釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

「BRICSと脱ドル:代替案か潜在的災害か?」

2024-09-20 19:19:29 | 科学
ブルガリアに拠点を置く、Modern Diplomacyは昨日、「BRICS and De-dollarization: An Alternative or Potential Disaster?(BRICSと脱ドル:代替案か潜在的災害か?)   From October 22 to 24, 2024, a BRICS summit will be held, with a key agenda discussing the potential use of a gold-backed common currency.(2024年10月22日から24日にかけて、BRICS首脳会議が開催され、主要議題として金を裏付けとする共通通貨の使用可能性が議論される)」を載せた。執筆はインドネシア、ガジャマダ大学社会政治科学部の大学院で研究を続けているインドネシア人のレンディ・アルタ・ルビアンRendy Artha Luvian。

2024年10月22日から24日にかけて、BRICS首脳会議が開催され、主要議題として金を裏付けとした共通通貨の使用可能性が議論される。BRICSは、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカからなる国家グループで、結成以来、世界経済における重要なプレーヤーとなっている。その主な目的は、加盟国間の経済的・政治的協力を強化し、欧米諸国、特に米国が支配する世界金融システムへの依存を減らすことである。世界的な基軸通貨であり主要な取引手段である米ドルの支配は、ワシントンが支配する金融システムへの大きな依存を生み出して来た。

BRICSの脱ドル構想は、ドルへの依存を減らし、国際取引のより独立した代替手段を生み出すことを目的としている。最初のステップとしては、新開発銀行(NDB)や緊急準備制度の設立がある。しかし、これらの措置はまだ当初の期待に十分に応えていない。BRICSは現在、世界的な政治変動の影響を受けにくい、より安定した代替通貨として、金を裏付けとする通貨の使用を検討している。しかし、これはインドネシアのような国々にどのような影響を与えるのだろうか。国際通貨システムを均衡させるための代替策となるのか、それとも災いをもたらす可能性があるのか。

脱ドル構想、そしてBRICSが金裏付け通貨を検討する理由

BRICSの最新のイニシアチブのひとつは、米ドルを必要としない新しい決済システムの開発である。このシステムは、ブロックチェーンを含む高度なデジタル技術を使って国境を越えた取引を促進するように設計されている。このシステムはまだ開発中であるが、このシステムの一部として金担保通貨を使用する可能性が憶測されている。

金に裏打ちされた通貨は、金融政策やインフレの影響を受ける不換紙幣に比べ、より高い安定性を提供することが出来る。金は長い間、信頼出来る価値の貯蔵品と考えられており、通貨の変動に対するヘッジとして機能する。BRICSは、通貨の価値を金にリンクさせることで、世界経済の不安定さや、加盟国に頻繁に影響を与える国際的な制裁に対して、より強い代替手段を作りたいと考えている。

しかし、金に裏打ちされているとはいえ、BRICSが提案する通貨制度は、金利が中心的な役割を果たし続けるため、基本的には依然として利殖に依存している。このような金利メカニズムへの依存は、BRICSの通貨と金との結びつきを徐々に弱めることにつながる。金融機関が市場の需要や経済成長により柔軟に対応しようとすれば、通貨を膨張させたり、金融政策を調整したりする誘惑に駆られ、当初の金本位制が損なわれる可能性がある。このシナリオは、通貨が金の裏付けで始まったにもかかわらず、より適応性の高い不換紙幣をベースとしたシステムを優先して、最終的に貴金属との結びつきを断ち切った歴史的傾向を反映している。

国際通貨システムにおける金の歴史

金は長い間、交換手段や価値貯蔵手段として使われて来た。国際通貨システムの歴史において、金は金本位制として知られる世界的な通貨基準として重要な役割を果たした。1944年、ブレトンウッズ会議は、米ドルが主要な基軸通貨となり、固定レートで金と交換出来る新しい国際通貨制度を確立した。この制度により、米国は国際貿易で大きな力を持つようになった。しかし残念なことに、利用可能な金準備よりも多くのドルが印刷され世界的に流通したため、ドルと金の交換レートは上昇し続けた。

これは、裏付けとなる十分な金準備がないにもかかわらず、過剰なドルを印刷することによる権力の乱用を示していた。やがて1971年、リチャード・ニクソン大統領がドルと金との切り離しを発表し(ニクソン・ショック)、ドルが金準備ではなく市場の信用のみに裏付けられた不換紙幣となる時代が始まった。

この移行に伴い、米ドルは石油取引の主要通貨となり、ペトロダラーという言葉が生まれ、世界の金融システムはドルにより大きく依存するようになった。この変化により、米国は大幅な貿易赤字を出し、米国の外交政策に反対する国々に経済制裁を課すことが出来るなど、大きなメリットを得ることが出来た。金との連動がなくなった後も、国際貿易はほとんどドル建てで行われた。COVID-19の大流行以前は、石油貿易のほぼ100%が米ドルで行われていたため、石油はその後もドルの価値を維持した。しかし2023年には、石油貿易の5分の1が米ドル以外の通貨で行われていたと報告されている。

米国の金融政策による不安定さは世界経済に広く影響を及ぼし、BRICSのような国々はより安定した代替通貨を求めるようになる。

BRICSにおける金担保デジタル通貨の課題とリスク

金に裏打ちされた通貨には、価値の安定性やインフレからの保護など、さまざまな利点がある。通貨価値を金にリンクさせることで、BRICSはボラティリティを下げ、不換紙幣に比べてより安定した代替通貨を作ることが出来る。また、加盟国が米ドルへの依存を減らし、経済的な独立性を高めることにもつながる。

金を裏付けとする通貨をデジタルシステムで導入すれば、金の安定性と、国際取引の透明性とスピードを提供するブロックチェーン技術の効率性を組み合わせることが出来る。このシステムは、国際貿易の効率を高め、通貨交換に伴う取引コストを削減する可能性を秘めている。

しかし、金に裏打ちされたデジタル通貨を導入するには、技術的・規制的な課題に直面する。ブロックチェーンシステムのセキュリティとデータ保護が主な懸念事項であり、既存の国際システムの相互運用性に関する潜在的な問題もある。金を裏付けとするデジタル通貨をBRICS通貨の基盤として使用することは、通貨システムの安定性と完全性に関する脆弱性を生み出す可能性がある。ブロックチェーンは透明性を提供する一方で、潜在的なサイバー攻撃やシステム障害に伴うリスクがある。さらに、新しいテクノロジーへの依存は、既存のグローバル金融システムとの統合に課題をもたらす可能性がある。

次に生じる疑問は、BRICSが過去に米国が行ったようなことを繰り返すのではないか、ということだ。BRICSは無謀にも通貨を増刷し、その裏付けとなる十分な金準備がないにもかかわらず、通貨を増発した。この可能性は、BRICSとのつながりを避けられないインドネシアを含め、BRICSと協力関係にある国々を再び同じ罠に陥れる可能性がある。

インドネシアの戦略的役割

インドネシアは、国際取引における現地通貨の使用を強化するため、LCT(現地通貨取引)国家タスクフォースを発足させた。インドネシア銀行と9つの省庁が参加するこの取り組みは、二国間取引における通貨を多様化し、為替レートの安定性を高めることを目的としている。BRICSの脱ドル努力に沿ったこのイニシアチブは、米ドルへの依存を減らし、地域決済システムを支援するというインドネシアのコミットメントを反映している。

BRICS加盟国の一つとして、インドネシアはこの脱ドル構想において戦略的な役割を果たしている。二国間取引におけるルピアの使用を支援する特別業務を導入し、地域決済システムを促進することで、インドネシアは米ドルへの依存を減らすBRICSの取り組みに貢献している。こうした取り組みには、シンガポールとの国境を越えた決済システムの立ち上げや、ASEANの地域決済用ユニバーサルQRコードの開発などが含まれる。

脱ドルにより、インドネシアを含むBRICS諸国は、米ドルの変動や経済制裁へのエクスポージャーを減らすことが出来、大きな利益を得ることが出来る。さらに、ASEAN域内貿易や域内貿易を拡大することで、BRICSは世界経済における地位を強化し、欧米の金融システムへの依存度を下げることが出来る。

過去に起こったことに慎重になることは重要である。歴史は、通貨制度の大きな変化が、プラスにもマイナスにも、広範な影響を及ぼしうることを示している。特定の通貨や金融システムに対する信頼は、容易に悪用される可能性がある。BRICS通貨が国際貿易におけるドルの優位を崩すことに成功する可能性は、BRICSが世界を経済不安定状態に導く可能性と同じくらい大きい。ニクソン・ショックは、資本主義の道具がいかに世界を欺くことが出来るかを証明した。BRICSは今後、画面に数字を打ち込むだけで印刷出来る通貨で、金準備を使うという基本的な考え方に関心がなくなれば、同じことを繰り返すのだろうか?
ムラサキシキブ

「プーチンのロシア指導力の悪魔化は、平和への道における大きなハードルである」

2024-09-19 19:17:53 | 社会
昨日のインドCountercurrents.org掲載、「Demonization of Putin’s Leadership of Russia is A Big Hurdle in the Path of Peace(プーチンのロシア指導力の悪魔化は、平和への道における大きなハードルである)」。執筆は著作家バーラト・ドグラBharat Dogra。


もし21世紀に入ってから最も攻撃的な国を特定したいのであれば、どの国の戦争が最も多くの死者を出したかを調べれば最も簡単に出来る。

ブラウン大学の推計によれば、米国による「対テロ戦争」の下で行われた戦争は、直接的・間接的に約450万人の死者を出している。さらに、米国は様々な戦争や紛争に関与しており、代理戦争やクーデターや政権交代に関連する暴力も加えれば、死者の数はもっと増えるだろう。

他国が起こした戦争は、この数字には遠く及ばない。しかし、西側のメディアやプロパガンダでは、プーチン率いるロシアが最も非難されるべき侵略者とされている。

これは、単に国やその指導者、国民の評判を落とすことよりもはるかに深刻な問題である。証拠もない誤った悪者扱いが度を超すと、大国間の政府間・国民間の友好関係に悪影響を及ぼし、世界平和の展望が損なわれる。

長期にわたる誤ったプロパガンダは、時として政策決定において深刻な問題を引き起こすことがある。政策決定者は、現実ではなく、同じ権力者によるプロパガンダの結果、人々の間に広まった誤った概念に対応せざるを得なくなるからだ。

西側のプロパガンダが長年にわたって宣伝して来たプーチンの悪魔的なイメージの文脈でも、似たようなことが起きている。このため、ロシアとの関係改善や、悲惨で破壊的なウクライナ戦争を早期に止めるという重要な問題を提起することは、不可能ではないにせよ、極めて難しくなっている。和平の方向に進むためには、相手国やその最重要指導者の言っていることを公平な立場で真剣に考えることが重要だが、ロシアのトップ指導者のプロパガンダによって作られたイメージのために、それが難しくなっている。その結果、平和に向かうどころか、次から次へとエスカレートしている。これはもちろんウクライナとロシアにとって有害だが、西側諸国にとっても最終的には非常に有害である。

成熟した民主主義国家は、反対派の意見も含め、あらゆる意見を聞くことに熱心なはずである。だから、タッカー・カールソンがプーチン大統領にインタビューしたときのように、主流派のプラットフォームがロシアのプーチン大統領の意見を聞くために使われるという考えそのものに、西側諸国が非常に広く反発しているのは不思議なことである。チダナンド・ラジガッタ(2月8日付)が『タイムズ・オブ・インディア』紙で報じたように、「米国の国家安全保障体制とその主流メディアは、元フォックス・ニュースの司会者タッカー・カールソンによるプーチン大統領とのインタビューをめぐって完全にメルトダウンしている」。

これがどんな民主主義なのか、どんな自由なメディアなのか。西側諸国から敵視されている指導者であっても、人々がその指導者の意見を聞いて何が悪いのか。国民がロシアの指導者の見解も聞く機会があって何が悪いのか?

