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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

二重ローン問題解決最大の障害は三井住友 東電賠償スキームはメガバンク救済より送電・発電分割で資産売却

2011年05月19日 | 東日本大震災の真の復興

 

被災者と被災地の復興のために、二重ローン問題の解決は最も重要な要素の一つです。まだローンの残っている、家、工場、船、車を震災と津波で失ってしまい、ローンだけが残っている被災者の方々、被災地の企業が、再び立ち上がるためには、もともとのローンが重い足かせになると言うことです(記事1)。

日弁連は早くから取り組んでいますし、阪神大震災でこの問題を解決できないままだったと臍をかんだという兵庫県弁護士会の面々も獅子奮迅の活躍をしています。

 

やっとこの問題の深刻さが浸透してきて、いい流れになってきたのですが(記事2、記事3)、足を引っ張るのは東京電力の主力銀行である三井住友銀行をはじめとする、メガバンクである気がしてきました。

だって、金融機関が被災者・被災企業に対して有している債権を公的機関に買い取ってもらうことを一方で提案しながら(記事3)、他方で、東京電力に対する債権は放棄しないって(記事4)、それじゃあ、単なるいいとこ取りで、世論の支持を得られるわけないじゃないですか。何をとち狂ったことを言っているのか。これは、枝野さんが正しい(記事5)。


 


 

もともと、政府・閣僚会議の出した賠償の仕組みが問題でした。

JALの場合は会社更生法で処理されたので、株式は100%減資され、長期債務と社債は90%近くカットされ、産業再生機構が約9000億円の国費を投入しました。


冒頭の図と共に毎日新聞

 

破綻処理を東電でやってもいいと思いますよ、私は。ただ、後述のように東電ならもっといい手があると思います。

東電の債務は、銀行借入が約4兆円、社債発行残高は約5兆円。大株主は3.4%保有の第一生命保険を筆頭に日本生命保険、東京都、三井住友銀行、みずほコーポレート銀行など。奥全国銀行協会会長が会長を務める三井住友FG傘下の三井住友銀行は9000億円くらい貸していて東電のメーン行です。

破綻処理をやられたら、銀行は債権回収できないわ、国費は投入しないといけないわということで、財務省と大銀行が徹底抗戦して閣僚会議の案ができてしまったというわけでしょう。だから、東電を破綻処理しないという結論が先にありきなんですね。東電を丸ごと救済して株主を守る。三井住友などメガバンクは大株主でもある。自分たちの都合ばかりです。

今の政府の案では、原子力賠償機構が東電に賠償金を貸すのですが、返済義務を負う東電の資金繰りが行き詰まったら電気代に転嫁する、しかし、東電だけで転嫁すると大幅な値上げになるので、他の電力会社にも賠償機構のお金を負担させようというわけです。全国で電気代が上がり、結局、国民の負担が増える。

こんな案が通りそうで三井住友が安心してたら、枝野さんが債権放棄と言い出したので、最大の会社債権者として三井住友が慌てて抗議し、三菱東京UFJなども同調しているといったところ。


 


 

なんで国民が東電の賠償金を払ってやらないといけないの?国民の負担を考えるのは最後でしょ?東京電力の実質的所有者は株主です。株式会社が不始末をしでかしたつけは株主がまず払うべきで、株主には泣いてもらうべきでしょう。

また、東電となんの関係もない一般国民に比べれば、お金を貸した銀行がリスクを負うのは当然で、債権放棄もしてもらわなければならない。税金や電気代への転嫁は、最後であるのが当たり前です。

三井住友やメガバンクが、大株主として、また、会社債権者として、自腹を切るべきなのは当たり前です。菅首相は財務大臣の時代に財務省に取り込まれたともっぱらの噂ですが(消費税とかね)、こんなおかしな銀行救済策のような東電の賠償スキームは許されません。

 

 

じゃあ、どうするかといえば、東電の送電と発電部門を会社分割して、どっちか売ればいいのです。ごっつい資産ですよ、どっちにしても。一般に賠償義務を負う加害者=債務者が自分の財産を換金して何とかそれで損害賠償金を払おうとするのは当たり前でしょう。それで株の価値が下がるのは株主が甘受すべきです。

東電はもう実質的には破綻している気もします。東電に賠償義務を果たす意志も能力もないのなら、産業再生機構にやはり登場してもらいましょう。メガバンクはそれでいいのでしょうか。

いずれにしても、上場廃止→減資で、株主責任はとってもらう。

 

この方法には素晴らしい副産物もあります。

これまで東電はじめ電力会社は発電の新規参入を徹底的に邪魔してきました。ですから、たとえば、発電部門を売るなら、東京電力は東京送電力株式会社になって、発電部門は売りそれを賠償に当て、同時に、日本の発電事業にはガス、太陽光、いずれは地熱などなどの企業の発電参入を促したらいいのです。

一石二鳥です。

それが資本主義。市場経済というものでしよう。発電という市場が開拓・開放されれば、日本の経済は活性化しますよ!

