Everyone says I love you !

弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

コメで負け、自動車で負けた。TPPはメリットよりリスクとデメリットが大きすぎる。

2015年10月10日 | TPP参加反対

TPP交渉では日本が自国の利益を徹底的に守る交渉の当事者と言うより、アメリカの利益を図るための他国への説得役になってしまいました。



 まだ閣僚会議で大筋合意しただけで、TPP=環太平洋経済連携協定は協定書も出来上がっていないし、これから各国で批准しないと成立もしないことに注意なんですが!

 何度も書いているように、私はTPPの真の危険は、関税問題ではなく非関税障壁にあると思っています。

 たとえば、国民皆保険制度が、アメリカの保険会社にとって医療保険を売り込むうえでの非関税障壁として変質・解体されてしまったり危険性があります。

TPP参加でアメリカの医療保険会社が我が国の医療に乱入し、国民皆保険制度と日本人の健康が崩壊する

 

 また、日本の解雇規制など労働者保護法制が、これまたアメリカの人材派遣会社などが日本で活動するうえでの障壁とされてしまい、骨抜きにされるという問題です。

 もちろん、食品や医薬品などの安全規制や表示が、非関税障壁とされる可能性があります。

マスコミが伝えないTPPの問題点。貿易障壁だとして、安全基準も健康保険も主権も奪われるかもしれない。

 

 さらに、日本の主権が侵害され、政策がゆがめられる恐れもあります。

TPPの「毒まんじゅう」ISDS毒素条項で日本の脱原発を潰す方法

 

 ですから今日、関税の話を書くのは、日本政府が関税問題については比較的情報を小出しにしているから、マスコミの記事も流れているからです。

 なぜこうなるかというと、TPPには加盟国に秘密保持義務が4年間も課せられており、これから批准のための審議をするのに中身がよくわからないという異常事態になっているからなんです。

TPP協定案文書の開示閲覧方針は撤回 TPPの守秘義務は憲法の国勢調査権・知る権利の侵害で違憲だ

 しかも、安倍政権は秋の臨時国会を開かないと言っています。

 そもそも、自民党は2012年12月の安倍政権が成立した総選挙ではTPPに絶対反対と公約しました。

 ところが、選挙で勝つといきなりTPP交渉には参加すると言いだしましたが、それでも関税問題では歯止めをかけると約束していたのですが、その関税さえ歯止めがかからない状況では、非関税障壁についてはどれだけ譲歩しているかわからないという意味で記事にするものです。

よくもこれだけ盛大に嘘をついたものだ。

 

 

 さて、TPPで関税が撤廃され、輸入品の値段が下がることは消費者としての我々にとっては基本的にはありがたいメリットです(安全面は置くとして)。

 外食産業なども恩恵を受けますから、飲食をやっている私の友達なんかもそういう点は歓迎しています。

 しかし、これは同時に日本の農林水産業が破壊的なダメージを受けるということを意味しています。

 狭い国土でどうしても費用が掛かりがちな日本の農産物は、いくら付加価値があると言っても、価格競争ではアメリカやオーストラリアなどの産品にかないません。

 だからこそ国内産業を守るために、各国がそれぞれ輸入品に関税をかけて、一方では税収を得るだけでなく、真の目的としては自国産業を保護しているのです。

 

 それに、たとえば、農林水産業がダメになれば、肥料やエサを作っている企業、食料品を加工する企業や運搬する企業なども共倒れになることを忘れてはなりません。

 日本の国内総生産に占める第一次産業の比率が低いと言っても、ここがコケたら、次々と連鎖反応で日本の産業が大打撃を受けるのです。

日米がTPP交渉で合意する コメさえ守れない安倍政権は日本の食糧安保と健康と安全と労働者の生活を破壊する

 

 

 また、安倍政権はホルムズ海峡に機雷が埋められたら石油が輸入できなくなるので集団的自衛権を行使して自衛隊を派兵するのだ、などと説明しましたが、日本は食料の自給率がカロリーベースで40%を割っています。

 つまり、日本は6割以上の食糧を海外からの輸出に依存しています。

 島国である日本が中国などと戦闘状態になったら、周辺の海と空も危険な状態になり、食糧の輸入は非常に困難になります。そうしたときの場合を考えるのが食糧安保という考え方です。

