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集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」

「格差・貧困ノー」を訴えた2月の総がかり行動

2017年02月22日 | 集会報告
2月19日、今月の戦争法成立の月命日は日曜だったので、総がかり行動はいつもの議員会館前ではなく日比谷野外音楽堂で開催された。開催前に一列にビラ配りをしていた人は20人くらいいただろうか。わたくしは「市民と野党をつなぐ会」文京・台東・中央の「ぶたちゅう」のチラシを門の前で撒いた。
とてもよい天気で、日当たりがよくコートを脱いで大丈夫なほどだった。
この総がかり行動は、もともと戦争法反対国会前抗議に始まり、2015年9月19日に戦争法が成立したあとは、毎月19日の月命日に夕方18時半から議員会館前の路上で抗議集会を実行してきた。たまたま19日が土日・祝日に当たる場合は、こういう大きな集会を開催するが、成立の経緯から「戦争反対」「憲法守れ」を訴えることが多かった。今回ははじめて格差・貧困がメインテーマとなり「格差・貧困にノー!!みんなが尊重される社会を!」というサブタイトルがついた(主催:戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会 参加4000人)。
主催者あいさつで藤本泰成さん(戦争させない1000人委員会)は「2015年8月30日12万人の市民が国会を取り巻いた。しかしその向こうに毎日命を削りながら生活する多くの人が存在している、そこに心を寄せねばならない。貧困と格差は世界で多くの紛争を生み、多くの難民を作り出してきた。
戦争法に反対してきたわたしたちは、本当の意味での積極的平和主義に立たなくてはいけないと考えた。差別や格差や貧困の構造的暴力を排除していかなくては本当の平和が訪れないことをわかっている。アベノミクスのなかで格差と貧困にあえいでいる人びとと課題を共有し、課題に立ち向かい、共に闘い平和にむけてがんばっていくことを今日ここでみなさんと確認していきたい」と述べた。
藤本さんの次は、本田由紀さん(東京大学教育学部教授)のスピーチだった。
以下、本田さんと山尾志桜里衆議院議員の発言を中心にこの集会を紹介する。写真は撮ったのだが、日差しが強すぎてちょうどステージが逆光になり、うまく撮れなかった。