東電の資産を売って、それでも足りない部分は国民ではなく、会社債権者たる銀行が泣くべきでしょう。3月に東電救済のためメガバンクが2兆円くらい貸さなきゃいけなくて、それも泣けというのは気の毒ですけどね。しかし、新築の家を津波で失い35年ローンだけ残った被災者よりマシでしょう。東京送電力株式会社がたちゆくのに必要であれば債権放棄はしてもらいます。それができないのなら破綻処理でもっと泣くことにしてもらいましょう。


 

だって、被災者はこんなに苦渋を強いられているの!


 


 

みなさん、日本国民は、消費税アップだの復興税導入だの、ほんとに受け入れるつもりなんですか。被災者を助けるために消費税アップやむなしって、財務省の思うつぼじゃないですか。

江戸時代の農民じゃないんですから、いつまで我慢するつもりなんでしょうか。少なくとも、東電と銀行救済のためにすぐに電気代アップや税金投入するのは断固拒否すべきです。節電は全国民で協力して電力融通目指しますが、なんで、東電やメガバンク救済のために、九州の人まで電気代アップを我慢しなきゃいけないか!

 子ども達のために、もっと、強くなりましょう!


 


 

 

 

追伸

今、このような日刊ゲンダイの記事を発見。

東電がJALにならない奇々怪々

そこに書いてある、産業再生機構で活躍した現役の経産官僚、古賀茂明氏が提言した「東京電力の処理策」をグーグルで検索したら、すごい長文の論文を発見。

現職経産官僚が緊急提言古賀茂明「東電破綻処理と日本の電力産業の再生のシナリオ」

まだ読んでいないんですが、日刊ゲンダイの紹介だと、たぶん、僕と同じような意見みたいです。なんか、自信ついちゃったなあ(爆)

古賀氏のプランは、会社更生法や民事再生法に近い形を取り、東電の資産売却を進め、株主責任、金融機関の貸し手責任も厳格に求めるものだ。このスキームであれば、国民負担は5兆円近く減るという。
 処理スキームは2段階。まず特別立法で「東電経営監視委員会」のような独立組織を設立する。ここが管財人の役割を果たし、東電の資産査定や賠償額確定作業と並行して株式の100%減資、銀行の債権放棄を実施する。最終的には東電を発電会社と送電会社に分割し、発電に関する資産は順次売却する。送電会社は再上場を目指す。この案を採用すれば、発電送電分離が実現し、競争原理が働き、電気代は下がっていくし、東電は発電資産の売却で巨額資金を得られて、人員整理などのリストラも進められる。国民負担なしで、賠償資金を得られるのである。」

経産省でも東電に厳しいこと言える人もいるんですね。経産省だから金融機関に厳しいことが書けると言うべきか!?

また読んで記事を書きますが、長い(官僚は緻密だねえ 笑)ので、時間かかりそうです。

しばらくお待ちを・・・というか、自分で読んでよ(笑)

 

 

 

よろしくお願いいたします

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記事1

 

 

 

 

2011年5月19日 東京新聞

相次ぐ相談電話に丁寧に答える弁護士ら=仙台弁護士会で

写真

 

 東日本大震災の被災地で、弁護士らが被災者の法律相談にフル回転で対応している。生活の立て直しに向けたさまざまな相談の中で特に深刻なのが、住宅ローン返済中に津波で家を失った人が別のローンを背負う「二重ローン」の問題。現地の法律相談状況を追った。 (白井康彦) 

 辛うじて命が助かった若手弁護士が被災者の相談に心血を注いでいる-。四月二十九日から五月一日まで、宮城県内の避難所十三カ所を回り、被災者の相談に乗った愛知県弁護士会所属の弁護士十人は厳しい状況を痛いほど感じ取った。 

 初日、現地で十人の案内役を務めたのは、石巻市に事務所がある前田拓馬弁護士(31)。「津波の水がどんどん高くなった。最上階の五階に上ったが、腰まで水に漬かった」。三月十一日、同市に隣接する同県女川町のビルで講演を終えた後しばらくして、地震に遭った。精神面を含め、大きなダメージを受けながら、同月下旬から被災者の悩みに向かい合っている。 

