先週末は梅雨のような雨が続き、やや鬱陶しい感じがあった。週末の北上ー釜石間の蒸気機関車の正規運転があり、汽笛が愁いを帯びて響いて来た。山に囲まれているため反響しやすい。やはり何度聞いても大きな動物が悲しく吠えているように聞こえてしまう。今日はすっかり晴れ渡り、またとても気持ちのいい天気になった。震災で崩れかけた建物はほとんど取り壊されて空き地が点々と出来て来た。しかし、今のところそれ以上の変化は被災地域には見られない。被災地域の本格的な整備にはまだまだ時間がかかるのだろう。1997年3月、東京電力に初めての女性総合職として入社していた、当時39歳の女性が殺害された。慶応義塾大学経済学部卒で企画部経済調査室副室長にまでなっていたエリート女性だ。同年5月20日ネパール国籍の30歳の男性が逮捕された。以後マスコミは警察から漏れ出た、殺害された女性が売春行為をやっていたという意外な情報を元にたちまちセンセーショナルな取り上げを展開して行った。後にはノンフィクション作家が『東電OL殺人事件』、『東電OL症候群(シンドローム)』などという書籍を書いたことにより、世間は警察のリークした情報通りにこの殺害された女性像を受け入れて行った。松本清張氏が存命であれば、おそらく全く違った書籍が出ていたのではないかと思う。現在の東京電力会長勝俣恒久氏は当時殺害された女性の所属する企画部の部長を務めていた。彼女の父親もまた東京大学工学部卒で東京電力に入社したエリートであった。しかし、この父親は社内で推進されていた原発に対して、その危険性を説くようになったため、降格され、間もなく癌で亡くなる。経済調査室に配属されてから彼女が書いたレポートは賞を受けるほどのものだったという。彼女もまた父親同様反原発の視点に立っていた。彼女は東京電力内の貴重な資料に触れ得る立場にあり、その資料を元にしたレポートの公表もある程度可能だったと思われる。科学的な論文の著者がその人格が貶められることで、その論文の信頼性を損なわせられる、ということはこれまでにもいくつか見られた。論文に影響力があればあるほど、その効果は大きくなる。殺害犯人もこうした場合の常で社会的に弱い立場の人間が標的とされて行く。それによって真犯人から世間の目がそらされて行く。警察は標的とした「犯人」に関わる証拠固めに偏ってしまうため、全体から見れば極めてずさんな捜査となる。そこでは無論検察も一体となっている。むしろこうした場合は検察からの指示で警察が動いているのだろう。15年経ってはじめて裁判所によって警察と検察の証拠固めのずさんさが明らかとなった。ネパール人の被告を直ちに国外退去させ、被告不在のまま再審が可能だと裁判所が判断し得るほどに無罪が明らかとなっている。15年間に真犯人は消えてしまった。検察の「悔しさ」が報道されているが、検察にとって当初からこうした結末は想定されていたはずだ。東京電力という巨大企業の闇は簡単には照らし出されることはないのだろう。 近所の風車