郎女迷々日録 幕末東西

薩摩、長州、幕府、新撰組などなど。仏英を主に幕末の欧州にも話は及びます。たまには観劇、映画、読書、旅行の感想も。

薄桜鬼の土方と池田屋の沖田ランチ

2012年03月10日 | 土方歳三

 ちょっと寄り道しまして、久しぶりの新撰組記事です。
 
 松山の我が家に、東京で大学生をやっております姪が遊びに来ていまして、いっしょに広島に行きました。
 姪の名は、仮に千鶴にしておきます。
 ちょうど私は、中村武生氏の「池田屋事件の研究」を読んでおりました。

池田屋事件の研究 (講談社現代新書)
中村 武生
講談社


「おばちゃん、なに読んでるの?」
「あんまり千鶴ちゃんの趣味ではなさそうな本よ」
「池田屋事件? 新撰組の池田屋事件でしょ?」
「新撰組の池田屋事件ってー、あー、まー、そういう言い方もできなくはないわね」
「おもしろい? おもしろかったら教えてね。千鶴、新撰組には詳しいよ」
「そーなの? じゃあ、原田左之助が松山の出身だったって、知ってる?」
「えええええっ!!! うそー。日野じゃないの???」

 いったい、どこが詳しいっていうのよっ!!!!!
 と、そのときは、そう胸の内でさけんだだけでして、私はこの姪に、歴史・文学などの知識に関しましては、まったくもってなんの期待も持っていませんから、それ以上、新撰組と伊予松山池田屋で闘死した郷土の男で、書きましたことは話しませんでした。

 実は、私がこの本を読みました最大の目的は、福岡祐次郎についてなにかわからないか、と思ったからなのですが、それにつきましては中村武生氏も、「福岡祐次郎なる人物はまったく正体不明である」としておられます。
 しかし、この年の春あたりからの薩摩藩の分析でありますとか、逃げの小五郎はやっぱり屋根から逃げていたらしいとか(だったらなぜ自叙伝で嘘ついたんですかね)、当時の龍馬は大仏の土佐浪士合宿所みたいな家にいたとか(ここに半次郎が出入りしていて龍馬とも知り合ったのではないかと想像がひろがります)、いろいろと教えられますことも多く、私にとりましてはおもしろい本だったのですけれども、まあ、ねえ。千鶴ちゃんにとっておもしろい本だとは、とても思えませんでした。

 千鶴ちゃんはノーパソを持ってきていませんで、私のノーパソを使いました。共有しましたから、なにげに、私がコメントを書いていましたこのブログも見るわけです。

「おばちゃん、幕末が好きなの? 千鶴も読者になってあげようか?」

 いや、最近は新撰組のことも書いていないしねえ。
 だいたい千鶴ちゃんは、「おばちゃん、なに読んでるの?」とのぞきこみました「井上伯伝」が、ほとんど読めませんでしたくせに、私のブログの読者になって、おもしろいことがあるものなんですかしら、ねえ。


 と思いはしましたものの、一応、「あー、ずいぶん以前の記事だけど、新撰組のことも書いているわよ」と、カテゴリー土方歳三をざざっと見せましたところが、土方歳三 函館紀行は、そこそこ気に入ったようでした。
 まあ、写真記事ですからねえ。

 で、広島旅行でのことでした。
 日の丸と君が代で書きました家族旅行のとき、千鶴ちゃんはニュージーランドに留学しておりまして、同行していなかったものですから、今回、江田島にも行きました。見所は、旧海軍兵学校の講堂、校舎と、教育参考館の展示です。
 日本海軍の歴史の展示に、幕末の人物が数名出てまいります。
 千鶴ちゃんは、さすがに、勝海舟と坂本龍馬の名前は、知っていました。しかし。
「おばちゃん、この人、どんな人?」と千鶴ちゃんが指し示した写真は、吉田松陰の肖像画でした。

 広島最後の夜、千鶴ちゃんは、東京へ帰る途中、京都で新撰組史跡を見物したいと言い出しました。「壬生寺周辺よね」と、私は検索をかけて、ネットで場所を示してあげたのですが。
「池田屋にも行ってみたい。食べ物屋さんになっているんでしょ?」
「食べ物屋さん? 昔、おばちゃんが行ったときは、パチンコ屋の前に小さな石碑があっただけだったけど」
「えー、そうなの? ちゃんと調べてみてよ、おばちゃん」