 アメリカの戦争を応援する話ばかりしていますが、まず、自分たちが食べるものを確保しないでいて、日本の防衛などナンセンスだということを知るべきです。

アメリカの干ばつで穀物相場急騰 忍び寄る食糧危機の足音 TPP参加は日本の食糧安全保障を脅かす

世界の土壌の4分の1が劣化で食糧危機(国連) 日本の食糧安全保障を危険にさらすTPP参加は許されない

世界の人口が70億人を突破 食糧安全保障の1点だけでもTPP参加はやめるべきだ

20151010073316po@oop@.jpg

20151010073401uyiyiu4.jpg

日本のカロリーベースの穀物自給率も食料自給率もEU平均の数分の1にすぎない。戦争を繰り返してきたヨーロッパ諸国はそこまで考えている。それをさらに減らしてどうする!


 

 2013年に衆参両院は、コメや乳製品をはじめとする農産品5項目などの関税を維持するよう決議しています。農産品の5項目とはコメ、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖などの「甘味資源作物」で、政府はこれまで関税を撤廃したことがないのです。

 ところが、たとえば、現在38・5%の牛肉の関税は16年間で段階的に9%まで引き下げ、その後問題なければゼロにします。豚肉は1キロ482円の関税を10年かけ段階的に50円まで下げます。1キロ524円以上の高価格帯の肉は4・3%の関税を10年で撤廃します。

 関税が残ると言っても微々たるものですし、一部は衆参両院の議決に完全に違反していますね。ちなみに、鶏肉の関税も撤廃されます。

写真

 

 さらに、自民党が日本の農業にとって最も守るべきとしてきたコメについては、既存のWTO枠77万トンに加え、新たにアメリカから5万トン(13年目以降は7万トン)、オーストラリアから0.6万トン(13年目以降は0.84万トン)を関税ゼロで輸入することになりました。

 国内ではコメの一人当たりの消費量が1962年のピークから半減し、今では年57キロになってしまいました。その結果、日本ではコメの在庫が増え、米価は下落し、田んぼが荒れています。

 すでに日本の食糧安全保障は危機にさらされているのに、さらなる致命的な打撃を与えるのがTPPなのです。

写真

 

 TPPの最大のメリットの一つは、日本の輸出大企業が恩恵を受けるはずだということです。

 ところが、たとえば日本経済の牽引車とされる自動車産業についていうと、今回のTPPの大筋合意で、アメリカの輸入自動車にかけられている2・5%の関税を25年かけてゼロにするということになっているのです。

 1年に0・1%平均!

 そもそも、トヨタなど自動車会社はもう日本の企業と言うより多国籍企業ですし、現地生産にシフトを移していますから日本国内で生産した自動車がアメリカに輸出される量がそれほど増えるわけではありません。

 ですから、日本国内での雇用増大などのメリットは微々たるものです。

 TPP、リスクとデメリットがメリットを上回りすぎているのではありませんか?

それさえアメリカの自動車業界や労働組合が反対していて、逆に軽自動車をなくせと言われているのですから、アメリカは本当にタフネゴシエーター(強硬な交渉者)です。

 

 

日本もそれくらい頑張らんとアカンやろ。

それにしても、TPPのリスクやデメリットを伝える新聞記事が本当に少なくて困ります。

よろしかったら大変お手数とは存じますが、上下ともクリックしてくださると大変うれしいです!

人気ブログランキングへ人気ブログランキング

ブログランキング・にほんブログ村へほんブログ村

Amazon 社会・政治・法律

Amazon Kindle ベストセラー

Amazon タイムセール商品

 

 

銀の匙 Silver Spoon 1 (少年サンデーコミックス)
荒川弘 著
小学館

傑作酪農青春漫画、第1弾!

たぶん、TPPが成立したら、彼らの青春も終わる。

 

「岩盤規制」の大義: 医・食・農=国民生活を土台から壊す“規制緩和”とTPP (農文協ブックレット)
 
農山漁村文化協会

TPP批判本、最新刊。政府・財界の「岩盤規制」攻撃は、格差を広げ国民生活の安全を脅かす凶器のドリル!農協「改革」は、食と農と国民の距離を広げるTPP推進の一環。TPPで国産が食べられなくなってからでは手遅れの消費者の健康リスク。食べてはいけない!米国産牛肉、乳製品、遺伝子組換え食品などの恐ろしい実態。TPP推進と地方創生は両立しない!


