ボルトの強さは抜群の調整力と、期待される中でも勝ち切る精神力にある。
フライングで失格となった2011年大邱世界選手権を除き、08年北京五輪からリオ五輪までの世界大会は6大会全てで、そのシーズンの最高記録を決勝でマークしてタイトルを勝ち取っている。
昨年も今年も勝負の夏場を前に脚の故障に見舞われたが、治療とトレーニングで、しっかり本番に合わせてきた。
09年ベルリン世界選手権で9秒58の世界新記録を樹立した際、100メートルを走りきるのに要した歩数は、ちょうど41歩。
リオでも41歩でフィニッシュラインの数十センチ手前まで到達しており、ほぼ同じ歩数で走り切った形だ。好調時とストライドに大きな変化はなかった。
もともとボルトの専門種目は200メートルだった。100メートルを本格的に始めたきっかけは少し変わっている。07年に、コーチから400メートルにも取り組むように提案され、「苦痛だ」と拒否。その代わりに100メートルを走ることを逆提案した。レースで結果を出すことでコーチを納得させたボルト。以来、100メートルでも才能を開花させ、五輪3連覇という前人未踏の偉業を成し遂げた。