4月18日（木）セバスティアン・ヴァイグレ 指揮 読売日本交響楽団／新国立劇場合唱団
～東京・春・音楽祭 ２０２４～
【演目】
R.シュトラウス／「エレクトラ」（演奏会形式）
東京文化会館
【配役】
エレクトラ：エレーナ・パンクラトヴァ／クリテムネストラ：藤村実穂子／クリソテミス：アリソン・オークス／エギスト：シュテファン・リューガマー／オレスト：ルネ・パーペ／第1の侍女：中島郁子／第2の侍女：小泉詠子／第3の侍女：清水華澄／第4の侍女、裾持ちの侍女：竹多倫子／第5の侍女、側仕えの侍女：木下美穂子／侍女の頭：北原瑠美／オレストの養育者、年老いた従者：加藤宏隆／若い従者：糸賀修平 他
【演奏】
セバスティアン・ヴァイグレ 指揮 読売日本交響楽団／新国立劇場合唱団
昨日のムーティ指揮の「アイーダ」の感動が冷めやらぬその翌日、ヴァイグレ指揮の読響で「エレクトラ」を聴いた。上演時間は「アイーダ」の半分ほどだが、重量級の内容にすっかり打ちのめされた。冒頭のオケの強烈な一撃からの尋常ならざるテンションは、途切れることなく最後まで続いた。
この公演ではヴァイグレ指揮読響が凄いとしか云えない演奏を聴かせた。骨太で逞しく、巨大な塊を怪力で振り回すようなダイナミックな躍動感。ヴァイグレは仁王様のようにオケの前に立ち尽くし、オケを強引とも云えるほどの力強さでドライブし、読響はそれに一丸となって食らいついてすごい気迫で暴れまくる。その一方でシュトラウスならではの濃厚な香りと色彩も滲み出て、豊醇な響きを立ち昇らせる場面も。エレクトラのおぞましいほどの怒り、復讐への執念、それが成就した時の恍惚のエクスタシーなど、エレクトラを中心に様々な感情が渦巻く様子が音絵巻となってリアルに描かれて行った。強靭な金管、長原さんを筆頭に全体が大きく波打つ弦（ヴィオラの鈴木さんがヴァイオリンの席にいた？）をはじめ、オケ全体が大きく熱く呼吸をして一体感を作り上げた。
ソリスト達は演奏会形式でありながら演技も交え、パーペ以外はほぼ暗譜で役を歌い演じた。エレクトラ役のパンクラトヴァは、第一声でのインパクトは強くなかったが、聴き進むうちに実力がわかってきた。ほぼ出ずっぱりで声量も要求される役をこの歌唱でこなすのは並大抵なことではないだろう。スケールの大きさでは一歩譲っても、感情表現に長け、激しい負の情念を心の底から熱く歌い上げた。クリテムネストラ役の藤村実穂子は貫禄の歌唱。腰が座った濃厚な表情で、したたかさと心の奥底に潜む闇が、凄みすら感じさせる歌唱で迫って来た。
クリソテミスのオークスは豊かな声量で逞しい歌を聴かせた。熱い思いを真っ直ぐに伝える強さは圧倒的。エレクトラ役と交替してもよかったかも。オレスト役のパーペは圧倒的な存在感で威光を放った。ゾッとするような恐ろしさが全身から滲み出ている。この歌を聴いたら復讐は必ず成就されると思わせた。エギスト役のリューガマーは、出番は少なかったがこれも存在感と凄みが効いていた。侍女役の中島郁子、小泉詠子、清水華澄の冒頭での緊迫した緻密なアンサンブルをはじめ、日本人キャストも立派だった。
聴く者の心を縛り付け、演奏に引きずり込み、聴き終わった時はため息しか出ないようなスゴイ公演だった。ヴァイグレの力量に改めて感服し、これに応えた読響の底力と、歌手陣の奮闘ぶりに恐れいった。空席が多かったのは勿体ないことだが、会場は熱い興奮に包まれ、大喝采と大歓声が続いた。昨日のムーティの公演と同様、オケが退場した後も続いた拍手に応えてヴァイグレがパンクラトヴァを伴ってステージに現れ、スタオベでのブラボーを浴びた。