TPPで暮らしはどうなる? (岩波ブックレット)
鈴木宣弘、色平哲郎ほか
岩波書店

日本の参加が現実的になってきたTPP(環太平洋経済連携協定)。多国籍企業の利潤確保を最優先するアメリカン・スタンダードが生活のすみずみにまで持ち込まれたとき、私たちの暮らしはどうなるのか。農業、医療、食の安全など、TPP参加による生活への影響を、第一線の研究者とジャーナリストが検証する。

 

TPP 黒い条約 (集英社新書)
中野剛志 著
集英社

衰退するアメリカ。そのアメリカ依存から抜けられない日本。この構図のなかで、いま、アメリカが日本を徹底的に搾取しようとしている。それがTPPの正体だ。TPPが日本の成長を助ける自由貿易協定だというのは真っ赤な嘘。99%のわれわれ国民に対して、1%のグローバル企業・超富裕層が仕掛けた罠なのだ。その内実を国民に知らせぬまま条約批准に向かって突き進む政府。黒い条約・TPP締結後の日本はどうなるのか?『TPP亡国論』の中野剛志とこの問題を早くから掘り下げてきた気鋭の論客たちが、TPP参加に最後の警鐘を鳴らす!

 

TPP秘密交渉の正体 (竹書房新書)
山田正彦(自民党元農相)
竹書房

TPP(環太平洋経済連携協定)とは何なのか。加盟国間の関税を撤廃し、自由貿易を促進するという通り一遍の説明の裏側で、グローバリズムは世界各地で深刻な状況を引き起こしている。
日本のみならず、米国の国会議員ですら内容を知ることができないまま、参加国は妥結に向かって不気味に邁進させられてきた。
今後、日本はどうなっていくのか。民主党政権時のTPP参加表明の舞台裏から最新の交渉状況まで、元農林水産大臣である著者が、世界各国の関係者と連携して暴く秘密交渉の正体。リークした知的財産権の章(抄訳)も収録!

 

 

日本のTPP交渉はコメで負け、自動車で負けた

安倍首相は自国民よりアメリカを重視?

「大筋合意」をした12カ国の交渉担当者(写真: © Handout . / Reuters)

日本を含む環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加した12カ国は10月5日、「交渉が『大筋合意』に達した」とする声明を発表。これを受けて6日午前10時、安倍晋三首相は会見で「かつてない規模の人口8億人、世界経済の4割近くを占める広大な経済圏。その中心に日本が参加する。TPPはまさに『国家百年の計』だ」と胸を張った。

ところが、そもそもTPP交渉に前向きに取り組んでいた民主党は、この合意に強い反対の声をあげている。いまだ多くの国民の間に”民主党アレルギー”があるものの、今回、彼らの主張は、筋の通ったものにみえる。歓迎論も多いが、大筋合意には問題が多いのだ。

「ウソつかない、TPP断固反対、ブレない」

10月8日に開かれた野党・民主党のTPPに関する関係部門合同会議。『大筋合意』の内容について、内閣官房TPP政府対策本部をはじめ関係省庁が説明に出向いた。

だが多くの議員はそれには全く納得していない。「安倍首相は自民党総裁として2012年の衆院選で『ウソつかない。TPP断固反対。ブレない』というスローガンを挙げ、参加に断固反対と言って戦った。なのに勝ったら3カ月後にはもう参加を表明。『聖域を確保する』と言い、その聖域とは国民の死活問題だとしながらも、結果的には農家を廃業に追い込んでいる」。

最初に手を挙げたのは黒岩宇洋衆院議員だ。自民党が2012年の衆院選で使用したポスターのコピーを掲げ、地元の養豚農家の窮状を訴えた。「アメリカのルールに従うというのなら、そのルール通りに協定書を早く出してくれ。条文の翻訳はいつ出してくれるのか」。

官僚たちにこのように注文を付けたのは篠原孝衆院議員。元農水官僚でTPP反対派の最右翼として知られている。

民主党は野田政権時にTPPに参加する方針を表明している。しかし、この度の「大筋合意」の内容に対しては、党内で反対の声が渦巻いている。7日の会見で枝野幸男幹事長は、「製造業でメリットがとれていないのに、農業で譲歩してしまった」と政府を厳しく批判した。

