釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

マレーシアのマハティール首相の提案

2019-05-31 19:14:57 | 社会
昨日から2日間の予定で、日本経済新聞主催で、第25回国際交流会議、アジアの未来|新たな秩序の模索ー混沌を越えて、が開催されている。昨日の基調講演では、最初にマレーシアのマハティール・ビン・モハマド首相が講演した。92歳になるマハティール首相は、1981年から2003年にかけても首相として、マレーシアの門戸を大きく開き、同国を発展させ、アジア・アフリカの協調と発展を唱えて来た。昨年5月に再び首相となった。経済発展だけでなく、世界の平和と戦争の違法化を目指す運動をも推進して来ている。昨日の同首相の基調講演の内容を、主催した日本経済新聞は、表題を「マハティール首相「米中に自制求める」」として、単に、現在係争中の米中貿易戦に触れた部分のみを強調して報じている。しかし、ロイター通信は、「Malaysia's Mahathir proposes common East Asia currency pegged to gold(マレーシアのマハティール首相、金に連動した東アジア共通通貨を提唱)」と題して、同首相のアジア向け「ユーロ」の立ち上げ提案を重視しており、日本経済新聞はこの件には全く触れていない。“In the Far East, if you want to come together, we should start with a common trading currency, not to be used locally but for the purpose of settling of trade,”“The currency that we propose should be based on gold because gold is much more stable.”と述べ、金(Gold)に基づいた共通の貿易通貨を提唱している。金ははるかに安定しているからだと述べている。現在の外国為替システムの下では、現地通貨は外的要因の影響を受けて操作されていると述べているが、同首相はこれまでにも何度も通貨取引について批判して来ている。その発端は、1997年のアジア通貨危機である。これを引き起こさせた世界三大投資家の一人であるジョージ・ソロスを強く批判して来た。提案された東アジアの共通通貨は、貿易取引の決済にのみ利用し、国内取引には使用しない。現在、中国、ロシア、インドなどのBRICS諸国をはじめ、新興国の中央銀行は金を買い集めており、中国は保有する金をかなり過少に公表していて、一説には3万トンにも達するのではないかとも言われている。もっとも、この中国の金の集積は、国内の過剰な債務に対して、いずれは人民元の切り下げで対処せざるを得ず、その際に、新たな人民元の価値を維持するために、金で裏付けようとするもののようだ。以前のマハティール首相は、中国とは距離を置いていたが、アジア通貨危機を目の当たりにしたためか、再び首相になると、中国に急接近している。首相は、中国の共産主義体制には賛成できないが、それを外的に圧力をかけて崩そうとすることにははっきりと反対であると表明している。東アジアの発展のためには、東アジアが結束して、欧米の経済力に屈することを避けるべきだと考えているようだ。
牡丹

