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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

福島原発事故 賠償基準公表 東電賠償資金は賠償支援機構頼み→全国民の電気代値上げ、税金負担

2011年08月30日 | 福島原発事故


下の記事にあるように、東電が原発事故の賠償基準を発表しましたが、のちのち法的処理、たとえば裁判になればこんなものはいくらでも変更を求めていくことが出来ますから、被災者の皆さんは一喜一憂しないでください。

むしろ、被害者の方々を早期救済するために、この枠組みでいいのかどうかこの時点で頭をひねるべきは我々法律家です。


それよりも、ここでもう一度訴えたいのは、これらの莫大な損害賠償金をどこから東電は持ってくるのかと言うことです。

東電の8月30日までの仮払い総額は1120億円と、原子力損害賠償法が定める政府負担分上限1200億円(1発電所当たり)に迫っています。また、燃料費の増加分は今年度だけで7000億円で、東電は早くも電気料金10%の値上げを求めています。

このまま原発停止が長期化すれば燃料費の増加分は来年度以降は年1兆円規模に膨らむ計算です。

ところが東電の手元資金は6月末に1・7兆円と、3カ月で5300億円減りました。4~6月期連結決算は過去最悪の5717億円の最終赤字に陥り、このままでは今年後半には資金繰りが苦しくなるでしょう。

そう、もう、東京電力は会社としてはすでに破綻しているのです。


2011年8月13日、「原子力損害賠償支援機構法案」が成立しました。

この法律は、「被害者への迅速・適切な賠償」「原発の状態の安定化と事故処理に関する悪影響回避」「電力の安定供給」を目的としたものとされています。

しかし、その内容は、東京電力及びその関係者という特定利害関係人の負担軽減を優先して、何ら事故に責任のなかった、他の電力会社利用者や納税者に先に負担を強要するものでしかありません。

原発賠償事故支援機構法案 閣議決定 東電の賠償義務を全国民が電気代でまかなう賠償スキーム 断固反対!



 

上の図を見て欲しいのですが、東電に「資本投入」「出資」をする新機構に、右からいきなり他の電力会社が負担金を支払うことになっているでしょう?

これは全国の電力会社が一斉に電気代を値上げする、つまり、東電の不始末を全国の消費者が肩代わりしてやることを意味しています。

しかも、今後何十年も、放射線後障害が出続けるわけで、東電は水俣病のチッソ化するのですが、足りないお金は上の国から「例外的援助条項」で補充されます。

この財源はもちろん我々の税金です。

つまり、とことん、我々全国民が東電の面倒を見るのがこの賠償スキームなのです。

 

 

一般の企業であれば、重大な問題を引き起こし、巨額の損害賠償責任を負って、債務超過状態になれば、会社更生手続きによる破たん処理に進みます。

この場合、株主や、金融機関など債権者も責任負担を求められます。

つまり、株主は株価がゼロになるという形での責任負担をします。株に投資して利益を上げることもあるのですから、リスクを負うのは当然ですね。

他方、金融機関は債権カットを求められることになります。彼らも利息という投資利益を得てきたのですから、リスクも負うのは当然なのです。

また、企業価値を最大化する観点で再生計画を策定して、そのもとで資産売却なども行い、賠償義務の履行のために充てられます。

東電の場合は、発電・配電・送電の3部門を独占していることが、再生可能エネルギー発展を妨げてきました。たとえば、原発を含む危険な発電部門は国有化して、送配電の部門は売却したらいいのです。いずれは全国の電力会社をそのように分割すれば、多様なエネルギービジネスが発展するでしょう。



 

今回の東京電力のケースでも、株主責任・債権者責任をとってもらい、資産を売却し、これによって東京電力及び関係者が最大限責任を担い、それでも賠償債務をカバーしきれない場合にさ、最後の最後に国民に負担をお願いするのが当然です。

東京電力の貸借対照表によれば、純資産額は1.6兆円、金融機関からの長期借入金は3.4兆円にのぼります。これらについうて、資産は売却し、借入金はカットして利子支払を減らすのが、会社整理の常道です。

それをせずに、いきなり、収入確保を目的とした料金値上げに走るというのは、一般企業であれば、到底説明のつかないことです。

原子力損害賠償支援機構法成立 国民が電気料金と税金で東電の賠償金を支払う最悪のシナリオ 


 

 

 

これに対し、、「東京電力が倒産したら、電力供給がストップする」「東京電力が倒産したら、金融市場が大混乱する」といった議論があります。

 しかし、日本航空=JALの経営破綻の例を思い出してください。

 上記のような普通の会社更生の処理をしましたが、飛行機は飛んでいるでしょう?会社整理手続きは粛々と行いながら、必要な業務を続けることはもちろん出来るのです。

同じように東電の破綻処理をしても「電力の安定供給」もできます。電力供給に支障が生じないよう、必要な資金だけを当面国から供給すれば足りることなのです。

また、仮に金融機関の信用創造機能への支障が生じるようなことがあれば、それに対しては、現実に危機に陥った金融機関に対してだけ対策を講じるべきであって、社債一般を保護する必然性はないのです。過剰な金融機関の保護であり、無駄です。



 

東電の大株主はメガバンクなど。大口債権者も社債権者もメガバンク。

つまり、東電賠償スキームは、メガバンク救済のからくりです。

原発事故の被害者の方々に手厚い賠償をすればするほど、我々一般国民が苦しむ今の法律は絶対に見直すべきなのです。

 

