄もそうであるが、たいていの私小説作家はみっともない。もう、なんか人間として駄目な具合である。だがしかし、それこそが人を惹きつけ魅了する。
「無頼漢」。嫌いな人は嫌いであろうが、少なからずの憧れは誰もがもっていると思う。自分はその憧れがめっぽう強いのかも知れない。それか、「自分はコイツよりはマシだな」と安堵したいのかも知れない。
 こういったズタボロ感漂う私小説というのはひとつ間違えれば鼻持ちならない態に陥ることも多いが、この小説は特に悲愴になるわけでもなく、だからといって明日への活力、人生の素晴らしさなどを謳ったお為ごかし的なものもなく、そこにあるのは少しのユーモアと生きてく厳しさだけである。それがとても受け入れやすかったので、すぐにこの作家の他の本も読んでみたくなった。
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安心したがる人々/曽野 綾子

2010-12-19 | 小説
             

 絲山秋子さんや、佐野洋子さんなど、どうやら自分は辛辣な女性が好みのようだ。いや、正しくは辛辣な考えを持っている女流作家さんが好き、だ。
 実際に、こんな辛辣な思考を持っている(そしてそれを平然と言ってのける)女性とは到底お付き合いできないと思う。もう、読むだけで満たされる。
 そういった女流作家さんの最たる人物とでも言おうか、齢八十近くにおいてますます辛辣さに磨きがかかったというか、いや相変わらぬ感受性をお持ちの曽野綾子女史の最新エッセイ集を読んだ。
 とにかくもう、読んでいるこちらがハラハラさせられるようなことをズカズカ書いておられる。それはまさに「痛快」なことこの上ない。
 それはまあ、ようするに、自分の思っていたこと、考えていたことなどが合致するからこそなのだろうけど、やっぱりこういう文章を書く人には敵も多いのだろうなぁ……と思ったりもする。
 なんせ、ファンの一人である自分でさえ、読み進むに従って、「もしかして、この人って、ただの偏屈バァサンなだけじゃねーの?」と思えてくるくらいだから。
 しかしながら、その偏屈で辛辣な性質の中にあるド太いしっかりとした倫理の芯を感じ取れるので、「やっぱすげぇなぁ……」と感嘆してしまう。

 こういう文章があった。

『しかし谷選手(柔道)のこれまでの生活が、それほど偉いとは、私は思わない。
 母親としての暮らしと厳しい選手としての生活とを同時にやってのけたことは、確かに意志の弱い人にはできないが、その程度の辛い生活に耐えた人は世間にいくらでもいる。
 谷選手には、その厳しさに華々しく報いられる場があった。
 しかし年老いてぼけた自分の母親を、何十年も介護し続け、ほとんど自分の人生を犠牲にしながら、誰からも注目されず、もちろんメダルももらわなかった人の方が、私はずっと偉人だと思うのである。』


 今でこそ、谷亮子はボロクソに言われているようだが、この文章が書かれた時は、まだ「ヤワラちゃん」も世間から脚光を浴びていた時である。そんな時期にこういうふうに言ってのけることも凄いのだが、なにより、そこに書かれていることが真実であるということだ。
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本当はちがうんだ日記/穂村 弘

2010-12-19 | 小説


 菓子パンが主食の四十過ぎのオッサンのどうしようもなく哀れで切ないエッセイ集……。
 と、いうわけでもなく、なんだかとにかくおもしろい。まったくもって、この人の言い分(というか言い訳)を読んでいると、イライラしてもくるし呆れ果てたりもするのだけれど、なんでだか、最後には「ふふっ」と微笑っている自分がいる。はっきりいって自分自身が気持ち悪い。なにが気持ち悪いかって、この自意識過剰過多で菓子パン好きのマニア系のオッサンにかなり共感してしまえているのだから……。
 正直、今いちばん会いたい人かもしれない……いや、自身の名誉にかけてやっぱいちばんとか言いたくない。
 けど、あったら言ってしまうだろう