焼け石に水の消費税増税

2019-05-30 19:16:04 | 経済
インフレとは通貨の価値を下げることだ。通貨の価値が下がって喜ぶのは、借金を抱える人だ。通貨価値が下がれば、借金が減ることを意味している。逆に、デフレは通貨価値を上げるために、借金をしている人には困る。借金が増えることを意味するからだ。2013年1月に日本銀行は、2年で2%の物価を達成すると言う目標を掲げた。以来、6年が過ぎても、目標は達成されておらず、それでも延々と異常な金融緩和を続けている。日本銀行の金融緩和策には2つの手段がある。通貨の印刷量を増やすことと、金利を下げることだ。いずれも極限近くまで講じて来ている。理屈では、通貨量を増やし、金利を下げれば、世の中にお金が流れ込み、家計や企業が消費し、物の価格が上がり、インフレとなる。問題は、中央銀行が世の中に流し込もうとするお金は、あくまで市中金融機関を通して、貸し出されねばならないことだ。しかし、家計や企業は将来に対して、安心出来ないために、お金を借りてまで消費しようとしないばかりか、むしろ貯蓄をしている。これでは、たとえ2%であってもインフレになりようがない。すでに日本銀行もこうした実態を分かっているはずだ。それでも、この異常な金融緩和を続ける理由は、当初から別に理由があったからだろう。2%の物価が達成されても、今も続く超低金利も借金を抱える人を助ける。そして、最大の借金を抱えるのが政府だ。現政権が、日本銀行出身の前総裁から、財務省出身の現総裁に更迭してまで、異常な金融緩和を実施させたのである。2年前の6月16日、ロイター通信に、JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長である佐々木融氏が、「量的質的緩和でインフレにならない訳」と言う一文を寄稿している。その最後に、<インフレにする唯一の方法>を挙げており、「実は今の日本でもこの経路を通じて通貨の価値を下落させる、つまり物価を上昇させ、為替相場で他通貨に対する円の価値を下げることはできるからだ。それは政府と日銀双方が理性やコントロールを失って行動すれば実現する。政府が財政政策に対する規律を失い、国債を無節操に発行し、財政支出を急激に拡大させ、日銀が国債を無節操に購入することで政府をサポートすれば、日本の家計や企業にお金がばら撒かれ、円という通貨に対する価値観が変わり、実際に通貨の価値が下落する。 ただし、この方法は恐らく微調整が効かず、通貨価値の下落(インフレ率の上昇、為替市場での円安)は一気に大幅な形で訪れると考えられる。ちなみに、この時、当然ながら日本人が後生大事に貯め込んでいる現金・預金の価値も大きく下落することになるため、人々の生活は大混乱に陥りかねない。」と書かれている。前の米国中央銀行FRB議長であったベン・バーナンキ氏は日本に対して、ヘリコプターマネー や永久国債の発行を提唱した。前者はヘリコプターからお金をばらまくと言う比喩的な表現だが、要は政府が世の中に現金を流し、それで消費を起こさせると言うものだ。こうしたまさに「異常」な提唱を日本にしなければならないほど、日本の状況は「異常」なのだ。昨年の政府会計は来月末にならなければ、公表されないが、2017年については財務省がすでに公表している。その決算を参考にすると、政府が実際に使った年間の費用(歳出額)は98.1兆円である。これに対して、年間で入った税金収入は58.8兆円しかなく、33.6兆円の公債と言う借金をしている。税収58.8兆円のうち、消費税は17.5兆円で、所得税が最も多く18.9兆円で、400兆円を超える内部留保を持つ企業からの法人税は12兆円でしかない。過去10年は毎年30兆円を超える新たな借金が積み増されている。仮にこの秋に消費税が10%となっても、4兆円ほどの税収が増えるだけで、ほとんど焼け石に水である。しかも、消費税が増税されれば、間違いなく消費は現在以上に控えられる。景気はわずかでも後退する。消費税の増税は、実質的には日本政府の債務に対しては何ら効果はない。ただ、政府と言うより、財務省は諸外国から、日本政府が財政規律を守ろうとしていると、見られるために何としても増税をしたいのだ。少しでも借金を減らそうと努力していると言う見せかけが必要なのだ。それがなければ、国債の格下げを契機に国債先物や現物の売り浴びせによって、国債の大暴落、円通貨の暴落が起きてしまう。多額の政治献金を出す企業の法人税を上げるよりも、国民の負担になる消費税の方が引き上げやすい。何れにしても、もはや日本の政府債務は異常な中央銀行の政策を続けなければならないところまで追い込まれてしまった。そのために、市中金融機関や国民が持つ現預金資産は犠牲にされてしまっている。ともかく、歴史を見れば、政治家はお金を使いたがるものであり、まして裏付けのない通貨となれば、いくらでも印刷出来ると言う安易さがある。しかし、そこには必ず報いがあるものだ。これもまた歴史が示している。

