道路特定財源制度を見直すと、小泉首相が唱えている。これを我々は如何に見るべきか▼そもそも道路特定財源制度とは何か。その端緒は戦後GHQの統治下で、昭和24年にガソリン税が創設されたのが始まりである。昭和28年に「道路整備費の財源等に関する臨時措置法」が制定され、昭和33年に「道路整備緊急措置法」に受け継がれ今日に至る。ガソリン税・軽油税・重量税・取得税等の自動車関連税を、道路特別会計に直入する制度だ▼近年の道路特定財源は年間約6兆円。国の道路支出の99%は道路特定財源で賄われている。一方、地方の道路支出は40%弱しか賄われず、地方債と一般財源で補っている。これに有料道路事業が加わって、年間の道路関連支出は約12兆円。道路族の温床になっている▼総務庁統計局によれば、道路関連支出の国際比較(96年度)で日本を100とした場合、米52.84・英4.95・仏6.49・独18.45・伊11.32となる。GDP(国内総生産)に占める道路支出は、日4.04%・米1.28%・英0.78%・仏0.78%・独1.45%・伊1.78%となる。国土面積当りの道路支出は日本を100とした場合、米2.14・英7.70・仏4.44・独19.54・伊14.12となる。日本の道路支出は国際的に、異常なのは明白である▼道路族は利用者が支払った税金は、利用者に還元されるべきだと宣伝する。しかし、一般道路事業全体の40%は道路利用者が負担している訳ではない。一般財源と地方債で補われている。有料道路事業にしても通行料金では返済不可能な債務が平成11年度末で、日本道路公団28兆円・阪神高速道路公団4兆円・本州四国連絡橋公団3.8兆円にも達している。最終的に税金で賄う事になる▼経済学者の宇沢弘文氏が自動車の社会的費用を計算し、その功績で文化勲章を授与されている。氏によれば、全国平均で自動車1台当りの未払いの社会的費用は、1000万円に達すると言う。公害対策費や監視費用。事故処理や交通整理の費用。事故による医療費でさえ自動車保険は一部しか負担していない。自動車1台を保有するのに、所有者の支払わない社会的費用(外部不経済)の大半は受益者外負担である▼この際、道路特定財源の一般会計への編入は当然の事である。しかしながら、自動車関連税を軽減することには問題が残る。税金の軽減により通行量が増え、公害悪化が懸念される。平成15年度末には道路特定財源の税率が、暫定税率から本則税率になり、ほぼ半減する▼さて、小泉政権は道路特定財源を都市再開発費に回すというが、道路族(橋本派)との派閥争いなのか。消費不況対策が国民の希望ではないか (コラムX)
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これは「みちしるべ」第12号(01年7月号)に掲載される予定だったけれども、掲載を見送られたもので、ここに掲載させて頂きます。
小泉内閣の驚異的な支持率に注目が集まっている。内閣支持率といっても、マスコミ各社がその思惑から、色々の手法で調査しており、結果を単純比較できるものではないが、異常に高いのは事実である▼世界の殆どの国では、政党政治が行われている。政策・公約で政党を選ぶのであり、人物で選ぶ傾向が強いのは、政治レベルの低さの指標といえる。政党政治が発達していれば、内閣支持率は与党に投票した人以外、支持しないのが普通である▼小泉政権が生まれたのは、次の選挙で自民党が有利になる為の、自民党内の都合である。小泉氏が首相公選制を公約したのを、何か勘違いしているのではないか。与党を支持している訳でもないのに、与党支持者以外が熱狂するのは馬鹿げている。長引く不況で藁をも掴みたい、閉塞感は国民的に蔓延している。何か変化の兆しを感じたからと、弁護できないことも無い▼しかし小泉内閣が打ち出したのは、パフォーマンスは別として、従来の内閣の延長線でしかない。国債発行の制限は橋本内閣でも打ち出し、株価低迷で小渕内閣が取り消した。特殊法人の民営化では、中曽根内閣が国鉄民営化を実行した。サービス低下・負債の国民負担の結果に終わったのは歴史の経過である。道路特定財源の見直しでも、都市再開発の公共事業に使うのでは、道路族(橋本派)との派閥争いでしかない。郵政民営化は、200兆円の郵貯を銀行に譲るだけで、国民に利益は全く無い▼細川の殿様の時も、70%の高支持率があったのを忘れたのであろうか。短命内閣であったが、米の輸入自由化への前提である、ミニマム・アクセス以外に成果(悪政)は見当たらない。熱狂的支持の中身と結果は、経験済みといえよう▼全国選挙に於いて、必ず投票行動を取る有権者は4割。投票したことの無い有権者が3割。必ず投票する有権者の半分が小泉内閣を支持するのは、与党支持なので理解できる。余り政治に関心の無い有権者(3割)、全く無い有権者(3割)、与党支持者(2割)が支持しているものと推測できる▼最近、新聞の読者欄を注目しているのであるが、小泉信奉者の意見は全く登場もしない。編集者の意図的行為か、投稿する人に小泉フィーバーが無いのであろうか。いずれにしても、「裸の王様」とその従者たちを想起する。今回裸なのは、王様ではなく従者のようである▼意識をもって小泉支持をするのは結構であるが、「お昼のワイドショー的」支持には困ったものである。日本の政治的低さを世界に示しているようである (コラムX)
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