好事家の世迷言。

調べたがり屋の生存報告。シティーハンターとADV全般の話題が主。※只今、家族の介護問題が発生中です。あしからず。

『尚も生きる。手を取りて』断章「精霊の決意」

2020-02-08 | ゲームブック二次創作
魔力の薄れゆく部屋で、わたしはまだ消えていませんでした。
ナオ――本名はライアンでも、わたしにはナオです――の体が
冷えていくのを、見過ごす事など出来ませんでした。

彼の心を探り、最初に思い当たった方法は、
彼と唇を触れ合わせ、わたしの力を注ぎ込むという物でした。
さっそく試して、けれど、この方法では意味がないと分かりました。
彼の絶望は、わたしとは関わりのない所から始まっていました。
獣に貶められた彼が、ザラダンから与えられた最初の食餌から、既に。
同族を食らい続けていたと知って正気でいるなど、
知性ある者には不可能でしょう。

足元の床が揺らぎ、おぼろげになってきました。
神々の力で編まれた方舟は、役目を終えて消えようとしていました。
もう全部用済みだと言われたような気がしました。方舟も、ナオも。
それで理解しました。私を駆り立てているこの感情は、怒りだと。

これが、彼に与えられた運命だというのでしょうか。
これでは、彼は使命を成すだけの人形ではありませんか。
このような、魂を抉られるような仕打ちをせずとも良いではありませんか。

私は願います。彼に今一度、唯の人としての生を。
もしも、彼のそそぐべき罪が、一人では足らないというならば、
わたしも罰を受けます。あらゆる対価を支払います。
彼と共に、永劫の時を添い遂げましょう。
もしここに、天よりの御使いがいるならば答えなさい。
冒険者たちを守るとされる、女神リーブラよ!

いよいよ消えていく景色に、わたしが最後に見たのは。
咲き誇る花一輪を背に、金色の天秤を持つ、確かにその御姿でした。

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