明日から1週間ほどは更新が滞る可能性があります


睡蓮

経済原則から外れた経済

2019-05-29 19:13:13 | 経済
歴史上、経済の基本は作った物が売れることで成り立って来た。日本の高度経済成長期は典型だろう。この時、終身雇用が保証され、賃金は毎年上昇した。将来に不安がないため、人々は物も買って、生活が便利になって行った。もはや日本は他国に学ぶものはないとまで誇りを高くした。しかし、基軸通貨国であった米国のドルが実際よりも高く評価されているために、米国の産業にとっては、輸出競争では不利になる。貿易赤字も累積していた。そこで米国は1985年、プラザ合意によりドルの切り下げを行なった。対米貿易で黒字国であったドイツや日本は、保有するドル資産に大打撃を受けた。貿易黒字で得たドル資産が大きく目減りしたのだ。これにより景気の悪化が生じて来たため、日本銀行は金利を引き下げ、景気浮揚を図った。産業界はすぐには投資資金を金融機関から借りようとしなかった。先々の景気にまだ不安を感じていた。そのため、低金利資金は、金融機関を通して、不動産や株式購入に向かった。これがいわゆるバブルを生じさせた。不動産バブルの加熱に不安を感じた当時の大蔵省は、不動産融資を規制し始めた。大蔵省の目論見とは違って、バブルは一気に崩壊して行く。日本にとっては運悪く、この時期から隣国の中国の製造業が頭をもたげて来た。安く豊富な労働力を売りに、世界からも中国へ工場が移転され始めた。プラザ合意により、ドルを切り下げても、もはや米国の製造業は回復不可能なまでに疲弊しており、まして、中国の勃興はさらに駄目押しとなった。米国は新たに金融経済の道へ進む方策に出た。日本はただただ旧来の産業に固執し、その産業を保護するために、販売量が増えなくとも利益が上げられるよう、非正規雇用を増やし、人件費を削減し、円安により為替差益を得ると言う企業だけを温存させる愚策に出た。このため、人々の賃金は上昇せず、高度経済成長期に策定された年金制度への不安も重なって、消費は一向に増加しないままに「失われた30年」を迎えることになった。1929年のウォール街の暴落に始まった世界大恐慌では、米国国内の金融機関も多くが破綻に追い込まれたが、欧州でも、1931年5月にオーストリア最大の銀行クレディット・アンシュタルトが破綻し、これを機にドイツから資金が流出し、取り付け騒ぎに見舞われたドイツの銀行は銀行閉鎖せざるを得なくなった。英国のドイツへの貸付金1億ポンドも凍結され、ポンドへの信認が急落し、ついには英国は金本位制から離脱せざるを得ないところまで追い込まれた。金融機能が破綻した状態で、米国は英国人ケインズの経済理論を背景に、政府が経済を刺激するための財政政策を大きく打ち出した。ニューディール政策である。しかし、結局は世界は対立が深刻化し、第二次大戦に突入して行く。現代では、この世界大恐慌は、金融危機に際して、中央銀行が大量に通貨を発行出来なかったことが、主因であるとされ、戦後の米国における金融危機では、中央銀行の通貨の発行量の増大で対処するようになった。しかし、実際には、中央銀行の通貨発行量の増大だけでなく、政府の財政出動も行われており、このために政府債務も積み上がって来た。今や主要国は通貨発行量の増大と政府債務の積み上がり状態となっている。しかも、それだけ政府や中央銀行が動いても、経済成長率はわずかでしかない。国富が増えていない。経済効率が極めて悪い。米国流の金融経済は、必ず金融バブルを生み出し、そのバブルが崩壊するたびに、通貨発行量や政府債務が拡大し、バブルもさらに拡大すると言う悪循環に陥ってしまっている。主要国の経済は、物を作り、作った物を売ると言う経済の基本が失われ、新たな産業を生み出せていないことが、経済低迷の根底にある。米国の金融経済や日本の非正規雇用の拡大・斜陽産業の保護などは、所詮、単に見かけの経済を維持しているだけに過ぎない。実態は、低迷状態である。
昼咲月見草

遺伝子組み換え食品への警告

2019-05-28 19:12:20 | 科学
先進国では、豊かな食により、長寿が達成されているが、同時に病気を抱える人の数も増えている。高齢化が身体の弱点を表面化させるのは確かだが、先進国における病気の数には、それだけではない要因もある。特に日常繰り返される食の変化は、要因の一つとして十分に考慮しなければならないだろう。スーパーに並ぶ食品には様々の食品添加物が含まれてしまっている。添加物のない食品を探すのが困難なくらいだ。スーパーには食品添加物が含まれるものだけではなく、遺伝子組み換え食品まで並んでいる。幸い、現在の日本では今のところ遺伝子組み換え食品は数が限られているが、米国ではずっと多くの食品にそれが含まれているようだ。意識的に、遺伝子組み換え食品は避けて来たが、それが人体に及ぼす影響は、あまりよく分からなかった。5月22日、米国のサイトに「After Reading This Article About The Danger Of GMOs, You Will Probably Never Want To Eat Genetically-Modified Food Again(遺伝子組み換え生物の危険性についてのこの記事を読むと、おそらく遺伝子組み換え食物を二度と食べたいと思わなくなるだろう)」なる記事が出されていた。GMOsはGenetically modified organismsの略である。先ず、国際的な食品汚染を報じるインターナショナル・ジャーナル・オブ・フード・コンタミネーションthe International Journal of Food Contaminationによれば、1997年から2013年の間に、63カ国で約400件の遺伝子組み換え汚染が発生していると言う。植物は昆虫や鳥、風によって受粉されるが、遺伝子組み換え植物の花粉も周囲に飛散して、自然界へ拡散している。自然界を汚染するだけに止まらず、先週、アメリカ環境医学アカデミーthe American Academy of Environmental Medicine(AAEM)によって発表された論文「Genetically Modified Foods Pose Huge Health Risk(遺伝子組み換え食品は巨大な健康リスクを引き起こす)」では、動物実験で、遺伝子組み換え食品に関連した深刻な健康上のリスクが示されているとして、不妊、免疫の異常、加齢の早まり、インスリンの抑制、主要な臓器や消化器系の変化などが挙げられている。同論文には、さらに遺伝子組み換えの大豆をメスのラットに給餌すると、そのメスから生まれた赤ちゃんのほとんどは 3週間以内に死亡しており、遺伝子組み換えではない天然の大豆を与えた対照群の死亡率10%と大きく差が出ている。また、マウスでも若いオスのマウスは、遺伝子組み換え大豆を与えられると、精子が変化しており、オーストリア政府の研究でも、遺伝子組み換えされたトウモロコシを与えられたマウスは、生まれる赤ちゃんの数が少なく、大きさも通常より小さかったことを記している。この論文で何よりも注目される内容は、作物を虫からの食害を防ぐために、遺伝子を組み換えられたトウモロコシと綿花は、すべての細胞で、殺虫のための毒物が作られると言うことだ。しかも、遺伝子を組み換えられた大豆に挿入された遺伝子は、ヒトの腸内に住む細菌のDNAに移動して機能し続けることが明らかにされている。そして、この遺伝子組み換え食品を食べることで、人の腸内細菌を「生きた農薬工場」に変える可能性があるとしている。
ツツジ

