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「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する全国集会

2010年10月03日 | 集会報告
今年2月半ば中井洽拉致問題担当相(当時)が無償化に横やりを入れたことが発覚し、4月からの「高校無償化」は朝鮮学校にのみ適用されなかった。
文部科学省は、5月26日に6人の専門家会議を設置し、6回の審議を経て8月末に「既に指定されている専修学校高等課程に求められる水準を基本としつつ、高等学校に求められる教育活動の水準を求める(個々の具体的な教育内容については基準としない)」との基準を示した。しかしふたたび民主党に戻され9月7-8日に政調会文部科学・内閣両部門合同会議を開催したが、高木義明文部科学大臣はまだ最終的な判断は示していない。
9月26日(日)午後、「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する全国集会が三宅坂の社会文化会館で開催された。午後早くまでは絶好の運動会日和だったが3時すぎにデモに出るころは曇天に変わった秋の午後だった。定員688人のホールに1500人もの人が詰めかけ、会場外で待機する人も多数いた。集会後、この日1日で30万4200円に及ぶ多額のカンパが集まったことが報告された。

まず主催者から「この問題は、在日の朝鮮高校、初中級学校の問題であるだけではない。日本人一人ひとりの人権感覚が問われており、まさに日本人の問題である。この集会の賛同団体は267に上る。なかには日頃朝鮮学校の問題とまったく関係のない活動をしている団体もある。まさに普遍的な人権、差別の問題をここで転換したいというすべての参加者の思いがこめられている」とのあいさつがあった。
次に、大島九州男・民主党参議院議員は「党の文教科学委員会では、拉致問題で強硬に反対する意見もあったが、専門家会議の報告を了とする結論を出した。現在、高木大臣がどう判断するかという最終段階に来ている」と情勢を報告し「同じ子をもつ親として、拉致問題に協力するというメッセージをいただければ、わたしたちも与党のなかで声を発していける事情もご理解いただきたい」と訴えた。その他、保坂のぶと・社民党前衆議院議員、江口済三郎・公明党中野区議(日朝友好促進東京議員連絡会)から発言があった。

この集会の実行委員会は、北海道、東京、神奈川、茨城、愛知、大阪、神戸、広島、福岡の全国9校の生徒を招待した(京都校のみ運動会とバッティングしたため欠席)。
リレートークで9つの高校の生徒がスピーチをした。高校生たちは全国朝鮮高級学校学生連絡会を立ち上げ11万人もの署名を集めた。HPも開設している。
9人のうち4人のスピーチの一部を紹介する。
●福岡の高校生
幾度となく街頭で署名活動を行った。多くの日本人が協力してくれたが、なかには「そんなにカネがほしければ日本の学校に通えばよい」という人もいて、ナイフで心臓をえぐられる思いをした。わたしたちはカネがほしいのではなく自分の国の言葉や歴史を思う存分学ぶ自由がほしいのだ。わたしには日本の友達もたくさんいる。わたしが話すハングルや朝鮮舞踊をとてもほめてくれる。仲よくなることは同じになることではなく、お互いの違いを理解し認めあうことではないだろうか。在日朝鮮人としての誇りを胸に、日本の未来を担う若い世代の人と友好と理解をいっそう深めるよう、今後も努力したい。
●神戸の高校生
最初無償化の話を聞いたとき親の経済的負担が減ると思いうれしかった。しかし適用除外となり、いままで差別を目の当たりにしなかった分、とてもショックだった。そして一致団結して1万5000人の署名を集めた。日本人の署名も多く勇気をもらった。一方、学校に脅迫状とカッターナイフが送られたり、校門の前に右翼が来てとてもこわい思いをした。しかしわたしはウリハッキョに通う。学校が好きだからだ。学校は父母や先輩が学び、わたしたちの次の世代が学ぶ場所でもある。学校がいつまでも学校であり続けられるよう一刻も早く無償化を適用してほしい。
●茨城の高校生
茨城の学校は、小中高合わせて100人足らずの小さな学校だ。人数が減って休校になり茨城に転校してきた生徒もいる。遠方の生徒は寮生活をしている。両親の負担を少しでも減らすため部活のあとバイトをしている生徒もいる。無償化が適用されればみんなの負担は減る。また金銭的な問題だけでなく、この問題は人権問題にもつながる。日本の方が自国のことを学ぶようにわたしたちも自国の文化・歴史・言葉を学びたい。学ぶことは、どんな国でもだれもが平等に与えられた権利だと思う。
●大阪の高校生
ウリハッキョは日本学校のように設備もよくないし、遠い。でもそこで学ぶウリの心、歴史、言葉、歌、すべてがわたしたちの誇りであり魂だ。ある記者から「学校のどんなところがよいか」と聞かれ、答えるのに苦労した。わたしにとって学校そのものがいいところなので具体的な説明が難しかったからだ。その姿をみて記者は「ほんまに学校が好きなんやね」と言ってくれた。わたしは大阪朝高が大好きだ。存続するには無償化が必要だ。政治家はわたしたちの声を聞いてほしい。

これに答え、日本の高校生4人から連帯のあいさつがあった。2人のあいさつの一部を紹介する。
●東京の都立高校生
無償化除外のことを知り、同じ国に住み同じ義務を果たしているのに、なぜ同じ権利を与えられないのかと思った。反対する人がいう「国と国の問題」があるのは事実だが、高校生の学ぶ気持ちには関係ない。わたしができることは小さいことかもしれないが、同じ「学びたい」という気持ちを共有できる仲間として、わたしからわたしの友達にこの問題への意識の輪を広げていく努力をしたい。
●大阪の府立高校生
朝鮮学校の存在について最近知った。同じ日本に住むのに朝鮮学校だからと差別され、無償化から排除されるのは意味がわからず、腹が立った。わたしは差別に敏感なので自分もいっしょに闘うしかないと思った。偏見や差別をもつ日本人が悪いと思うので、そういう考えをなくすよういっしょに闘っていきたい。

高校生たちは舞台の上で握手を交わした。
このあと、オモニ会連絡会のお母さん、2人の在日一世、埼玉と福岡の方、アイヌ・ラマット実行委員会、杉並の教育を考えるみんなの会、府中派遣村の方からアピールがあった。
最後に全国集会決議を採択した。
「全国に10校ある朝鮮高校には、約2000人の子ども達が通い、日々、学校生活を送っています。『高校無償化』の本来の目的は、すべての学ぶ意志のある者に対して教育の機会を保障することでした。朝鮮高校を『高校無償化』から排除する事は、政府による差別・人権侵害です。(略)わたしたちは朝鮮学校に一切の差別なき高校無償化が適用されるまで、たたかいぬきます」

☆集会に引き続き、東京駅までデモを行った。3月27日の代々木公園の集会は3キロ、6月27日の芝公園集会では5キロ、この日は赤坂見附、虎ノ門の文部科学省前、新橋・有楽町を通る6キロとだんだん距離が伸びていった。
 
「高校無償化をすべての高校に!」
 「子どもは平等だ!」
 「政府は朝鮮学校を認めろ!」
 「日本人は朝鮮学校と連帯するぞ!」
 「ともに差別に反対しよう!」

高校生も含め、いつもよりずっと平均年齢の低いシュプレヒコールが都心に響いた。新橋付近から歩行者も徐々に増え、普通のデモより好意的に受け止められたように思えた。
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