 

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 東京電力福島第1原子力発電所の事故の賠償支払い基準が決まり、東電の賠償金支払いが本格化する。賠償総額は数兆円規模に上るとみられ、政府の原子力損害賠償支援機構による支援が不可欠だが、厳しいリストラを要求されるのは必至。また、野田佳彦新首相の東電に対する姿勢も注目される。

 「我々としては早ければ早いほど助かる」。東電の広瀬直己常務は30日の会見で、機構設立など政府の迅速な支援体制確立に期待を寄せた。賠償支払いや火力発電所の燃料費負担で資金の流出が著しい東電にとって、機構は頼みの綱だ。

 30日までの仮払い総額は1120億円と、原子力損害賠償法が定める政府負担分1200億円(1発電所当たり)に迫っている。燃料費の増加分は今年度だけで7000億円、原発停止が長期化すれば来年度以降は年1兆円規模に膨らむ。手元資金は6月末に1・7兆円と、3カ月で5300億円減った。4~6月期連結決算は過去最悪の5717億円の最終赤字に陥り、このままでは今年後半には資金繰りが苦しくなる。

 野田新首相は菅政権の政策を引き継ぎ、東電の経営を支援する方針だ。政府は30日、杉山武彦・前一橋大学長を支援機構理事長に起用すると発表、来週中に機構を発足させる。ただ、東電支援に対する世論や与野党内の反発は根強い。理事長の人選は難航し、打診された財界関係者は軒並み断っており、政府挙げての支援体制が続く保証はない。

 こうした中、東電は燃料費増加分を価格転嫁するため、10%程度の値上げを検討している。東電は「円滑な賠償支払いのためにも経営安定が不可欠」(幹部)とするが、利用者の反発を懸念する政府は値上げ幅を抑制したい考えだ。東電の財務を調査する「経営・財務調査委員会」は24日の会合で、福利厚生なども含む人件費を検証、下河辺和彦委員長は「他業種と比べて高い」と指摘し、東電のコスト構造を抜本改革して賠償財源確保と値上げ抑制を進める意向を示した。

 支援機構から資金支援を受けるため、東電は来月中にも追加リストラなどを盛り込んだ「特別事業計画」をまとめるが、人件費削減や資産売却の深掘りは不可欠だ。

 一方で過大なリストラは東電を疲弊させ、投資や補修が絞られれば、安定的な電力供給に影響を与えかねない。野田新首相は就任当初から、賠償支払いと電力の安定供給、値上げ抑制の難しい連立方程式を解く手腕を試される。【野原大輔】

 ◇基準が提示されなかった項目も

 東電の賠償基準は、今月5日に文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会が決めた賠償の中間指針に沿ったものだ。しかし、原発事故が収束していないことなどを理由に、基準が提示されなかった項目もある。東電は「改めて提示したい」としているが、出そろうには時間がかかりそうだ。

 見送りの代表例が、避難などの指示に伴う財物価値の減少分だ。審査会の中間指針は賠償対象としたが、避難が継続中で最終的に家屋や土地の財産的な価値がどの程度減るかが不明なためだ。

 また、中間指針で検討課題とした政府指示によらない自主避難者への賠償を求める声も根強いが、東電の広瀬直己常務は「審査会で引き続き議論される」として、審査会の結論を待つ考えを明らかにした。

 一方、避難に伴う宿泊費や医療費は領収書が必要としたが、混乱の中で紛失した可能性もあるため、「宿泊施設が分かれば確認できる」などと柔軟に応じる姿勢を見せた。【西川拓】

毎日新聞 2011年8月30日 22時08分

 

 

 

交通費5000円、宿泊費8000円=原発事故の賠償基準公表-東電

 東京電力は30日、福島第1原発事故の損害賠償をめぐり、支払額や必要書類などを示した補償基準を発表した。このうち避難費用として、同一県内の移動に伴う交通費は一律で1人1回当たり5000円を賠償。宿泊施設に避難した場合の費用は1泊8000円を上限として実費精算する。まずは8月末までの損害を対象に9月12日をめどに受け付けを開始。仮払い分を差し引いた上で、10月初旬からの支払いを目指す。
 本社で記者会見した広瀬直己常務は「これまで通り国の支援を頂きながら賠償の責務を果たしていきたい」と強調。10月をめどに補償相談の体制を強化し、社員約3000人を含む6500人規模で被災者支援に当たる方針を示した。
 補償基準は、原子力損害賠償紛争審査会が8月5日に定めた中間指針に基づき策定。原則として、健康診断には1回8000円、放射線検査は1万5000円を支払うほか、放射性物質を除去する除染費用として5000円を賠償。各補償とも基本的には領収証や損害の事実を証明する書類が必要。
 また、企業や個人事業主の営業損害や風評被害も、身分証明書や以前の収入を証明する書類などに基づき全額を賠償。ただ、放射性セシウムによる汚染牛の問題で生じた損害などは「取り扱いを検討中」として支払いを留保した。
 東電によると、これまでの仮払額は約1120億円。本格賠償の請求件数は40万~50万件と見積もっているが、賠償総額については「分からない」(広瀬常務)としている。(2011/08/30-19:08)


 

 

 

 

 


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