世界の工場

2019-05-27 19:17:02 | 社会
この週末は全国的に、この時期としては猛暑になった。以前住んでいた所に近い北海道の佐呂間では観測史上初めて39度を超えたようだ。釜石も昨日は31度になったが、同じ31度でも、真夏の31度とは違って、吹く風が涼しい。日陰で風を受けると気持ちがいいくらいだ。窓を開けていれば、家の中でもさほど暑さを感じないでいられた。さすがに庭の山野草たちは、この時期の異常な気温に耐えずらい感じであったので、たっぷりと水やりを施しておいた。 米国の世界に仕掛けた貿易戦争は、すでに具体的な貿易量の減少として、世界経済に影響を及ぼして来た。中国への圧力は手を緩めていないが、隣国カナダへは圧力を緩めている。来年の大統領選挙を控えて、隣国との貿易は確保したいのかも知れない。米国製造業は、前世紀にはドイツや日本に敗れ、今世紀には新興の中国に依存せざるを得なくなった。消費大国として、長年貿易赤字が累積して来た。それが可能だったのは、自国通貨が基軸通貨であったからだ。対米貿易で黒字国はドルを大量に得た。日本も中国も得たドルを自国通貨に変換すると、自国通貨が高くなるため、通貨安を維持するには、得られたドルをそのまま保持するか、ドル資産として、米国債をはじめ米国金融資産に投じるしかない。日本や中国が大量の米国債を保有する理由はそこにある。少しでも安い製品として競争力を維持するには、自国通貨安を維持しなければならなかった。過去の歴史では、貿易赤字国の通貨は安くなり、いずれ赤字が解消されると言うのが、「常識」であった。しかし、その赤字国の通貨が基軸通貨の場合は、その「常識」が通用しなくなった。海外への金融投資なども含めた米国の経常収支も大きな赤字である。米国の現在の貿易戦争は、米国への輸入量を減らすことで、多少の貿易赤字の解消にはなるが、根本的な解決にはならない。世界最大の株式時価総額となっている米国アップル社の最高責任者は、これまで何度も、今や世界で最も多くの熟練工を抱えているのは中国であり、中国は世界の工場となっていると言う発言を繰り返している。アップル社の成長の秘訣は、製造部門の外注であった。アップルに限らず、日本の企業も多くが中国に工場を移し、技術移転だけでなく、中国に熟練工を生み出させた。抜きん出た米国への留学生の送り込みを長年維持し、今では国内に多くの優秀な研究者を持つようにもなった。米国がいかにあがいても、もはや米国の製造業の復活は困難だ。機械設備は一朝一夕に成るが、熟練工を育てるには一定の年数がかかる。現在の日本の製造業も米国を後追いしている。熟練工を失っている。米国は、基軸通貨の地位を利用して、製造業から金融経済へ転換したが、その金融経済は、中央銀行による大量の通貨発行に支えられたもので、本来はこれだけ大量に印刷すれば、通貨の価値は下がり、猛烈なインフレに襲われるところだ。製造業が凋落しているおかげで、大量印刷された通貨は実体経済へは流れず、金融経済へ流れ、資産バブルを生み出した。バブルは所詮バブルに過ぎず、これまで何度もバブル崩壊を起こして来た。崩壊のたびに中央銀行の通貨発行量が積み増し、同じ量の債務として、一層、巨大なバブルになっている。製造業だけでなく、今では中国はIT企業をも米国に迫る規模にまで成長させている。米国の次なる金融危機はこれまでの金融危機を超える規模になるだけでなく、それへの対応策が限られているため、回復過程は長期化するだろう。製造業と言う実体経済を握る中国の回復はより早く、「一帯一路」を中心として、アジア、アフリカ、欧州との繋がりがより加速されて行くと思われる。基軸通貨ドルの足元は危うくなる。
空木