さらに言えば、西側諸国では異なる見解を聞いたり考慮したりするスペースが急速に狭まっているのではないだろうか?上で引用した報道が指摘するように、「米国の報道機関は、ワシントンが敵対視する指導者にインタビューして来た長い歴史がある」。では、今はどうなっているのか?なぜ米国のメディアはプーチンの視点を紹介することをこれほどまでに控えるのだろうか?

プーチンを悪者扱いするあまり、プーチンの見解やロシアの見解について合理的な検討がなされなくなるという広範な問題は、西側の民主主義国家にとって深刻な懸念となるはずだ。

実際、西側諸国はプーチン大統領に対する認識のさまざまな側面を真剣に再検討する必要がある。ひとつは、ロシアの国家指導者としてのプーチン大統領の役割を検証することである。もうひとつは、国際的にプーチンが西側でよく言われているほど攻撃的であったかどうか、具体的にはウクライナ戦争にどの程度責任があるのかを再検討することである。

プーチンがロシアの指導者に就任したのは、1990年から2000年の10年間で、ロシアの発展が阻害され、さまざまな開発指標が大幅に低下し、平均寿命さえも低下した時期だった。西側のアドバイザーがロシアで活躍し、ロシアの資産を外国人やロシアのオリガルヒを含む私企業に安価で売却させ、一部の者に莫大な利益をもたらしたが、同時に経済にひどい混乱をもたらした10年間に起こったことだった。

プーチンのリーダーシップの時代には、人間開発指標の面で目覚ましい回復を遂げ、現在では米国を上回るか、米国とほぼ同等になっているものもある。

子どもの死亡率、つまり出生1000人あたりの5歳未満児死亡率は、どの国でも健康の重要な指標であると広く考えられている。その意味で、国連のデータを見ることは有益である。最新の2021年の子どもの死亡率は、ロシア連邦では5.1であったが、米国では6.2であった。ロシアは、世界レベルで最も恵まれた、さらには覇権的な条件を享受している米国と比べ、非常に困難な状況に直面しているにもかかわらず、子どもの死亡率を下げることが出来たのである。

このデータを2000年から2021年までの期間で見ると、米国では2000年の8から2021年には6.2に減少しているのに対し、ロシアでは20から5.1に減少している。比較の観点からは、ロシアはこの点で米国に大きく遅れをとっていたが、プーチン大統領の20年間で躍進した。

Macrotrendsのデータによれば、ロシアの乳児死亡率(出生1000人当たりの1歳未満死亡率)は2000年の19から2023年には4.8へと大きく減少している。同じ期間にアメリカの乳児死亡率は7.2から5.4へと減少しており、ロシア連邦が直面するあらゆる困難な状況にもかかわらず、米国に大きく遅れをとっていたロシアが、プーチン指導者の時代に急伸したことになる。

国連のデータによれば、2000年から2020年までの妊産婦死亡率MMR(出生10万人当たりの報告数)は、ロシアが52から14へと大幅に減少したのに対し、米国は12から21へと増加した。つまり、国連のデータによれば、この期間、ロシアは年間6.66%という非常に大きな減少を記録しているのに対し、米国は減少どころか、年間2.88%の増加を記録しているのである。

Macrotrendsのデータによると、2000年から2017年にかけて、ロシア連邦の妊産婦死亡率は56から17に減少した。

これらのデータでは、ロシア連邦は米国よりはるかに高いMMRで始まり、困難な状況に直面しているにもかかわらず、20年以内、あるいはそれ以前に米国より低いMMRに達していることが共通している。

国連のデータによると、2000年から2019年の間に、ロシア連邦の平均寿命は65.3歳から73.2歳へと大幅に伸びた。Macrotrendsのデータによると、この増加は2000年の65.4歳から2023年の72.98歳までである。

2000年の1710ドルから2005年の4450ドル、2010年の9980ドル、2021年の11610ドルへと、この間のロシアの一人当たり所得(GNI)の増加は非常に著しい。逆に、ロシア経済が西側の影響下にあった1991年から2000年までは、3440ドルから1710ドルへと大幅に減少した。

入手可能なデータによれば、ロシア連邦の識字率は約99%である。

ロシアの人間開発指数は、2000年の720から2021年には822に向上している。

このように、ロシア連邦の人々の福祉と進歩に関する限り、21世紀のプーチンのリーダーシップの時代のロシアは、最も強力な国々によって多くのハードルが置かれているにもかかわらず、絶え間ない中傷と批判にもかかわらず、驚くほどうまくいっているように見える。

しかし、民主主義の面ではプーチン率いるロシアの進歩は芳しくないと言う人もいる。これは事実だ。 しかし、その責任の一端をロシアに負わせるべきであり、その他の一端は、ウクライナのように、さまざまな民主主義制度の隙を突いて政権を倒し、防衛手段として野党勢力への規制を強化することにずっとつながって来た西側の強国にある。また、西側諸国が信頼する世論調査によれば、プーチンの支持率は、現職や最近の米国大統領を含む西側の著名な指導者たちの世論調査よりも常に高いということにも注目すべきである。

しかし、プーチンを批判する人々は、プーチンは非常に攻撃的だと言うかもしれない。プーチンは以前から、紛争を回避し、ヨーロッパの中でロシアが自尊心を保てるような場所を見つけようと何度も試みていたこと、ヨーロッパへの安価なエネルギー供給を確保するために莫大な投資を行ったこと、NATOとその兵器システムをロシアに近づけすぎないという西側との約束を守るよう何度も懇願したこと、西側の著名な指導者たちが後に、ミンスク合意はウクライナがよりよく武装するための時間稼ぎに過ぎないと言った一方で、彼は非常に真剣にミンスク合意を受け止めていたこと、2021年後半にも彼は非常に合理的な和平提案を行い、2022年3月のウクライナ戦争の非常に早い段階で行われていた和平交渉が英国と米国によって妨害されるまで、彼は和平交渉を成立させることに非常に熱心だったこと。西側の著名な外交官や専門家によって確認された、これらすべてを証明する十分な文書がある。

しかし、プーチン率いるロシアに重大な欠陥がなかったとは言い切れない。確かに、民主主義と人権、環境保護と平和、格差の大幅な縮小、全体的な開発モデルの改善など、もっともっとやるべきことがあったはずだ。改善が必要な分野はまだたくさん残っているが、プーチン率いるロシアの実績は、ロシア連邦とロシア国民の利益を守るという観点からは、明らかに良好である。

覇権主義に立ち向かう必要がある今、プーチンとその仲間たちの勇気は、多極化する世界の大義に貢献した。その点で、プーチンは近年の歴史において重要なプラスの役割を果たしている。

プーチン率いるロシアのある側面に対するバランスの取れた、証拠に基づいた批判は歓迎すべきことであり、さらなる改善をもたらすのに役立つだろう。しかし、現在のプーチン率いるロシアに対する広範で非常に誇張された批判は、その実績に基づけば、まったく正当化されない。

西側諸国とNATOのほぼすべての軍事力を動員してロシアを包囲し、打ち負かすことは、まったく正当化されず、非難されなければならない。正義、平和、安全、環境保護を考慮すると、西側諸国はロシアに対するまったく不当な対立を直ちに放棄し、友好の手を差し伸べ、ロシアに世界とヨーロッパにおける尊厳の場所を提供し、ウクライナ紛争を非常に迅速に終結させ、すべての国と国連機関の援助と協力を得て、現地で復興と再建のための大規模なプログラムを開始する道を開くべきである。

もちろん、苦しんでいるウクライナの人々にも心から同情する。彼らは、2014年に米国がウクライナで起こしたクーデターによって始まった、まったく回避可能な代理戦争の犠牲者なのだ。この何年にもわたる人々の苦しみと苦悩から抜け出す重要な方法のひとつは、ロシアとウクライナの戦闘を即座に終わらせることである。
ナナカマド

「サリヴァンさん、悪いけどあなたはあまりにも中国をわかっていない」

2024-09-18 19:11:53 | 社会
今日のビル・トッテン氏訳、「Sorry Mr Sullivan, But You Just Got China So Wrong(サリヴァンさん、悪いけどあなたはあまりにも中国をわかっていない)」。8月25日、1億5000万人以上の購読者のいるThe China Academy掲載記事。執筆は復旦大学国際関係学部Shen Yi 教授。


ジェイク・サリヴァンが中国を訪問した際、500万人のフォロワーを持つ中国の学者、Shen Yiは当初コメントを控えていた:「白昼夢を見ているだけの米国の政策決定サークル全体を論じることに意味があるとは思えない」。しかし最後に、彼はコメントを書いた。

8月27日、ジェイク・サリヴァン米国家安全保障顧問が北京に到着し、3日間の中国訪問の幕を開けた。初日は王毅外相と会談した。正直なところ、私はサリヴァンの訪問についてあまりコメントしたくない。中国と米国の戦略的関係を評価することになり、かなり不安な気持ちを誘うからだ。

今日の米国は半自閉症で半夢想状態の間にあるように感じられ、「あなたがどう思おうと構わない、私がどう思うかだけだ」とでも言いたげな世界観を持っている。それ以外のことについては「手を出すな」、である。今日の米国を相手にすると、必然的に深い無力感とフラストレーションが生じる。

単刀直入に言えば、米国の意思決定エリート、特に対外戦略チームは、その認識において正常ではない。チャス・W・フリーマンJrは、これを自己麻酔化、自己催眠と表現した。私は、これは思い(重い?)病気だと言いたい。

この病気はすべてにいきわたっており、それは中国だけに向けられているのではない。世界全体に対する彼らの態度なのだ。しかし中国だけがそれを拒否しているため、米国の中国に対する歪みは他の地域よりも強い。中国は対等の立場で米国を見ることができるようになりつつあり、この異常性を認識している。有名な童話『裸の王様』のようなものだ。2人の詐欺師が透明の服を織り上げ、裸で走りまわる米国を他の国々は追うふりをしている。

では、サリヴァンが中国を訪問する目的は何なのか?イギリスのコメディドラマ『イエス・プライム・ミニスター』でも描かれているように、西側諸国政府が匿名の政府関係者を通じて2つの事柄の関連性を公式に否定するときはいつも、現実は正反対であることが多い。サリヴァンの目的は明確だ。民主党は2024年の米国大統領選挙でトランプを打ち負かすために中国の支援を必要としているのである。

第一に米国は、バイデンの外交政策がすばらしく、金融政策が堅実で、中国戦略が効果的であることを世界に伝えるために中国を必要としている。したがってバイデンは良い大統領であり、今度はハリスにバトンをわたし、彼女も良い大統領になる–だから、みんなハリスに投票すべきなのだ。

第二に、彼らは9月に経済政策を大きく動かすための根回しをしている。米国経済は現在、水門の開閉に依存している。水が多すぎる?水門を閉める。水が少なすぎる?水門を開ける。それ以外に実質的なものは何も生み出せない。米国の産業政策も、製造業のリショアリングも、インフラ整備も、ジョークに過ぎない。米国全体が巨大なバブルに巻き込まれている。したがって金利を引き下げる必要があり、その引き下げ幅は予想よりも大きくなるかもしれない。しかし、中国がマクロ経済、金融、財政支援に協力しなければ米国は深刻な事態に陥る可能性がある。だから米国は中国の助けを求めているのだ。