「わ、わかりますよ……(泣」

 と。


 哀しくも切なく、そしてこの上なく可笑しい。人生に卑屈な人は必ずや共感せられるであろう穂村弘の言葉は、寂しい自分をより寂しくさせる珠玉の翳りに溢れている。
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マリアビートル/伊坂 幸太郎

2010-12-08 | 小説


 よくもまあ、東京から盛岡までの間の新幹線での出来事をこれほどまでに面白おかしく、且つ感慨や驚嘆を盛り込んで描けるものだと、ただただその力量に脱帽はおろか頭の皮までずり落ちる勢いですわ。
 これほどまでのトレインエンターテイメント(そんなジャンルがあるのか知らないけれど)は読んだことがない。というか、あまり列車関係の小説は読まない。誰だったっけ? あの時刻表トリックだのなんだので何十冊もだしてるオッサン……。
 まあ、それはそれでいいとして、この物語はそんなありきたりの列車ミステリとかではなく、とにかく、なんだろ? もう「伊坂幸太郎」ってジャンルだな。完全に確立してしまってるわ、この人は。もうここであーだこーだ言うよりも「とにかく読んだほうがいいって」と、人に薦めたくなる。
 この『マリアビートル』に限らず、伊坂幸太郎の作品はとにかく間違いがない。そんな作家、他にはいない。
 
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妻の超然/絲山 秋子

2010-12-08 | 小説


 絲山秋子、久しぶりの新刊。
『超然』三部作、「妻の超然」「下戸の超然」「作家の超然」がおさめられた一冊。
 ……なんかもう、タイトルからして「グッ」ときてしまうことこのうえない。特に「下戸の超然」とか。だいたい、日常生活において「超然」なんて言葉、遣う場面なんてそうそうないでしょう。実際、このタイトルを見るまで「超然」なんて言葉忘れてたもん。そこにきてこのタイトル、それだけで凄まじい作家さんだなぁ、というかやっぱりあなどれない人間だなぁ、絲山……と思った。
 もちろん、タイトルだけではなく、その内容もかなり「超然」としていた。(そりゃそーだろ)
「超然」の意味を知るうえでもまったくもって辛辣かつ感慨深く味わえる。
 絲山秋子の本を読んだあと、いつも思うことなのだけれど、「ああ、本当にいいものを読んだなぁ」というのが、今作は絶大にまとわりついてきた。
「作家の超然」などは、自分は彼女のサイトでの日記などを読んでいて、その病状や経過などを知っていたのでぐいぐいと入ってきたし、「妻の超然」や「下戸の超然」での辛辣さ(というか「超然さ」)はひしひしと心を押してくる手ごたえを覚えた。

 とにもかくにも「超然」な一冊。ここらで「ぴしっ」と身を引き締めたい人は、読んでおくにこしたことはない。
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空の冒険/吉田 修一

2010-12-08 | 小説
 いくつかの短編とエッセイによって構成された一冊。
 本当に、この人は巧い小説を書くものだ、と改めて思い知らされた。まったくもって短編というにも短い、掌編の中に胸中を焦がす、というか、心の隙間をいじらしくさせられる話がいくつも連ねてあった。
 そして旅を中心にしたエッセイ。旅行記とはまた違う、作者の内面を何気なくこぼしたような旅エッセイはなんだか凄い作家さんが近しくなったような感じがして微笑ましかった。なにより、最後の自著『悪人』についての章などは非常に興味深くあった。
 だが、前半部にあまりにも良質な章編集があったがために、後半部のエッセイではいささか本音が出すぎているのか(いやまあ、そりゃエッセイなんだから本音を書くのだろうけど)一冊の本としてはまとまりが悪いような気もしたことは否めない。
 しばしばこの作家は「お洒落作家」の代名詞として取り沙汰されたりもするが、特に鼻持ちならない言葉や表現を遣ったりするわけではない。それでいて「なんだか洒落ている」と匂わせるのは、やっぱり作者本人が洒落ているからだろうか? とも思っていたが、エッセイを読むかぎりではそうでもなさそうだ。ただ、生きること、書くことに対して自分なりの余裕を持っている人なのだろうな、そういところから滲み出るものがあるのだろうな、そんなことを感じられたエッセイはよかった。
 それなので、好い意味で「ヘタクソなエッセイ」は身近に感じられるのである。
 もちろん、小説は一級品であることに間違いはない。
 さしでがましくもあるが、次作はエッセイはエッセイ、小説は小説、の一冊で出したほうが良いと思われる。
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整形前夜/穂村 弘