700万年間の人類の生活

2019-05-25 19:19:38 | 科学
人の細胞内では細胞質とミトコンドリアの2カ所でエネルギーが作られている。細胞質ではブドウ糖を主に原料として分解し、エネルギーに変えている。一方、ミトコンドリアでは、呼吸で取り込まれた酸素の90%を使って、ATPと言うエネルギー源を作っている。エネルギー効率はミトコンドリアの方がずっと高い。ところで、人類の祖先の進化を考えると、700万年前から1万年前までは、人類は炭水化物である穀物を食べていなかった。脂肪とタンパク質が中心であった。つまり人類の身体は脂肪とタンパク質を摂取するように進化したのだ。脂肪が分解されると、肝臓でケトン体が出来、そのケトン体はミトコンドリアでエネルギーの原料として使われる。人類は長い歴史の中で、このミトコンドリアを使ったエネルギー作りを行うように体の細胞が進化した。しかし、わずか1万年前になり、穀物を栽培し、炭水化物を食べるようになった。炭水化物は体内に入ると糖分に変わる。細胞内でのエネルギー作りをミトコンドリア主体から細胞質主体に急激に変えてしまった。しかも、この数十年と言うさらにごく短期間に大量の糖分を摂るようになった。ミトコンドリアでの機能障害があると、ミトコンドリアからは細胞を死に追いやる因子が誘導される。人類はその長い歴史で、大半を狩猟生活しており、動物の肉や魚、果物を中心に食べて来た。身体もそれらに適応するような仕組みになった。脂肪が分解されて出来るケトン体や果物に多く含まれる有機酸は、いずれもミトコンドリアを活性化させる。ミトコンドリアの活性化はアンチエイジングにも繋がることが近年の研究で明らかになっている。日本人の主食である米は高々3000年前からのもので、700万年と言う人類の歴史からすれば、ほんの一瞬である。癌を含めた多くの病気は、この食物の急激な変化にあると言える。また、人類の長い狩猟生活では、不潔なものも平気で口にしており、多くの細菌などの微生物を消化管の中に入れて来た。これが人と微生物との共生関係を築き上げた。細胞内のミトコンドリア自体も元々は細胞に寄生して来た微生物である。腸内細菌だけでなく、口や鼻にも何百種類もの微生物が共生している。しかし、現代はこの人類と微生物との共生関係へも大きな変化を起こさせている。クリーンな環境と抗生物質の多用によって有用な微生物まで排除している。共生している微生物は食物の分解などにより、人の栄養の吸収を助け、有害な微生物の侵入を防ぎ、免疫力の維持にまで役立ってくれている。現代病の多くは、こうして狩猟時代の生活様式から離れたことが原因と考えることが出来るだろう。とは言っても、今更狩猟時代には帰れない。現代人は狩猟時代ほどの強靭さは備えてもいない。少しでも、その時代に近づくように、一定程度の負荷をかけながら身体を動かし(運動)、炭水化物を少しずつ減らして行くことが必要だ。脂肪はケトン体の原料であるが、肥満のような脂肪過多は脂肪から分泌される動脈硬化や糖尿病を防ぐアディポネクチンのような有用物質が逆に分泌されにくくなる。多すぎる脂肪細胞の間を通る血管が圧迫されるためとも言われているが。筋肉量を保ち、脂肪過多を防ぐ生活を考えることが大事なようだ。
庭で咲いた敦盛草