残念なことに米国の政界は現在、米国がナンバーワンで無敵であり、それが永遠に続くという考え方に支配されている。民主党はすべてがうまくいっていると主張するが、「トランプ・ウイルス」に感染した共和党はそう考えてはいない。共和党は、目を閉じて「米国は最高だ」と繰り返せば、そうなるはずだと主張している。だから中国に譲歩する必要はない。米国はすでに北京に丁寧な要請を持ってやって来たことで中国の顔を立てているのだから、中国は光栄に思い、感謝して頭を下げるべきなのだ。

そして共和党は、通路を挟んだ同僚たちよりもさらにたちが悪く、世界中が米国に「貢ぐ」べきであり、米国に搾取されることを光栄に思うべきだと信じている。交渉?あなた方はそれに値しない。

これが現在の膠着状態につながっている。米国は中国に「無私の貢献」を期待し、それについて良い気分さえ感じている。まるで米国に右の頬を叩かれると左の頬を差し出して、米国の手が痛くないかと親切に尋ねるようなものだ。米国は中国が進んで制裁を受け入れること、発言しないこと、報復しないこと、台湾を持ち出さないことを要求している。彼らはやりたい放題で、台湾はいわゆる法的独立を追求することは「許されない」ことを保証する。それで十分だ。感謝すべきだ。南シナ海でフィリピンと対立するとは何事だ?フィリピンは米国の弟分だ。そしてロシアについては、我々が言うように抹殺するべきだ。

サリヴァンは米国大統領の国家安全保障顧問だが、これは公職ではない。彼は大統領によって任命され、上院の承認は必要ない。彼は大統領に仕えるアドバイザーに過ぎず、古代中国における勅使のようなものだ。

サリヴァンと王毅外相は以前にも交流があった。しかし1年かけて中国を理解しようとしているにもかかわらず、米国はいまだに理解を正していない。率直に言えば、バイデン大統領以下、米国の外交チーム全員が集団で白昼夢を見ているような状態にあり、脳内で空想の世界に生きているのだ。

米国がこれほど扱いにくく、人々に無力感と当惑に陥れるのは、能力不足にもかかわらず、彼らの夢がかつてないほど美しいからである。

この状態を最もよく体現しているのが、ハリスの選挙綱領だ: あなたに欠けているから、私が与えよう。これが気に入らないなら、あなたの望むものに変えてあげる。コストや方法は関係ない。ハリスの名前を言うだけで、あなたの夢は叶う。これは西洋の国際関係史におけるシュールな瞬間であり、オズワルド・シュペングラーが予言したように西洋文明の衰退の現れである。

サリヴァンの訪問は見返りを提供することなく中国から譲歩を得ようとする米国による実りのない試みとなる運命にある。その目的は選挙でハリスのチャンスを最大化するために、中国から現実的な約束を取り付けることだ。民主党が勝てば、彼らははしごを外す可能性がたかい。なぜなら共和党はいつものように米中戦略に厳しいからだ。中国にとってこれは大きなチャレンジだ。

結局のところ、重要なのは強さだ。中国は特別で、重要な新興市場の特徴を持つ成長中の大国だ。これは謙遜ではなく、客観的な現実だ。それでも、中国は米国との関係に対して冷静な態度をとり、米国を同じ土俵で見ることができるようになってきている。

経済的には、中国は確かに課題に直面しているが、それは世界全体も同様で、長期的な景気後退とマクロ経済の停滞に突入している。主要国の中で、総合的な指標から見た中国の経済パフォーマンスは間違いなく最高である。

例えば、もし米国のマクロ経済データが彼らが主張するように良好だとしたら、私は3つの疑問の答えを待っている:

一つ目は、トランプの支持者の多くはどこから来ているのか?

もし現職が経済をうまく運営してきたと主張し、米国民がその通りだと思うなら、ハリスはトランプのような強力な挑戦者に出会うことはないだろう。さまざまな分析を通じて人々が経済への懸念を口にすることがある中国とは異なり、米国はすべてが絶好調だと主張する一方で、米国人自身は、この繁栄しているというものが自分たちの日常生活とどう関係しているのかわからないとよく言う。そんなに素晴らしいならなぜ利下げが必要なのか?

第二に、なぜ昨年4月から今年3月にかけて非農業部門雇用者数が81万人も下方修正されたのだろうか?

この間、米国は290万人の雇用を創出したと主張していたが、今回の修正でその30%が消えてしまった。これは都合よく、連邦準備制度理事会(FRB)が金利を引き下げなければならないシナリオを作り出している。もし本当に経済が好調なら、雇用も好調なはずではないだろうか?

この雇用統計は、米国が必要な程度に経済を刺激するためには利下げが必要であることを示唆している。この文脈において、中国は米国が中国に助けを求めていることを認識し、自信を持つべきである。米国が始めたこの戦略的ゲームに中国が応じる義務はない。中国は、米中関係に対するより建設的な戦略に力を注ぐべきである。

この建設的戦略には、1つの本質的な要素が含まれていなければならない。それは米国が常軌を逸した行動をとって米中関係の安定を乱し、関係が健全な軌道で発展しない場合、中国は米国を罰し、正さなければならない。これは避けられない道である。

第三に、CHIPS法、インフレ削減法、1.2兆ドルのインフラ計画など、米国のイニシアティブの実際の成果はどうだったのだろうか?

どれだけの充電ステーションが建設されたのだろうか?どれだけの新しい鉄道、道路、橋が建設されたのか?それが米国経済にどのような影響を与えたのか?新しいチップ工場はどのように進んでいるのか?新しいチップ工場の生産高は?先進的なコンピューティング・チップを使用したコンピューティング・パワー・センターが米国内にいくつ建設されたのだろうか?米国で真に価値を創造し、生産性向上を促進するような方法で大規模モデルを適用している企業はどのくらいあるのか?

これら3つの疑問について考えた後、私たちは米中戦略競争についてよりバランスの取れた理解を形成することができる。この新しい枠組みでは、中国が米国に譲歩する必要はないと考える理由がある。

我々はまた、サリヴァン訪中や現在進行中の中米戦略対話について、より広い視野を持つべきである。今、中国は、頑固な生徒を教育する忍耐強い教師のように、言葉と行動を組み合わせて米国の次の一歩を導くような行動をとるべきだ。

中国は、米中関係の健全でダイナミックなバランスを維持しながら、自国の国益を守ることを目指している。これは片方の一方的な責任ではない。これを達成することは双方に利益をもたらし、「言葉には言葉を、行動には行動を」という枠組みが徐々に形成され、今後の発展の一般的な傾向となるだろう。

サリヴァンが到着し、飛行機から降りると、赤い絨毯はなく、地面に赤い線が引かれているだけだった。たとえ絨毯がなくても彼は気にしない。それでも彼は来る。前回、ブリンケンが上海を訪れた際、彼は一人で取り残されたが気にしなかった。なぜか?なぜなら彼にはそのような振る舞いをするほどの地位もなければ、多くの要求を突きつけるだけの影響力もないからだ。誰もが現実的に物事を考えている。中国の態度に関係なく、彼らはまだ真剣に話し合う必要がある。これは力学における微妙な変化を示している。

非対称で不均等なパワーの成長と変遷のこの局面では、米中関係を十分に理解し管理するためにこうした詳細を認識し理解することは不可欠である。
ヤブマメ

「欧州連合-良いこと、悪いこと、そして醜いこと」

2024-09-17 19:17:27 | 社会
昨日、インドのCountercurrents.orgは、「European Union—the Good, the Bad and the Ugly(欧州連合-良いこと、悪いこと、そして醜いこと)」を載せた。執筆はインドの著作家バラット・ドグラ Bharat Dogra。


戦争は何よりも私たちの世界に害を及ぼしてきた。どの地域でも、内部の戦争や紛争を回避し、より大きな団結と統合を目指す努力がなされているのであれば、それは評価されるべきであり、他の地域もそこから学ぼうとすべきである。

ヨーロッパでは20世紀、大陸内のさまざまな国の戦争が非常に有害であった。そのため、そのような戦争を回避し、ほとんどの国を連合にまとめることで国内平和を確立し、経済協力やその他の協力を強化し、人々がある国から別の国へ自由に移動できるようにし、すべての加盟国に民主的自由と人権の基準を設ける努力がなされた。

これはEUの重要な成果だが、EUを公平に評価する上で考慮すべき、あまり幸福とは言えない側面もある。旧ユーゴスラビアは崩壊の過程で多くの内部暴力に見舞われ、その一部は、米国が主導し、欧州の主要国が支援した作戦によって、非常に残酷な方法で爆撃された。欧州の2大国は2年以上にわたって戦争状態にあり、他のほとんどの欧州諸国の役割は、平和をもたらすことではなく、ある意味で戦争を長引かせることであった。ヨーロッパ内での戦争が拡大する危険性は高まっている。ヨーロッパ内での核兵器交換の危険も、ごく最近、減少するどころか増加している。欧州で最も重要な国のいくつかは、いまだに欧州連合(EU)の外にある。最も重要な国々の間の経済協力と貿易は、ここ数年苦境に立たされている。

さらに、欧州と欧州連合の重要な指導者の何人かは、このところ戦争を拡大させ、さらには戦争を煽るような言葉を口にしており、平和へのコミットメントに深刻な疑問を投げかけている。長らく中立を自負してきた欧州諸国の中には、それを放棄し、大国間の対立に巻き込まれ、その結果、自国の安全保障を高めるどころか、むしろ低下させ、同時に調停と平和の力としての役割を低下させている国もある。 より成熟した民主主義国家を自負する国々を含め、さまざまなヨーロッパ諸国では、基本的な民主主義の自由が踏みにじられている。

ヨーロッパ諸国は、グローバル・サウスのいくつかの国々に対する不当な攻撃に関与してきたし、イスラエルに多くの武器と重要な外交支援を提供することで、ガザで進行中の大量虐殺行為に加担してきた。

それゆえ、欧州統合プロジェクトが平和を達成するために歴史から学ぶことを基本としていたとしても、それは限定的で日和見的な学びに過ぎなかった。

ほとんどのヨーロッパ諸国はNATOのメンバーであり続けている。世界支配を基盤とする最強の軍事同盟の利益に奉仕するというあらゆる意味合いを持つこの同盟は、宣言された防衛的なものではなく、攻撃的で侵略的な政策にますます導かれており、世界の平和にとって大きな脅威となっている。

世界における存亡の危機が増大している最も重要な要因のひとつは、米国が世界支配の確保という非常に危険なアジェンダにますます導かれていることである。もし欧州諸国の大半が、そのようなアジェンダを追求するジュニア・パートナーになれば、平和勢力であるという主張は著しく否定されることになる。

今日存在する対外貿易、投資、経済力のアジェンダは、富める国々に有利に、貧しい国々に不利になるように仕組まれている。もちろん、より強力なヨーロッパ諸国は富裕層の側に立っている。彼らはまた、非常に危険な技術や製品の輸出に携わる巨大多国籍企業数社と密接な関係にあり、食品や農業システムをひどく、そしておそらく永久的に汚染している。 何世紀にもわたる植民地搾取の埋め合わせをしようという姿勢はほとんど見られない。それどころか、ある著名な指導者は、ヨーロッパだけが美しい庭園を造っていると語り、そのために誰が搾取されたかを忘れている。