本田由紀さんのスピーチ
いまの日本がどんな国、どんな社会になってしまっているかお話する。これを把握するためには「変化を見る」ことと、「他国と比較」することが役に立つ。
まず変化については、悪化を遂げているデータがたくさんある
賃金は実質的にダダ下がりだが消費税などで食品などの物価がじわじわ上がっている。資産の一極集中が強まりその一方で貯金ゼロ世帯が増加している。労働市場では、団塊世代の定年退職などから求人倍率自体は上がっているが、仕事の中身をみると不安定で賃金の安い非正規雇用ばかりが増えてきている。生活の苦しさから生活保護や奨学金の受給者が増えている。
出生率は過去数十年にわたり下がっている。とくに90年代の経済や労働市場の低迷のもとなんの有効な政策が打たれなかったため、いわゆる団塊ジュニア世代のベビーブームはいうなれば政策的につぶされた。その結果日本はものすごい勢いで少子高齢化を遂げている。その結果、人口とくに労働力人口が減少し、さまざまな社会の機能を維持できるのかどうかというほど危うい状態になっている。以上が変化についてだ。
「他国と比較」で、日本は世界の先進国のなかで悪い値は最高水準、よいほうが望ましい値は最低水準であることを示すデータはたくさんある。長時間労働、高等教育の学費の私費負担額、相対的貧困率、自殺率は高い。逆によい方の値が非常に低いのは、たとえば社会保障や教育や労働市場政策への財政支出、最低賃金額、生活保護の捕捉率などだ。また女性が教育や経済や政治の場に進出できるチャンスは世界のなかでもあきれるほど低く、難民や移民の受入れもあきれるほど冷酷だ。しかしその裏側では留学生や研修生という名目で隠ぺいし奴隷のようにこきつかう。近隣国やいわゆる在日の人に対してもへどが出そうなヘイトスピーチをまき散らすデモが、ヘイトスピーチ対策法の成立後も、頻繁に行われている。
何だこれは、いったいこの社会はどうなってしまった、何という醜い情けない国になってしまったのか。いくらテレビなどで「日本すごい」を叫んでみても、現状の体たらくはさまざまな数字が明らかにしている。
国のかたちをつくっているのは、いうまでもなく政策であり、それをつくる政治家たちだ。敗戦後今日に至るまで政権の座に着いていたのはいうまでもなく自民党だ。60年代には冷戦構造のもとでどっぷりとアメリカの庇護を受けてたしかに経済は成長した。
しかし、まず石油危機による成長のブレーキと財政支出のじわじわとした拡大、そしてバブル経済崩壊後のより明確な社会構造の破たんを経ても自民党は従来の仕組みの見直しを怠ってきた。
その無策ぶりや生活の苦しさから人びとが抱える鬱屈をごまかすため、とくに現在の首相は背後にある超保守的な団体とともに、人びとを国家に対しよりいっそう服従させる法律や政策の策定に邁進している。
あのグロテスクなアメリカ大統領におもねり、戦争に加担することで一部の企業を潤そうとしている。直接の犠牲になるのは無防備に海外に送られる自衛隊員だ。あるいはオリンピックやカジノなどあさはかなカンフル剤のような景気刺激策に頼ろうとしている。「アホか!」と地団太踏みたい思いだ。政府は教育基本法や安全保障関連法ではすでに成功を手にしてしまった。いま共謀罪や家庭教育支援法が目の前で進行している。これを許してはならない。
税金で動いている政府が人びとの生活を十分に助けず、かわりに自分で生きよ、あるいは家族や地域で勝手に支え合って生きよ、そして国の役には立て、と勝手な要求を振りかざしてきている。
たしかにこの国の現状は吐き気を覚えるほどひどいものだ。でもあきらめては終わりだ。あきらめることは権力や財力を握る層にとって思う壺だ。わたしたちはあらゆる手段で、日常生活のそこかしこにあるひどい状況に対して声を上げていかなければいけない。今日のような集会やSNS、投票行動、労働組合やNGOなどすべての活動を通じて現実を明るみに出し、新しい提案を行い、このガタガタな国を立て直していこう。わたしたちは現実を直視し、これからこの国で生きていく若い新しい世代のためにも動かなければならない。

檀上の4議員
続いて立憲4野党の民進党・山尾志桜里議員、共産党・小池晃議員、社民党・福島瑞穂議員、自由党・渡辺 浩一郎元衆議院議員のあいさつがあった。山尾議員の発言がとくにテンポよく迫力があったので紹介する。
●民進党・山尾志桜里議員のあいさつ
一昨日の2月17日金曜、「保育園落ちた」から1年なので、まず最初に待機児童のことを総理に質問した。総理は「待機児童ゼロ」と胸を張るので「いつまでにゼロにするんですか」と聞くと、総理顔色が変わった。自分がいつまでにゼロにすると約束したか、知らなかったのだ。必死に笑いを浮かべて、わたしの質問を感情的だと非難して5分演説し、そのあいだに事務方が一生懸命調べ物をして総理に耳打ちをし、彼は「自分が約束した待機児童ゼロの期限が来年3月である」ことを知った。「では総理、2年連続待機児童を増やしている総理があと1年と3か月でゼロにできるんですか」と聞いたら「ムリですね」というんです。「ふざけるな」だ、言葉より結果だとあれだけ言いながら、結果が出せなかったら自分の言葉までなかったことにする、総理の姿勢をみてわたくしはこの政権には真実を受け止める力量のない政権であること、真実を受け止める力量がないから真実を消す政権だということがはっきりわかった。
みなさん考えてみていただきたい。共謀罪はもともと共謀罪でしかありえないのに、その真実を消すために「テロ等準備罪」という新しい言葉で覆い隠す。考えてみていただきたい。普通の一般市民も捜査機関が「いやいやこの団体は犯罪者だらけだ」と認定したら犯罪者集団になる。わたしたち安倍政権からもういちど権力を取り戻そうとしている集団、大丈夫だろうか、いまの権力に、わたしたちの思い、心の内をのぞかれたときに、悪いことを考えている集団だ、組織的犯罪集団だ、役割を分担して実行しようとしているテロ等準備罪の対象者だとならないだろうか。
南スーダン、戦闘行為という真実を打ち消して武力衝突という言葉に置き換える、これも真実を打ち消す安倍総理のいつもの方策だ。そして子どもの貧困率、安倍総理は自分の政権で貧困率が下がったと言い出した。皆さん、このカラクリをご存知だろうか、突然OECDが使っているデータとまったく違う物差しを出してきて、新しい物差しで計れば貧困率下がっていると言い出した。子どもの貧困、若者の格差、この真実を受け止める度量がないから物差しを代えて真実を消そうとしている。
この真実を消す権力とわたしたちは闘っていかなければならない格差は分断を生み、分断は憎しみを生み、憎しみを外に逃がすため戦争が使われてきた。わたしたちはその歴史を知っている。その歴史をしっかり受け止めて、貧困と格差という真実を打ち消す政権としっかり対峙していこう。財源がないというならば、なぜアメリカの雇用と経済をよくするためにアメリカから防衛装備品を買うのか、おかしいじゃないか、わたしたち野党と市民がつながればわたしは社会が動く、政治が動くと信じている。この信念でつながり、尊厳をもって真実を語り安倍政権と対決し、子どもたちのために一歩一歩皆でいい未来をつくっていこう。