箱根カルデラ

2019-05-24 19:18:42 | 科学
19日に気象庁は火山性地震が急増した箱根山に対して、噴火警戒レベルを「火口周辺規制」とするレベル2に引き上げた。箱根山から25Kmしか離れていない富士山は、琉球大学の木村政昭名教授が今年中に噴火すると予測されている。箱根山も富士山も同じ火山帯に属するが、火山の規模では箱根ははるかに大きい。箱根はカルデラであり、芦ノ湖はカルデラ湖だ。箱根山や芦ノ湖を囲んで外輪山がそびえる。かっては富士山と並ぶ高さの山が形成されたが、25万年前の噴火で山体崩壊し、今ではその影もなくなった。しかし、箱根は一度カルデラ噴火を起こすと、富士山の噴火の比ではない。7万年前の破局噴火と呼ばれる噴火では、火山灰は茨城県まで10~20cm積もり、火砕流は横浜まで到達している。火砕流は相模湾や駿河湾へも流れており、津波を引き起こした可能性が高い。富士山の噴火に対して、箱根のカルデラ噴火はその14倍にもなると言われる。武蔵野学院大学島村英紀特任教授によると、60万年前、火山島だった伊豆半島が日本列島に衝突した際に、富士山や箱根山が形成され、従って、噴火は互いに連動する可能性があると言われる。箱根山の最後の噴火は3100年前で、データがないため、前兆となる地震運動から噴火規模を予測することが難しいのだ。今月19日には米国メディアがポーランドのシレジア大学地質学部ジャージー・ザバJerzy Zaba教授のインタビュー記事を載せている。近年、米国の超巨大火山(スーパーボルケーノ)イエローストーンで、火山活動が活発化しているが、破局的な大噴火が発生すると、一度の爆発で50億人が死亡する可能性があると言う。地球上で分かっている超巨大火山は7つあり、日本の薩摩硫黄島もその一つだが、最も危険な超巨大火山がイエローストーンになるが、インドネシアのトバ火山もそれに匹敵する。7万5000年前のトバ火山の噴火では、地球の気温は平均5℃低下し、劇的な寒冷化はおよそ6000年間続いている。同教授によると、米国がイエローストーンの破局噴火から逃れる方法があるとすれば、米国人を他の大陸に避難させることぐらいだと言う。以前にも書いたが、イエローストーンについては米国のNASAも調査・研究している。イエローストーンは、分かっているだけで、過去に3度破局噴火を起こしている。最後は64万年前になる。そして、この最後の噴火が、イエローストーンの最も強い噴火だったと考えられている。イエローストーンの大噴火が再び起こった場合は、64万年前の噴火と同様の爆発があると予測されており、大気中に放出された火山灰は、半径 500Km内の地域にすべて降り積もり、大量の粉塵、ガス、または酸化硫黄が大気中に放出されるため、気候が寒冷化に向かう。NASAは、イエローストーンの大噴火を防ぐために、対策として、10Kmの深さの穴を開けて水を注ぎ、マグマを冷却すると言う計画案を発表しているが、教授は、イエローストーンのマグマタ溜まりは非常に広大で、地球の奥深くまで達しており、NASAの計画は、マグマの表面を冷やすだけでなく、水が水蒸気に変わり、地球の地殻のこの領域での破裂を加速する可能性さえあると見ている。日本の薩摩硫黄島を含む、いわゆる鬼界カルデラも神戸大学の調査で、マグマが増大している。日本でのカルデラの破局噴火は6000年に一度発生しており、最後の破局噴火は7300年前の鬼界カルデラの噴火であり、現在は、いつ破局噴火が起きてもおかしくない時点にある。鬼界カルデラが破局噴火を起こせば、最悪1億人の生命が奪われると試算されている。いつ起きるか分からない最悪の事態を過度に心配する必要はないが、情報として知っておくことは重要だ。
河原撫子

債務を背景とした世界経済

2019-05-23 19:13:09 | 経済
今日は朝から晴れ渡った五月晴れの日になった。気温も昼には24度まで上がった。庭の山野草たちも次々に入れ替わって咲いて来ている。昼休みに、裏山の山道を車でゆっくり走った。この時期は朴木の花を見るために何度も訪れている。今日はいつもの朴木の近くに来ると、鳩の声に似たツツドリの声が聴こえて来た。青葉が茂る頃には、毎年冬とは違った小鳥たちの声が聴こえて来る。すっかり青葉に覆われた職場の裏山では、最近はリスや鹿の姿を見るのも難しくなって来た。 2008年のリーマン・ショックは、「100年に一度の金融危機」と言われた。何らかの手を打たなければ、大恐慌に発展していた。米国FRBを中心に主要国・地域の中央銀行は各々4兆ドルの紙幣を印刷して、窮状を逃れた。金融危機で失われたマネーを補うためだ。その後の経済は、中国の不動産開発が主軸となって、世界経済が牽引された。しかし、実体経済は、決して好調ではなく、中国を除く主要国の経済成長率は5%をはるかに下回っている。日欧米の長期にわたる低金利は、経済浮揚の財政出動とともに、国や企業の債務を膨らませ続けた。中国の無理矢理の不動産開発も企業債務を膨大にした。世界の総債務は250兆ドルにもなり、歴史始まって以来の規模となっている。こうした背景がある中で、米国は世界に向けて貿易戦争を仕掛けた。目的は自国製造業の復活と、中国の最先端技術を抑え込むことである。自国製造業の復活のためには、日本の自動車産業も抑え込む必要がる。米国は世界に対して、中国のファーウェイ製品の使用を止めるように訴えた。これに違反すれば、制裁を加えるとした。日本は早々と、政府機関での使用を中止すると発表し、民間企業もそれに従うことになった。今月9日の米国経済情報紙Bloombergは「Trump Is Losing the Fight to Ban Huawei From Global Networks(トランプは世界のネットワークからファーウェイの使用を禁じる戦いに敗れている)」と題する記事を載せている。それによれば、米国に従ったのはわずか2国で、日本とオーストラリアだけだと言う。また、17日のロイター通信日本語版は「ファーウェイ傘下ハイシリコン、米取引規制を想定し以前から準備」と題する記事を載せ、ファーウェイはこれまで、米国のクアルコム(QCOM.O)や台湾のメディア・テック(聯発科技)の半導体を使って来たが、同時にハイシリコン設計の半導体も使っており、ハイシリコンはすでに現在のような状況を先取りして、いつでも自社製品をファーウェイに供給出来るように準備して来たことを報じている。また、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、中国の報道として、第2の「プラザ合意」の可能性があるとしている。プラザ合意は1985年に行われた米国によるドルの切り下げである。これにより日本は円高に見舞われ、日本銀行は対策として、金利を下げ続けて、その結果、バブルを生み出し、それが崩壊し「失われた30年」となった。中国はこの日本の辿った道を避けたい。しかし、米国は対中国対策としてだけではなく、膨大な双子の赤字(財政・経常収支)を減らすためにもドルの切り下げをやる可能性は十分にある。何れにせよ、歴史は、保護貿易が世界経済を停滞させることを示しており、米国は自らの首を絞めかねない。金融経済での膨大な債務が積み上がっている中で、現在でも弱々しい実体経済のさらなる後退につながる貿易戦争が起きている。中国には極端な企業債務が積み上がり、米国も負けないくらいの企業債務があり、しかも米国は財政赤字と世界との取引である経常収支の赤字まで膨大になっている。国際通貨基金IMFがすでに危惧を表明していた米国企業の債務について、先日、米国中央銀行FRBの議長もやはり危惧を示した。昨年末からは、景気後退の指標と言われる米国債の長短金利の逆転現象が続いている。22日のロイター通信によれば、過去50年間で、この逆転が起きて景気後退しなかったのは1度しかない。平均で逆転が起きてから12ヶ月から24ヶ月で景気後退が起きている。次の金融危機は、世界の債務レベルがリーマン・ショック直前をはるかに超えており、中央銀行の金融緩和の政策幅が限定されており、政府の債務規模もはるかに拡大しているため、極めて厳しいものになり、長期化は避けられない。
朴木の花

