軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

引っ越ししました

2009-05-31 07:43:40 | その他の雑記
 。。。引っ越しは2日前に済んでるんですが、急いでたから闇雲に荷物を段ボールに放り込んだので、どこに何があるのかわからない。生活に必要な最低限の品とLANの確立が精一杯で、体力を使い果たしました。室内、まだぐっちゃぐちゃです。
 飼い猫のクロも、新しい環境にまだ戸惑っているようで、よく窓の外をぼんやりと眺めて、たそがれています(写真)。以前いた場所はマンションの一室でしたが、新居は2階建て。運動量が増えたせいか、それともストレスでやつれたのか、心なしかやせたような。。。寂しいのかなあ。
 一日も早く、同居ネコを見つけてやらないと。それにしても、ああやっぱり疲れる。


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専門書・論文レビュー(4) 宇宙エレベータ 〜科学者の夢みる未来〜ほか

2009-05-30 07:59:13 | 専門書・論文レビュー
宇宙エレベータ 〜科学者の夢みる未来〜
日本科学未来館、ウオークほか
(2007年)

宇宙エレベーター こうして僕らは宇宙とつながる
アニリール・セルカン
(2006年 大和書房)



(2010年3月5日付記)
 アニリール・セルカン氏が論文の盗用を理由に、本日、東京大学から学位を取り消されたことをご存じの方は多いと思います。
 この件を含み、これまで浮上している氏の業績・経歴詐称疑惑には軌道エレベーター絡みの研究も含まれていますが、このページの扱いを思案した結果、付記を添えた上で本文は引き続き掲載することとしました。この付記自体は、この日のために以前から用意していました。
 正直なところ、書籍を紹介したのは失敗だったかも知れません。しかし、専門書としてお勧めできるものではないということは、あらかじめ本文中でも述べていますし、宇宙飛行士候補などという肩書も「本人がそう言っている」というニュアンスで書いておいたので、そのまま伝わればそれでいいと考えました。

 一方アニメですが、本作に登場する軌道エレベーターについては、基本原理や構造に矛盾はなく、建造の手順や、複数の既存の材料を使った場合の試算も行われています。トラス型の構造体を地上に接地せずに運用し、地上部分は軽量素材のシールドで保護するというデザインにもオリジナリティを感じます。未知の要素は多々あるにせよ、一つの研究成果と呼ぶに値するものでした。
 そして氏はこのアニメに登場するモデルを「ATA型」と呼びました。氏がATAと称するものは発表の時と場によってバラバラで、独自性が疑わしいものが多いですが、本作に登場するモデルをそう呼ぶなら、私はATA型と呼べるまともな研究成果(セルカン氏自身による研究成果かどうかは別として)が、少なくとも一つは存在すると認め、その意義も研究価値もあると考えます。軌道エレベーター特有の課題はありますが、本作のモデルの科学的考証自体に、嘘は見いだせないからです。

 その設定の確立に氏がどこまでかかわったのか、詳細は不明ですが(個人的にはほとんど関与していないのではないかと思うのだけど)、人物のスキャンダルによって、作品や研究モデルまでインチキだと思われるのは惜しい。本作は海外でも上映されました。多くの人たちに、軌道エレベーターの存在を知らせたはずです。むしろ、氏に疑いの目が向けられたからこそ、本作の内容そのものを虚心に評価して記録し、伝えるのが、このホームページが目指す役割でもあると考えています。安易に記述を削除することで、愚行と心中させたくない。
 本作が軌道エレベーター研究に多様性を与え、普及に貢献した事実を、登場するモデルの学術的な価値を、軌道エレベーター史から抹殺してしまいたくないのです。

 こんな理由から、本文には手を加えずに掲載を続けます。ご理解いただければ幸いです。


(以下、本文)
 工学博士でNASAの宇宙飛行士候補と称するアニリール・セルカン氏による、軌道エレベーター (アニメのタイトルは「宇宙エレベータ」。以下OEV)を取り上げた書籍と、監修したアニメーション作品。
 書籍については、「宇宙エレベーター」と題してはいるものの、実際にOEVについて割かれているのはほんの数ページで、ほかはセルカン氏の半生やこれ以外の研究などに終始している。全体としてセルカン氏のエッセイの趣が強く、率直に言ってあまりお勧めできない。
 一方アニメは日本科学未来館をはじめ、全国の科学館などで上映され、子供たちの興味を誘う、OEVの知識への入口として、これ以上ないほどの素材を提供してくれている。この功績は比類ないものと言えるだろう。このため「軌道エレベーターが登場するお話」ではなく、こちらのコーナーで扱うこととした。
 OEVがビジュアルで具体的に描かれていることもあり、今回はアニメ作品の方を軸に紹介したい。

