凛太郎の徒然草

別に思い出だけに生きているわけじゃないですが

僕の旅 福岡県

2007年09月30日 | 都道府県見て歩き
 サラリーマンの単身赴任先で人気なのは札幌と博多が双璧なのだそうである。その気持ち分かるな。僕は子供の転校とかそういうことはないので単身赴任ということは今後ありえないのだけれども(まずカミさんは一緒に来る)、ここは本当に楽しそうな街だと思う。もちろん遊ぶのに、である。
 今はやっていないけれども、僕は何度も博多に0泊で遊びに行ったことがある。しかも廉価で。
 18きっぷ(春夏正月の期間限定発売JR普通列車乗り放題切符)のシーズンになると、つい日頃の鬱屈を晴らそうと、夜行鈍行列車ムーンライト下関(現在は廃止)の指定券をつい購入する。これは神戸発0:45分だったので一日乗り放題切符の使用者には実に都合がいい。そうして早暁に下関に着き、朝にはもう博多に居ることが出来る。
 せっかく乗り放題なので昼は佐賀や大宰府などに足を運び(長崎まで行った事もある)、夕刻の時分時に博多に帰ってくる。そうして、楽しい中州・天神ナイトを満喫するのである。
 ホテルなどには泊まらない。ここでは呑み明かすに限る。何軒も店をハシゴして遊ぶ。そして、始発電車が動くと同時に帰路につくのである。ゆっくりと寝て帰ってくる。
 遊ぶのに相当金を遣うが、大阪のキタで呑むよりずっと安い。それに地元でないことからなんだか浮揚感があり楽しい。遣うお金は呑み代を除けば往復の切符代(2300円×2)と指定券代だけである。これでよくストレス解消をした。もちろん一人で行く。金曜日の夜に「これから博多に行ってくるから」と妻に言うだけ。別に福岡に愛人を囲っているわけでもないので(そんな財力はない)、妻は「ああそう。気をつけて」と言うだけ。その代わり、5枚一組で購入する18きっぷの残り三枚は妻に進呈する。これでどうぞ讃岐へうどんでも食べに行ってらっしゃい。
 30代の頃は元気だったなぁ。こういうことも昨今ではご無沙汰である。

 初めて福岡にやってきたのは、毎度書いていることだが自転車旅行の折であった。京都から山陰を回り下関までやってきた僕は、壇ノ浦をウロウロとしたあと関門トンネルへと足を踏み入れた。自転車で九州に渡るにはこれしか手段がないのである。ここには有難いことに、自動車専用のトンネルや高速の関門海峡大橋以外に、人道トンネルも設置されている。エレベーターに乗って地下へと降り、海峡の下をチャリンコ押して歩くのだ。自力で行けるというのがいい。
 ちょうど真ん中へんに県境標識がある。その「福岡/山口」の表示の前で記念写真を撮り、またエレベーターを使って僕は九州第一歩を門司に踏みしめたのだった。
 博多までやってきたのは夜だったが、その日はちょうど大濠公園の花火大会の日だった。何千発も上がる華やかな花火の競演に僕は酔いしれた。個人的に、九州上陸の祝砲にも思えて堪能したことを憶えている。

 あれから20年以上も経つ。僕は前述したように時々は福岡へ旅行に行くようになった。もちろん鈍行列車で行くばかりでもなく、ちゃんと新幹線なども利用することもある。金沢在住時代は夜行バスも使った。ここは九州の表玄関であり交通至便の場所であるのでどうやっても行きやすい。
 本州側から言うと最初は北九州市であるわけだけれども、この殺風景な合併地名となってもう40年以上経つのだが、未だに頑なに門司は門司、小倉は小倉であるような気がしてしまう。それほどそれぞれ個性がある(もっとも旅行者の視点であるので、本当のところは知らない。また、戸畑には全然行ったことがないのでよくわからない)。
 門司はレトロの街として有名である。ちょっと映画のセットのような感じもしてしまうが、ここでの白眉は門司港駅であって、この駅ほど終着駅・始発駅の趣を残しているところは無い。比べるべきは函館駅や上野駅の13~17番線だと思うが、頭端式ホーム(櫛型)であることが大きい。また長崎駅や高松駅と違って歴史の重みを感じる。風情があるのだな。列車に乗っていると盲腸線であるため通り過ぎがちだが、0マイル標もあるので訪れる価値ありである。
 小倉はかつて僕は仕事で大失敗をしてしまったことがあり微妙に避けてしまうのだが、なんと言っても大都会である。旦過市場のおでん屋台は実に風情があるが、ここは酒を出してくれないのでちょっと寂しい。ただおはぎは美味い。

