道路4公団(日本・首都・阪神・本四)の民営化が言われている。放漫経営を極めたから仕方ない? コラムXとしては、公団連中の擁護者ではないが、チョット待ってくれと言いたい。道路4公団を民営化するというのは、如何なる事なのか▼特殊法人だから放漫経営で、民間なら健全か? バブル以降の銀行・証券・保険会社は健全だったか。特殊法人だから放漫になるものではない。民間会社は市場競争原理で淘汰されるが、淘汰されては困るから、特殊法人で運営されてきた筈だ。福祉・医療・教育などが代表例だ。営利目的では成り立たないが、必要だから公的資金を投入して国民生活を支えてきた▼最近これらの分野でも民営化が進んだ。介護保険制度が代表例。高齢者福祉は本来、税金で行う福祉であった。税収が不足するので、福祉を廃止して保険にすると言う。福祉施設増設は止めて、民間業者に税金を投入して任せる。結末は、福祉切り下げ(本人負担の増額)と増税(介護保険税)、国民資産の民間への譲与でしかない。▼話を元に戻して、車の所有者は高額で車を購入。その他に、自動車取得税・自動車税・重量税・ガソリン(軽油)税・自動車保険料・通行料金などを支払う。これだけ払ったから、車を走らせる権利があると思っている。しかし経済学者の宇沢弘文氏によって、自動車1台あたりの社会的費用は、全国平均で1千万円も未払いである事が明確になった。その論文により国は氏に、文化勲章を授与した。各種税・料金の上に、まだ1千万円も支払えなどと言われると、車に乗る人などいなくなる▼だから道路建設・整備・維持費は、車の利用者の負担だけでなく、一般道路でも40%は税金(大半が地方債)で賄っている。それでも道路が不足するとして、高速道路や自動車専用道は借金で建設し、通行料金で借金を返済しようとした。それを道路4公団と地方道路公社が任されてきた経緯(有料道路制度)がある▼現在、道路4公団には40兆円に及ぶ負債がある。右肩上がりの経済が、今後永久に続くと仮定して、通行料金と多少の税金投入で返済は40〜70年後になる予定だ。対して、現在建設中の道路を含め、今後予定していた道路建設を一切中止した場合、本四公団を除いては30年程度で負債を克服できる筈だ▼全国トラック協会は、通行料金値上げするのなら、新たな高速道路は要らないと宣言している。世界的に言っても、日本の自動車専用道密度は驚異的である。最早、新たな有料道路建設の必要性は皆無に等しい。必要なのは、交通政策と国土利用政策。社会的必要もないのに、交通量が極端に多い。都市への人口や企業の集中は、過密による効率低下が甚だしい。やるべき事をやれば、新たな高速道路建設は殆ど必要ない。道路4公団の展望はまだあると言える▼ここへ来て石原行政改革担当大臣は、新たな高速道路建設の中止を主張する。小泉首相は何故、それを決断できないのか。彼にはそんな気は一切ないからである。石原大臣でさえ、オトッツァンが高速道路(首都圏中央環状道路等)推進派だから内心は、その気はない。道路族・防衛族の利権は膨大で、自民党最大派閥の橋本派、その金庫の多くを賄っている事は、小泉・石原氏も承知のこと。小泉内閣が「お昼のワイドショー的」又は「週刊誌的」人気があっても、その利権を侵しては存続できない事は、中枢の議員なら誰でも承知している▼阪神高速の山間部を通る道路建設でさえ、土地収用費がキロ当たり30〜40億円、坪単価20〜50万円にもなる。ゼネコンの入札も不透明極まりない。それらの収用費や建設費の一部は、有力政治家に還流する仕組みになっている。公団本体は極めて収支が悪いのに、外郭団体は法外な利益をあげ、官僚が天下る。特殊法人問題は、ここにメスを入れる事にある。小泉内閣にそれを期待するのは、池に写る月を欲しがるようなもの▼喉もと過ぎれば…である。国鉄分割民営化で、国民が得たものは何だったか。地方の足であるローカル線の廃止。それらの赤字は全部集めても、東北新幹線の赤字には及ばないと言うのに。運賃の値上げは天井知らず、JR離れは高速道路の渋滞に手を貸した。貨物の撤退により、欧米には見られないトラックの氾濫が生じた。整備新幹線の建設は止まったか? 税金の投入による延伸は止まらない。結局、国鉄赤字は清算事業団によって膨らんで、国民の借金にされた▼国鉄(国民)資産は、ただ同然でJR各社に払い下げ、JR株が残った。そのJR株もバブル崩壊で、殆ど市場で売れない。JR株の市場放出は株価の低迷に拍車をかける。NTT株も同様だ。更に道路公団受皿会社の株など、紙屑に過ぎない。民営化など夢物語だ▼公団民営化で考えられる事は、通行料金値上げ。道路のメンテナンス低下で、事故は増加。キロ単位で億単位の維持費が係る。公団リストラで失業者が増大。反面、民間財界人の役職ポストが増える。当然利用者は減少し、道路公団の負債は解消されず、結局消費税の数%の増税と、経済の縮小で不況の深化を招く。環境に優しいと言えばそれまで。民営会社の株は売れず、資産の回収不能。強行すれば株価の下落▼小泉内閣が言う道路公団民営化は、行き着くところ、自らの責任転嫁に過ぎない。今の問題が解決出来ないのに、民営化で解決出来るものではない(コラムX)
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