私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

パトリック・モディアノ『ある青春』

2015-03-11 20:25:04 | 小説(海外作家)
 
はたちになろうとしていた、あの頃…兵役あがりのルイと歌手志望のオディールは、パリのサン・ラザール駅で出会い、恋に落ちた。そして十代最後の日々を、ふたりは、夢を追いながらも「大人の事情」に転がされていった―。パリから遠く離れて、いまや山荘で幸せな家庭を築くふたりの過去には、はたして何があったのか?ゴンクール賞に輝いた『暗いブティック通り』につづく、受賞後第一作。醇乎たるパッションが胸を打ち、香り立つフェティシズムが読者の記憶をもよびさます、新ノーベル文学賞作家による青春小説!モーシェ・ミズラヒ監督による同名映画の原作。
野村圭介 訳
出版社:白水社(白水uブックス)




実に淡々としたタッチの物語だ。
その淡々としたタッチのために、情感が立ちあがっているのが印象的。
しかしあまりに淡々としているために、今ひとつ頭に沁み込みにくいように感じた。個人の感性の違いかもしれないけれど。


本書では、山荘をたたもうとしている夫婦の若い時代の物語を描かれている。
一見何の変哲もない、幸せそうなカップル、そんな二人の過去に何があったのかをゆっくりと語り上げている。

ルイは兵営の後、職探しのため人を頼り、オディールは歌手の夢をかなえるため、苦労をしている。
彼ら二人を導くのは、ベリューヌ、ブロシエ、ブジャルディの知り合った中年の男たちだ。
彼らに導かれるように若者たちは出会い、恋をし、新しい人生を生きようとする。

しかしそんな中年の男たちにも若い時代があり、過去がある。
彼らにあるのは、ルイやオディールたちの知らない、青春期の蹉跌ではなかろうか。
そんな過去に引きずられて、死を選び、責め続けられる人もいる。


だがルイが彼らと決定的に違うのは、ラストで、とある行動を起こしている点かもしれない。
誰かからの庇護を離れた、ルイやオディールの行動は、人生を選択した上でのものだ。
そこにこそ青春期の終りがあるのかもしれない。
漠とした印象だが、そんなことを思った。

評価:★★(満点は★★★★★)


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