「今回の『大筋合意』なるものは、とうてい国益にかなっているとは思えない」民主党の玉木雄一郎衆院議員がこう述べている。衆院農水委員会理事を務める玉木氏は、10月1日にはアトランタに立ち寄り、会合の様子を観察してきた。「この時、日本の代表団はとてもヒマそうにしていた。すでに“闘い”を放棄しているように見えた。守るべきところを守らず、攻めるべきところは攻め切れていない」。

確かにその内容を見ると、「完全な敗北」といっていい。

たとえば日本の農業にとって最も守るべきとされるコメについては、既存のWTO枠77万トンに加え、新たにアメリカから5万トン(13年目以降は7万トン)、オーストラリアから0.6万トン(13年目以降は0.84万トン)を輸入することになっている。

「いまは日本の食用米が余っている。農家に1アールあたり10万5000円の補助金を出して、わざわざエサ米を作らせている状況だ。これ以上外国から食用米を輸入すれば、備蓄バランスが大きく崩れ、最終的にはコメを安価に大量放出しなくてはならず、その差額は税で埋めることになる。これではかつての食糧管理制度に逆戻りになってしまう」(玉木氏)

さらに豚肉の関税が実質ゼロになることで、養豚業者の経営が苦しくなり、廃業も増えると見込まれる。エサ米を一番消費するのは豚なので、そうなればエサ米も売れなくなる。日本の主食たる米に、「悪夢の循環」が生じることになるのだ。

自動車にとっても厳しい

また「日本の主要な産業である自動車にとっても、非常に厳しい状況になる」と玉木氏は述べる。

とりわけネックとなっているのは関税をゼロにする条件である「原産地規定」だ。自動車の場合は、どのくらいの部品を域内調達するかということを意味する。「日本の自動車の部品の多くは、コストの安い中国やタイ、インドネシアといったTPPの域外から調達しており、域内調達は40%くらいだろう。一方でNAFTAの域内調達割合は62.5%で、極めて高い。最終的に55%で合意したが、日本はかなりの部分をTPP域内に移さなければならなくなる。攻めるべきところで攻め込まれている」(玉木氏)

自動車産業のために、もっと強く日本の要望を主張するべきだった。

一方で、国益を守ろうと最後まで戦っていたのが、ニュージーランドやマレーシア、チリなどの国だという。

「ニュージーランドは乳製品と医薬品で、チリは医薬品部門で大国のアメリカ相手に最後まで粘っていた」(玉木氏)

とりわけバイオ医薬品の保存データ期間を5年以下にすることを主張していたチリは、日本政府代表の甘利明経済財政担当大臣が「大筋合意の発表は整った」と楽観視して記者団に発表した後でも、粘りに粘っていた。ペルーも同じだ。そして12年の期間を主張したアメリカから、8年の期間を勝ちとっている。

「このように、小国が頑張っていた。私はこのTPPの交渉の最後は、アメリカと日本の対決にしてほしかった。なのに、甘利大臣はまるで議事進行係のようで、闘う当事者にはとうてい見えなかった」(玉木氏)

確かに甘利大臣は「大筋合意」を急ぐあまり、乳製品を巡って対立していたニュージーランドとアメリカに話し合うように「強い申し入れ」をしていたのだ。

果たして「大筋合意」はどのようなメリットを日本国民にもたらすのか。民主党政権時の試算によれば、10年間に3.2兆円という数字が出ている。しかしその前提が大きく変わった以上、もう一度計算をやり直すべきではないか。

自国民よりアメリカを重視?

「大筋合意」の衝撃は、日本の農政の構造にも大きな変化を与えそうだ。

10月6日付けの日本農業新聞の1面トップに、「『聖域』大開放」の大きな見出しが躍った。農村に地盤を持ち、来年改選を迎える自民党の参院議員からは、「これでは選挙は戦えない」との悲鳴が聞こえている。

「大筋合意」に関しては、野党は秋の臨時国会での審議を求めているが、これには与党は消極的で、11月9日から11日までの閉会中審査のみを提案している。これはゆゆしき国会軽視、日本国民軽視だと玉木氏は主張する。

「こんな重大な案件が、衆参でたった3日間の審議なんて信じられない。そもそもまだ条文すら出されていないし、内容についてもきちんとした説明がない。また安倍首相は4月に訪米した際、連邦議会上下両院で演説したが、この時にTPPをなしとげることを表明している。これはあの安保法制と全く同じ構図だ。安倍首相は自国民よりアメリカを重視しているのか」