そのあと「労働と貧困」を嶋崎量さん(日本労働弁護団事務局長)、「奨学金と貧困」を諏訪原健さん(元シールズ 筑波大大学院生)、「シングルマザーと貧困」を赤石千衣子さん(しんぐるまざあず・ふぉーらむ)、「災害と貧困」を阿部広美さん(熊本地震の被災者、昨年夏の参議院選の統一候補、弁護士)がそれぞれ語った。
この日のスピーチは元気な女性の活躍が目立った。振り返ると、議員4人のうち男性・女性が同数、さまざまな分野の4人も男性・女性が同数、よく議会におけるクォータ制がいわれるが、この日の集会では、世間に先駆けて実現していた。いや司会が菱山南帆子さん(解釈で憲法を壊すな!実行委員会)、閉会をかねた行動提起が笠井貴美代さん(憲法を守り・いかす共同センター)だったので、数では女性が上回っていた。

このあと銀座デモに移った。わたしは反天連のデモなら今月も高田馬場周辺で参加したが、昨年9月の反原発の代々木公園のデモ以来のことだ。集会参加だけでなく、街頭で世間の人に意思表示しアピールすることも重要だ。
銀座デモのあと有楽町イトシア前で「沖縄署名・一斉行動」が行われた。

2日後の21日(火)12時から衆議院第2議員会館前の毎月19日に総がかり行動をやっている場所で「稲田防衛相、金田法務相はただちに辞職せよ!2.21国会前緊急行動」が開催された。19日には残念ながら沖縄から戻れなかった糸数慶子さんもしっかりスピーチをした。とても寒く、同じ沖縄出身の玉城デニー議員はコートを着てこなかったのと気の毒にも長時間スピーチ待ちをしていたため震えていた。
コールする道の反対側、国会議事堂側には社会科見学の小学生がたくさんいて手を振ったりしていた。あの子どもたちを戦争に行かせなくてすむようにとの願いは参加者共通の願いだった。
19日の司会者、菱山さんは夕方のイトシア前「沖縄署名・一斉行動」でも司会をしていたし、この日もコーラーをやっていた。獅子奮迅の活躍である。 
共謀罪は3月7日に閣議決定、3月10日国会上程の予定なので、3月6日に再び議員会館前で反対行動が行われる予定だ。

国会前の糸数慶子さん。左は菱山さん
☆トランプ大統領のオルタナティブ・ファクトウソが話題だが、安部政権のウソはトランプばり、いやそれを上回る。古くはオリンピック招致の「アンダーコントロール」、そして戦争法を安全保障法、武器輸出三原則を防衛装備移転三原則、昨年は南スーダンでの戦闘状態を武力衝突と呼び、日報まで隠して国会をごまかし、南スーダン派兵を実行した。年末には沖縄でのオスプレイ墜落を不時着水、これから国会審議が始まりそうな共謀罪をテロ等準備罪と呼ぶ。山尾議員が主張するように、真実を消す権力とわたしたちは闘っていかなければならない。
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