凛太郎の徒然草

別に思い出だけに生きているわけじゃないですが

バックフリップ

2007年02月14日 | プロレス技あれこれ
 本当はカート・アングルが来日することでもあるし、アングル・スラムとその周辺の技について書こうと思っていたのだが、いろいろ考えていると相手を担ぎ上げるという点で先に書かなければいけない技があった。バックフリップである。

 バックフリップという技はどういうものであるかと言えば、つまり相手を横方向に肩に担ぎ上げて(そのとき相手の状態はうつ伏せ)、そのまま自ら後方に倒れて(相手に体重を預けるようにして)相手の背中からマットに叩きつける技である。自らが足を跳ね上げてジャンプするようにすれば体重の乗りに勢いがつきダメージが大きくなる。叩きつけた段階で完全に相手の身体の上に自分が逆立ち状態で乗っていれば完璧。つまり、肩から落ちるセントーンみたいなダメージが生じるだろう。これは効くはず。
 ところで、よくバックフリップとブロックバスターが混同されていることがある。実況アナですら間違っていることがある(セントーンとサンセットフリップを間違えるように)。ブロックバスターとは、相手をボディスラムのように抱え上げ(肩に担ぎ上げるのではない)、そのまま後方にブリッジして投げる。基本的にはブリッジで投げるためスープレックスの一種とも思われ、相手の身体の上に自分の体重を預けることがない。

 したがって、バックフリップは自分の体重が相手に乗れば乗るほどダメージが大きくなると思われる。重いレスラーがやると有利で、サモアの血を引くグレート・コキーナが多用した。その時は「サモアン・ドロップ」と呼ばれていたように記憶している。コキーナは「ヨコヅナ」のリングネームでもおなじみで、その230kgとも言われる体重で相手を押し潰した。ヨコヅナも早死にしたなぁ。確かまだ30代半ばだった。
 バックフリップはなかなかフィニッシュホールドにはなりにくいが、マイク・ロトンドはこれでフォールを奪える貴重なレスラーだったと思う。スティーブ・ウィリアムスと共に世界最強タッグを制した「マイコーさん」。いいキャラクターで僕は好きである。
 そういえば、ハックソー・ヒギンズはどうしただろうか。彼のバックフリップは強烈だった。肩の肉が盛り上がった体躯は、それだけでバックフリップを放つのに適した身体だった。バックフリップ一発で木村健悟のアバラを折り、猪木をKO寸前にまで攻め込んだヒギンズ。何故かすぐにフェイドアウトしてしまったのが残念である。二流だったのかなあ。
 日本では、やはり思い出すのはアニマル浜口である。エアプレン・スピンでぐるぐる回して後ろへどすんとバックフリップ。定番である。浜口は体重がさほどではないので、なかなかフィニッシュには結びつかなかったのが残念だ。気合だけではなんともならない。でも勢いがあって格好よかった。

 なお、全然違う話になってしまうのだが…。
 バックフリップで投げる場合、相手をうつ伏せで横方向に、自分の肩に担ぎ上げる。この状態を僕はずっと「エアプレンスピン状態」と言ってきた。前述のマイク・ロトンドもアニマル浜口もエアプレンスピンで相手をぐるぐる回してからバックフリップに移行する。
 しかしながら、エアプレンスピンはその名の通り「スピン」つまり回転を伴う技であり、相手の三半規管を狙う技。ただ担ぎ上げるだけでは「エアプレンスピン状態」とは言わない。でも「バーディクト(F5)」のときも「ランドスライド」のときも「エアプレンスピン状態」と書いてきた。なので謹んで訂正させていただきます(汗)。
 じゃなんと言えばいいのかと言えばそれは「ファイアーマンズキャリー状態」というのがどうも正しいようである。「ファイアーマンズキャリー」というのは、消防士(ファイアーマン)がハシゴを担ぐ様子に似ているからそう呼ぶのだそうだが、つまり柔道で言う「肩車」であり、しゃがんで相手を側面から担ぎ上げて投げ飛ばすという技である。長州力が以前よく多用していたという記憶があるが、そのときは「ファイアーマンズキャリー」とは呼んではいなかったなあ。比較的新しい名称、「デスバレーボム」を高岩がやりだしたころから耳に入るようになってきたような記憶があるが、ちょっと検索するとかなり古い名称らしい。海外はともかく、少なくともあまり日本では聞き馴染みはなかったように思うのだが。これは僕の見方が悪かったのかもしれない。
 「飛行機投げ」というのはこの「ファイアーマンズキャリー」と同じものなのか? どうも肩車は側面に投げる、飛行機投げはそのままブンと投げ飛ばすイメージあるのだが…。まだよくわからない。誰か明確にご教授していただけないものか。

