若年寄の遺言

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地方公務員法(勝手に)解説 政治的行為の制限 ~ 大阪市アンケート騒動 ~

2012年02月21日 | 労働組合
大阪市の職務命令アンケート騒動をうけて、地方公務員の選挙活動、政治活動について、自分なりの地方公務員法まとめ。
(あくまでも個人的メモなので、「ここの解釈に沿って活動したのに処分された」なんて苦情は受け付けません。)


○地方公務員法
=====【引用ここから】=====
(職務に専念する義務)
第35条 職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。
(政治的行為の制限)
第36条 職員は、政党その他の政治的団体の結成に関与し、若しくはこれらの団体の役員となつてはならず、又はこれらの団体の構成員となるように、若しくはならないように勧誘運動をしてはならない。
2 職員は、特定の政党その他の政治的団体又は特定の内閣若しくは地方公共団体の執行機関を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、あるいは公の選挙又は投票において特定の人又は事件を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、次に掲げる政治的行為をしてはならない。ただし、当該職員の属する地方公共団体の区域(当該職員が都道府県の支庁若しくは地方事務所又は地方自治法第252条の19第1項の指定都市の区に勤務する者であるときは、当該支庁若しくは地方事務所又は区の所管区域)外において、第1号から第3号まで及び第5号に掲げる政治的行為をすることができる。
一.公の選挙又は投票において投票をするように、又はしないように勧誘運動をすること。
二.署名運動を企画し、又は主宰する等これに積極的に関与すること。
三.寄附金その他の金品の募集に関与すること。
四.文書又は図画を地方公共団体又は特定地方独立行政法人の庁舎(特定地方独立行政法人にあつては、事務所。以下この号において同じ。)、施設等に掲示し、又は掲示させ、その他地方公共団体又は特定地方独立行政法人の庁舎、施設、資材又は資金を利用し、又は利用させること。
五.前各号に定めるものを除く外、条例で定める政治的行為
3 何人も前2項に規定する政治的行為を行うよう職員に求め、職員をそそのかし、若しくはあおつてはならず、又は職員が前2項に規定する政治的行為をなし、若しくはなさないことに対する代償若しくは報復として、任用、職務、給与その他職員の地位に関してなんらかの利益若しくは不利益を与え、与えようと企て、若しくは約束してはならない。
4 職員は、前項に規定する違法な行為に応じなかつたことの故をもつて不利益な取扱を受けることはない。
5 本条の規定は、職員の政治的中立性を保障することにより、地方公共団体の行政及び特定地方独立行政法人の業務の公正な運営を確保するとともに職員の利益を保護することを目的とするものであるという趣旨において解釈され、及び運用されなければならない。
(争議行為等の禁止)
第37条 職員は、地方公共団体の機関が代表する使用者としての住民に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をし、又は地方公共団体の機関の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。又、何人も、このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおってはならない。
2 職員で前項の規定に違反する行為をしたものは、その行為の開始とともに、地方公共団体に対し、法令又は条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に基いて保有する任命上又は雇用上の権利をもつて対抗することができなくなるものとする。

=====【引用ここまで】=====


ああ嫌だ、法律って。
何書いてあるか全然分かんない。

ということで、必要な部分のみ抜粋して加工。

「大阪市役所の事務職員は、勤務時間中は職務にのみ従事しなければならない。」
「大阪市役所の事務職員は、特定の市長が在職し続ける目的をもって、選挙で投票をするように勧誘運動をしたり、署名運動を企画、主催したり、市庁舎や消耗品を利用ししてはならない」
「大阪市役所の事務職員は、ストライキをしてはならない。誰であっても、職員ストライキを企てたりそそのかしたりしてはならない。」