 本作に登場するOEVの本体は、比較的珍しいトラス構造をしており、トラスに沿ったレールを外側からグリップする形でエレベーターが上下する。静止軌道へとつながるOEV本体は地上とは接触しておらず、静止軌道から吊り下ろされる状態で宙に浮いていて、乗降時以外は地上と接触していないらしい。
 対流圏の上限程度の高さまで、やはりトラス状で漏斗形の構造物が、このOEV本体を包む込むように覆っており、これが風雨など気象の影響からOEV本体を守るウインドシールドの役割を果たしている。
 トラス構造はレインボーブリッジなど、現実の橋梁を連想させる趣もあり、見た目にもオリジナリティ溢れる、魅力あるデザインになっている。

 OEVとしての基本原理は、1回目で紹介した金子隆一氏らの「軌道エレベータ」などと変わらないのだが、このアニメにおけるOEVは建造過程において、前者とまったく異なるプロセスを用いる。
 本作に登場するこのOEVのモデルを、セルカン氏は「ATA型」と名づけている。これはセルカン氏の母国、トルコ建国の英雄ケマル・アタチュルクにちなんでつけたのだという。
 このATA型は、静止衛星ではなく、もっと低い軌道を周回する人工衛星から造り始め、地球を高速で周回しながら上下に成長させていき、軌道重心を上にずらしながら減速。地上に達する長さになった時点で任意のポイントに停止(静止軌道に重心を置き、地球の自転と同期)させ、固定建造物のように使用するというものである。この成長期間中も、小〜中規模のOEVとして使用しながら増改築していくというもの。

 ここで、OEVの基本形の、日本における2大流派とでもいうべき、異なる2つの建造方法を紹介しておきたい。
 アニメに登場するOEVの発想はセルカン氏の独創ではない。先行研究で有名なのは、ハンス・モラヴェックのいわゆる「非同期型スカイフック」などである。スカイフックとは、上空または宇宙に位置し、エレベーター機能を持つ構造物で、ようは地上まで達していない小型のOEVである。このうち非同期のスカイフックは地球を周回しながら、小型のOEVとして使用する。ロケットやシャトル、スペースプレーンなどと接触して人や物資などを移し替え、高軌道へ運ぶもので、規模や形状は多様である。
 一方、エドワーズ本などで採用されている工法は、まず静止衛星を打ち上げ、地上との相対位置を動かさないまま、上下にケーブルを伸ばしていく方法で、「ブーツストラップ工法」などと呼ばれいる。
 ここでは、上記の2種類を便宜上「スカイフック型」「ブーツストラップ型」と呼ぶこととする。ATA型はスカイフック型の発展形だが、強いて言うならブーツストラップ型とスカイフック型のハイブリッドと言えるかも知れない。
 海外ではブーツストラップ型を前提にした研究が主流のようだが、日本においては、このアニメとブラッドリー・C・エドワーズ氏の「宇宙旅行はエレベーターで」の影響で、スカイフック型とブーツストラップ型が認知度を二分している。。。というより、両者を区別できていない人もけっこういるのではないか。

 どちらが優れていると一概にはいえず、二者択一のものでもない。ATA型では、周回しながらOEVを巨大化させ、最終的に任意の位置で地上との相対速度をゼロにするという手間は途方もないものだろう(仮に全長5万kmだとしても、地上基部と先端の速度成分の差は時速4000km以上になる)。
 しかしその一方で、いまだ実現していないカーボンナノチューブなど素材の安定生産を待たないと建造に着手できないブーツストラップ型に対し、今ある素材ですぐ造り始められるという強みがある。OEVを成長させていく間に、素材の改良を待てばよいわけだ。実際に、本作では別の素材を用いた場合の試算が行われている。

 比較についてこれ以上述べてもレビューの範囲を超えてしまうので、このOEVの区分について興味をお持ちの方は、「軌道エレベーター学会」のコーナー(カテゴリー)にアップした「ブーツストラップとスカイフック −宇宙エレベーターの基本形の分類−」をご覧いただきたい。

 この作品は、昨年7月にシアトルで開かれたOEV研究者による国際会議"2008 Space Elevator Conference"('08SEC)で上映されたほか、沖縄で開かれたG8会議でも披露され、各国の閣僚や官僚の目に止まり、数カ国が上映を打診してきているとのこと。
 これを日本が制作して世界に発信していることは誇るべきことである。この作品が制作されたことや「宇宙旅行はエレベーターで」の刊行、米国のSECに日本人が初めて、それも5人(私も含まれております)も参加して研究発表したことなど、ここ数年の日本での動きは、OEVの記念すべき転換期として歴史に刻まれるのではないか。