 閑話休題。バックフリップという技は、相手を横方向(ファイアーマンズキャリー状態)に担ぎ上げて後ろに落す。その際に自らの体重を相手に乗せることによって威力を発揮する。この決まり方で、実に近いなと思う技がある。相手を担ぎ上げるのに横方向ではなく縦方向に担ぐ技。つまり「水車落し」である。自分の体重を肩から相手にのしかからせる面においては同じであると言える。亜流とは言わないが同系統であると見られないか。
 「水車落し」は、両足タックルから相手を担ぎ上げる。そして相手の片腕を取り固定して一気に後ろへひっくり返る。もちろん、サルマン・ハシミコフの必殺技である。そのひっくり返るスピードが速いので、完全に肩から体重が相手に乗る。最初に見たときは「え、こんな単純な技でフォールが奪えるの?」と疑問にも思ったが、何度も見てビデオでスロー再生などすると、かなりダメージが大きな技であることがわかった。自分の体重を完全に活用していた。しかし地味に映るのはしかたがなかったのだが、この技一本でハシミコフはIWGP王者にまで登りつめるのである。そこまで来ると技に貫禄が出てくる。

 バックフリップから話がまた反れるが、一時期新日本プロレスを席巻した旧ソ連のアマレス軍団、いわゆる「レッドブル軍団」のことを懐かしく思い出す。
 あの時猪木は、ソ連のペレストロイカ(懐かしいですね)を機に、ベールの向こうに居たアマレスのツワモノどもをリングに上げることに成功する。ソ連側の大将はソスラン・アンディエフ。フリースタイル重量級オリンピック二連覇。身長2mはあるという凄まじき男で、カレリンみたいなもんだったのだろう。カレリンはグレコだが。だが、アンディエフは交通事故かなんかで来日不可となってしまう(本当だったのだろうか)。なのでドーム大会では柔道のチョチョシビリが代役となって猪木を裏投げ三連発で破るという衝撃の結果となったのだが…それはさておき。
 アンディエフが来なかったので、前評判では№2と言われていたハシミコフが大将格となる。ちょっと格が落ちるのかな、残念と思っていたらこのハシミコフがとんでもない男だった。あのビガロ(涙)との一戦は今でもまざまざと思い出される。研ぎ澄まされた刃同士の戦いに見えた。そして、ドロップキックやジャンピングハイキックを放つビガロを水車落しでフォールしてしまったのだ(当時はまだ水車落しという名称はなかった)。
 ハシミコフは身長が低く(180mほどか)アンディエフと比べて迫力に欠けるのかと思っていたら、体重が140kgもあり、体重制限でオリンピックに出なかったとの話すらある実力者。重いのに動きが素早い。そして、ビクトル・ザンギエフ、ウラジミール・ベルコビッチ、チムール・ザラソフ、ワッハ・エブロエフらの面々。彼らはプロレス慣れするのにさほどの時間を要しなかった。確かマサ斉藤が「やつらの性格は怖ろしくトンパチである」と言ったとおり闘志むき出しでいかにもプロレス向きだったのだろう。何よりもそのスープレックスが凄かった。フロントスープレックスと言えば、胸と胸を合わせて投げるというイメージがあったが、彼らはそんなことお構いなしで自分の腕さえロック出来ればもうバンバン投げてくる。そして素早い。受身を取らせることをあまり意識していないのでそれがまた怖い。
 その後、ブラッド・レイガンス(大好き♪)を参謀役に、USAアマレス軍団との抗争も始まる。バズ・ソイヤー(彼も死んだな)、スティーブ・ウィリアムス(死ぬなよ)らと実に危険な香りをプンプンさせながら戦った。普段ラフプレイの多いアメリカのレスラーが実にアマレス的実力も兼ね備えていたことがわかり、興奮したものだった。
 ハシミコフはそして、ついにビッグバン・ベイダーを破りIWGP王者に輝く。もちろん必殺の水車落しで。この頃が頂点だったのだろうが、その後は様々な事情もあったのだろう、徐々に衰退し消えていくのである。旧ソ連の解体もあり、不安定な時代。惜しいな。しばらくしてハシミコフらはUインターにも登場するが、既に全盛期ではなかった。輝きは長くは続かなかったのだ。
 水車落しは、藤田や中西らのアマレス系のレスラーが今も時折見せる。だが、フォールを奪えるような技として甦ったわけではない。あれは体重を完全に相手に浴びせるだけのスピードがないと通用しないのだ。そういう意味では、豆タンク的身体であの瞬発力を兼ね備えたハシミコフ一代の必殺技であったのかもしれない。

 バックフリップから話が完全に反れてしまった。

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9 コメント

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ブッチャー (ヒロリン)
2007-02-15 22:21:52
 「バックフリップ」と言う技の名前を聞くと、アブドーラ・ザ・ブッチャーが鶴田からUNヘビーを奪取したときの「山嵐流のバックフリップ」を思い出すのですけれども、あれはやっぱり亜流ですよね・・・・。

 ブッチャーの試合ではその後も「バックフリップ」は使われたものの決め技となったのはあの試合だけだったかと記憶しているのですが・・・。

 ところで、カート・アングルはなにげに期待しているのですよ。WWE出身とはいえアマレスが基盤ということと、関節技が使えるということで日本向きかと思っていたのですが・・・。
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印象にあるのは (明石家_1955)
2007-02-16 20:47:33
やはりアニマル浜口さんですね。
エアプレインからの流れが良かったです。