 博多に行けば、そりゃもう楽しい事だらけで居るだけで浮き立つ。どんたくや山笠には出逢ったことがないが、さぞかし凄い活気なのだろうな。そういうことが容易に想像される。
 歴史の薫り高い街であり、鴻臚館跡、元寇防塁その他歩くべきところも多い。あの金印で名高い志賀島にも船に乗ればすぐである(僕は最初バスで行ってえらい時間が掛かった)。
 また、能古島には三度ほど訪れている。何故この島に何度も訪れてしまうかと言えば、それは壇一雄終焉の地であるからだ。このひとにどうしても僕は昔から魅せられ、足跡を辿ってしまうのだが、能古島はなんだか格別のものがある。

  モガリ笛 いく夜もがらせ 花ニ逢はん

 この放浪の作家には何か惹きつけられて止まないものがある。その晩年を過ごしたささやかな旧宅を訪ね、素朴な島の道を歩く。また対岸を見れば大都会博多。死期を悟ったかの作家は、何を思いきらびやかな街を対岸から見続けていたのだろうか。
 (※追記:この旧宅は今はもう無い。関連記事→能古島で思う)

 歴史散策に大宰府は避けて通れない。菅原道真と天満宮のみならず、かつて「遠の朝廷」と呼ばれたこの地は、歩くべきところが多すぎる。政庁址や観世音寺、戒壇院、水城等々。ところで、国立博物館が2年前に開館しているのだがまだ行っていない。これは僕も由々しきことだと思っている。早く行かなくては。(追記:その後行った→博多の桜と大宰府と)
 また、糸島方面へ行けばそれは魏志倭人伝の世界である。また「宗像」という地名を聞くだけで腰が浮く。いずれも日本古代の謎を秘めた土地ばかりである。楽しい。実に楽しい。

 柳川へと行けば、ここは北原白秋と、水郷川下りで高名な情緒ある街であり、立花宗茂以来の伝統ある歴史ある城下町。そして、ここに壇一雄の墓がある。行く度に墓前へと立ち寄り手を合わせる。そして鰻の蒸籠蒸しを食べるならわしである(壇一雄風)。
 秋月の乱で知られる朝倉秋月や(ここは一度行く価値あり)、筑豊の町々などもう行くべきところは列挙に暇がなく、書きつくせないのでそろそろ記事も終えなければいけないのだが、もうひとつ書きたいのは、とにかく福岡は食べ物が美味いということである。

 福岡県は三都物語とも言える。北九州・博多・久留米だ。それぞれ独自の文化を持ち、また美味い食べ物が多い。
 ラーメンひとつ採っても違う。博多ラーメンと言えば、もう全国を席巻するトンコツで名店も多いが、初めて久留米のラーメンを食べたときには驚いた。それは郊外の「丸星ラーメン」で、やはりトンコツベースで濃い味だったのだが、ちょっとワンランク上であるように思えた。それから久留米ラーメンにはまり、あちこち食べ歩いた。いずれも美味い。僕は久留米を九州ラーメンでは最上位に押す。
 北九州地区はまた独自の文化圏で、ラーメンもトンコツであるのだが、見た目具が多い。ここは筑豊地区と繋がっているらしい。面白い。
 北九州地区といえば、うどんにも独自の世界がある。「かしわうどん」ってやっぱりここのものだな。甘辛く煮た鶏肉とうどんの相性が抜群。別に名店は知らないが、「資さんうどん」とか好き。博多のうどんと言えば「ごぼ天・丸天」なのだが。また、小倉といえば焼きうどんの発祥の地。独特だ。
 久留米のグルメ(オヤジギャグ)と言えば焼き鳥。これもまたまた愉しいものだ。特徴が多いのだが、なんと言ってもダルム。この牛小腸をカリカリに焼いた串はたまらなく美味い。焼酎が進んで困る。ダルムで一杯やってラーメンという取り合わせは止められないものだ。

 博多は「食都」である。そのことに異論のある人はいまい。
 僕は観光客であるので、どうしても最初は屋台に足を運んでしまう。屋台のハシゴもいい。某屋台で焼きラーメンとどて焼き、明太子入り卵焼き。そして某屋台でめちゃくちゃ安い天麩羅。ここには豚のてんぷらがあって美味い。そしてちょっと足を伸ばしてカクテルの屋台。
 屋台は火の入ったものでないと供されないが、美味い魚が食べたければ第三共進丸とかね。ここで天然伊勢海老造りをニ千円で食べたり、他にも無茶苦茶安い値段で新鮮な魚がわんさか(かまぼこも美味い)。最近は行ってないけれども、今でも焼酎一杯100円(自己申告制)なのか。
 白魚の踊り食いというのもやったな。これ、普通の居酒屋で食べた。こんなの普通料亭でないと出してくれないのじゃないのか。博多は奥深い。
 もう、博多はいろいろあって食べきれないのである。鳥の水炊き、モツ鍋、鉄鍋餃子、フグ、イカ活き造り…。どうしようかと思う。胃袋が四つ欲しい(それじゃ牛か)。もうあれもこれも状態になって、結局みんな食べきれずに未練タラタラで帰るのである。
 この未練というものが、次の旅への原動力となる。しかし食い意地だけのような気もするのだが。

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4 コメント

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「宗像」 (jasmintea)
2007-09-30 23:04:49
これは胸キュンものですね。
福岡県は歴史の宝庫ですからやっぱり行きたいです♪
先般は台風の影響で泊まっただけでしたから今度はゆっくり行きたいなぁ。
(空港にへばりついていないといけないのに博多ラーメンだけは食べましたが♪)
豚の天ぷらってイメージが湧かないですが赤身が多い薄切りを揚げるのかな?野菜を豚肉で巻いたフライはよくありますが…。もしかしたらから揚げのイメージ???

って、最近マジメにダイエットしているのでこの記事は胃の毒ですね!(焼酎1杯100円が一番惹かれました
返信する
>jasminteaさん (凛太郎)
2007-09-30 23:56:43
福岡は歴史に絞っても見ごたえがあるのですね。といいますか僕は早く国立博物館に行きたい(汗)。
最近高市皇子のことをよくお考えのjasminさんですと「宗像」はビビッとくるでしょうね。宗像大社も沖津宮に行くわけにはいきませんが、辺津宮(いわゆる大社)には「高宮祭場」という聖地があります。この間の三輪山の記事のときに書き落としたなぁ。

豚のてんぷらは、おっしゃるとおり薄切り肉に衣をまとわせたてんぷらです。カリ、ではなくとても柔らか。書いちゃうと「喜柳」っていう屋台なんですが、とにかく安いんですよ(笑)。
焼酎一杯100円ってのは自己申告制で、カウンターの後ろに焼酎が何本も無造作に置いてある。それを勝手に取ってきてお湯割にして呑んでいいんです(笑)。僕は黒糖焼酎をいつもチョイス。で、何杯呑んだか言う。お湯割りも自分で作るので濃い目に作ってもいい(汗)。こんなもん酔うしかないですよね。実に嬉しい方式。
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火宅の人 (まるちゃん)
2007-10-02 06:32:22
九州は 個人的にもロマンの地だなあ。
火宅の人が身内をどのように大切にしたかに 思いをはせる地。
矛盾するようなことを人間はやってしまうモノだと しみじみ思う地。

屋台で酌み交わしたいなあ 凛太郎さん!
食いしんぼも 負けないよ。
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>まるちゃん (凛太郎)
2007-10-02 22:42:16
火宅の人ってのは本当に感情が過剰に溢れている人だと思います。生き方を決して肯定してはいけないのでしょうけれども、その優しさと粗忽さが同居する心の内は何か刺さるものがある。僕は「天然の旅情には忠実でありたい」と思ってもとても具現化は出来ない男なんですけれどもね。福岡に居ればしみじみそんなことを思います。

一杯やりたいですね。屋台でアホな話でもして(笑)。
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