それゆえ、歴史から学ぶという極めて限定的な利己主義に基づき、この限定的な理解に基づいて「平和」という極めて歪んだアジェンダを発表しても、ヨーロッパを大きく前進させることは出来ないだろう。このような限定的で歪んだ理解の矛盾は、何度も何度も浮上し、ヨーロッパを多くの緊張と問題に巻き込んで行く。勇ましい話や知的な体操の果てに、最終的に見えて来るものが、本質的に破壊的な覇権主義的アジェンダに固執する最強国の後輩パートナーシップであるならば、欧州が平和と正義のための力になっていないことは明らかである。過去と同様、本質的にヨーロッパは遠い国の破壊に加担し続け、さらに自国民を非常に破壊的な戦争や兵器の危険にさらし続けている。

あらゆる教育の進歩、偉大な大学、知的業績を持つヨーロッパは、自国が達成出来たことと出来なかったこと、避けるべき危険と受け入れるべき機会について、公平かつ現実的に評価する能力を持つべきである。基本的に、欧州は欧州内で正義ある平和を達成するとともに、世界レベルでも正義ある平和のための確固たる力となるよう努めるべきである。これはまた、環境保護と持続可能な開発を追求し続けるための条件整備にもつながる。歴史的、文化的に米国と人と人とのつながりを持つ欧州は、米国を平和の方向に導き、覇権主義から脱却させるためにも最適であり、より安全な世界を創造するための全体的な探求において、歴史的に非常に重要な役割を果たすことが出来る。
彼岸花

「中国はグローバル・サウスで勝利を収めている」

2024-09-14 19:13:37 | 社会
今日のビル・トッテン氏訳、「China is Winning the Global South(中国はグローバル・サウスで勝利を収めている)」。8月21日、米国でForeign Affairsと肩を並べるThe National Interest掲載記事。執筆はワシントンD.C.にある戦略国際問題研究所(CSIS)の上級副所長、ダニエル・F・ランデDaniel F. Runde。


米国とその同盟国は、中国と競合するにあたり軍事面と技術面に重点的に取り組んできたが、第三の戦線であるグローバル・サウスは重要でありながら過小評価されている。

しかしこれで米国が冷戦や冷戦直後の戦略から戦略を更新しなければならないという事実は変わらない。米国は主に、非軍事的なグローバル・サウスにおける大国間の競争に参加するために、これらの新たな現実に対応しなければならない。それには、貿易、インフラ、デジタル接続、教育、経済開発などの分野において、グローバル・サウスとより積極的に関与することである。

特に通信は重要な分野である。中国は「デジタル・シルクロード」の一環として、海底ケーブルの主要な供給者および所有者となっている。中国の国有企業で、政府補助を受けているHMNテクノロジー(ファーウェイ)は、現在世界第4位のケーブル供給者で過去10年間で最も急速に成長し、108以上のプロジェクトを完了している。投資分野にはインターネットサービスなど新興の重要な技術分野も含まれ、ファーウェイはそこで数億人にインターネットアクセスを提供している。現在、ファーウェイの子会社はサハラ以南のアフリカにおける4Gネットワークの最大70%を所有している

通信業界における中国の優位性は米国にとって戦略的脅威である。北京が重要なデジタルインフラの流れを管理できるということは、監視の可能性を高めることになる。この現実はすでに明らかになりつつある。中国が発展途上国の独裁者を支援し、中国のデジタル権威主義モデルを通じて市民や反対派を弾圧しているからだ。

米国はグローバル・サウスにおけるデジタルインフラへの投資を増やし、米国の通信企業を促進し、ファーウェイの技術よりも安全で競争力のある代替案を提供することでこれに対抗しなければならない。

中国はまた、「デジタル・シルクロード」の海洋版である「海上シルクロード」計画の下、戦略的に重要な港湾のグローバルネットワークを構築している。北京は現在50カ国以上の約100カ所の港湾およびターミナルを所有または運営しており、その範囲はすべての海洋と大陸に及んでいる。中国はアフリカだけでも約23の港湾を所有している。これにより中国は事実上、世界的なサプライチェーンの中心にある港湾を支配することになり、それは地政学的な利益獲得に活用できる可能性がある。米国は港湾インフラプロジェクトへの投資、有利な融資条件の提供、南半球における港湾開発を支援するための官民パートナーシップの構築などで対応しなければならない。

中国は2009年以来、アフリカ最大の貿易相手国として米国を圧倒している。現在、アフリカの総輸出額の5分の1が中国向けでその大半は金属鉱物、鉱物製品、燃料である。現在の米国とアフリカ諸国間の貿易量は、アフリカと中国の貿易量のわずか5分の1にすぎない。現在までに、アフリカ54カ国のうち52カ国が、一帯一路構想(BRI)と協定または了解覚書を締結している。これは、西側諸国全体を合わせた2.5倍に相当するアフリカのインフラプロジェクトである。貿易と投資を通じた中国の経済的影響力は依存関係を生み出し、潜在的に北京との政治的連携につながる可能性がある。これに対処するために米国はアフリカ諸国との貿易を拡大し、米国企業がこれらの市場に参入できるよう支援することで、経済的な関与を強化しなければならない。開発金融公社(DFC)の業務の範囲と規模を拡大し、持続可能な開発パートナーシップを促進することが中国の経済的影響力を相殺するのに役立ついくつかのステップのうちの第一歩である。

グローバル・サウスにおける中国の影響力の重要な側面も、貿易と債務を巡るものである。昨年、中国による一帯一路構想では約210件の取引で900億ドルが投じられたが、DFCが投じたのは約130件の取引で90億ドルである。その結果、多くの開発途上国が中国の債務の罠(原文のまま)に陥っている。この経済的依存関係は、北京にとって政治的な影響力を意味する。大国間の競争が激化するこの新たな時代において、米国はこうした現実に対応するために、自国の対外援助モデルを再構築しなければならない。これには開発融資と無償援助のバランスを再考すること、そして、不公正な経済慣行に抵抗しながら、国内外で開放的かつ市場ベースの経済を維持することが含まれる。開発援助は単なる慈善行為ではなく将来の同盟国への戦略的投資である。米国の支援を受けて能力を向上させた国々は、中国の債務の罠に陥る可能性が低く、公正かつ透明性の高い統治を行う可能性が高い。

グローバルな力学の変化におけるもう一つの重要な要素は、グローバル・サウスのエリート層がどこで学ぶかということである。高等教育は、優れた統治、機能的で説明責任を果たす機関、そして力を持つ市民社会を育成するソフトパワーの最も効果的な手段の一つである。中国への留学生数の増加は、教育交流が将来の指導者の視点や忠誠心を形作る上で影響力を持つことを認識していることを示している。2003年には、中国の大学に在籍するアフリカ人留学生は1,300人にも満たなかった。2017年には8万人を超えた。ユネスコの「グローバル教育モニタリング報告書」2020年版によると、中国は世界最大の奨学金供与国である。公的資金では米国はトップ10にも入っていない。2020年には、中国はアフリカの学生に1万2000件の学術奨学金を供与したが、英国は1000件だった。米国のフルブライト奨学金プログラムはわずか200件強だった。

米国のプログラムは、リソースの制限、規制当局の非現実的な期待、ビザの制限によって妨げられてきた。しかし米国の競争優位性は、依然としてその質の高い教育、公平で透明性の高い採用プロセス、市民意識の高いカリキュラムに触れることができるという点にある。実際、2023年には、米国の大学で学ぶ中国人留学生は29万人に達し、その大半は奨学金を受け取らず、米国で学ぶ外国人留学生の中で圧倒的に最も多い割合を占めていた。米国はこれらの価値を活かし、発展途上国の学生たちが中国の統制された画一的な環境ではなく、米国のリベラルな教育システムに触れる機会をより多く確保しなければならない。

さらに、世界の力学を変化させる重要な要素はグローバル・サウスの国々が軍事装備をどこから調達するかである。例えば、インドとロシアは数十年にわたり緊密な防衛関係を保っている。インド陸軍はロシア製の戦車やライフル銃を装備し、空軍はスホーイ戦闘機やMi-17ヘリコプターを使用している。米国との関係が深まっているにもかかわらずインドは依然としてロシア製武器の最大の購入国である。この関係が、ウクライナ侵攻後のロシア非難にインドが及び腰であることの一因となっている。ニューデリーは間接的にモスクワに国際法の尊重を求めたが、ロシアを批判するまでには至らなかった。 このことは、中国やロシアから軍事装備を購入する国々は、しばしば地政学的にこれらの大国と将来にわたって結びついた立場になることを示している。米国は、これらの国々が米国の地政学的利益を支持することを確実にするために、より良い代替案を提供しなければならない。

また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにおける中国のワクチン外交はその影響力を大幅に強化した。中国は2021年9月までに世界中に22億回分のワクチンを配布したと主張している。国内へのワクチン配布が外交よりも優先したOECD諸国とは異なり、中国とロシアは海外での地政学的な優位性を得るために独裁体制であることを利用して自国内でのワクチン配布を差し控えた。ドミニカ共和国、エルサルバドル、ブラジルなどの国々にワクチンを提供することで、中国は台湾を承認しないことや、通信システムにファーウェイを採用することなど、外交上の譲歩を確保しようとした。この問題をめぐり、パラグアイが台湾から中国への承認切り替えを検討したという噂もある。このアプローチは、かつてワクチンを製造できなかった中国のような国々が今では低品質のワクチンを外交的利益を得るための戦略的ツールとして使用しているという、グローバルなパワーバランスの変化を浮き彫りにしている。

グローバル・サウスを無視することは米国の国家安全保障にとって危険である。中国がこれらの地域で影響力を強めていることは、単に経済的な課題にとどまらず、世界のパワーバランスを大きく変える戦略的な脅威である。ほとんどの国は米国との協力を望んでいるが、中国が提供する以上の魅力的なオファーがなければ、必然的に中国に傾倒することになるだろう。

世界のパワー競争の舞台は変化したが、発展途上国の重要性はかつてないほど高まっている。米国はこの新たな時代の課題に効果的に対処するために、かつて冷戦時代にそうしたように再び道徳的信念と戦略的洞察力を活用しなければならない。米国の長期的な利益は、いざとなればルールに基づく自由な世界秩序を支持するであろうパートナー諸国の台頭を支援することで最もよく守られる。中国による「グローバル・ガバナンスの代替案」に対抗する米国の外交政策にとって、グローバル・サウスへの関与へのコミットメントを再確認することは極めて重要である。

そうすることで、米国は強靭なパートナーシップを構築し、優れた統治を推進し、急速に変化する世界情勢の中で自国の利益を確保することができる。リスクは高いが行動を起こすなら今しかない。
ミセバヤ

「イスラエルがワシントンを支配」

2024-09-13 19:17:50 | 科学
今日のビルトッテン氏訳、「Israel Rules Washington(イスラエルがワシントンを支配)」。4日、米国The Unz Review 掲載の同名記事。執筆は元CIAの情報将校で、現在はコラムニスト、コメンテーター、安全保障コンサルタントのフィリップ・ジラルディPhilip Giraldi。


ユダヤ国家のために何をするか競い合う政党

もし、米国との関係において主導権を握っているのがイスラエルであるということを本気で疑っている人がいるなら、先週ハマスの指導者たちに対して刑事告発が提出されたことは{1}、目を覚ますべき警鐘となるだろう。

