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東京・春・音楽祭 2024 アンサンブル・アンテルコンタンポラン I

2024年04月10日 | pocknのコンサート感想録2024
4月8日(月)アンサンブル・アンテルコンタンポラン I
~東京・・音楽祭 2024~
Classics of the 20th Century
東京文化会館小ホール


【曲目】
1.クセナキス/ルボン ~打楽器ソロのための~
2.ウェーベルン/9つの楽器のための協奏曲 Op.24
3.リゲティ/無伴奏ヴィオラ・ソナタ(抜粋)
4.ヴァレーズ/オクタンドル ~8つの楽器のための~
5.ドナトーニ/マルシェ ハープのための2つの小品
6.カーター/ダブル・トリオ
7.ホリガー/Klaus-Ur ~ファゴット・ソロのための~
8.ブーレーズ/デリーヴ I

【演奏】
Vla:オディール・オーボワン/Fg:マルソー・ルフェーヴル/Perc:オーレリアン・ジニュー/Harp:ヴァレリア・カフェルニコフ
ジョージ・ジャクソン指揮 アンサンブル・アンテルコンタンポラン



世界に冠たる現代音楽のスーパーアンサンブル、アンテルコンタンポランが、東京・春・音楽祭に二夜に渡り出演すると知りチケットをセットで購入。その一夜目を聴いた。20世紀を代表する作曲家の重要作品をそれぞれ1曲ずつ並べて”Classics of the 20th Century”と題した演奏会で、コンタンポランはその実力を見せつけた。このアンサンブルは、現代音楽を、演奏の困難さを遥かに超えた次元で生きた音楽としてアクティブに聴かせてくれる最高峰の集団と云っていい。演奏順にそれぞれの感想を述べたい。

クセナキス:ルボン
リズムの饗宴が炸裂した。太鼓の膜の材質や張り具合の違いから生じるピッチや音質の変化が多彩な世界を作り、第2部ではウッドブロックが更に鮮烈な印象を加えた。ジニューのジャズドラマーのような鮮やかで熱いバチさばきは人間の原初的なテンションでたぎり、クセナキスならではの熱量に溢れた攻撃性が、精巧に表現された。

ウェーベルン:協奏曲
点描の音楽がウェーベルン的な静謐さではなく、アグレッシブに迫ってきた。プレイヤーがたった一音に熱い思いを込めて魂を吹き込み、それらが連鎖することで一つの大きな意思の力が形成されていった。コンタンポランが、ウェーベルンのイメージに新たな可能性を与えているようにも感じた。

リゲティ:無伴奏ヴィオラ・ソナタ
しっとりとした温もりと情感のある音楽をオーボワンのヴィオラが深く一心に唱えて切々と語りかけ、恐らく微分音が用いられているために生じる宙に浮いたような不安定感が、心の揺らぎを表現していた。

ヴァレーズ:オクタンドル
アグレッシブな攻めの音楽。コンタンポランの管楽器奏者がその楽器の限界点を軽々と超えて高い緊迫感を作り上げる。嬉々として我こそはと音を奏でる個々の鮮やかな演奏が、全体で大きな動きを生んで音楽を息づかせ、聴き手の気分を高揚させていった。

ドナトーニ:マルシェ
カフェルニコフのハープは、ディナミークと緩急を鮮やかに使い分け、この音楽の物語性を見事に描いていった。いつの間にか音楽の迷宮の奥深くに誘い込まれて行くような不思議な感覚を与え、ロマンチックな表現とは異なるハープの豊かな可能性を聴かせてくれた。

カーター:ダブル・トリオ
各パートがはっきりと自分の音を主張して奏で、それらがぶつかり合い、ドラマチックなバトルを繰り広げて行く。前衛音楽の旗手のような正統派で雄弁な音楽としてこの作品が伝わってきたのは、自信みなぎるアンサンブルの力によるところも大きいだろう。

ホリガー: Klaus-Ur
ホリガーの一見厳しい音楽が、ルフェーブルの手にかかるとユーモアさえ感じられてワクワクした。チュパチュパ云う音や蚊の鳴くようなか細い音、重音、だみ声、真っすぐで鮮烈な音などを駆使し、とぼけた表情や突っ込み、芝居がかった孤独やハッタリなど、多彩で雄弁な一人芝居に興じた。

ブーレーズ:デリーヴ I
緻密で繊細、知的な音楽をコンタンポランは精巧に、かつ生き生きと聴かせた。指揮のジョージ・ジャクソンが全体像をくっきりと明らかにし、この音楽の研ぎ澄まされた清澄さを鮮やかに描き出す一方で、各プレイヤーが多用する細かいトリルやトレモロが心のヒダに静かに分け入って来る感覚が、音楽に豊かな奥行きをもたらした。

サントリーホール サマーフェス2021 ~アンサンブル・アンテルコンタンポラン~ 2021.8.24
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2013 ~アンサンブル・アンテルコンタンポラン~ 2013.5.4
ブーレーズ指揮 アンサンブル・アンテルコンタンポラン2~ 1995.5.24 紀尾井ホール
ブーレーズ指揮 アンサンブル・アンテルコンタンポラン1~ 1995.5.23 東京ベイN.K.ホール

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