ちなみに、「勧誘運動」とは、

○人事院規則14―7(政治的行為)の運用方針について(昭和24年10月21日法審発2078)
=====【引用ここから】=====
(六) 第六号関係 本号の行為も当然政治的目的をもつ行為とされる。「勧誘運動をすること」とは、組織的、計画的、又は継続的に、勧誘をすることをいい、たとえば党員倍加運動のような行為はその例である。従つて、たまたま友人間で入党について話し合うようなことは該当しない。
~~~~~( 中  略 )~~~~~
(八) 第八号関係 「勧誘運動」とは、第六号にいう「勧誘運動」に準じて解釈されるべきである。従つて、選挙に際したまたま街頭であつた友人に投票を依頼するような行為は該当しない。
=====【引用ここまで】=====


勧誘運動とは、
「組織的、計画的又は継続的に勧誘をすること」
とあり、
「たまたま友人間で入党について話し合う」
「たまたま街頭であつた友人に投票を依頼する」
は該当しないらしい。

では、


(1).組合役員を務める市役所の職員が、組合加入職員に対し
「□月△日までに、市長後援会の紹介カードを職員1人につき5枚ずつ組合に提出するように」
「○○君、紹介カードがまだ出てないぞ。早く提出するように。」
と指示、催促する行為。

(2).この指示を受け、組合加入職員が親戚や知人に電話で
「◇◇さん、市長後援会に加入しませんか?」
と依頼し、同意を得て住所氏名を紹介カードに記入し、組合に提出する行為。


これらはどうか。期限や人数に関する取り決めがあり、これを実行するための指令系統がある。いかにも計画的で、組織的だ。こうした場合にまで「たまたま」と言い張るのは無理がある。

仮に(2)について、組合加入職員が
「たまたま電話した時に組合からの話を思い出して、お願いしただけですよ」
と言い訳したとしても、(1)の組合役員の指示、催促と併せてみると「たまたま」ではない。

また、紹介カードには住所、氏名、電話番号が書かれるのが通例。この名前入りのカードを集める行為が署名運動と判断されれば、集めるよう指示した者は違反したことになる。


ちなみに。

個人でだと地公法の禁止規定に引っかかるかもしれないが、「労働組合が組合活動の一環として行う活動は自由にできます」と言う主張も存在する。ただ、これは最高裁の考え方に反しているだろう。


○最高裁判例 昭和49年11月06日
=====【引用ここから】=====
政治的行為が労働組合活動の一環としてなされたとしても、そのことが組合員である個々の公務員の政治的行為を正当化する理由となるものではなく、また、個々の公務員に対して禁止されている政治的行為が組合活動として行われるときは、組合員に対して統制力をもつ労働組合の組織を通じて計画的に広汎に行われ、その弊害は一層増大することとなるのであつて、その禁止が解除されるべきいわれは少しもないのである。
=====【引用ここまで】=====


「政治的行為が労働組合活動の一環としてなされたとしても、組合員である個々の公務員の政治的行為を正当化する理由とならない」
「政治的行為が組合活動として行われるときは、組合員に対して統制力をもつ労働組合の組織を通じて計画的に広汎に行われ、その弊害は一層増大する」


 組 合 活 動 の一環だと 
 正 当 化 どころか
 弊 害 が 増 大 ! !




このように、地方公務員が組合員として行っている選挙絡みの行為は、地方公務員法に抵触している可能性の高いものが数多く含まれている。ただ、紹介者カードをはじめとするこうした行為は全国各地で行われている。

ではなぜ、違法の疑いの強い行為が、全国に横行しているのか。

理由は簡単。
罰則がないから。

罰則規定がなければ、警察が介入する余地はない。あとは、地公法違反を理由とする市当局からの処分さえクリアできれば、地公法の規定は有名無実化する。

そのためにも、組合が少しでも多くの票をとりまとめて市長に渡し、組合派市長を当選させることが必要になるのだ。組合派市長が当選すれば、その市長から地公法違反を理由とする処分が出されることは無いのだから。

刑罰を科されることはないし、組合で支援した候補が当選すれば処分されることもない。そのため、「組合に団結しながら旺盛な選挙活動・政治活動の展開に確信を持って活動をすすめてください」と開き直る団体が出現する。また、違法なストライキ体制を確立するため、毎年のように全国の自治体労組でスト批准投票を行い、中央へ指令権を委ねている。違法が大手を振って歩いている。