9月2日、7つの罪状からなる刑事告訴がニューヨーク市の連邦裁判所に提出された。そこには公共空間で爆破を企てる、外国のテロ組織への物的支援を企てる(結果として死者がでる)、大量破壊兵器の使用、米国国民の殺害を企て、実行する、テロ資金調達を企てるなどの罪状が含まれている。またこの文書は、イランとレバノンのヒズボラが、イスラエルに対する攻撃に使用する資金、ロケット弾などの武器、軍事物資をハマスに提供しているとも主張している。この文書の正当性は、正当などという言葉を使うのをためらわれるが、米国にはテロリストとその支援者を追跡し、場合によっては殺害する権限が与えられており、それが適切であると判断した場合には、世界のどこであっても、いつでも行使できるという前提に基づいている。

この新たな展開の朗報を広めるため、悪意に満ちた米国司法長官メリック・ガーランドさえ、2023年9月にウクライナを訪問してロシアを威嚇して{2}以来クローゼットに隠れていたのに登場した。彼はビデオ声明を発表し、米国の裁判所を利用して世界の他国の行動を規制しようとする最新の試みについて、自身の考えを明らかにした。何の証拠を提示することもなくガーランドは、ハマスが「米国市民を殺害し、米国の安全保障を脅かす数十年にわたるキャンペーンに資金提供し、指揮を執ってきた。そしてイスラエル国家を破壊し、その目的を達成するために民間人を殺害“しようとしている」と述べた。また、ガーランドは、43人の米国系イスラエル人が死亡したとされる10月7日のハマスによるイスラエル攻撃についても、生々しい表現で描写したが、その表現はほぼすべてがイスラエルのプロパガンダによる嘘であることが後に明らかになっている。ガーランドは、この集団が「ユダヤ人に対するホロコースト以来最悪の虐殺」として「家族全員を殺害した」と主張した。「彼らは老人や幼い子供たちも殺害した。彼らはレイプや性器切除などの女性への性的暴力を武器化した。本日公開された告発状は、ハマスの活動のあらゆる側面を標的にする取り組みのほんの一部に過ぎない。これらの行動は我々の最後の行動ではないだろう」。実際には、もちろん、すべてではないとしても死亡した人の多くはイスラエルがヘリコプターや戦車による無差別攻撃で反撃した際に、味方の攻撃によって命を落とした人々である。それにもかかわらず、主流メディアは、ハマスが1,200人のイスラエル人を殺害したという10月7日に関する誤ったストーリーを繰り返し続けている。また、拷問やレイプの話は、主にパレスチナ人捕虜に対するイスラエル兵の行為である。実際に解放された人質の多くが、ハマスから丁重に扱われたと証言している。

イスラエルを喜ばせるために、米国は1997年にハマスを「外国のテロ組織」と宣言した。現時点でハマスを追い詰めることは間違いなくイスラエルと、民主党の政治資金の大部分を提供しているだけでなく、ドナルド・トランプ氏の共和党に流れる資金の割合も増加している米国系ユダヤ人の政治献金者たちへの贈り物である。とはいえ、ガーランドのFBIが、グループの指導者として特定された6人の男たちを見つけ出し逮捕するのは困難であり、そのうち3人は死亡しているため、起訴はほとんどが形だけのものとなる。その中には、現在の指導者であるヤヒヤ・シンワルも含まれているが、彼はどこかのトンネルに身を隠しているため、居場所は不明である。

起訴されたその他のハマス指導者には、前指導者のイスマイル・ハニーヤ、武装部門の副指導者マルワン・イッサ、ガザ地区とヨルダン川西岸地区以外の地域を統括するハレド・マシャール、それにモハメド・ディフとアリ・バラカが含まれる。ハニーヤ、イッサ、ディフは、イスラエルによる攻撃でこの数か月の間に死亡したと伝えられている。名前が挙がった人物のうち、まだ生存している者は米国に逮捕される可能性は低い。このタイミングでの起訴は、シオニストの侵略者から自国を解放しようとするハマスの活動とそのグループを支援する米国人を「テロ支援者」として探し出し、逮捕し、処罰するための連邦政府による取り組みの準備を整えることを目的としているのではないかと疑わざるを得ない。また、より一般的なパレスチナ支援者に対する攻撃にも利用される可能性がある。

もしテロがすべてであり、米国が「ルールに基づく国際秩序」を徹底し、あらゆる場所のテロリストを網羅しようとしているのであれば、イスラエルがハマスと同様に対象になっていないのはもちろん皮肉である。外国の政府高官を暗殺し、戦争状態にない国々を爆撃し、ガザ地区でジェノサイドに等しい一連の戦争犯罪を公然と実行しているのはイスラエルであり、すでに20万人近いパレスチナ人が死亡している可能性がある。一方、ハマスは、かつてパレスチナであった土地を完全に不法に占領しているユダヤ人を武力で追い出すという行動を国際法のもとで行っている。明らかに米国には、イスラエルへの資金と武器の流れを止め、かつて彼らの国であった広大な「浄化作戦」地域に残るパレスチナ人のすべて、あるいはほぼすべてを追放または殺害するという、イスラエル政府が公然と受け入れている計画の実行を阻止するために必要なことを行うという考えはない。ケイトリン・ジョンストンが指摘しているように{3}、 米国政府と多くのヨーロッパ人は、この事態に反応する意思がないように見え、実際には、パレスチナ人と非ユダヤ人は人間ではないというタルムードの主張を信じているように見える。

この新たな展開を報道するメディアは、当然ながら、10月7日にハマスが仕掛けたイスラエルへの残忍な攻撃に対する米国の行動であると説明することで、政府のイニシアティブを支持しようと苦心している。興味深いことに、米国政府とメディアは、パレスチナ人を悪者扱いするために、同じ陳腐なレトリックを繰り返し使用しているが、その出来事の前に起こったことについて言及したり非難することはほとんどなく、また、ガザ地区で常に狭まる死の輪に追い詰められ、圧倒的に非武装の男性、女性、子どもたちへの同情を表明することもほとんどない。

米国がこのタイミングで告発した理由はすぐには明らかではないが、有力かつ裕福なイスラエル・ロビーから、カマラ・ハリスへのさらなる支援を得るための動きであると考えることもできる。しかし、ガザで最近、イスラエル系米国人の人質1人とその他5人の遺体が発見されたことは、悪のハマスに対する「さらなる措置」を要求するものであり、米国がそれを許すことも忘れることもないことを示している。6人の人質が死亡したこと自体が、ハマスによる銃撃による死亡という主張がイスラエル軍の検死によってなされたという事実から、でっちあげられた事件である可能性があるという意見もある。イスラエル人は何でも嘘をつくことを念頭に置いてほしい。だから、それは隠蔽工作か偽装工作かもしれない。実際ハマスは、もし銃弾が関与していたとすれば、それらは「イスラエル製」だと主張している。おそらく6人はイスラエルの爆撃で死亡し、その死は政治的理由からベンヤミン・ネタニヤフ政権によって操作されている可能性が高い。確かに、イスラエルはユダヤ人人質を殺害した割合が他の国よりも多い。数か月前に、白旗を振りヘブライ語で叫びながら脱出した3人の人質がいたが、それでもイスラエル軍に射殺された。

ガーランドはこの事件で死亡したイスラエル系米国人、ハーシュ・ゴールドバーグ・ポリンについて、「我々はハーシュの殺人事件を、そしてハマスによる米国人に対する残虐な殺人事件のひとつひとつをテロ行為として捜査している」と述べた。ジョー・バイデン大統領もまた、ゴールドバーグ・ポリンの殺害を非難し、「非難に値するほど悲劇的な事件だ。ハマスの指導者たちはこれらの犯罪の代償を払うことになるだろう」と述べた。

ハマスに対する刑事訴訟がジョー・バイデンとカマラ・ハリスが票と資金を集めるためにでっちあげたものだと仮定すると、ドナルド・トランプはそれに対抗するために何をするのだろうか? ラスベガスで開催中の共和党ユダヤ人会議では、イスラエル寄りの唯一の「真の」政党は共和党であると宣言する見通しである{4}。これは、ネタニヤフの「完全勝利」政策を支持し、イスラエルの人質死亡の責任を民主党に負わせるという主張と組み合わさるだろう。そして、すでに、元カジノ王の億万長者、シェルドン・アデルソンの未亡人であるミリアム・アデルソンが、パレスチナ全土を併合するイスラエルへの米国の支援を保証するというトランプの公約を確実にするために、1億ドルをちらつかせたと報じられている。それはおそらくほとんど、あるいはすべてのパレスチナ人の追放も含むだろう。そう考えると、突如として現れたのは{5}元トランプの個人弁護士で、2017年から2021年までトランプ政権下でイスラエル大使を務めたデビッド・フリードマンだ。彼は、9月2日に発表された著書『One Jewish State: The Last, Best Hope to Resolve the Israeli-Palestinian Conflict』の中で、米国がイスラエルのヨルダン川西岸併合に資金援助を行うべきだと主張している。

イスラエル大使在任中は完全にイスラエルのイエスマンであったフリードマンは、イスラエルが不法占領しているパレスチナのヨルダン川西岸地区の聖書における名称である「ユダとサマリア」の主権を主張し維持するために、イスラエルは財政支援を必要としていると説明している。フリードマンは、次期共和党政権が、すでに予算化されパレスチナ人への援助を目的としていた10億ドルをエルサレムに再配分することを提案している。「最も簡単に利用でき、再配置できる予算は、米国のそれだ」と。フリードマンは、米国は「聖書の預言と価値観を第一に」基づいてイスラエルの併合を支持すべきだと述べた。さらに、ドナルド・トランプとこの提案について話し合うつもりだと付け加えた。

さあ、皆さん。米国にはたった一つの政党しかなく、それはイスラエルの命令に従う政党である。かつて私たちが暮らしていた共和国の話はこれで終わりだ。

Links:
{1} https://forward.com/fast-forward/650193/us-justice-department-files-criminal-charges-against-hamas-spurred-by-hersh-goldberg-polins-murder/?utm_source=The+Forward+Association&utm_campaign=c33451215c-EMAIL_CAMPAIGN_2023_12_01_04_25_COPY_01&utm_medium=email&utm_term=0_-1323d6a1cf-%5BLIST_EMAIL_ID%5D
{2} https://www.justice.gov/opa/pr/readout-us-attorney-general-merrick-b-garlands-meeting-ukrainian-prosecutor-general-andriy
{3} https://substack.com/@caitlinjohnstone/p-148391876
{4} https://www.haaretz.com/us-news/2024-09-04/ty-article-magazine/.premium/at-republican-jewish-confab-gop-set-to-back-netanyahus-total-victory-over-hamas-and-biden/00000191-b8ca-de3d-abb7-feeb37410000
{5} https://news.antiwar.com/2024/09/03/trumps-former-envoy-to-israel-us-should-fund-israeli-annexation-of-west-bank/
ケイトウ