 いずれにせよ、子供たちがすぐに見られるアニメという形でOEVの知識を普及するこの作品の価値ははかり知れない。以前にも触れたが、SFの物語(この場合はアニメ)の形で触れる知識は、それを実現しようという夢やきっかけを人々に与える。
 SFに描かれる発想を軽視する人は多く、OEVもそうだったが、これは想像力の貧しさにほかならない。ツォルコフスキーが「月世界旅行」などを書いたジュール・ヴェルヌから多くのヒントを得たように、SFは近未来に可能になりうる科学技術のモデルの宝庫なのである。ロケットが実用化されるまで、それは空想科学小説の中のものだったではないか。発明や発見、技術の発展は、かつて見た夢や理想を実現しようと挑む人たちに成されてきたのだから。
 この作品がきっかけとなって、将来科学者や技術者となり、OEVの実現に貢献してくれる人物がきっと現れることだろう。

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OEV豆知識(10) 図解その7 静止軌道部

2009-05-29 00:37:29 | 軌道エレベーター豆知識
 ようやく静止軌道まで来ました。高度約3万6000kmに位置する静止軌道部は、軌道エレベーター(OEV)の心臓部とも言える最重要区です。

 この静止軌道部は、OEV建造の最初のとっかかりになる場所でもあり、完成後には最大級のステーションが建造されると考えられます。なぜならこの高度は、重力と遠心力が釣り合って無重量状態(自由落下状態)が現出されているからです。地上から昇ってきた場合、ここに到着したら完全な無重力を体験できます。
 静止軌道部はOEVの全質量の重心であり、ほかの部分はすべてこの静止軌道部の延長、あるいは部品にすぎないとみなすこともできるでしょう。

 そんなわけで、静止軌道上ではステーションは理論上いくらでも大きくできますし、大型の宇宙船を建造するのにも向いているでしょう。OEVが発展すれば、造船所のような場所になるかも知れません。このほか、低軌道部のように実験や観測施設なども設けられるはずです。
 また、静止軌道部は、OEV全体にかかる力の支点のようなポイントでもあります。ここより下のOEVの構造体は地球の重力に引っ張られ、上は遠心力で引っ張られるわけで、上下に引き裂く力が働いている(まあ、どの部分もそうなんですが)バイタルパートととも言えます。
 反面、ここならOEVが「ちぎれる」ようなことがあっても落下したり遠心力でより外側の宇宙に放り出されたりしないし(もちろん、もっと上や下でちぎれたら静止軌道部ごとOEVが上昇か落下を始めますが)、デブリとの衝突もまずない(OEVに対して相対的に動いていたら、デブリは高度を維持できない)ので、ある意味一番安全な場所かも知れません。

 一方、私たち庶民にとって意味のある観光面ではどうかというと、あんまり人気スポットにはならないんじゃないかなあ、というのが正直な感想です。先述のように、ここでは無重力を体験できるし、重力や遠心力の制約がないので、観光施設としても大規模化できるでしょう。
 しかし、仮に平均時速200kmで昇ったとしたら、片道1週間以上かかるんですよね。その途中では、ヴァン・アレン帯という放射能帯を通過しますし、高くなるほど宇宙線の影響は深刻化します。
 ここから見た地球は数メートル先のサッカーボールを見るみたいに小さくて、見ごたえあるのかどうかも。。。低軌道部だと、たとえば1辺5mの世界地図の上に立っているみたいな感じだったりして、台風とか夜景とかの現象も肉眼で見えますし、よっぽどダイナミックな感じがするのは私だけでしょうか?

 なんか興ざめするようなことを書いていますが、静止軌道部が最重要であることは確かです。個人的な感覚ですが、静止軌道というのは、本当の意味で宇宙への玄関のような気がするからです。
 「宇宙」と呼ばれるのは一般的に高度100kmくらいから上ですが、静止軌道まではかろうじて地球の庭先のような感じがするのです。船の航海にたとえるなら、静止軌道を超えて上昇していくのは、内湾や領海から外洋へ出ていくようなものではないでしょうか。ここから真の「宇宙」と言える気がするのです。

