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孤高のメス

2010-06-07 | 劇場映画れびゅー
いろんな意味でネームバリューの大きな話題作が目白押しだった週末、上映館数も回数も少なくないし、個性派俳優で固めたキャスティングも面白そうなのに、埋もれそうになってた『孤高のメス』を観てきました。
★★★★

本を読まなくなって久しいもので、この映画の原作もベストセラーだったとは知りませんでした。
失礼。

観にいっておいて良かった。
人の死に関して改めて考えさせられる、感動の医療ヒューマンドラマでした。
脳死と尊厳について描かれた話だなんて全く知らなかったもので(汗)

現在でも脳死に関する考え方は定義付けようとしては反感を買う世の中なのに、20年も前に脳死肝移植を断行した医師と、双方の患者の家族の思い。
財布に入れてたはずのドナーカードがいつの間にか無くなってる事を思い出し、改めて考える機会にもなった。

「もう一本観ておこう、堤真一が主演なら安心して観れるよねこれ」なんて軽い気持ちで観に行ったのですが、余貴美子、柄本明、生瀬勝久、平田満、松重豊と一癖も二癖もあるそうそうたる面々によるサポートをチェックし逃していた。
とことん良い人も、とことん悪い人も演じきる事が出来る役者たちがこれだけ揃うと、安心出来るはずの場面でも変に斜に構えて観てしまい、複雑な話では無いのにどういう展開になるのかいつも気にしながら観てしまう。
とても映画的でたまらなく楽しいキャスティング、それだけでも大満足。

それにも増して、何の迷いも無く自分のポリシーに従って、患者とまっすぐに向き合う純真な医師を嫌味無く熱演する堤真一が素晴らしい。
真面目な表情をしながらユーモアを交えても許される、彼の個性が有ってこそな感動作に仕上がっています。

その辺のキャスティングの妙と、医療現場のリアルすぎる描写、特にオペの手順を臓器や手元のアップを交えて事細かに描き本物の緊張感が伝わってくる。
遠隔医療の実態や、医療ミス、腐敗しきった医師、脳死移植と次々に問題提起をしていきながら、全編一定の安らぎを交えた脚本が勝利の要因かなぁ。

一応主人公は医師は無くて看護婦で、彼女の目線で最低な医療現場と孤高の医師の姿が描かれてるってところも面白い。

ネタバレ
面白すぎるキャストを使って、コテコテの映画作りをしてるところがイイ。

真剣なはずの医療現場が腐敗してしまっている。
そこを牛耳ってたのが生瀬勝久の演じる、これ以上最悪な医師は居ないってくらい酷い医師。
悪役を一挙に引き受け、最後はしっかり痛い目にあわされて観客を満足させる作り。

何の先生だかわからない先生役の余貴美子。
まさかの息子の脳死の場面は、冒頭見せていた笑顔とギャップの有り過ぎる表情。
彼女はどうやって苦痛を克服したのか観ていて混乱させられまくる。
結果キーパーソンとなって物語は劇的な展開を見せるようになるわけですが、何もかも終わって小学校で歌を指揮している姿を見せられると心がかき乱される。

味方だって言われても一筋縄で「ああそうですか」なんて思えない柄本明。
怪しい市長だなぁと思ってたのが、「このおっさん本気なんだ!」と思わせたところで今度は肝硬変でしょ。
脳死肝移植の話だなんて全く知らずに観た者としては、これまでの話の流れからまず思いつくところって、第一外科と第二外科に分けたフラグ。
きっと市長を第二外科に回したおかげで助かり、先生の息子は第一外科に行ったせいで手術ミスで…、みたいなドロドロしたものだったのがまさかの脳死肝移植の話へ。
だって、これだけ個性的な役者揃えてたらフツーそうならない?w
深読みしすぎか(汗)
結局話は本格的に『ブラックジャック』になって行く訳ですが、いやー、やっぱ柄本明、たまにこういう役を演じると不器用さが目立って余計に“本当は良い人”の鞘に収まる。
平田満も松重豊も同じく、見た目から良い人だったらこんなに混乱させられずにフツーのドラマとして観ていたかもしれない。



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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
>えいさん (そーれ)
2010-06-11 19:39:44
どうもです!
そんな風に書いて頂いて恐縮です。
何も出ませんよw

ありがとうございます!
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>KLYさん (そーれ)
2010-06-11 19:38:33
どうもです!
そんなに面白いんですねぇ!
最近本をほとんど買ってないので今度読んでみようかな。
2000年代に入って医療漫画がたくさん出てますけど、その辺の原点になってるのかな?

手元アップの手術だけでなく、肝臓を持ち上げる場面の気の使い方、一挙手一投足素人目には完璧でした!
返信する
おはようございます。 (えい)
2010-06-08 09:05:30
とても興味深く拝見させていただきました。
俳優の持っている個性を軸に展開された、
これぞ映画レビューという感じでした。
ありがとうございます。
返信する
Unknown (KLY)
2010-06-07 23:56:05
原作・続編・漫画と全部読みました。最高に面白いですから是非!
実際には原作の大鐘さんが医師だということもあって、救急医療の問題とか、大学と民間病院の関わりだとか、生体肝移植とか他にも医療の現場の問題点を沢山網羅しているんですね。
しかしどれも共通しているのは目の前の患者を救うために出来うる全てのことをするということ。映画はこの時間に収めるために脳死肝移植一本に絞ってきましたが、おかげで軸がぶれなくて強い訴求力があったように思います。
堤さん、物凄く手術手技を練習なさったそうで、何だか自分で手術できそうな気がしたって言ってたらしいですよ。(笑)
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