 

 

 環太平洋連携協定(TPP)により、日本が関税をかけている九千十八品目のうち、約95%の関税が撤廃されることが分かった。二〇一三年に衆参両院は、コメや乳製品をはじめとする農産品五項目などの関税を維持するよう決議。これを守れば撤廃される品目の割合は93・5%にとどまる計算だった。しかし交渉の結果、コメの加工品の一部やクリームチーズ類などの撤廃が決まり、関税をなくす品目が増えた。 (吉田通夫、宮尾幹成)

 安倍晋三首相はTPPの大筋合意を受けた六日の記者会見で「自民党が掲げた国民との約束は守ることができた。(農産品の五項目で)ギリギリの交渉を続けた結果、関税撤廃の例外を設けることができた」と話したが、関税が撤廃される品目は約95%に達し、「一三年の決議に明確に違反している」(民主党議員)との指摘も出ている。

 農産品の五項目とはコメ、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖などの「甘味資源作物」で、政府はこれまで関税を撤廃したことがない。このうちコメは米粉やもちなど加工品を含めれば、五十八品目に分かれる。牛・豚肉もソーセージなどを含めると百品目に上り、五項目での合計は五百八十六品目に。これらの品目の関税が維持されれば、撤廃される品目は93・5%にとどまる計算だった。

 また鶏肉やマグロ、サバなどの水産物、豆類など二百四十八品目の関税も撤廃されたことがなく、国会が決議した五項目などの「など」に、これらを含めて関税維持を主張する関係者もいた。この場合「五項目など」は計八百三十四品目となり、撤廃される品目の割合はさらに低下。90・7%にとどまる。

 しかし実際のTPP交渉ではコメの中でも、ビーフンと健康食品の材料になる「胚芽(はいが)」は「輸入実績が少ない」として関税を撤廃。鶏肉やマグロ類など一部の水産物も撤廃が決まった。

 衆参両院の農林水産委員会は、農産品の関税撤廃で安価な輸入食品が増え、国内の農業が後退することを懸念。一三年四月、農産品五項目などの関税について「関税の交渉から除外または再協議の対象とすること」と決議した。

 六日の会見で安倍首相は「TPPに入ると、農業を続けていけなくなると不安を感じている方々がたくさんいる」と説明。全閣僚をメンバーとするTPP対策本部を設置し、市場開放で影響を受ける農業対策を取りまとめると表明したが、関税が撤廃された品目の増加に不安を感じる農家もいる。

 

 環太平洋連携協定(TPP)交渉が大筋合意し、日本国内でも消費者や企業、農業者などさまざまな活動に影響が出てくる。どのような交渉内容がまとまったのか。ポイントを解説する。

写真
 

◆コメ 海外産が1割増加

 日本は外国産のコメをウルグアイ・ラウンドで義務付けられたミニマムアクセス(最低輸入量)に従い、年七十七万トンを無関税で輸入する。TPPではこれに加え、米国と豪州からの無関税の輸入枠を新設する。輸入枠は発効から三年間は米国五万トン、豪州六千トンとし段階的に拡大。十三年目以降は米国七万トンと豪州八千四百トンとする。

 両国からコメの市場開放を迫られる中、日本は778%の高い関税を維持することになった。だが、新たな輸入枠で海外産のコメが約一割増える。国内ではコメの一人当たりの消費量が一九六二年のピークから半減。年五十七キロになった。コメの在庫が増え、米価は下落している。

 こうした中、輸入米の増加が国内のコメ農家に打撃を与えないよう、政府は新たな輸入枠で国内に入るコメと同量の国産米を備蓄米として買い入れ、価格への影響を抑えることを検討している。

写真
 

◆牛・豚肉 値下げは限定的か

 日本が牛肉と豚肉にかける関税は大幅に引き下げられる。引き下げで外国産との価格競争が激しくなり、畜産農家の経営が悪化する懸念があるため、政府は輸入量が急増した際に、高い関税に戻す「セーフガード」を設定した。

 現在38・5%の牛肉の関税はTPPの発効時に27・5%に下げ、十六年間で段階的に9%まで引き下げる。小売価格や飲食店のメニューの値下がりが期待されるが、牛丼チェーン、すき家を運営する「すき家本部」の興津(おきつ)龍太郎社長は、今後の牛丼価格について「人件費などさまざまな要素がある」と言及を避けた。