東京春祭2024：ムーティ指揮「アイーダ」～2024.4.17 東京文化会館～
セバスティアン・ヴァイグレ／読響名曲シリーズ～2023.2.17 サントリーホール～
セバスティアン・ヴァイグレ／読響の「ドイツレクイエム」～2022.9.20 サントリーホール～
セバスティアン・ヴァイグレ／読響のチャイ４～2021.1.14 サントリーホール～
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【演奏】
セバスティアン・ヴァイグレ 指揮 読売日本交響楽団／新国立劇場合唱団
昨日のムーティ指揮の「アイーダ」の感動が冷めやらぬその翌日、ヴァイグレ指揮の読響で「エレクトラ」を聴いた。上演時間は「アイーダ」の半分ほどだが、重量級の内容にすっかり打ちのめされた。冒頭のオケの強烈な一撃からの尋常ならざるテンションは、途切れることなく最後まで続いた。
この公演ではヴァイグレ指揮読響が凄いとしか云えない演奏を聴かせた。骨太で逞しく、巨大な塊を怪力で振り回すようなダイナミックな躍動感。ヴァイグレは仁王様のようにオケの前に立ち尽くし、オケを強引とも云えるほどの力強さでドライブし、読響はそれに一丸となって食らいついてすごい気迫で暴れまくる。その一方でシュトラウスならではの濃厚な香りと色彩も滲み出て、豊醇な響きを立ち昇らせる場面も。エレクトラのおぞましいほどの怒り、復讐への執念、それが成就した時の恍惚のエクスタシーなど、エレクトラを中心に様々な感情が渦巻く様子が音絵巻となってリアルに描かれて行った。強靭な金管、長原さんを筆頭に全体が大きく波打つ弦（ヴィオラの鈴木さんがヴァイオリンの席にいた？）をはじめ、オケ全体が大きく熱く呼吸をして一体感を作り上げた。
ソリスト達は演奏会形式でありながら演技も交え、パーペ以外はほぼ暗譜で役を歌い演じた。エレクトラ役のパンクラトヴァは、第一声でのインパクトは強くなかったが、聴き進むうちに実力がわかってきた。ほぼ出ずっぱりで声量も要求される役をこの歌唱でこなすのは並大抵なことではないだろう。スケールの大きさでは一歩譲っても、感情表現に長け、激しい負の情念を心の底から熱く歌い上げた。クリテムネストラ役の藤村実穂子は貫禄の歌唱。腰が座った濃厚な表情で、したたかさと心の奥底に潜む闇が、凄みすら感じさせる歌唱で迫って来た。
クリソテミスのオークスは豊かな声量で逞しい歌を聴かせた。熱い思いを真っ直ぐに伝える強さは圧倒的。エレクトラ役と交替してもよかったかも。オレスト役のパーペは圧倒的な存在感で威光を放った。ゾッとするような恐ろしさが全身から滲み出ている。この歌を聴いたら復讐は必ず成就されると思わせた。エギスト役のリューガマーは、出番は少なかったがこれも存在感と凄みが効いていた。侍女役の中島郁子、小泉詠子、清水華澄の冒頭での緊迫した緻密なアンサンブルをはじめ、日本人キャストも立派だった。
聴く者の心を縛り付け、演奏に引きずり込み、聴き終わった時はため息しか出ないようなスゴイ公演だった。ヴァイグレの力量に改めて感服し、これに応えた読響の底力と、歌手陣の奮闘ぶりに恐れいった。空席が多かったのは勿体ないことだが、会場は熱い興奮に包まれ、大喝采と大歓声が続いた。昨日のムーティの公演と同様、オケが退場した後も続いた拍手に応えてヴァイグレがパンクラトヴァを伴ってステージに現れ、スタオベでのブラボーを浴びた。
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