カートアングル 起爆剤となってくれればいいんですが
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>ヒロリンさん (凛太郎)
2007-02-17 08:18:54
おっと山嵐式が出てきた(汗)。これは痛いところを突かれました(笑)。
山嵐式バックフリップについては、どう言及しようか迷いました。あれは本当にバックフリップなのか、と。相手の上半身を完全に固定しない投げ方(引っくり返り方? 倒れ方?)なので、バックフリップより天山がやる大剛式バックドロップに近いようにも見える。
亜流なのかそうでないのかはもうわかりません。
なので次回、アングルスラムを含めたデスバレーボム系の技について書こうと思っていますが、その際に比較対照の技として山嵐式にも触れようかと思っていました。どこから落ちればバックフリップなのか、或いはデスバレーボムなのかという観点ですね。
でも一応山嵐式も「バックフリップ」と名乗る以上、ここで書くのが正しかったですね。いやぁどうもすみません。

なお、「デスバレーボム」の記事はカートアングルの試合を観てから書こうと思っています。関西でも放送はいつになるかわかりませんけれどもね(汗)。
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>明石家はん (凛太郎)
2007-02-17 08:25:21
アニマル浜口はヘビー級と言っても小さかった。100kgあったのかな。そんな浜口が自分よりもはるかにデカい相手をブンブン振り回して投げる。確かにバックフリップは体重が重いほど有利で浜口には向かない技だったかもしれませんが、あの姿には男気を感じましたね。気合だー。

まあカートアングルについては、起爆剤となるほど日本に居ないので(汗)。アングルスラムの角度だけはしっかりと見たいと思っていますが(笑)。
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ハシミコフ~ (jasmintea)
2007-02-17 18:10:41
ごめんなさいすっかり話がズレてしまった方に引き込まれてしまって♪
懐かしい名前が並んでいます。
バズ・ソイヤーは亡くなったんですか??
知らなかった
スティーブ・ウィリアムスのバリバリアマレスの実力は驚きましたね~。
ん、、、、懐かしいなぁ

話がズレたプロレス雑学や思い出のシーンもたくさん書いて下さると嬉しいです
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>jasminteaさん (凛太郎)
2007-02-17 21:41:14
話がズレたと書いていますが、なーにハシミコフの話も書きたかったわけで(笑)。
バズ・ソイヤーが亡くなったのはずいぶん前ですが、スティーブ・ウィリアムスは先日、喉頭癌と闘っていましてね…。なんとか克服した、と言っていいと思いますが、プロレスはさすがに引退です。でも助かってよかった。
アマレス系のレスラーもなかなか厳しい。やっぱり早く亡くなったゲーリー・オブライトも思い出されますね(涙)。
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カート・アングル♪ (jasmintea)
2007-02-26 21:56:51
25日深夜は酔って帰ってきたのに手の甲をつねりながら(バカじゃん?と言われ「そーよ、プロレスバカよ」と開き直っていた)新日を見ました。
ベイダーが初来日した時みたいにワクワクしていたんですよね
試合のことは置いて、、あの風貌に惹きつけられます
日本で多く試合をしてくれたら嬉しいのですが!
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追伸 (jasmintea)
2007-02-27 23:38:10
わーーーい
lintaro's barの「12345」をget
イイ番号をありがとう~

でね、おねだりしても良いですか??
「僕の旅 高知県」をリクエストしまぁす
急ぎませんので、ぜひに!私が土佐に行く夏頃までに教えて下さるととーっても嬉しいです
と、図々しくもお願いでごめんなさいでした
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>jasminteaさん (凛太郎)
2007-02-28 22:32:06
カートアングルの試合、ようやく観ました(関西は放送が遅いのね^^;)。僕は技の入り方、角度なんかを中心にして見がちなのですが、彼のスープレックスは本当にレッドブル軍団を思い出させますね。つまり力ではなくタイミングで投げる。だから身体が密着しなくても相手が宙に浮く。これは最近ではなかなか見られない投げだなぁと感心していました。
アングルスラム(オリンピックスラム)については、ひとつの結論を見たように思います。これはそのうちに「デスバレーボム」として自分なりに書いてみようと思っていますので、もしよろしければまた見てやって下さい。

ところで、lintaro's barの12345を踏んでいただいたとか。
本当にありがとうございます。m(_ _;)m
いつもキリのいい数字をjasminteaさんに踏んでいただいて嬉しいです。あの今では何もコンテンツのないHPがどうもまだ生きているということは本当に不思議なことではあるのですが、動いているということを素直に喜びたいと思っています。
ところで、高知編はいずれ書きますが、その前に香川を書かなくっちゃなぁ(笑)。でもいくらなんでも夏までには書くと思いますが。しかし、「僕の旅」は思い出話なので、jasminteaさんのお役に立てる内容になるかどうか…(大汗)。
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