「西側視点の再考:中国とロシアの同盟」

2024-09-12 19:13:06 | 社会
昨日、ブルガリアを拠点とする中東地域メディアModern Diplomacyが、「Rethinking of Western Perspective: China’s Alliance with Russia(西側視点の再考:中国とロシアの同盟)  In recent years, the Sino-Russia growing alliance has sparked widespread debate about the fading façade of Western hegemony.(近年、増大する中ロ同盟は、西側の覇権主義の色あせる外見について広く議論を巻き起こしている)」と題する記事を載せた。執筆はパキスタン、イスラマバード国際イスラム大学国際関係学博士のノシャーワン・アディルNosherwan Adilだ。同じく中東メディアであるAl Mayadeenも同じ日に、「Russia could 'combine' with China if faced with threat(ロシアは脅威に直面した場合、中国と「結合」する可能性がある)    On September 7, the Japan Times reported that the US had indicated interest in deploying a Typhon mid-range missile system to Japan for collaborative military drills.(9月7日、ジャパンタイムズ紙は、米国が共同軍事訓練のためにタイフォン中距離ミサイル・システムを日本に配備することに関心を示していると報じた)」と題する類似の記事を載せている。以下は前者の記事を載せる。


近年、中露同盟の拡大は、西側の覇権主義が消えつつあることについて広く議論を巻き起こしている。冷戦時代にはイデオロギーの違いによって分断されていたロシアと中国は、欧米の影響力に対抗し、地政学的目標を追求する上で共通の基盤を見出し始めた。この戦略的パートナーシップは、多角的な協力というレンズを通して認識されることが多く、欧米の政策、特に米国の政策に対する手ごわいカウンターウェイトとして発展して来た。

歴史的背景と中露関係の基礎

中露二国間関係は長年にわたって大きな変貌を遂げて来た。冷戦時代、両国は共産主義圏に属していたが、国境紛争やイデオロギーの違いにより、最終的には疎遠になった。1960年代の中ソ分裂は、両大国間の大規模な敵対関係の時代となり、中国は、1970年代にパキスタンがソ連の影響力に対抗するために果たした外交的役割のおかげで、米国と同盟を結ぶことさえあった。しかし、1991年のソ連崩壊によって冷戦が終結すると、中国と新生ロシア連邦は戦略的関係を再構築し始めた。

1990年代後半には、地域の安全保障と経済協力における共通の利益が、戦略的パートナーシップの基礎を形成し始めた。この関係は強化され続け、両国は軍事協力、エネルギー協力、世界情勢のさまざまな分野における西側の支配に対する共同対抗などの分野で共通基盤を見出した。中ロ関係の転機は、中国における習近平の台頭と、ロシアにおけるプーチンの権力強化であった。両国の指導者はともに、西側諸国全般と特に米国が支配する冷戦後の一極世界に挑戦しようとして来た。

中ロ同盟の背景にある戦略的原動力

ロシアと中国の同盟関係が急成長している背景には、いくつかの重要な原動力がある。

地政学的目標と欧米の影響力への対抗:ロシアと中国はともに、欧米主導のリベラルな世界秩序に抵抗する既得権益を持っている。ロシアにとってこの対抗は、世界の大国としての自国を再確立し復活させ、NATOの東方拡張に挑戦したいという願望に根ざしている。2008年のグルジア侵攻、2014年のクリミア併合、それに続く2015年のシリアへの軍事介入、2022年のウクライナ侵攻は、モスクワが自国の裏庭とその先で影響力を取り戻そうとしていることを明確に示すものだった。これらの攻撃的な行動は、西側諸国から広範な非難と経済制裁を招き、その後ロシアをさらに中国の軌道に押しやった。一方、中国はアジアにおける優位性を主張することに注力しており、特に南シナ海、台湾、一帯一路構想(BRI)における影響力の育成に注力している。北京はまた、アジア太平洋地域における米国のプレゼンスに挑戦し、パワーバランスを自国に有利な方向にシフトさせようとする姿勢を強めている。韓国、日本、オーストラリアとの軍事同盟を含む米国の封じ込め戦略や、四極安全保障対話(Quadrilateral Security Dialogue:Quad)のような構想が、中国を戦略的パートナーシップを求めるように駆り立て、ロシアは自然な同盟国となっている。

経済的補完性:ロシアと中国は、地政学的な連携を補完する包括的な経済関係を築いて来た。ロシアは炭化水素を含む天然資源の主要供給国であり、中国は世界最大のエネルギー消費国である。欧米の制裁、特にロシアの裏庭における併合政策に直面し、モスクワは代替市場として中国にますます目を向けている。2019年にロシアから中国へのガス供給を開始したパワー・オブ・シベリア・パイプラインは、両国間のエネルギー協力の深化を象徴している。ロシアと中国の貿易も大幅に拡大している。カーネギー国際平和財団によると、二国間貿易は過去最高の2700億ドルに達し、両国はさらなる増加を目指している。中国はロシアにとって最大の貿易相手国であり、ロシアは中国にとってエネルギーと原材料の重要な供給国でもある。この経済的相互依存は二国間同盟を強化し、両国が西側の制裁の影響を緩和することを可能にしている。

軍事協力:ロシアと中国の軍事協力はますます顕著になっており、武器売却、合同軍事演習、防衛技術の共有などがその特徴である。両国はザパド演習やボストーク演習などの合同演習を定期的に実施しており、NATOのような西側同盟に対する軍事力と連帯を示す役割を果たしている。ロシアはまた、ミサイル・システム、戦闘機、海軍技術など、先進的な軍事ハードウェアを中国に提供する重要なサプライヤーでもある。例えば、ロシアが中国に売却したS-400防空システムは、米国の潜在的脅威から自国の領空を守る北京の総合的な能力を高めている。さらに両国は、防衛における西側の進歩に歩調を合わせるため、人工知能や極超音速兵器といった最先端の軍事技術の開発にも力を入れている。

権威主義の共有と国内の安定:ロシアと中国はともに、体制の安定と政治的反対意見の統制を優先する権威主義的な統治スタイルをとっている。両国の国内政策、特に人権問題は、西側諸国が擁護する自由民主主義の規範とは著しく対立している。北京の香港抗議デモへの対応、新疆ウイグル自治区におけるウイグル族のイスラム教徒への扱い、市民への監視の強化は、何としても国内の安定を維持したいという願望を反映している。同様に、ロシアの政治的反対勢力に対する弾圧、とりわけアレクセイ・ナヴァルニーの投獄とその後の死亡(2024年2月16日)、市民団体への弾圧は、国内統治に対する同様のアプローチを明らかにしている。権威主義的な統治に対するこの共通のコミットメントは、特に人権に関する問題において、西側の圧力に対する抵抗において中露両国を結びつけている。両国はまた、欧米による内政干渉を拒絶しており、その同盟関係は国際的な批判に対する防波堤となっている。

世界政治と西側の戦略への影響

中露同盟は、欧州連合(EU)全般や米国をはじめとする西側勢力に大きな課題を突きつけている。それはまた、中国、ロシア、インドを含む非西欧諸国が世界情勢の形成に大きな影響力を持つ多極化世界の出現を示唆している。経済制裁を通じてロシアを孤立させようとする西側の努力は、モスクワを不注意にも北京に接近させ、中東、中央アジア、アフリカといった地域における西側の影響力を弱体化させる強力なブロックを作り出している。

ロシアと中国の連携もまた、インド太平洋における中国の自己主張に対抗しようとする米国の努力を複雑にしている。ロシアが中国に軍事支援とエネルギー資源を提供することで、北京はこの地域における米国の支配に挑戦しやすい立場にある。この戦略的同盟は、台湾との統一を目指す中国の手腕も強化する。西側の反対に直面しても、ロシアの後ろ盾が軍事的・外交的支援を提供するからだ。

さらに、中露同盟はグローバル・ガバナンスの将来にとってより広範な意味を持つ。両国は、国連安全保障理事会、国際通貨基金、世界銀行といった欧米主導の機関を声高に批判して来た。上海協力機構やBRICSといった代替機関を推進することで、中国とロシアは自国の利益を反映し、欧米の影響力を低下させる形でグローバル秩序を再構築しようとしている。
オトギリソウ

「国民を大切に」

2024-09-11 19:12:23 | 社会
9日の米国Foreign Policyは、「Letters to the Next President(次期大統領への手紙)  No matter who wins the White House, these nine thinkers from around the world would like a word.(誰がホワイトハウスを選ぼうと、世界中から集まった9人の思想家たちが言葉を求めている)」と題する記事を載せ、

この伝統は、漫画の象と七面鳥から始まった。1989年1月20日、ロナルド・レーガンは最後に大統領執務室を去る前に、副大統領であり後継者であるジョージ・H・W・ブッシュへのアドバイスを紙に書いた。「この特別な文房具を使いたくなる瞬間があるだろう」と、レーガンは絵本作家サンドラ・ボイントンのイラストが描かれたメモ帳に書いた。キャプションは?"七面鳥に負けるな”。米国における政治生活の多くの要素と同様、レーガンの影響は今も続いている。最近では、ジョー・バイデンがドナルド・トランプを "衝撃的なほど優雅 "と評した。

バイデンが来年1月にお返しをするのか、それとも副大統領のカマラ・ハリスに手紙を書くのかは、FP編集部の知るところではない。その代わりに、我々は世界中の9人の思想家に、次期米大統領に宛てた手紙に何を書くか尋ねてみた。11月の大統領選挙でどの候補者が勝利しても、その候補者は、米国がもはや唯一の覇権国ではなくなっている世界秩序の変化に起因する長期的な課題に直面することになる。米国の国際的な役割が大いに議論され、その影響は広範囲に及ぶことから、何人かの寄稿者は米国人に直接語りかけることを選んだ。これらの寄稿者たちは、互いのアドバイスに異論を唱えるだろうが、次期大統領がそのすべてに耳を傾けることを願っている。とにかく感謝祭までは。
-アメリア・レスター副編集長

と書いた。9人はキャサリン・アシュトンCatherine Ashton, ジェイソン・ボルドフJason Bordoff, アランチャ・ゴンサレスArancha González, マーティン・キマニMartin Kimani,マーク・マロック=ブラウンMark Malloch-Brown, ジョセフ・S・ナイ・ジュニアJoseph S. Nye Jr., ダニー・クアDanny Quah, ニルパマ・ラオNirupama Rao, and ジョセフ・E・スティグリッツJoseph E. Stiglitzだ。以下にシンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院学長ダニー・クアDanny Quah教授の「手紙」を載せる。

Take Care of Your People(国民を大切に)

拝啓、大統領閣下、

米国の政治的リフレッシュ、おめでとうございます。ここ東南アジアの地から、私たちは何十年もの間、あなたの国が世界に与えてくれた多くの贈り物を賞賛し、高く評価して来ました。米国は、私たちとアメリカンドリームを共有し、どのように成功したかを示し、模範を示すことによって、私たちの称賛を得ました。

しかし、状況が変わったことは否定出来ません。多国間主義、すなわち公平な競争条件の実現、世界経済の共同強化など、米国が当初目指していた成果でさえも、今では米国にとって不利に働いているように見える。20世紀末、あなた方は政治的収斂、経済的効率性、比較優位という3つの壮大な理念を掲げた。これらは、より豊かで平等なグローバル社会を約束するものだった。しかし、あなた方が望んでいたような成果は得られなかった。それは気落ちさせられ、疲弊させられるに違いない。

しかし私は、世界は皆さんのために、そして私たちすべてのために、これからもうまく機能し続けることが出来ると信じています。成功するためには、行き詰まりを避けさえすればいい。明確に協力する必要はないし、同意する必要さえない。

私には3つの提案がある。

第一に、何が本当に重要なのかを自問自答することだ。世界No.1になるなどという話は忘れなさい。もしあなたがNo.2になったら、米国国民の生き方や米国の政治システムに何が起こるか知っていますか?まったく何もない。

私たち東南アジアの人間が、あなたや中国、あるいは他の誰に対してどのように振る舞い、どのように関与するかは、まったく変わりません。私たちは、ある国が本当に優れているから第1位なのかもしれないことを理解している。あるいは、他国の台頭を意図的に抑えているから1位なのかもしれない。あなたは東南アジアにやって来て、中国とあなたのどちらかを選べと言う。我々はすでに選ばないと言っている。

第二に、私たちが本当に重要だと考えているのは、自国民の面倒を見ることだ。あなた方自身の社会における不幸な人々、弱い人々、弱者たちの苦境は、あなた方が主張する国家の経済的・社会的発展の成功にそぐわない。数十年前と比べ、下位50%の人々の暮らしがかろうじて良くなっているというのに、なぜこれほどまでに制度が劣悪なのでしょうか?