 豚肉は一キロ四百八十二円の関税を十年かけ段階的に五十円まで下げる。一キロ五百二十四円以上の高価格帯の肉は4・3%の関税を十年で撤廃。豚肉の大半は一キロ五百二十四円の単価で輸入されており、関税撤廃でも輸入単価は二十二円しか下がらない計算。恩恵はあるが、消費者への影響は限定的となる可能性もある。

写真
 

◆乳製品 バター不足解消も

 新たにバターと脱脂粉乳に低関税の輸入枠を設ける。一年目に計六万トン、段階的に拡大し六年目に七万トンに増やす。これによりニュージーランドなどからの輸入が増え、バター不足がある程度、解消される可能性がある。

 現在はバターと脱脂粉乳を生乳換算で年一三・七万トン輸入。しかし国内の生乳生産が減る中、バター不足は慢性化し、今年は一五・六万トンを追加輸入した。

 チーズは日本人の消費が多い種類は国内の生産者を守るために関税を維持。「モッツァレラ」や「カマンベール」などは29・8%、プロセスチーズは40%の関税を残す。一方、脂肪分45%未満のクリームチーズは十六年で関税を撤廃。ブルーチーズは29・8%の関税率を十一年目までに半分にする。

写真
 

◆著作権の非親告罪 創作活動萎縮を懸念

 著作権侵害があった場合、原作者らの告訴がなくても、著作権を侵害した人を刑事裁判の被告にできるようにする「非親告罪」が導入されることになった。

 日本では「親告罪」が採用されており、著作権違反を罰するには被害者の告訴が必要。これまで悪質な場合を除き原作者がアニメのパロディーなどの二次創作を黙認するケースもあり、これが日本のサブカルチャーを育てた側面もある。

 だがTPP交渉参加国のうち親告罪を採用しているのは日本とベトナムだけ。ディズニーなど著名キャラクターで使用権許諾料を稼ぐ米国など、大半の国が模倣を摘発しやすい非親告罪を求め導入が決まった。

 日本などへの配慮として、著作物の収益に大きな影響を与えない場合は、非親告罪は適用しないとする例外措置も盛り込まれた。だが例外の線引きがはっきりせず、日本国内の創作活動が萎縮する懸念がある。

写真
 

◆自動車 部品関税 大半を撤廃

 日本がTPPに加盟する狙いの一つは、自動車や自動車部品にかかる関税を加盟国に撤廃させ、輸出を増やすことにある。

 日本から米国への自動車部品の輸出にかかる関税(主に2・5%)は八割以上の品目で、協定発効時に即時撤廃する。カナダが日本の完成車にかける6・1%の関税も五年目になくし、ベトナム向けの大型乗用車にかかる最高70%弱の高関税も十年目に撤廃する。だが、米国向けの完成車にかかる2・5%の関税は協定発効しても長期間維持され、完全撤廃には二十五年がかかる。

 TPP域内でつくられた部品をどの程度使用すれば、完成車が関税優遇の対象になるかを定める「原産地規則」は「45%以上」とした。日本メーカーはタイなどTPPに加盟しない国からの部品調達が多いが、米国やメキシコなどが求めていた「60%以上」からは引き下げられた。

 

よろしかったら大変お手数とは存じますが、上下ともクリックしてくださると大変うれしいです!

人気ブログランキングへ人気ブログランキング

ブログランキング・にほんブログ村へほんブログ村

Amazon 社会・政治・法律

Amazon Kindle ベストセラー

Amazon タイムセール商品


コメント (7)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 正直者の中谷防衛相が安保法... | トップ | NNNドキュメント'15『南... »
最新の画像もっと見る

7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
TPPと関係ないけど...南京事件の証言 ( NNNドキュメント ) (バードストライク)
2015-10-10 22:41:57
せっかくTPPの話を書いてくださったのに、勝手な書き込みをしてごめんなさい。この場をお借りします。あす、BS日テレで、NNNドキュメントの再放送があります。東京なら、午前11時。下記のような内容です。

http://lite-ra.com/2015/10/post-1564.html

4日深夜放送の『NNNドキュメント』(日本テレビ系)が、自民党が「否定」する「南京事件」を検証したのだ。その内容は、元日本軍兵士の証言や当時の日記といった“一次資料”を取りあげ、さらに矛盾や不自然な点がないか、番組取材班が徹底的に裏取りを試みるというものだった。


「健康になるためのブログ」さんによると、ドキュメンタリーのせいもあり、気の重くなる番組だったが、日テレ系でここまで作れることに驚いたそう。必見かと思い、録画しました。でも、見るのちょっとイヤかも w 。皆様も、よかったら是非。レイサマ、失礼しました。
返信する
TPP大筋合意は、合意ではない (バードストライク)
2015-10-10 23:05:42
【識者の提言】「TPP合意シタシタ詐欺」に騙されるな!さらに今日(10/9)ウィキリークスから「知的財産」分野の最終版テキストがリーク!

