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荻野洋一 映画等覚書ブログ

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『花と蛇 ZERO』 橋本一

2014-06-10 23:53:54 | 映画
 石井隆などが監督した2000年代東映版の『花と蛇』シリーズは一本も見ていない。したがって日活・小沼勝版(1974)の記憶をたよりに、団鬼六による物語をたぐり寄せ、突き合わせてみるのだが、さてこんな話だったか。小沼版で谷ナオミ=静子が存分に「犠牲者=獲物」として晒し続けられていたのに対し、今回も静子という女は濱田のり子によって演じられてはいるが、それはあくまで静子の一側面でしかない。アクロバティックな脚本によって、映画はあられもない地点へと拡散し複数化し、最終的にはファルス(笑劇)の域で解放化する。監督は『探偵はBARにいる』シリーズを手がけた東映社員出身の橋本一。
 監禁SMストリーミングサイトの被写体として登場する静子(濱田のり子)。そして、それを自宅のパソコンで鑑賞しながらみずから静子のパロディと化す主婦(桜木梨奈)。さらに、サイトの違法性を調べ上げ、摘発しようとする警視庁の女性刑事(天乃舞衣子)。三者三様の「犠牲者=獲物」ぶりがパラレルに語られる。中でも、こわもてだったはずの女性刑事が捜査の過程でSM調教の世界を垣間見て、その魔性に怖じ気づくプロセスが、今回版の一番のみどころとなっている。残念ながら、天乃舞衣子の稚拙な演技のために、こわもての刑事が怖じ気づいていくメンタル・サスペンスが、今ひとつ真に迫らない。
 いっぽう、監禁SMがコミカルな実演へと昇華されていくあたりの、糸の切れた展開は圧巻だった。マルキ・ド・サドのSM小説を読んでいても、あまりの事態になにやら笑いを誘われるケースがある。本作はああいう感覚を誇張して出している。SMショーの司会を担当する地下組織の幹部を菅原大吉が演っていて、この人が醸す滑稽さは秀逸である。『あまちゃん』における「ブティック今野、ダサダサ」の商工会長役も悪くなかったが、今回の菅原大吉は一世一代の名三枚目だったのではないか。


丸の内TOEI2(東京・銀座)で6/13(金)まで(他劇場では続映)
http://www.dmm.co.jp/hanatohebi0/


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