第三に、世界の中で平穏であること。これは、北と南には友人しかおらず、東と西には魚しかいないような場所に閉じこもることを意味しない。また、極端な話、世界的な公益プロジェクトに参加するために世界中を駆け回ることを求めているわけでもない。それは行き過ぎである。
そうではなく、私たちはあなた方に自己利益のみを追求してほしいのです。経済学者アダム・スミスが『国富論』で指摘したように、私たちが食卓に食べ物を期待するのは、肉屋やビール醸造所、パン屋が慈悲深いからではない。彼らが利己的であることを知っているからこそ、私たちは彼らに食事を依存しているのである。

私たち東南アジアは、不用意な協力だけを求めている。私たちの地域では、すでにこれを実践している。南シナ海では、さまざまな国が重複して領有権を主張している。それぞれの利害は明らかに対立しており、それぞれの思惑があるにもかかわらず、私たちはその海域をめぐって集団的な合意でまとまることが出来た。これとは対照的に、合意によって協力を得ようとしても、一般的にはうまくいかない。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)は、我々とあなた方が何年もかけて協議して来たものだが、最後の最後であなた方だけが自分たちには合わないと判断したため、あっという間に解消してしまった。全面的な協力が必要なときに、それに達しないことは大失敗につながりかねない。

次に率直に言おう。私たちは、あなたがあちこちに飛び回ることを望んでいるわけではない。プロジェクトに思い入れがなかったり、特に得意でなかったり、他のメンバーが何を望んでいるのか理解出来なかったりする場合は、遠慮なく友人と魚の領域に下がってください。そうでなければ意見が対立するような問題領域については、それぞれが自分の立場を守る。世界は常にマルチラテラリズムである必要はない。

これら3つの提案が政策にどのように反映されるかを紹介しよう。東南アジアの人々は証拠に基づいて行動することを忘れてはならない。あなたが主張することが真実であると分かったら、もう何も言わないでください。しかし、それを示すのであって、叫ぶのではないのだ。

No.1になることへの執着を捨てれば、中国との関わりはもはや対立的である必要はない。中国が豊かになり続け、あなた方が経済的な安全性を享受出来る、ウィンウィンの結果がここにはあるのです。

あなた方の主要な外交官は、自国の民主主義の浮沈について語って来た。アントニー・ブリンケンは国務長官に就任する前、世界中で民主主義が後退しているにもかかわらず、米国でも同様で、当時のドナルド・トランプ大統領は「毎日、その制度、価値観、そして国民にツーバイフォーで殴りかかっている」と指摘した。しかし、あなた方は長い間、自分たちの政治的、社会的価値観が普遍主義的であり、自分たちの民主主義のブランドが強固で弾力的であると確信していた。

多国間主義とグローバリゼーションの上に築かれた公平な競争条件が、ルールを守らない人々によって損なわれているのであれば、正しい解決策は、このシステムがなぜ脆弱で操作されやすいのかを解明することである。保護主義的で反グローバリズム的な勢力に、世界中の何億人もの人々を貧困から救い、ここ東南アジアや東アジアで発展し続ける機会を提供して来たシステムを取り壊させることは、正しい解決策ではない。

あなたの周囲には、米中対立の今を新たな冷戦と呼びたがる人々がいるだろう。そのような言葉には抵抗してほしい。20世紀のソビエト連邦との冷戦では、あなた方の敵対者は、米国国民の生活様式を脅かし、米国政府の理念を損なうようなイデオロギーと社会経済システムを提供しようとした。今日の北京は、その欠点はあるにせよ、米国の社会と政府に対してそのような思惑を抱くには至っていない。今日の中国との対立の中で、あなた方は米国の雇用を失い、米国の産業が解体され、現在中産階級のコミュニティが繁栄している場所からゴーストタウンが出現するという脅威に直面している。ソビエトとの戦いでは、このようなことは誰も経験しなかった。今回を冷戦と呼ぶのは、かつて別のライバルに対して有効だった手口を復活させようとする試みである。

東南アジアから、私たちは、あなた方の国内の課題と国際的な行動には双方向の因果関係と相互関連性があることを認識しています。
社会的弱者や弱者の福祉を向上させ、国内の強力な公的機関やインフラ、世界トップクラスの大学の開設を通じて彼らに機会を提供することは、あなた方の社会的結束や基盤を助けるだけでなく、再び私たちの羨望と憧れの的となることでしょう。

1967年、リチャード・ニクソンは中国についてこう書いた:「この小さな惑星に、潜在的に最も有能な10億人の人々が、怒りにまかせて孤立して暮らす場所はない」。それ以来、私たちは台頭する中国を受け入れる余裕のある世界を築こうと努力して来た。東南アジアをはじめとする世界中の国々において、機能不全に陥り、不安定な米国の居場所となるような世界を築く余力は、今の我々にはない。われわれは、米国をわれわれの世界に取り込みたいのである。
                   
                         ホテイアオイ


「米国が崩壊している5つの兆候」

2024-09-10 19:18:06 | 社会
今日のビル・トッテン氏訳、「5 Signs That The US Is Collapsing(米国が崩壊している5つの兆候)」。8月29日、ZeroHedge掲載記事。執筆は陸軍退役軍人で、元上院議員のクラーク・バーンズClark Barnes。

米国は常に楽観的な国として有名である。世界史上最大の帝国に反旗を翻し独立を勝ち取ろうとした当初から、米国はいつも明るい未来を見据えてきた。

歴史を通して、数え切れないほど多くの人々がチャンスのある国と見て米国へやってきた。アメリカン・ドリーム、つまり「努力すれば成功できる」という考え方は米国の文化を貫く重要な要素のひとつである。

しかしあなたは今、どれほど楽観的な気持ちでいるだろうか? 米国が明るい未来に向かって前進しているように見えるだろうか? それとも、アメリカン・ドリームはいまにも崩壊し、悪夢に陥りそうな不安を感じているのだろうか?{1}

もしあなたがそう感じていて元気づけてほしいと思っても、残念ながら私は何もできない。まだ後戻りできない地点まで来てはいないが、この国が危険なほど不安定な状態にあることを示す証拠が至る所にある。

なんとかして状況を好転させることはできるだろう。しかし、今は悪い方向に向かっている。

分裂した国家

米国の州は今、あまりまとまっているように感じられない。実際、米国は1865年にリッチモンドが北軍に陥落して以来、これほど分裂したことはないかもしれない。米国の政治は恐ろしいほど党派的になっている。

数十年前、1950年代の黄金時代に共和党は連邦税を減税し、人々がより多くのお金を手元に残せるようにすることで繁栄を築こうとした。

民主党は連邦法を活用して人々の職場での権利を拡大することで、繁栄する国家を築こうとした。{2}

まあこれは少し単純化しすぎているが、両党ともほぼ同じような国を望んでいた。ただ、そこに至る方法について、異なる考えを持っていただけだ。実際にそれほど大きな違いはない。

現状はどうか。穏健派の政治家もまだ存在している(そして彼らは当選している。つまり、彼らの主張を支持する人々もいるということだ)が、全体的には政治的な議論は極端な方向に大きく逸脱している。

私たちは、無謀な借り入れによって成り立っている社会に生きている。常に問題を先送りし、世界が私たちにお金を貸さなくなる日など決して来ないかのように振る舞っている。

狂気じみた極端な考えには、理解しがたい政治的憎悪が伴う。ほんのひと世代前までは、自分と政治的見解を同じにしない人々は考えは間違っているが、基本的に善意のある人だと考える傾向があった。

今や、もしあなたが、絶えず変化し、ますます過激化する考え方とまったく同じものを持っていなければ、文字通り悪人になる。あなたは無慈悲で利己的だ。あなたは単に相手政党に投票した人ではなく、敵であり、滅ぼさなければならない。多くの人がこのように考えている社会はひどく壊れている。そして、それが今の米国なのだ。

暴力が新たな抗議手段

人々はかつて、プラカードと花束を持って抗議した。しかし今では、彼らは自転車用ロックやナイフ、銃を持ってくることもある。ほとんどの抗議は暴動に発展する可能性がある。

どんな社会でも時折不安定な状態が起こるだろうが、今はあまりにも頻繁にそれが起きていないだろうか?

警察が誰かを撃った場合、たとえ罪のない被害者を刺そうとした凶悪犯であっても、略奪と破壊の嵐を正当化する理由になる。

もし最高裁が誰かの気に入らない判決を下した場合、判事たちは自宅の外に怒れる暴徒を見つける。武装した狂信者たちは彼らを殺そうとする。

多くの抗議者が武器を持っている。自分や家族を守るために銃を携帯することは、長い歴史と名誉ある米国の伝統だ。しかし自分と意見が異なる人々を黙らせるために銃を携帯することはそうではない。

国は崩壊しつつある

米国は、文字通り、崩壊しつつある。米国のインフラは数十年にわたる投資不足に苦しんでいる。電力網は老朽化し、過負荷状態にあるため、EMP攻撃を受けなくても崩壊する可能性がある。6月に暑い2週間が続くだけで十分かもしれない。{3}

ただの吹雪でも電力網の大部分が機能しなくなる可能性がある。我々は100年以上も家庭に電力ケーブルを引いてきたのに、まだ雪の問題を解決できていないのだろうか?