 岩手、宮城、福島三県の弁護士会は震災後、電話相談や被災地での面接相談を無料で実施している。相談内容は、賃貸借の関係や相続、行政手続きなどさまざま。件数は、仙台弁護士会だけでも五月十二日までで電話相談が四千八百二十七件、面談相談が三千五百四十六件に上る。 

 日本弁護士連合会が応援を要請。四月二十九日から三日間、全国各地の約三百人の弁護士が被災地を訪れた。愛知県弁護士会チームを引率した同会副会長の萱垣建弁護士は「じっくり法律相談できるほど、被災者は落ち着いていない。相談はむしろこれから増えるのではないか」と話す。 

       

 法律相談に応じている弁護士らが「制度変更が必要だ」と訴えているのが二重ローンだ。 

 住宅ローンを返済中に地震で家を失った人が家を建てようとすると、さらに住宅ローンを借りなければならない。被災者生活再建支援制度から出る最大三百万円の住宅資金だけではとても足らない。 

 ある弁護士は「以前のローンの残高が二千五百万円以上の人もいた。それを毎月十万円ほど返した上で、新しいローンの返済額も毎月同じぐらいになるだろう。こんな生活が二十年以上も続く人がたくさん出てくる」と話す。

 「津波で流された家のことを思い出しながら、二重に返済を続けていくのは無理」「大学生の息子への仕送りは諦める」「家族が多い。ローンで買った車二台はいずれも津波で流された。二台買い直すと、家と合わせて六重ローンだ」。被災した相談者からは、嘆きの声が聞かれる。

 ローン返済中の家を失った上に、失業などに見舞われた人も少なくない。弁護士らは「『頑張れ』と励ましたくても、頑張りようがない人にはそれもできない」と口をそろえる。

 企業や個人事業主でも、事業再建のために二重ローンを抱える事例が続出することは確実だ。日弁連は、二重ローンを抱えざるを得ない個人や企業について、金融機関側が既存のローンの債権を放棄する制度の創設を提言。政府も、二重ローンの負担を軽くする仕組みの検討を始めた。

 しかし、実現までの壁は厚い。債権を放棄する側の負担を最終的にだれが引き受けるのか。財政難の国が大きな負担割合を背負えるのか。これまでの自然災害でも、二重ローンを抱えた個人や企業の既存債務を帳消しにする制度が実施されたことはなく、今回だけ制度を導入すると、公平性の問題も生じる。

 一九九五年の阪神大震災後も、二重ローン問題が国会などで盛んに議論されたものの、結局、既存債務は減免されなかった。被災者の声を聴く弁護士からも「平成の徳政令によって、債権債務の放棄を実現するのは相当な難事かもしれない」との声が聞かれる。

 

 

記事2

“二重ローン 救済検討急ぐ”

“二重ローン 救済検討急ぐ”

5月19日22時4分 

枝野官房長官は、衆議院本会議で、東日本大震災の被災者が家の建て直しなどのために新たな借金を抱える「二重ローン」の問題への対応について、政府として救済策の検討を急ぐ考えを示しました。

東日本大震災では、住宅などを失った被災者が返済中のローンに加えて、家の建て直しなどのための新たな借金を抱える「二重ローン」が問題となっており、過去の債務を免除する制度を設けるべきだといった意見も出ています。これについて、枝野官房長官は、衆議院本会議で「この問題については、菅総理大臣が関係閣僚に検討を指示しており、救済に向けてさらに努力したい」と述べ、政府として救済策の検討を急ぐ考えを示しました。そのうえで、枝野長官は「債権放棄も含めて被災者への貸し付け条件を変更することや、出資という形で再建資金を融通することができないかなど、今、知恵を出し合っている。ただ、どういう要件で認めるのかなど、さまざまな困難な問題もある」と述べました。

 


 
記事3

 全国銀行協会は19日、東日本大震災で自宅や工場の生産設備などを失った被災者・中小企業の「二重ローン」問題の解決に向けて、民主党に要望書を提出した。被災者らが抱える債務や土地を国が買い取ることが柱で、政府支援の拡充を求めたのが特徴だ。買い取りによる支援を拡大すれば国の財政負担が膨らむうえ、被災者間の公平性確保も課題となるため、政府・与党内の調整は難航しそうだ。【谷川貴史、田所柳子】

