録り貯めていたHDDから、ドン・シーゲル『中国決死行』(1953)をついに見る。本作はこれが初見にして、素晴らしき映画体験なり。
太平洋戦争末期、中国最南部の秘境に日本軍機が墜落し、ある将校が瀕死の重傷を負って、中国の地方軍閥の手に落ちる。戦争の終結方法について苦悩するトルーマン大統領に、原爆投下に対する決断のヒントを与え得るこの人物を生け捕りにしてワシントンに送るべく、ある小部隊が編成され、“ 決死行 ”が始まる。
ドン・シーゲルは戦争映画を、安易にスペクタクルとして取り扱わない。行軍を続けること、雨が降ること、銃声が鳴ること、手術が成功すること、そして、人が死ぬこと、といった唯物的なる事象を峻厳に、かつ切れ目なく語り続けるだけである。だからこそ、目にも止まらぬ素早さで終結してしまうラストの銃撃戦が、この上もなく永遠の諦念として、達観美として氷結するのだ。本作が、クリント・イーストウッドの『硫黄島』2部作にも霊感を与えただろうと推測をすることもたやすい。
この『中国決死行』のリピート放送を含む、《ドン・シーゲル 知られざる傑作》というシリーズ企画が、5日月曜の深夜からWOWOWデジタルで放送される。1950年代のリチャード・コリンズ脚本作中心というのが(そして、企画に華を持たせようとするあまりイーストウッド主演ものを混ぜたりするのを心ならずも堪えてくれたことが)嬉しいのだが、特に最終日の『第十一号監房の暴動』はここだけの話、映画史上10本の指に入る傑作である。ドン・シーゲルを知らずして、人は「アメリカ映画が好きだ」などと軽々しく言ってはならない。
4/5(月)深夜2:00 『グランド・キャニオンの対決』(1959)
4/6(火)深夜2:00 『殺人捜査線』(1958)
4/7(水)深夜2:00 『中国決死行』(1953)
4/8(木)深夜2:05 『第十一号監房の暴動』(1954)
※いずれもデジタル192chでの放送。
P.S.
『第十一号監房の暴動』(1954)は、アメリカ共産党の指導的立場にあった脚本家のリチャード・コリンズのキャリアにとっても、非常に重要な作品である。下院非米活動委員会からの召喚に応じ、かつての同志の名前をチクってから、3年後にようやくハリウッドでの復活を印象づける作品となったのである。もちろん、コリンズには仲間を売ったユダの烙印は残ることになった。
太平洋戦争末期、中国最南部の秘境に日本軍機が墜落し、ある将校が瀕死の重傷を負って、中国の地方軍閥の手に落ちる。戦争の終結方法について苦悩するトルーマン大統領に、原爆投下に対する決断のヒントを与え得るこの人物を生け捕りにしてワシントンに送るべく、ある小部隊が編成され、“ 決死行 ”が始まる。
ドン・シーゲルは戦争映画を、安易にスペクタクルとして取り扱わない。行軍を続けること、雨が降ること、銃声が鳴ること、手術が成功すること、そして、人が死ぬこと、といった唯物的なる事象を峻厳に、かつ切れ目なく語り続けるだけである。だからこそ、目にも止まらぬ素早さで終結してしまうラストの銃撃戦が、この上もなく永遠の諦念として、達観美として氷結するのだ。本作が、クリント・イーストウッドの『硫黄島』2部作にも霊感を与えただろうと推測をすることもたやすい。
この『中国決死行』のリピート放送を含む、《ドン・シーゲル 知られざる傑作》というシリーズ企画が、5日月曜の深夜からWOWOWデジタルで放送される。1950年代のリチャード・コリンズ脚本作中心というのが(そして、企画に華を持たせようとするあまりイーストウッド主演ものを混ぜたりするのを心ならずも堪えてくれたことが)嬉しいのだが、特に最終日の『第十一号監房の暴動』はここだけの話、映画史上10本の指に入る傑作である。ドン・シーゲルを知らずして、人は「アメリカ映画が好きだ」などと軽々しく言ってはならない。
4/5(月)深夜2:00 『グランド・キャニオンの対決』(1959)
4/6(火)深夜2:00 『殺人捜査線』(1958)
4/7(水)深夜2:00 『中国決死行』(1953)
4/8(木)深夜2:05 『第十一号監房の暴動』(1954)
※いずれもデジタル192chでの放送。
P.S.
『第十一号監房の暴動』(1954)は、アメリカ共産党の指導的立場にあった脚本家のリチャード・コリンズのキャリアにとっても、非常に重要な作品である。下院非米活動委員会からの召喚に応じ、かつての同志の名前をチクってから、3年後にようやくハリウッドでの復活を印象づける作品となったのである。もちろん、コリンズには仲間を売ったユダの烙印は残ることになった。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます