10年ほど前のこと。同じ職場のオーストラリア人女性のこんな言葉に、違和感を感じたことがありました。
「私は、人種にはこだわらない。アボリジニの友人だって、黒人の友人だっている。」
「本当にこだわっていないなら、友人をそんな風に分類(?)しないんじゃないかな?」と思ったのは、きっと、その少し前に、ニューヨーク出身の同僚のこの言葉があったから。
「本当の国際交流ってのはね・・・私が、ここで誰かに紹介される時に、アメリカ人の○○さんと言われなくなる日が来ることだと思う。」
なるほどなぁ・・・と思いました。人種のるつぼと言われるNY。白豪主義が長く続いたオーストラリア。活字では何度も読んでいても、何と言うか、初めて、リアルに「何か」を感じた瞬間でした。
今回の東京行きで、このエミリー・ウングワレー展を見たいと思ったのは、私自身のこの経験からです。
1970年代に、移民政策に大きな転換があったオーストラリア。しかし、長く続いた政策だけに、人々の心が、政策の転換と同時に変われたとは考えにくいと思います。元同僚も、人種差別がいけないことは十分に解っていたと思います。ただ、その転換期の真っ只中に生まれた彼女の周囲では、まだまだ差別が残っていたことは想像に難くないし、だからこそ、良くも悪くも、何かにつけて「意識して」マイノリティーと接してきたのでしょう。実際、一緒に仕事をしている時も、ふとした瞬間にそのことを感じました。
話をエミリー・ウングワレーに戻すと・・・
オーストラリアの砂漠地区で生まれた彼女が、絵筆を持つきっかけとなったのは、政府が進めていたアボリジニに対する教育プログラム。教育プログラムと言えば耳障りが良いですが、生まれ故郷を離れ、政府が決めた地区に住むことを強制され・・・後に生まれ故郷に戻ることが出来るのですが、作品からあふれる彼女への故郷への熱い気持ちに接すると、その時の彼女の苦しみを思い、複雑な気持ちになりました。
どの作品からも、「力強い」とか「熱い」と言うありきたりの言葉では表せない、とてつもなく大きなエネルギーを感じることが出来ます。自然と一体化した作品の数々は、見る人々の心を揺さぶる力を持っています。
お時間のある人も、そうでない人も・・・この展覧会は、ぜひぜひ見てください!
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