 じっさい、静止軌道より上には、「外向き」のシステムが設けられることになります。それはまた次回に。。。

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引っ越しします

2009-05-27 00:35:58 | その他の雑記
 きょうは引っ越しです。このホームページの移転ではありません。仕事の関係で住居を変えることになりました。この数日間はその準備でヒィヒィいっていました。
 部屋の中は段ボール箱だらけ。電灯を外して明かりも少ないし、普段更新に使っているパソコンもしまっちゃったし、殺風景な部屋でモバイルPCを使ってアップしています。
 飼い猫のクロ(写真左)にとっても初めての引っ越しですので、果たして新しい環境に順応してくれるかどうか少し心配です。しかし落ち着いたらもう1匹飼いたいと思っています。
 ちなみに写真の下のラベルは「AV配線」と書いてあります。別にいかがわしいビデオを入れている箱ではありません。念のため。。。
 今回は軌道エレベーターにはまったく関係ない話題でした。ああ疲れた。


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OEV豆知識(9) 図解その6 低・中軌道部

2009-05-26 03:32:53 | 軌道エレベーター豆知識
 左の写真は、東京湾アクアラインの「海ほたる」です。海ほたるは東京湾の中央部に浮かぶ人工島で、アクアラインの海底トンネルと海上橋の結節点です。建設中は海底トンネルを掘るシールドマシンの発進基地だったものを、完成後はドライブインとして利用しています。

 今回の豆知識は軌道エレベーター(OEV)の低・中軌道部について。なぜ、いきなり海ほたるの話から入ったのかというと、低軌道ステーションを既存の何かに例えると、この海ほたるのような場所になるのではないかと考えたからです。

 厳密な境界線がないのでいま一つ区別はあいまいなのですが、低軌道というのはだいたい高度約300km強から1400kmくらいまで、中軌道がその上から約3万6000kmの静止軌道あたりまでを指すのが一般的です。しかし俗に「宇宙」と呼ばれるのは高度100kmくらいからで、現実問題としてはここの高さから「低軌道」として一括りされている感があります。

 OEVが実現し、付帯施設が設置できるほどの規模になれば、低軌道部には人間が滞在可能なステーションが設けられると考えられています。
 べつだん、低軌道に限らず、OEVのどこにでもステーションを設けるのは可能でしょうが、高度約2000kmから上はヴァン・アレン帯という放射能帯もありますので、おそらくは地上を出発して最初にたどり着くであろう低軌道ステーションが、中継地としてまっ先に想定されるのは自然な考えでしょう。
 人工衛星の多くは低軌道に集中しているほか、スペースシャトルもせいぜい高度600kmていどまでしか飛べません。低軌道は中・高軌道への中継コース的な役割も果たし、国際宇宙ステーション(ISS)の軌道も約400kmの低軌道に位置します。
 道路にたとえるなら特に交通量が多い首都高環状線のようなものでしょうか。ですので今回は、低軌道ステーションの話を中心にしつつ、低・中軌道をひっくるめた話としてお読みください。
 
 おそらくここには、地上の観測や通信、実験のための施設はもちろん、放送局なども設けられるでしょうし、重力が治療の妨げになりうる病気(寝てるのもつらい全身やけどや皮膚疾患など)のための治療施設も造られるかも知れません。
 そして、宇宙という新たな「観光スポット」になるはずです。べつに静止軌道まで行く必要はない。仮に低軌道ステーションがISSと同じ高度に造られるとすれば、東京から大阪へ行くより近い。地上から数時間で往復できると考えられます。
 ちょっと宇宙へ行って景色や低重力環境を楽しんで帰ってこよう。私たち庶民にとってはそんな場所になるでしょう。そんなわけで、海ほたるは低軌道ステーションのイメージにうってつけだと思ったのです。

 海ほたるには展望デッキやレストラン、休憩所、ゲームセンター、おみやげ店などがあり、コンサートなどのイベントはもちろん、結婚式が開かれることもあります。海ほたるを目当てに川崎か木更津から来て、また帰っていく人も多く(そのためにUターンができるようになってます)、都心から横浜までの夜景も綺麗で、元旦には初日の出を見に多くの人が訪れます(海から昇ってくる日の出は見えないんですが)。低軌道ステーションも、発展すればこのような場所になるのではないでしょうか。

 先述のように、低軌道ステーションは実利的な機能も持たされるはずですから、決してレジャー目的だけの存在にはならないでしょうが、OEVのうちでもっとも身近で重要な、誰もが訪れたいひとつの名所の誕生になるかも知れません。OEVがそんな生活を実現してくれる日が早く来て欲しいものです。

 ちなみに、OEVの建造費の見積もりの中には1兆円くらいという試算があります。この数字は少々安く見積もりすぎだとは思うのですが、アクアラインの建設費は1兆4000億円です。


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