現政権は、崩壊しつつあるインフラをどう立て直すかについてよく語るが、その大構想は電気自動車を国民全員に購入させ、すでに負荷に対応しきれていない送電網から充電するというものだ。誰もが米国のインフラが混乱していることは知っているが、誰もそれを本気で修復する計画を持っていない。

モラルも腐敗している

あまりに多くの人が、何の見返りも求めずに何かを手に入れようとしている。独占を狙うシニカルな企業も、地位を利用して金銭的利益を得ようとする腐敗した政治家もだ。

何千万もの米国人は、今でも誠実な労働に対しては誠実な賃金を得る(あるいは支払う)べきだと信じているが、恐ろしいほど多くの人々はそう考えていない。あまりにも多くの人々が、お金は稼ぐべきものだという考えを拒絶している。

多くの人々は、まったく道徳的規範を持っていないように見える。大都市の路上では麻薬常習者が麻薬を売買し、使用しているが、地元の政治家はそれを黙認している。地方検事は現金による保釈を廃止し、凶悪犯を刑務所に入れないよう努めている。

米国には3億4千万人の人々がいる。何が正しくて、何が間違っているのか、私たちが共有する考え方、つまり、皆が同意して従う道徳的基準がなければ、米国は非常に不快な場所になってしまうだろう。統一された道徳観がなければ、社会は崩壊する。

私たちは破産する

米国は依然として世界最大の経済大国であり、成長を続けているが、その成長の恩恵をほとんどの米国人は実感していない。賃金は停滞している。
学校や大学を役立つスキルを教える場所にしたり、労働者を安価な違法労働から守る代わりに、政治家たちは再選を目指して借金を重ね、そのお金を使おうとしているだけだ。

米国の国家債務時計を見てみよう。


現在、米国は31兆8000億ドル以上の負債を抱えており、その額は急速に増え続けているため、時計の最後の5桁の数字はぼやけて見えない。

米国政府は、あなたが数字の変化を追うよりも速いペースで何万ドルものお金を燃やし続けている。

36秒ごとに100万ドル、まあだいたいそんな金額が消えていく。3万ドル以内に収めるにはストップウォッチのボタンを十分に早く押すことができなかった。

米国の所得税納税者は1億2800万人に満たず、政府が望むような支出をすべて賄うことはできない。

そう、一般納税者に代わって富裕層や1パーセントの人々、あるいは大企業に課税すべきだという意見もあるが、それは問題ではない。結局は一般の労働者である米国人のポケットからお金が捻出されるのだ。

大企業は法人格を持っているかもしれないが、実際には法人は人ではない。法人は、商品やサービスを他の人々、つまり一般の人々に販売する人々の集合体である。もし法人がより多くの税金を支払わなければならない場合、一般の人々は、価格の上昇や賃金の低下という形でその負担を強いられることになる。

政府は支出を大幅に削減しなければならないが、票を失うことを恐れて削減しない。だから代わりにお金を借り、奇跡的に世界が私たちに貸し続けてくれることを期待し、返済する必要がなくなることを願っている。

問題は、負債の利子さえも税金で賄えなくなる日が地平線の向こうに迫っているということだ。今後10年間で、利子の支払いに10兆5000億ドルを費やすことになるだろう。その一方で政府は返済方法がわからないのにさらに何兆ドルもの借金を重ね続けるのだ。

遅かれ早かれ、世界は、米国が借金を返済することは決してないということを理解し、貸し手の蛇口を閉めるだろう。

そうなれば、最終的な崩壊はもう数日のうちに起こる。連邦政府の全職員が給与を支払われなくなり、生活保護費や社会保障費の小切手が届かなくなれば、米国は崩壊するだろう。

取り返しのつかない状況には至っていない、今のところは。しかし私たちはその状況にきわめて近づいている。
Links:
{1} http://tinyurl.com/bdcpsd2x
{2} http://tinyurl.com/yxyuc6m8
栗の木

「米国の対中戦争は世界全体に対する戦争である」

2024-09-09 19:17:18 | 社会
主にアジアとアフリカに関する地政学ジャーナルである、モスクワのNew Eastern Outlookは、7日、「US War on China is a War on the Entire World (米国の対中戦争は世界全体に対する戦争である)」を載せた。執筆は元米海兵隊員でバンコクを拠点とする地政学研究者であるブライアン・バーレティックBrian Berletic。


ジェイク・サリバン米国家安全保障顧問は最近、米国は 「危機を求めていない 」と主張した。中国が米国に従属する限り、危機は求められない

中国は、他の主権国家と同様に、国際法に基づき、外国からの従属に抵抗する義務があるため、米国は中国との不可避の戦争に向けて加速し続けている。中国には強大な軍事力があり、米国が実際に中国と戦争を起こすことはないだろうという疑念を多くの人が抱いているが、米国は何十年もかけて、中国の現在の軍事力では防御できないかもしれない潜在的な弱点を作り出し、利用しようとして来た。

ワシントンの長年にわたる中国封じ込め政策

バイデン政権による最近の政策転換とはほど遠く、中国を包囲し封じ込めようとする米国の野望は、第2次世界大戦の終わりまで遡る。1965年、米国がベトナム戦争に参戦したときでさえ、米国の文書は「共産中国を封じ込める」という政策を「長期的なもの」と呼び、東南アジアでの戦闘をこの政策を達成するために必要なものだと位置づけていた。

何十年もの間、米国は中国の周辺地域で侵略戦争を行い、中国のパートナーを不安定化させる政治的干渉を行い、中国自身を不安定化させようとして来た。

さらに最近では、米国は中国との不可避的な戦争に備え、軍全体の再編成を始めている。

中国の経済連絡網の切断

アジア太平洋地域で中国軍と戦うだけでなく、米国は世界中で中国の貿易を断ち切るという長期的な計画も持っている。

2006年、米陸軍大学戦略研究所(SSI)は『真珠の糸』を発表した:この中で、中東からマラッカ海峡に至る中国にとって不可欠な「海上連絡線」(SLOC)は特に脆弱であり、米国のアジアに対する優位性の対象であると指摘している。

この論文では、米国の優位性、特にこの地域全体における米国の軍事的プレゼンスは、「責任あるステークホルダーとして中国を国家共同体に引き込む」ためのテコとして利用できると論じている。これは、中国を米国の優位に従属させるための婉曲表現である。これは、「米国の優位に挑戦するいかなる国家や国家集団をも抑止する」ことを目指す、より広範な世界政策と一致する。

「米国の軍事力を活用する」と題されたセクションの下で、この論文は、中国のSLOCに沿って、東アジア(韓国と日本)における既存のプレゼンスを増強するだけでなく、東南アジアや南アジアにまでそれを拡大し、インドネシアやバングラデシュのような国々を勧誘して、この地域、ひいては中国に対する米国の軍事力を強化することを含め、地域全体にわたって米国の軍事的プレゼンスを拡大することを主張している。

中国・パキスタン経済回廊(CPEC)の一部であるパキスタンのバルチスタン地方での互恵的な港湾プロジェクトや、中国・ミャンマー経済回廊(CMEC)の一部であるミャンマーのシットウェでの港湾建設など、SLOCを確保しようとする中国の努力に言及している。どちらのプロジェクトも、マラッカ海峡と南シナ海を通る長く脆弱な海上ルートを回避し、中国にとって代替となる経済連絡路を作ろうとしている。

両プロジェクトはその後、米国が支援する武装勢力による攻撃を受けており、パキスタン全土で中国人技術者に対する攻撃が現在も定期的に行われている。また、ミャンマーでは現在、米国が支援する大規模な武力紛争が起きており、反体制勢力が中国が建設したインフラを定期的に標的にしている。

このように、米国の政策は、中国のSLOCを地域全体で混乱させるとともに、チョークポイント(CPEC/CMEC)を迂回する努力を求め、それを実現して来た。東南アジアの中心部を含む他の潜在的な回廊も、米国の干渉の標的になっている。東南アジアと中国を結ぶ中国の高速鉄道のタイ区間は、米国が支援する政治的野党が公然とプロジェクトを中止しようとしているため、大幅に遅れている。

多くの意味で、米国は代理人を通してではあるが、すでに中国の危機を作り出している。

中国海運を標的に

米国海軍は「航行の自由」を守るという名目で、中東のホルムズ海峡や南シナ海(マラッカ海峡の東側アプローチ)など、世界で最も重要な海上航路の周辺に軍艦や軍用機を配置し、さらに同海峡の西側アプローチに海軍の重要なプレゼンスを確立する計画を立てている。

米国は、中国の軍事力は、中国沿岸部における米国の軍事的侵略を完全に打ち負かすことは出来ないまでも、著しく複雑化させるのに十分なほど広範囲に及んでいることを認識している。米国はその代わりに、自国の戦闘機やミサイル戦力が到達出来ないはるか彼方の中国を標的にすることを想像している。

米海軍研究所は、"Future of Naval Warfare Essay Contest (海戦の未来エッセイコンテスト)”の第3位として、"Prize Law Can Help the United States Win the War of 2026 (賞金法は2026年の戦争に勝つために米国を助けることが出来る)”を発表した。同論文は、中国の手強い対アクセス地域拒否(A2AD)能力のため、「海軍による接近阻止」は実現不可能であると警告している。

その代わりにこう主張している:

......遠距離封鎖、すなわち、中国のA2/ADの到達範囲外の「重要な海上要衝で中国商船を阻止する」ことは、一般的に持続可能であり、テンポと場所が柔軟であり、エスカレーションのリスクが管理可能であり、資源を大量に消費し、輸入に依存する中国の戦争努力を妨げる。

この「遠距離封鎖」の一部は、米国の造船能力の遅れと、米国が生み出した海洋資源の不足を補強するために、中国の船舶を標的とし、拿捕し、再利用するキャンペーンとなるだろう。

純粋に思索的な戦略を表す思いつきの作文とはほど遠く、米国はすでに 「遠距離封鎖 」を実施するための措置を講じている。米海兵隊全体が、アジア太平洋とその先の中国海運に対して戦争を仕掛けるためだけに調整されている。

BBCは、2023年の記事「中国の脅威のために、米海兵隊はどのように形を変えつつあるのか」の中で、次のように報じている:

新しい計画では、海兵隊は島々の連鎖を越えて分散した作戦を戦うことになる。部隊はより小さく、より分散されるが、さまざまな新しい兵器システムによって、より大きなパンチを持つことになる。

「新兵器システム」とは、主に対艦ミサイルである。島々や沿岸地域で活動する米海兵隊は、ほとんど中国海運を混乱させるためだけの部隊に変貌している。

中国船舶の拿捕計画とともに、米国は自国を「航行の自由」の世界的な保護者ではなく、それに対する最大の脅威と位置づけている。中国が世界各国にとって最大の貿易相手国であることを考えれば、中国海運を標的にする米国の計画は、中国だけに対する脅威ではなく、世界経済全体の繁栄に対する脅威なのだ。

米国の対中戦争は世界との戦争

ワシントンが中国との戦争を望み、中国経済を締め上げて廃墟にする「遠距離封鎖」を実行する危険は、世界全体にとっての危険である。この戦略が実行に移された後、世界的な経済的ダメージを防ぐことは不可能かもしれないが、この紛争に先立ち、米国が中国を包囲し封じ込めるために使っている様々な要素を標的にすることは可能である。

米国の政治的干渉や、政治的・武力的反対勢力を作り出し、中国のさまざまな経済的コミュニケーションラインを遮断するために利用していることは、国家的・地域的な安全保障の取り組みによって暴露し、根こそぎ奪うことが出来る。

国や地域の情報空間を確保することは、米国が中国とそのパートナー国との貿易を脅かすために利用する政治的・安全保障的危機を達成するために、米国が影響力を行使し、標的とする国々に敵対させようとする人々から米国を切り離す最も単純で効果的な方法である。米国政府のNED(National Endowment for Democracy全米民主主義基金)による野党、組織、メディア・プラットフォームへの資金提供など、米国の干渉を標的とし、暴露し、根絶する法律を可決し、施行することも不可欠である。

外国メディア組織とその米国市民への協力疑惑を標的にする最近の米国の動きは、NEDが資金提供する活動を標的にし、根絶やしにする際に他国が引き合いに出すのに便利な口実を作り出した。

このような措置をとることは、米国自身からの報復を含め、それなりの結果をもたらすだろうが、米国が中国とその世界的な貿易パートナーに対する「遠距離封鎖」を準備し、最終的に実行することを許すという選択肢は、さらに重大な結果をもたらすだろう。

台頭しつつある多極化世界が、米国が何十年もかけて準備して来たこの将来の危機を見極め、解決出来るのか、それとも東南アジアや南アジアの政治指導者たちが、短期的な結果を恐れ、その代償として中間的な将来に破滅的な結果をもたらし、その結果苦しむことになるのかは、時間が経ってみなければわからない。
ブタクサ