釜石の日々

ドウダンツツジ(灯台躑躅)

秋になるとひときは赤い色が目に入るのがドウダンツツジ(灯台躑躅)である。このツツジは日本が原産地で、本来は西日本の一部に自生していた。日本が原産地であるからには当然、万葉の時代にもあった木である。万葉集第9巻に「細領巾(たくひれ)の 鷺坂山の 白躑躅(しらつつじ) 我れににほはに 妹に示さむ」(白頭巾のような鷺坂山の白躑躅よ 私の衣を白く染めて欲しい 愛しい人に見せよう。)の歌がある。作者不詳とあるが、柿本人麻呂の歌と見る見方もあるようだ。ドウダンツツジは春に芽吹く頃に釣鐘状の白い花を咲かせる。花はアセビにも似ている。鷺坂山(さぎさかやま)は京都府城陽市の鷺坂山地名とされている。しかし、仮に人麻呂の歌だとすれば、鷺坂山は九州にその地名を見い出すことが出来るのかも知れない。人麻呂は九州王朝の歌人である。正三位の位にありながら、古事記や日本書紀にはその名が載せられていない。正三位の位は九州王朝の位階である。枝の分かれ方が古代に宮中行事で用いられた結び灯台に似ているところから、灯台躑躅の字が当てられ、「とうだい」が「どうだん」に転訛したものと言われる。手入れがしやすく、四季で楽しみを与えてくれるところから、各地で広く分布するようになった。ドウダンツツジの仲間には10種ほどあり、東アジアやヒマラヤにも分布している。そのうち日本では4種が見られると言う。サラサドウダンは唯一北海道でも見られる。他にシロドウダン、アブラドウダン、ヒロハドウダンツツジがあり、自生種ではヒロハドウダンツツジが多いようだ。満天星躑躅とも書かれるが、白い花が咲き誇る様子が満天の星にも似ているところから来ているそうだ。釜石でも公園や個人の家の生け垣などにドウダンツツジをよく見る。東アジアに分布しているのはやはり日本列島がユーラシア大陸から分離したことと関係しているのだろう。日本が原産地なので、大陸から分離後に日本で固有の木として自生し、後に大陸へも分布するようになったものと思われる。普段何気なく目に入る花木もその由来を見て見ると、とても楽しくなる。特に日本原産のものは太古から日本に自生していたのであり、そんな古い時代の人々も同じものを見ていたかと思うと、その時代に近親感を覚える。夜空の月にも同じような感を受ける。
赤く染まったドウダンツツジ
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