地球散歩

地球は広いようで狭い。言葉は違うようで似ている。人生は長いようで短い。一度しかない人生面白おかしく歩いてしまおう。

2011-03-09 00:00:00 | 日本語

花  

 待ち望んだ春の訪れを感じながら寒の戻りに凍える日もある3月。この時期に咲く菜の花は、日だまりや暖かさをイメージする黄色と大地に萌える若草の色だ。雛飾りの横に活けた桃の花に添えられた一輪、里山に群れて咲く黄色の絨毯、いずれも春の明るさやエネルギーを届けてくれる。

 菜の花で思い出すのは山村暮鳥の「純銀もざいく」という詩。暮鳥は明治、大正時代に室生犀星や萩原朔太郎らと活動、40歳の短い生涯をキリスト教の布教、詩歌や児童文学の制作に捧げた詩人である。

 平仮名だけの「いちめんのなのはな」が8行×3連という繰り返し。各連に「ひばりのおしゃべり」「かすかなるむぎぶえ」「やめるはひるのつき」と1行だけ異なったフレーズを挿入している。初めて読んだ時は、こんな詩があるのかと驚いた。大正時代とは思えない斬新さである。

 菜の花が延々と咲く黄色い春の野を、これほど端的に表現した詩はないだろう。文字と言葉を並べ、小さな大理石を組み合わせて作るモザイク作品のように風景を描き出している。(さ)    

いちめんのなのはな    いちめんのなのはな    いちめんのなのはな                                        いちめんのなのはな    いちめんのなのはな    いちめんのなのはな                                                        いちめんのなのはな    いちめんのなのはな    いちめんのなのはな                                            いちめんのなのはな    いちめんのなのはな    いちめんのなのはな                                           いちめんのなのはな    いちめんのなのはな    いちめんのなのはな                                                                  いちめんのなのはな    いちめんのなのはな    いちめんのなのはな                                            いちめんのなのはな    いちめんのなのはな    いちめんのなのはな                                                 ひばりのおしゃべり    かすかなるむぎぶえ    やめるはひるのつき                                                                      いちめんのなのはな    いちめんのなのはな    いちめんのなのはな

 

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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
イスラエルも (あゆ)
2011-03-09 05:58:13
初めまして^^

イスラエルも菜の花がいっぱい咲いてきました
みんなマスタードっていうけど
菜の花はマスタード・・・?
そちらはどうですか?

またのぞかせて下さい(*^^*)
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あゆさん (さらさ)
2011-03-09 21:14:33
はじめまして。ようこそ!

あゆさんはイスラエルにお住まいなんですね。
やはり菜の花が咲いている時期とのこと。私が住んでいたギリシャも今時分は菜の花がきれいでした。
「マスタード」・・色は確かにマスタードですが・・・面白いですね。

是非またいらしてください!そちらにも伺いますね。
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モザイク (mitra)
2011-03-10 19:13:10
大理石のモザイク作品に喩えているところが、さらささんらしくて素敵です。
ラストの一文を読んだ後に、実際に列をなす文字を見つめると、多彩なモザイク作品を眺めているような気分になりました。
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菜の花 (yuu)
2011-03-10 21:45:48
なかなか斬新な詩ですね~。
現代でも十分新しい感じがします^^
菜の花いいですよねー。
春が待ち遠しいですね☆
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mitraさん (さらさ)
2011-03-14 15:52:03
言葉の力を感じます。
ギリシャの島で海に向かって咲く菜の花を見た時に、昔、現国語で習った詩を思い出しました。
ちょうど習っていたモザイク的なイメージとも重なって・・・あぁ、懐かしいなぁ。
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yuuさん (さらさ)
2011-03-14 16:01:45
大正時代の作品とは思えない新しい雰囲気の詩ですよね。
菜の花はまさに春の訪れを告げる花。
雪国に住むyuuさんのところにも菜の花が咲いて春の喜びが訪れるといいですね。
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Unknown (miriyun)
2011-03-21 16:48:17
山村暮鳥さんの詩というのは初めて見させていただきました。読ませて、ではなく、見させてと思わず言ってしまうくらい文字が視覚的に迫ってくる詩です。菜の花はひとつひとつ見ることよりみ、こうして一面の花として楽しむことがおおいですものね。
文字を書くものとして、文字表現を楽しませていただきました。
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miriyunさん (さらさ)
2011-03-26 11:08:11
まさに文字によって風景を表現した「見る」詩ですよね。野に群れて咲き、春を告げる菜の花の美しく、あたたかいイメージそのまま。
大正時代の作品とは思えない新しい表現で、言葉の可能性を感じさせられますね。
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