澤山輝彦
<菊人形滅ぶ>
枚方パークで開かれている「大菊人形」展が今年で幕を閉じる。大相撲、太神楽などと同じ「大」がつく菊人形なのだ。そんな日本の伝統文化が一つ消えて行く。
美しく品格のある「大菊人形」展だが、私は子供の時一度見に連れて行ってもらったきりで、後は今日までほとんど気にもしないできた。これでは菊人形を伝統的な日本文化だから消えてしまうのは惜しいなんて言えた義理ではない。だがやはり無くなるとなればなんとかならないものかなどと言ってしまうのだ。
人形に菊の着物を着せる技術を持つ人を「菊師」と言う。この「菊師」の後継者が育たなかったのが、菊人形を終焉に導いた最大の要因なのだが、このことはもう何年も前からこの業界の問題になっていたのだ。今から6、7年ぐらい前のことになるか、全国数市の菊人形を開催している自治体が枚方市に集まって「菊人形サミット」、サミットなんて精一杯格好を付けた会議をしているのだ。ここで、後継者育成のため国に補助金を要求しようという決議をしたはずだと覚えている。だが政治的圧力が弱かったのだろうか、政治家諸先生が菊人形なんて守るべき日本文化であると思っていなかったのだろうか、とうとう今日を迎えてしまったのだ。
1億円のやりとりの記憶が無くなってしまうというのがこの国の政治家であり、首相まで努められるのである。これを思えば年間1億円もかければ、後継者の数人くらい育成できる、おつりも出るはずだ。でもそれはなかった。
日本の伝統文化を守って行くことは大事だ。だが「大菊人形」展、そのテーマは古かった。NHKの大河ドラマに飽き飽きしているのに、それを飾ってあるのだから私の足が向かなかったのは当然だ。伝統といっても古い物にただ従い、やみくもにそれを守るだけでは現代に生き残るのは難しい。伝統にも変革は必要でそれと共に前進しなければならないのであり、そこに伝統と創造が合体したものが生まれさらなる創造へと進み伝統も保存される。そうでなければ飽きられ、新しい客、観賞者を呼ぶ力にはならない。このあたりのことは「菊師」の後継者不足が主な衰退の原因とすれば、副次的な衰退の遠因だったかもしれない。
枚方パークの大菊人形は今年12月4日で終わる。見納めに行こう。そして消え行くものと別れを惜しみつつ、伝統文化を守る心を再構築するのだ。
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