facciamo la musica! & Studium in Deutschland

足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

東京・春・音楽祭2024:ムーティ指揮「アイーダ」

2024年04月20日 | pocknのコンサート感想録2024
4月17日(水)ムーティ指揮 東京春祭オーケストラ:「アイーダ」
~東京・・音楽祭 2024~

【演目】
ヴェルディ/「アイーダ」(演奏会形式)

東京文化会館

【配役】
アイーダ:マリア・ホセ・シーリ/ラダメス:ルチアーノ・ガンチ/アモナズロ:セルバン・ヴァシレ/アムネリス:ユリア・マトーチュキナ/ランフィス:ヴィットリオ・デ・カンポ/エジプト国王:片山将司/伝令:石井基幾/巫女:中畑有美子

【演奏】
リッカルド・ムーティ指揮 東京春祭オーケストラ/東京オペラシンガーズ


ヴェルディの代表作を次々と演奏会形式で上演しているムーティと東京春祭オケによるオペラシリーズが「アイーダ」を取り上げた。「アイーダ」といえば第2幕第2場の壮麗な凱旋の場面を思い浮かべる。ムーティ指揮の春祭オケとオペラシンガーズによるこの場面が悪かろうはずがない。パワフルで輝かしい合唱と重厚で磨かれたオケ、アイーダトランペットの華々しい競演など、聴きどころに事欠かない音楽シーンは一つの大きな山場ではあった。けれど、ムーティの指揮の真骨頂が発揮され、本当の感動がもたらされたのは、その先の3幕と4幕だった。ストーリーで凱旋の場は、かりそめの華やかさに過ぎず、オペラの核心はその後にあることは明白で、まさにそれを実感することとなった。

状況が次々と展開し、登場人物の感情が大きく揺さぶられ、緊迫した場面が続く3幕から4幕では、歌手の力量が問われることはもちろんだが、全体の流れをコントロールする指揮者の役割は大きい。そんな場面でのムーティの指揮は、緻密でナイフの刃先のような鋭さで深く斬り込んで、緊張感に貫かれた流れを作り出す。「ここはこうでなければならない」という確信に満ち、迷いや無駄が全くなく、大切なメッセージを的確に伝えてくる。厳しくストイックなアプローチがある一方で、溢れる情感を表出するときはホレボレする歌心も惜しみなく届けてくれる。そんなときは、郷古廉がコンマスを務める春祭オケの弦がムーティの歌心をふくよかな表情で繊細に伝えてくれた。春祭オケはいつもながらムーティの求める音を敏感に感じ取り、終始緻密で機能美に優れた演奏を繰り広げた。

この大切な場でずば抜けた歌唱を聴かせたのはアムネリス役のマトーチュキナだ。スッと立つ品のある容姿のイメージそのままに、ピーンと張った芯のある美しい声でしなやかな気高い歌が心に迫って来た。裏切りが発覚した後のラダメスを救おうとする場面では代償など求めない本気の愛がひしひしと伝わり、強烈なインパクトをもたらした。ムーティの采配が一層引き締まったのはマトーチュキナの功績と云えよう。

ラダメスを歌ったガンチは、艶のある美声で高らかに将軍としての威光を放った。アイーダ役のシーリは、この役に求められる気高さや強さが伝わって来ず、それらをマトーチュキナに持って行かれた感じ。ヴィヴラートが目立つのも気になったが、ラダメスへの愛を伝える、特に最後の場面では心に沁みてくるものがあった。

アモナズロ役のヴァシレは去年の春祭の「仮面舞踏会」で最も感銘を受けた歌手(レナート役)。今回は出番が少なかったが、野太く頼もしい敵軍の王としての貫禄を見せつけた。カンポのランフィスも威厳が感じられた。日本人キャストの3人も立派に役をこなしていた。中畑有美子の巫女が歌うエキゾチックな調べは、このオペラの行く末を物語るようでもあった。

カーテンコールではマトーチュキナが桁外れのブラボーと大喝采を浴びた。そしてムーティへの熱狂!豪華な演出も何もない演奏会形式でここまでの感銘をもたらした仕事に値する反応と云えよう。一度は止んだ拍手がまた盛り返し、照明が落ちても続く拍手に再び現れたムーティが、熱狂した聴衆が差し出す手に次々と握手をする光景。これは、ベーム/ウィーン・フィルの来日時の云わば「第2指揮者」としてムーティが1975年に初来日した際、ベームと聴衆の間で交わされた光景の再現ではないか。ムーティにはベーム以上に長く元気でいてもらい、春祭でのオペラを続けてもらいたい。

東京春祭2023:ムーティ指揮「仮面舞踏会」~2023.3.28 東京文化会館~
東京春祭2021:ムーティ指揮「マクベス」~2021.4.19 東京文化会館~
東京春祭2019:ムーティ指揮「リゴレット」~2019.4.4 東京文化会館~

pocknのコンサート感想録について
♪ブログ管理人の作曲のYouTubeチャンネル♪
最新アップロード:「繭とお墓」(詩:金子みすゞ)

拡散希望記事!
コロナ禍とは何だったのか? ~徹底的な検証と総括を求める~
コロナ報道への意見に対する新聞社の残念な対応
やめよう!エスカレーターの片側空け

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 東京・春・音楽祭 2024 オッ... | トップ | 東京・春・音楽祭2024:ヴァ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

pocknのコンサート感想録2024」カテゴリの最新記事