しかし、こうした「地公法違反?何それ?刑罰が無いんだからいいでしょ」という開き直りは、自治法の規定の穴をついて専決処分を行ったりした阿久根市の竹原前市長と同質のものである。市長や市職員が、罰則や強制力の無い規定を無視して良いとするのは、私の考えに合わない。

法律があり、条例があるから、公務員は公務員でいられる。その公務員が法律や条例を無視することを公言するのは、自分が拠って立つ場所を否定するものだ。やってはいけない。阿久根騒動で前市長への批判をしていた自治労は、罰則のない地公法の規定であっても厳格に遵守するよう傘下の組合へ指示を出すべきだ。


以上、ここまでは労組側への批判。
ここからは、大阪市長が発した「職務命令アンケート」について

・・・は、正式に公表されるのを待つことにしよっと。


ちなみに。
組合員の地公法違反の有無を調査するのであれば、違反となる行為を類型化し、これを念頭に置いた上で、

「組合からの文書が勤務時間内に回覧されてきたことはあるか」
「紹介カード提出にノルマや期限はあったか」

等の内容に限る必要があろう。
違反、合法部分をひっくるめて、組合活動の全容や、組合の政治信条にどれだけ染まっているかをアンケートで把握しようとしたら、思想信条の自由を侵すことになる。

ネット上で拾った今回のアンケートを見た感じでは、「ワザと?」思想良心の自由に抵触しようとしているふうにも思える。そうなると、法律論うんぬんではなく、喧嘩師としてのふっかけ方の話になってくる。

~ 追記 ~
今回の記事は、一般職の非現業職員を対象にしたもので、現業職員(単純な労務に雇用される者)を対象にしたものではない。現業職員については、

○地方公務員法
=====【引用ここから】=====
(特例)
第五十七条  職員のうち、公立学校(学校教育法 (昭和二十二年法律第二十六号)に規定する公立学校をいう。)の教職員(同法 に規定する校長、教員及び事務職員をいう。)、単純な労務に雇用される者その他その職務と責任の特殊性に基いてこの法律に対する特例を必要とするものについては、別に法律で定める。但し、その特例は、第一条の精神に反するものであつてはならない。

=====【引用ここまで】=====

○地方公営企業等の労働関係に関する法律
=====【引用ここから】=====
 附 則
5 地方公務員法第五十七条に規定する単純な労務に雇用される一般職に属する地方公務員であつて、第三条第四号の職員以外のものに係る労働関係その他身分取扱いについては、その労働関係その他身分取扱いに関し特別の法律が制定施行されるまでの間は、この法律(第十七条を除く。)及び地方公営企業法第三十七条から第三十九条までの規定を準用する。この場合において、同法第三十九条第一項中「第四十九条まで、第五十二条から第五十六条まで」とあるのは「第四十九条まで」と、同条第三項中「地方公営企業の管理者」とあるのは「任命権者(委任を受けて任命権を行う者を除く。)」と読み替えるものとする。

=====【引用ここまで】=====

○地方公営企業法
=====【引用ここから】=====
第三十九条
2 企業職員(政令で定める基準に従い地方公共団体の長が定める職にある者を除く。)については、地方公務員法第三十六条の規定は、適用しない。

=====【引用ここまで】=====


と、地方公務員法第36条が適用されないため、政治的行為の制限に関する今回の議論は当てはまらない。(職務専念義務やストライキ禁止は当てはまるけど)

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1 コメント

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地方公務員法に抵触 (陪審)
2013-07-14 02:17:24
伊東市の話しなんですが、警察官が裏でバイト的な事をしているとの地方公務員法に抵触する噂を聞きました。
その警察官自身が証人になる事で、金銭を貰うだとかかなり怪しい話でした。
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