 ◇被災土地買い取り要望

 「金融機関と債務者だけで片づく問題ではない。国が積極的に関与し、金融機関、債務者、国がそれぞれリスクを分担することが必要だ」。全銀協の奥正之会長は同日の会見でこう語り、政府支援の必要性を強調した。

 震災で自宅などを失ったのに債務だけが残り、住宅の建て替えなどで新たな債務まで抱える二重ローン問題では、被災者らの返済負担をいかに軽減するかが課題だ。全銀協は、銀行側も元本返済の猶予や金利減免に応じるべきだとの考えを提示した上で、国の支援を求めた。

 具体的には、国に対し、被災前の評価額を参考にした「適切な価格」での土地や設備を買い上げを求めた。震災や津波の被害で、ローンの担保となっていた土地や生産設備の価値は、大幅に低下している恐れがあるためだ。また、民間金融機関による支援だけでは再建が困難な中小企業に対しても、公的機関が債務を「適切な価格」で買い取ることも求め、被災者の債務負担を軽減するよう要請した。

 さらに公的機関が融資返済の際の利子を負担することや、融資に対する信用保証制度などの拡充も提案。債権放棄などを極力回避し、震災に伴う銀行の損失をできるだけ抑えたいとの思惑もある。

 ただ、政府支援策を大幅に拡充すれば、国が事実上、債務を肩代わりすることになる。阪神大震災など過去の大災害時でもローンの買い取りなどの例はない。このため、政府内では「利子だけでなく、事実上、元本の減免まで踏み込めば(借金を棒引きにする)『徳政令』になってしまう」(財務省幹部)として、反対の声もある。

 「支援の拡充」と、被災者間の「公平性確保」をいかに両立するかも課題だ。自宅などを失った被災者の中には、保険料を負担して地震保険をかけていたケースや、すでに震災前にローンを完済したり、自己資金だけで建設費などをまかなっていたケースもあるためだ。ローンのある人だけを救済すれば、不公平感が生じる。

 菅直人首相は今月1日の参院予算委員会で「ローンを積み増す形ではない救済措置を検討したい」と述べ、抜本的な救済に乗り出す考えを表明。政府内では被害を受けた土地を国や地元自治体が買い取る案や、被災者に価格の安い公営住宅を提供する案などが浮上しているが、国の負担の在り方などを巡って異論も出ている。

毎日新聞 2011年5月19日 21時46分(最終更新 5月19日 21時56分)

 

記事4

2011年 05月 19日 21:40 JST ロイター

 

 5月19日、全国銀行協会の奥正之会長は、東電賠償スキームについて、東電の株主や社債権者、金融債権保有者は損失を負担しないと理解していると発言。写真は都内で行われたインタビューで。2007年4月撮影(2011年 ロイター/Michael Caronna)

 [東京 19日 ロイター] 全国銀行協会の奥正之会長(三井住友フィナンシャルグループ会長)は19日の定例会見で、東京電力の原発事故の賠償スキームについて、東京電力の株主や社債権者、金融債権保有者は損失負担からは免れると理解していると語った。

 奥会長は「原子力損害賠償法に基づいて賠償されるので、国と原子力事業者の両者で分担するべき。その他の社債権者や株主、金融債権保有者、納入業者などは負担しないと理解している」と述べた。同スキームを具体化するに当たっては「被害者の救済と電力の安定供給、金融市場の安定化を守れるようにしてほしい」と要望した。

 枝野幸男官房長官らの発言に対しては「債権放棄の話が出てくるのはどうしてかなと思う」と疑問を呈した。主力取引銀行の三井住友銀行としては、東電向け貸出金の債権放棄や金利減免などは考えていないとの見解を示した。 

 三井住友銀行は3月末に東電に対して6000億円を緊急融資したほか、これとは別に3000億円程度の貸出金があるとみられる。

  (ロイターニュース 布施太郎)

 

記事5

枝野氏「東電は普通の企業と違う」 金融機関の支援要請

2011年5月19日19時17分

 枝野幸男官房長官は19日の記者会見で、東京電力の取引先金融機関に債権放棄などを促した自身の発言が批判を浴びていることについて、「公的な目的のために国として一定の支援を行う限り、(東電は)普通の民間企業とは違う」と強く反論した。

 枝野氏はさらに「国民的な理解が得られなければ、国として東電を支援できない」と強調。金融機関が自発的に支援に踏み切るよう重ねて求めた。

 また、電力会社の発電と送電部門を分ける「発送電分離」を菅直人首相が検討する意向を示したことについては「事故原因の検証後、外国の例も踏まえながら議論を進める」と述べた。

 

 


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