2010-10-15 | 小説
 詩歌人、穂村弘の自意識てんこ盛りエッセイ。ともすればやるせなくもなりそうだけれど、なんだか可笑しい。たぶんその可笑しさは、この人の自意識過剰っぷりに共感できてしまうからだろう。
「自分をコントロールできない」「世の中とチューニングが合わせられない」「常識からズレる」
 たぶん、そういうのって多くの人がうなずける、ふつうのことなのだろう。でもそのふつうにはなりたくない、っていうか認めたくない、自分は特別なんじゃないのか? そういう思春期的な思い込みというのが、さすがに歳を重ねていけば薄れてはくるのだけれど(それは経験であったり、諦念であったり)土台がもうそういう人っていうのは、やっぱり、いくら歳を経ても名残っているものだ。
 それでも自意識の高い人間というのは、周りもよく観察しているし、そこにきて自分自身の姿や内情をことごとく突き詰めるのだから、世間とのちょっとしたズレでもやっきになって探し当て「自分は特別」を無意識に保持しようとするのだろう。そういう人は、はっきりいってなんの問題もない。
 なんせ、性質の悪いのは、まったくもって世間とのズレなど気にせずに、世の中の基準を自分に置いている者だろう。

 身勝手な人よりも、自意識過剰な人のほうが断然好い。と、断言してしまう自分も身勝手であることに変わりはないので、世の中とはままならなくてやるせない、生き難い処であるなぁ……と目を瞑り、日々を誤魔化す。
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水曜日の神さま/角田 光代

2010-09-25 | 小説
 なんだか、『小説』カテゴリーは久しぶりだなあ……最近なかなか完読できなかったからなあ……、というわけで、もう長編小説は諦めてエッセイ集にしといた。これなら途中で返却期限がきても惜しみなく返せるから。
 そんなわけで角田光代さんの、主に「旅」に関するエッセイをまとめた一冊。
 今回初めて、角田女史の本を読んだ。角田さんといえば、キョンキョン主演の映画『空中庭園』くらいしか観てなくて、それで特に原作を読んでみようかな、なんてことも思わなかったので、あれだったんだけれど、なんでか「ふっ」とこの本のタイトルに引き寄せられるように手をとってしまった。
 パラパラとめくり、とある章を何気に読んでみた。それはまあ、旅行時におけるトイレの話(所謂シモネタだな)であったのがなんか運命的。
 これはちょっと面白いな……。そう思って借りてきた。それがどうだ。端から読んでいくとこれが実に、ひじょうに、面白い。この、旅行記のようなエッセイのような……とにかく、その経験や生き方もさることながら、文章的にもひじょうに軽妙且つ深遠で、「いやこれは、一度小説も読んでみなければな」と思わせるに充分たる充実内容だった。
 半分以上は「旅エッセイ」。残りは日常的かつ作家的エッセイで、かなり珠玉の一冊であることは間違いない。
 時折(それはエッセイ本でよくあることなのだが)、「ああー、この本は買ってもよかったなぁ」といった、何回も読み返したくなる本に出逢う。そういう一冊。
「じゃあ買えよ。買ってまた読めよ」
 と、言われるだろうが、まあなかなかそういうわけには……が、しかし、古本屋などで安価であったならば、買う。(実際、瀬尾まいこさんや川上弘美さんなんかの本は買ってる)
 
 と、そんな感じで、仕事および生活的にも一応余裕が見えてきたので、これから角田女史の本を読もうかなぁ、と思っている次第なのである。
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