筋肉量の維持の重要性

2019-05-22 19:12:11 | 科学
これまでにも米国の研究で、歩行速度が心臓病の低下と平均寿命の延長に関係していることが分かっていたが、昨年には、オーストラリアのシドニー大学が歩行速度を「平均速度」に上げただけで、早死にのリスクが5分の1に低減されることを発表している。今月13日には、英国・国立衛生研究所National Institute for Health Researchが「Faster walkers more likely to live longer」なる記事を発表している。2006年~2016年の10年にわたり、英国内に住む平均年齢52歳の474,919人を対象にした研究で、体重に関係なく、習慣的に速く歩く人は、平均寿命が長い傾向にあることが分かったと言うものだ。レスター大学University of Leicesterのトム・イェイツTom Yates教授らが中心となって研究されたものだが、喫煙やBMI(肥満指数)など、他の危険要素を考慮しても、歩くのが遅い人は速い人と比べて心臓関連の病気の死亡率が2倍になっていた。人の体内では、生命を維持するために様々なホルモンや化学物質が分泌されているが、それらは多くが加齢とともに減少する。ところで、人の体重の40%は筋肉だと言われている。この筋肉も加齢とともに減少するが、中でも大腿四頭筋や大臀筋は、減少が激しく80歳では半分にまで減ってしまうようだ。近年の研究で、これらの筋肉を含めた、いわゆる骨格筋からは30種以上のホルモン様物質が分泌されていることが分かって来た。それらは総称して、「マイオカイン」と呼ばれたりする。一定強度の負荷をかける歩行は、大腿四頭筋や大臀筋の減少を防ぎ、肥大さえさせ得る。インシュリンは体内の細胞に糖を摂り込ませる働きをすることで、血液中の糖を下げているが、このインシュリンの働きとは別に、筋肉細胞ではAMPキナーゼと呼ばれるものが、血液中の糖を筋肉細胞に取り込み、やはり血液中の糖を下げることが分かって来た。筋肉から分泌されるマイオカインは、筋肉自体を肥大させる働きもあり、さらに血液によって全身に運ばれ、脂肪細胞では脂肪を分解し、肝臓ではグリコーゲンを分解する。また、脳由来神経栄養因子BDNFは、神経細胞を維持し、神経突起の成長を促し、神経伝達物質の合成を助けることが知られているが、運動により脳内にBDNFが増加し、記憶力が増強されることも分かって来た。筋肉に付随する腱や靱帯、さらには皮膚にも重要なコラーゲンは、線維芽細胞が刺激されることで合成されているが、運動はこうしたコラーゲンの合成をも促進している。筋肉から分泌されるマイオカインが生活習慣から来る病気やある種の癌まで防いでくれていることが分かって来た。その結果として、健康な長寿をも得られていた。家電や乗り物の発達により、現代人は運動量が激減し、かってよりも、早い年齢で筋肉量の減少が始まっている。人は動物、動く物だが、その動きを止めれば、もはや動物としての体の機能を失ってしまうと言うことだ。
桐の花と白い山藤