堤未果氏によると、これからTPP合意した、との前提で、国内法をガンガン変えて行くつもりだろう、と。注意が必要とのことです。
ー健康になるためのブログ よりー

注意ったって、みんなが寝てるんだよー(涙)
テレビでインタビューされたお百姓さん曰く、どのくらい補助金くれんの?
この人、もうトシだし、息子も孫も勤め人で跡を継がないし、自家分だけ作れば、あと補助金貰えばよかよかと思ってる。JAは万歳会長がやめた後、TPP許容派が勝ったような話だし、医師会も最近は賛成に回っているのでは? もち、国際弁護士の八代センセイも当然、勝機!とワクワクしてるんでしょうね。かんじわるいな。
返信する
Unknown (とら猫イーチ)
2015-10-10 23:45:12
 輸入産品の関税が撤廃されるので、輸入品が安くなる、と言っても、現在は、円安なので、輸入インフレになっています。 

 ただし、原油価格が低下しているので、消費者物価上昇が大になっていないだけです。 

 日銀の金融緩和で、米国からは、円安誘導の為替操作疑惑を受けていますし、国民は、輸入インフレで生活が苦しくなる始末です。 

 流石に、現政権も国民の生活苦に眼を塞ぐ訳にはいかないので、現状を見て何等かの緩和策をとる検討をするかも知れませんが、大した政策を実施する訳も無く、輸入価格の低下は、見込めないでしょう。

 従って、TPPのマイナス面と経済・財政の政策失敗とを併せた負の負担を国民が負うことになるでしょう。

 その上に、最悪の場合(必ずそれは来ます)には、財政破綻の危機が来るので、国民の死活問題に至ることも有り得ます。

 マイナンバー制度は、その折に、ぜひとも必要になるのです。 詰まり、預金封鎖や、国民資産の把握に。

 ギリシャのように、一定額以上は預金封鎖し、一定額以上の金融資産に資産税を課税するのです。

 一方では、金融緩和を強化し、強制的にインフレにして、数十倍程度の物価上昇にすれば国債の償還も可能でしょう。 

 詰まり、国民からその資産を全て取り上げるのです。 
 お手本は、戦後にした事例を観れば良いので簡単です。 それで、年金生活者の大量死も見込めるし、政府にしてみれば、一挙両得でしょう。 

 悪い冗談だって? 行政庁内では、真剣に考えていますよ。 
返信する
どうして、内閣改造したのに (時々拝見)
2015-10-11 10:05:13
売国担当大臣をつくらなかったんでしょう?
 アベ政権の軍痴ぶり、酷いものです。安倍保身法の前に、食糧自給を寸毫くらいは考えるべきでしょう。
 せめて、(輸入)農産物には、使用した農薬をきちんと表示すべきと思います。
 自動車で負けたので「政治献金するんじゃなかった」と自覚する自動車会社が増えれば、と期待します。大阪発動機の地元、軽自動車への打撃、知ってるんでしょうか?
 
 日本をとりもどす、は嘘じゃないと思います。日本国民からとりもどして、私物化する、にせよ、アメリカに献上するにせよ。
返信する
得たものもある (アジア)
2015-10-11 19:33:05
少なくとも中韓よりdamageはない
返信する
譲歩どころか (リベラ・メ)
2015-10-11 20:16:26
譲歩!?譲歩する程強気な態度で交渉なんかしなかったでしょう!?聖域なんて言ってる割には…。“嘘を吐く。TPP大賛成。ブレる。日本を差し出す。自民党”
返信する
一億なんとか大臣 (時々拝見)
2015-10-17 16:53:07
 国民総動員死ぬまで働け大臣の方がわかり易いと思います。ワタミ氏の方が適任でしょうが。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

TPP参加反対」カテゴリの最新記事