 調べてみましたら、その通りでした。
 あのパチンコ屋さんが、海鮮茶屋 池田屋 はなの舞という居酒屋さんに生まれ変わり、有名な「階段落ち」の大階段が、再現されているというんです。
 えー、中村武生氏の「池田屋事件の研究」によりますと、階段落ちはフィクションですし、池田屋が現在言われております位置にあったかどうかも、確たる証拠はないんだそうですけれども。

 もちろん、そんなことは、千鶴ちゃんにとりましてはどーでもいいことです。
 「食べられるようだったら、そこで昼ご飯でも食べたら?」と私が言いますと、さっそく千鶴ちゃんは、お店に予約の電話を入れました。なんでも、平日の昼は、予約がなければ食べられないそーでして。
 私はもう、寝ようとしていたのですけれども、千鶴ちゃんの電話予約を聞いていまして、思わず起き上がり、吹き出してしまいました。
 「明日のお昼なんですけど、沖田総司定食をお願いします。……あっ、それと薄桜鬼の隊士カクテル、ノンアルコールの沖田総司、一番組組長もお願いします」

 薄桜鬼って、いったいなに???なのですが、もともとはゲームです。
 
薄桜鬼 ~新選組奇譚~


 いわゆる乙女ゲーというやつでして、アニメにもなっているんだとか。
 要するに千鶴ちゃんは、このアニメのおかげで新撰組が好きになったというわけなのですが、説明がもうめちゃくちゃでして、話を聞いてもわけがわかりません。
 「新撰組の敵は鬼なの。羅刹化した土方さんは、鬼の血を飲んで薄桜鬼になったの」
 「はあああああ???」
 えー、私、いまだにさっぱりわかっておりませんが、雪村千鶴という名の男装の女の子が主人公で、新撰組の仲間入りして美形の隊員たちと運命をともにする、というような、これまでも少女漫画などでよくあったパターンの話のようでもあるのですが、そこにどーも、バンパイア物語のような怪奇要素がからむようです。

 「おばちゃん、薄桜鬼は歴史に忠実だから、幕末のことがよくわかるよ」
 「はあああああ??? どこがっ!!!」
 どーも、ですね、姪の千鶴ちゃんにとっては、池田屋があって、鳥羽・伏見があって、函館戦争があって、とりあえず、中身はどーでも、歴史上の事件が順番に出てまいりますと、それだけで歴史に忠実だということに、なるようです。

「千鶴ちゃんは、沖田総司のファンなの?」
「そうだよ。薄桜鬼の沖田総司のファン。ほんとうは、ヒラメみたいな顔だったんだって?」
「そういう話もあるわね。薄桜鬼の沖田総司はどんな性格?」
「ひねくれてて、意地悪なの」
 「はあああああ??? ひねくれてて、意地悪な沖田総司って!!!」
 土方のタトエばなしby『新選組の哲学』に書いておりますが、天才剣士でさわやかスポーツマンな総司は、司馬さんが造形なさいました。女の子向けに、ひとひねり陰を加えてあるってことなんでしょうかしら。

 いや、ですね。もとが乙女ゲーですから、美形キャラばかりなのは当然でして、といいますことは、当然、男同士のかけ算パロディも多く出回っている作品のようです。
 戦後の話、になると思うのですが、なんで乙女たちって、新撰組がこんなに好きになったんでしょ???
 やっぱり、元の種は、司馬遼太郎氏が蒔いたような気がするのですが、一度、ちょっぴりまじめに考察してみたい、ですね。

 薄桜鬼が興味深いのは、ですね。
 新撰組に敵対します鬼で、アニメでは、最後に土方と死闘を演じて、土方に薄桜鬼の名を贈りました謎の剣客・風間千景が、薩摩藩に雇われている、という設定なのだそうです。
 雇われている、といいますのが、ちょっとあれですが、やはりモデルは中村半次郎(桐野利秋)だったりしないんでしょうか?(笑)
 あと、ですね。トマス・レイク・ハリスとモンブラン伯爵の洋鬼対決なんぞも出てきますと、それはすばらしいゴシックロマンになったんですのに、ねえ。
 
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