極限まで追い込まれている政府債務

2019-05-21 19:13:05 | 社会
先月、日本銀行の黒田総裁は、現在の金融緩和は来年の春頃まで、としていたが、貿易戦争の継続で、経済の先行きに悪化が考慮されるためか、17日には、来年春以降も継続する可能性があることを述べている。政府が経済は良好と言い続けて来た中で、何故、中央銀行は30年近くも低金利を続けたのか。経済が好調であれば、金利は上昇する。経済が悪化すれば、中央銀行は金利を下げて、世の中へ貸付と言う形で資金を提供する。バブル崩壊後、経済を立て直すために低金利が、他の先進国に先んじて日本は低金利を導入した。リーマン・ショック後も、比較的早く、立ち直ったにも関わらず、2013年には異次元の金融緩和と言う超低金利をさらに推し進めた。「失われた30年」は実質賃金を下げただけでなく、国民が保有する現金や預金の価値をも目減りさせて来た。日本国民は貧しくなって来た。昨年の年平均の消費者物価指数は0.9%と、総務省は発表している。現金で保持していれば、むろん、預金していても、金利はこれよりはるかに少ない。最近は日本銀行も言わなくなったが、以前には、物価目標を2%として掲げていた。これを達成する手段として、大量の国債を支柱金融機関から買い取り、金融機関へはその代金が支払われた。本来であれば、この市中金融機関が手にしたお金は、貸付に向けられる。1980年代の米国の金融経済への転換以前であれば、中央銀行が極端な金融緩和を行えば、実体経済で猛烈なインフレになった。しかし、現在の米国のように金融経済が主体となると、緩和されて社会に流入した資金は、実体経済よりも金融経済へ流れ、資産価格を押し上げ、バブルを醸成する。日本の場合は、そうした緩和による資金は、実体経済へは無論、金融経済へも流れず、日本銀行の当座預金に積み上げられている。如何に日本銀行が異常な金融緩和を行っても、インフレにはならない。世の中に、資金が流れ出ないので当然である。日本の場合、社会へは何の意味もないだけでなく、市中金融機関を疲弊させている異常な金融緩和を続ける意味は、ただ一つ。日本国債の金利上昇を抑え込むことである。財政法5条で、日本銀行が政府国債を政府から直接購入することが禁じられているため、形ばかり市中金融機関を通して購入しているが、実質は日本銀行による国債引受である。2016年6月、当時の三菱東京UFJ銀行は、日本国債入札の特別参加者の資格を返上した。市中金融機関は国債を積極的に購入しようとはしなくなっていた。買い手がいなくなると、国債の価格は下がり、金利は上昇する。政府機関の一員とされる日本銀行が買い取らない限りは、金利上昇は避けられない。しかし、金利上昇はたとえ1%であっても、1000兆円を超える政府債務にとって、極めて負担が大きくなる。日本銀行の超低金利は、来年の春以降も継続しなければならない理由は、日本の経済状態のためではなく、まさに政府債務のためであり、今後、継続し続けなければならない。政府債務の延命策である。国民の現預金を目減りさせ、市中金融機関を疲弊させてまで、超低金利を維持する理由はそのためである。しかし、中央銀行がたとえ超低金利を継続しても、いつまでも延命が可能であるわけではない。やがて訪れる経済恐慌により、破綻は避けられなくだろうし、海外が保有する150兆円の日本国債や、日本国債の先物売りで、国債の大暴落、金利急上昇があり得る。1971年に金本位制からの離脱を宣言した米国も、憲法上はいまだに通貨は金銀である。そして、中央銀行の中の中央銀行と称される国際決済銀行BISは世界の金融機関の資産や負債の決算上の評価基準を策定しており、バーゼル3と言う新たな基準を段階的に世界の金融機関で導入されて来ている。このバーゼル3では、今年3月末より、金融機関の資産として、これまでは時価の半分までしか認められて来なかった金地金が、時価の全額が資産として認められるようになった。これはただの印刷された通貨を軸として来たこれまでの評価基準としては、大きな転換である。無論、こうしたことは主要メディアは報じないが。金融バブルも政府債務の肥大化も、全て、通貨を際限なく印刷することで引き起こされたものである。何の裏付けもなく通貨が発行出来るからだ。
杜若